錦上添花
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宮侑をぶっ飛ばしたい。
現在は四限。おじいちゃん先生による睡眠導入授業(地学)によって、教室内の1/3は夢の世界へ旅立っている。保坂先生の呪文が流れる中、私のイライラは収まりそうもない。
最近、インターハイに向けて部全体にピリピリ感が漂っている。1年も2、3年の空気感につられているようで、角名がサボりずらいと小言を洩 らしていた。特につられているのが侑。2年でありながら攻撃の主力である尾白さんと仲がいいからか、はたまた感情移入しすぎているのか、やる気に満ちている。おおよそ「アランくんが全国のコートで気張っとるんやから、俺も負けてられん」とか思ってるんだろうけれど。それに銀も乗っかって熱血になるもんだから、オーバーワークで北さんにドヤされている。
問題は、そのせいで私に対する侑の風当たりが暴風雨級になってきたこと。目の前を通り過ぎれば、「ちょろちょろウザイわぁ」と毒を吐かれ、頼まれ事を少し後回しにしてたら「そんなこともできんのか」と嫌味を言われ、選手に声掛けをすれば「まーた媚び売っとる」と蔑まれる。物を渡せば舌打ちされ、向こうからは投げて渡される。その他色々、思い出したらキリがない。
バレる度に宥 められたりミニ説教をくらったりしているが、納得できないようでまだ突っかかってくる。
散々な目にあっているが、私とてやられっぱなしではない。部活中は何があっても受け流しているが、それ以外ではきっちり舌打ち返し、小言返しをしている。そのせいで部活外では常に一触即発。侑の攻撃に私が反撃、睨み合い、からの私が離脱。逃げるんか、と言われたこともあるが、ガチの喧嘩を始めたら北さんに迷惑がかかるからと自制して撤退しているだけである。
そして今日の朝、奴はド地雷を踏んだ。
「やかまし豚がおるから調子上がらんわ。あんだけいじめたのに全然辞めへんし。それどころか毎回やり返してくる。初めはウザい思っとったけど、あれや、虚勢やろ? 舌打ちして睨み返して、それ以上はしてきぃひんもんな。精一杯の豚の抵抗ご苦労さん。やけど、それも終いや」
壁際で作業している私に向かって、大きめの独り言風に暴言を吐いてくる。いつもの小さい嫌味と違って、ハッキリとした形で悪意をぶつけてきた。
「マネージャーなんかおらんくてもちっとも困らんわ。むしろ要らん。役に立ってへんポンコツがウロウロしとるんは邪魔やねん」
「聞いとるやろ? 自分、インハイ終わるまでに辞めぇ」
「これは最終通告や。黙って言うこと聞いて退部届だしといてな〜」
発言全てに私を見下す気持ちしかこもっていない。なにより、「黙って言うこと聞け」はトドメだった。
「舐めてんじゃねぇぞ、ボケナス」
思い出したらダメだ。憤死しそう。思わず口に出しそうになり、あくびの振りをして手で塞ぐ。
私は舐められるのが死ぬほど嫌いだ。売られた喧嘩は買うし、殴られたら殴り返す。この発言の直後、言うだけ言って踵を返した侑の背中にありったけの罵声と蹴りを入れてやりたかった。だが、北さんに迷惑がかかってしまう、その一心で堪えた。偉すぎる。
冷静になろう。時計を見れば終わりまでまだ15分ある。夢の住人は2/3になっていた。銀も旅立っている。授業を聞く気はないけれど、プリントは記入する。
よし、北さんがいかに素晴らしいかを考えよう。あの体験の日、歳の割に厳粛な雰囲気を纏っていると思ったがその通りだった。私への対応も非常に良い。人として尊敬できるところしかない。
素晴らしいところ1、儀式と称される一連の流れを毎日こなしている。あれを誰に言われるでもなく自主的に、1人でやっている、その精神が凄い。2、落ち着いている。空気につられて、とか感情のままに、みたいなのはあまり見ない。自分を確立している。3、正論パンチ。双子の乱闘をぴしゃりと収めてる。たまに私も喰らうが、甘んじて受け入れる。4、何事にも丁寧。…………
ぼーっと考えていれば、チャイムが鳴って現実に意識が戻った。考えれば考えるほど、あんな聖人がいることが信じられない。だが実在している。思わず崇拝してしまう。キリストを信じている人の気持ちってこんな感じなんだろうか。
侑へのイライラはとりあえず落ち着いた。
教科書を片し終わらないうちに、ランチバックを持った子がどかりと私の前の席に座る。
「錦花ちゃん起きてた? 私むっちゃ爆睡やってん。プリント真っ白やわ。錦花ちゃんは……埋まっとる! 起きてたんすごない!? 後で写させてな! とりあえずおべんと食べよ!」
この子は右斜め後ろの席の土屋さん。入学してすぐにグループ内で孤立した結果、1匹狼でいる私に目をつけて必要がある時は一緒に行動している。いわゆるビジネスフレンドである。私自身一人でいること自体は平気だが、グループ組む時に大変困るのでこの関係は気楽。
「んでな、その友達の彼氏って結構ドライ? クール? 系であんま優しいって感じやないって言うてん。でも、私が話しかけた時めっちゃ優しかってんよ。彼女おるんに優しいって勘違いしてまうやん?いろいろあかんよな」
インハイまでに辞めろという脅しに対してどうするかの悩みは、マシンガントークのBGMにかき消された。
現在は四限。おじいちゃん先生による睡眠導入授業(地学)によって、教室内の1/3は夢の世界へ旅立っている。保坂先生の呪文が流れる中、私のイライラは収まりそうもない。
最近、インターハイに向けて部全体にピリピリ感が漂っている。1年も2、3年の空気感につられているようで、角名がサボりずらいと小言を
問題は、そのせいで私に対する侑の風当たりが暴風雨級になってきたこと。目の前を通り過ぎれば、「ちょろちょろウザイわぁ」と毒を吐かれ、頼まれ事を少し後回しにしてたら「そんなこともできんのか」と嫌味を言われ、選手に声掛けをすれば「まーた媚び売っとる」と蔑まれる。物を渡せば舌打ちされ、向こうからは投げて渡される。その他色々、思い出したらキリがない。
バレる度に
散々な目にあっているが、私とてやられっぱなしではない。部活中は何があっても受け流しているが、それ以外ではきっちり舌打ち返し、小言返しをしている。そのせいで部活外では常に一触即発。侑の攻撃に私が反撃、睨み合い、からの私が離脱。逃げるんか、と言われたこともあるが、ガチの喧嘩を始めたら北さんに迷惑がかかるからと自制して撤退しているだけである。
そして今日の朝、奴はド地雷を踏んだ。
「やかまし豚がおるから調子上がらんわ。あんだけいじめたのに全然辞めへんし。それどころか毎回やり返してくる。初めはウザい思っとったけど、あれや、虚勢やろ? 舌打ちして睨み返して、それ以上はしてきぃひんもんな。精一杯の豚の抵抗ご苦労さん。やけど、それも終いや」
壁際で作業している私に向かって、大きめの独り言風に暴言を吐いてくる。いつもの小さい嫌味と違って、ハッキリとした形で悪意をぶつけてきた。
「マネージャーなんかおらんくてもちっとも困らんわ。むしろ要らん。役に立ってへんポンコツがウロウロしとるんは邪魔やねん」
「聞いとるやろ? 自分、インハイ終わるまでに辞めぇ」
「これは最終通告や。黙って言うこと聞いて退部届だしといてな〜」
発言全てに私を見下す気持ちしかこもっていない。なにより、「黙って言うこと聞け」はトドメだった。
「舐めてんじゃねぇぞ、ボケナス」
思い出したらダメだ。憤死しそう。思わず口に出しそうになり、あくびの振りをして手で塞ぐ。
私は舐められるのが死ぬほど嫌いだ。売られた喧嘩は買うし、殴られたら殴り返す。この発言の直後、言うだけ言って踵を返した侑の背中にありったけの罵声と蹴りを入れてやりたかった。だが、北さんに迷惑がかかってしまう、その一心で堪えた。偉すぎる。
冷静になろう。時計を見れば終わりまでまだ15分ある。夢の住人は2/3になっていた。銀も旅立っている。授業を聞く気はないけれど、プリントは記入する。
よし、北さんがいかに素晴らしいかを考えよう。あの体験の日、歳の割に厳粛な雰囲気を纏っていると思ったがその通りだった。私への対応も非常に良い。人として尊敬できるところしかない。
素晴らしいところ1、儀式と称される一連の流れを毎日こなしている。あれを誰に言われるでもなく自主的に、1人でやっている、その精神が凄い。2、落ち着いている。空気につられて、とか感情のままに、みたいなのはあまり見ない。自分を確立している。3、正論パンチ。双子の乱闘をぴしゃりと収めてる。たまに私も喰らうが、甘んじて受け入れる。4、何事にも丁寧。…………
ぼーっと考えていれば、チャイムが鳴って現実に意識が戻った。考えれば考えるほど、あんな聖人がいることが信じられない。だが実在している。思わず崇拝してしまう。キリストを信じている人の気持ちってこんな感じなんだろうか。
侑へのイライラはとりあえず落ち着いた。
教科書を片し終わらないうちに、ランチバックを持った子がどかりと私の前の席に座る。
「錦花ちゃん起きてた? 私むっちゃ爆睡やってん。プリント真っ白やわ。錦花ちゃんは……埋まっとる! 起きてたんすごない!? 後で写させてな! とりあえずおべんと食べよ!」
この子は右斜め後ろの席の土屋さん。入学してすぐにグループ内で孤立した結果、1匹狼でいる私に目をつけて必要がある時は一緒に行動している。いわゆるビジネスフレンドである。私自身一人でいること自体は平気だが、グループ組む時に大変困るのでこの関係は気楽。
「んでな、その友達の彼氏って結構ドライ? クール? 系であんま優しいって感じやないって言うてん。でも、私が話しかけた時めっちゃ優しかってんよ。彼女おるんに優しいって勘違いしてまうやん?いろいろあかんよな」
インハイまでに辞めろという脅しに対してどうするかの悩みは、マシンガントークのBGMにかき消された。