本編
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「転校生を紹介するぞー。風王、入ってこい」
今日から通う学校、PK学園。先生に呼ばれて+(2)組のドアをくぐる。+で2って読むらしい。チョークを持って名前を書く。
「風王春沙です。フランスの高校に通っていました。趣味はお菓子作りです。これからよろしくお願いします」
自己紹介は噛まずにちゃんと言えた。帰国子女だからか、みんな興味深そうな顔をして私を見ている。はずだよね、変な格好してるから見てるとかじゃないよね。特にバンダナを付けた紫色の髪の男の子の視線が凄い。そんなに珍しいのかな。
「じゃあ席はそこの空いてるところに座れ」
先生に言われた席に向かう途中にも視線を感じる。向こうにいた時もアジア人だからってジロジロ見られることはあったからそんなに気にならないけど、見すぎだと思う。
「それじゃあ、今日はここまで」
先生が居なくなったらみんな思い思いの時間を過ごす。この感じはどの国も同じなんだな。新しい教科書が前のと全然違うからに気になってパラパラとめくっていたら、私のことをじっと見てた男の子が近寄ってきた。
「やぁ、ミセス。帰国子女なんだ「ミセスは既婚女性に使うものだよ」あっ、そうっすか……」
私の机に片手をついて、髪をかきあげながらキラキラした顔で話しかけてきたのは、こっちをガン見していた男の子だった。あー、やっちゃった、うっかり遮っちゃった。
「……えっと、ごめんね、つい気になっちゃって。そうなの、つい2週間前までパリに居たんだ」
「へぇー、どのくらい住んでたんスか?」
バンダナ君(仮)のキラキラはどっかへ行って、普通の顔に戻ると私の前の人の椅子に後ろ向きに座った。
「パリは5年かな。お父さんの仕事で小学校の時に引っ越したんだ」
「じゃあフランス語ペラペラッスね! バイリンガルってやつ? 凄いッスね! そうそう、やっぱりフランス人は美人が多いッスか? 女友達とか見てみたいんだけど、写真ある?」
バンダナ君が急に前のめりになって迫ってきた。
自己紹介の時に私をガン見していた視線にそっくりで、思わず少しだけ後ろに椅子を引いた。
「う、うん。携帯に入ってるよ。ちょっと待ってね……」
携帯を取り出してアルバムを開く。画面を見せようと手を伸ばせば、その手を掴まれた。
「うわっ」
「うひょ〜! これが本場の金髪美人!! こっちの子露出ヤバッ。この子もスゲェ! 1、2、3、4、谷間が沢山……! あっ、これ春沙ちゃんッスよね? 大人しそうな顔して私服は結構派手なんスねぇ〜」
いきなり名前呼び。そして食い付き方。発言内容。これは……女好きなんだろうなぁ。どんどん写真を見ていく手は止めないし、私の手も離さない。なんなら分かっててやってるかも。いやらしいニヤケ顔がどんどん酷くなっていく。露骨だなぁ。うーん、お灸を据えるべきか。でも初日で問題起こすのも嫌だな。仕方ない、一旦、やむを得ないから、ちょっとだけ、実力行使で……。心の中で理由を並べて掴まれていない左手を握りしめた。
その時。
(やめろバカ)
頭に声が響く。不思議な感覚なのに、懐かしさを感じる。
「ぐへぇ」
バンダナ君が苦しそうな奇声をあげて手を離した。首の後ろを見れば誰かが襟を上に掴んでいる。その手を辿って顔を見上げれば……。
「……えっ!! くーちゃん!」
その特徴的な髪と真顔の感じで思い当たるのは1人しかいない。ずっと昔に離れてから、手紙でしかやり取りをしていない友達。アルバムの写真よりずっと大きくなったその人物はかつてのご近所さんの斉木楠雄に違いなかった。意外な再開で空いた口が塞がらなかった。
「ゲホッ、……あの、さ、斉木さん……知り合い、スか……? グゥ……づか、そろそろ、はなして、ヴッ」
くーちゃんは真っ青な顔になったバンダナ君を睨みつけながら襟首を掴みあげていたのを乱暴に離した。そのまま顔面を私の机に強打したバンダナ君は顔を抑えて悶絶している。
(大丈夫か? このバカに何をされた)
「えーと、写真見せてって言うから見せてあげてたんだけど、手を掴まれてビックリしちゃって……でも、くーちゃんが助けてくれたから、大丈夫。ありがとう」
危うく初日でトラブルを起こしちゃうところだったよ。笑いかければふいっと顔を逸らされた。そしたら、そのまま体ごと反対を向いてスタスタと去ろうとする。帰るの早くない?
「あれ? くーちゃん?」
(他クラスの僕がこの教室にいると目立つからな)
『あぁ、そっか、目立つの嫌いだもんね。ねぇねぇ、放課後一緒に帰っていい? 今日お母さんと一緒に挨拶に行こうと思ってたからちょうどいいかなって。お土産はお母さんに持ってきてもらうようにメールしておくから』
心の中で、会話するのように言葉を話せばくーちゃんの足が止まった。
(コーヒーゼリーはあるんだろうな)
『うん! 今回はお父さんが作ったやつだよ』
(1階の東階段の踊り場で待っていろ。場所は鳥束に案内してもらえ)
鳥束?
(そこで呻いてる変態だ)
くーちゃんは顔だけ振り返るとバンダナ君を見た。
鳥束くんって言うんだ。
鳥束くんはまだ痛いらしく、鼻を抑えていた。
「うぅ、……いった、酷いっスよ斉木さん……。オレまだ何もしてないのに」
涙目の鼻声で何を言っているのかよく分からない。
くーちゃんがまた鳥束くんを睨んだ。そしたら、「ひぃっ、……了解ッス」と一言呟いて顔が真っ青になって、そそくさと私から離れていった。それを見て今度こそくーちゃんは教室から出ていってしまった。
……くーちゃん喋ってないのに、鳥束くんは返事してる。それが頭の中で引っかかっていた。
今日から通う学校、PK学園。先生に呼ばれて+(2)組のドアをくぐる。+で2って読むらしい。チョークを持って名前を書く。
「風王春沙です。フランスの高校に通っていました。趣味はお菓子作りです。これからよろしくお願いします」
自己紹介は噛まずにちゃんと言えた。帰国子女だからか、みんな興味深そうな顔をして私を見ている。はずだよね、変な格好してるから見てるとかじゃないよね。特にバンダナを付けた紫色の髪の男の子の視線が凄い。そんなに珍しいのかな。
「じゃあ席はそこの空いてるところに座れ」
先生に言われた席に向かう途中にも視線を感じる。向こうにいた時もアジア人だからってジロジロ見られることはあったからそんなに気にならないけど、見すぎだと思う。
「それじゃあ、今日はここまで」
先生が居なくなったらみんな思い思いの時間を過ごす。この感じはどの国も同じなんだな。新しい教科書が前のと全然違うからに気になってパラパラとめくっていたら、私のことをじっと見てた男の子が近寄ってきた。
「やぁ、ミセス。帰国子女なんだ「ミセスは既婚女性に使うものだよ」あっ、そうっすか……」
私の机に片手をついて、髪をかきあげながらキラキラした顔で話しかけてきたのは、こっちをガン見していた男の子だった。あー、やっちゃった、うっかり遮っちゃった。
「……えっと、ごめんね、つい気になっちゃって。そうなの、つい2週間前までパリに居たんだ」
「へぇー、どのくらい住んでたんスか?」
バンダナ君(仮)のキラキラはどっかへ行って、普通の顔に戻ると私の前の人の椅子に後ろ向きに座った。
「パリは5年かな。お父さんの仕事で小学校の時に引っ越したんだ」
「じゃあフランス語ペラペラッスね! バイリンガルってやつ? 凄いッスね! そうそう、やっぱりフランス人は美人が多いッスか? 女友達とか見てみたいんだけど、写真ある?」
バンダナ君が急に前のめりになって迫ってきた。
自己紹介の時に私をガン見していた視線にそっくりで、思わず少しだけ後ろに椅子を引いた。
「う、うん。携帯に入ってるよ。ちょっと待ってね……」
携帯を取り出してアルバムを開く。画面を見せようと手を伸ばせば、その手を掴まれた。
「うわっ」
「うひょ〜! これが本場の金髪美人!! こっちの子露出ヤバッ。この子もスゲェ! 1、2、3、4、谷間が沢山……! あっ、これ春沙ちゃんッスよね? 大人しそうな顔して私服は結構派手なんスねぇ〜」
いきなり名前呼び。そして食い付き方。発言内容。これは……女好きなんだろうなぁ。どんどん写真を見ていく手は止めないし、私の手も離さない。なんなら分かっててやってるかも。いやらしいニヤケ顔がどんどん酷くなっていく。露骨だなぁ。うーん、お灸を据えるべきか。でも初日で問題起こすのも嫌だな。仕方ない、一旦、やむを得ないから、ちょっとだけ、実力行使で……。心の中で理由を並べて掴まれていない左手を握りしめた。
その時。
(やめろバカ)
頭に声が響く。不思議な感覚なのに、懐かしさを感じる。
「ぐへぇ」
バンダナ君が苦しそうな奇声をあげて手を離した。首の後ろを見れば誰かが襟を上に掴んでいる。その手を辿って顔を見上げれば……。
「……えっ!! くーちゃん!」
その特徴的な髪と真顔の感じで思い当たるのは1人しかいない。ずっと昔に離れてから、手紙でしかやり取りをしていない友達。アルバムの写真よりずっと大きくなったその人物はかつてのご近所さんの斉木楠雄に違いなかった。意外な再開で空いた口が塞がらなかった。
「ゲホッ、……あの、さ、斉木さん……知り合い、スか……? グゥ……づか、そろそろ、はなして、ヴッ」
くーちゃんは真っ青な顔になったバンダナ君を睨みつけながら襟首を掴みあげていたのを乱暴に離した。そのまま顔面を私の机に強打したバンダナ君は顔を抑えて悶絶している。
(大丈夫か? このバカに何をされた)
「えーと、写真見せてって言うから見せてあげてたんだけど、手を掴まれてビックリしちゃって……でも、くーちゃんが助けてくれたから、大丈夫。ありがとう」
危うく初日でトラブルを起こしちゃうところだったよ。笑いかければふいっと顔を逸らされた。そしたら、そのまま体ごと反対を向いてスタスタと去ろうとする。帰るの早くない?
「あれ? くーちゃん?」
(他クラスの僕がこの教室にいると目立つからな)
『あぁ、そっか、目立つの嫌いだもんね。ねぇねぇ、放課後一緒に帰っていい? 今日お母さんと一緒に挨拶に行こうと思ってたからちょうどいいかなって。お土産はお母さんに持ってきてもらうようにメールしておくから』
心の中で、会話するのように言葉を話せばくーちゃんの足が止まった。
(コーヒーゼリーはあるんだろうな)
『うん! 今回はお父さんが作ったやつだよ』
(1階の東階段の踊り場で待っていろ。場所は鳥束に案内してもらえ)
鳥束?
(そこで呻いてる変態だ)
くーちゃんは顔だけ振り返るとバンダナ君を見た。
鳥束くんって言うんだ。
鳥束くんはまだ痛いらしく、鼻を抑えていた。
「うぅ、……いった、酷いっスよ斉木さん……。オレまだ何もしてないのに」
涙目の鼻声で何を言っているのかよく分からない。
くーちゃんがまた鳥束くんを睨んだ。そしたら、「ひぃっ、……了解ッス」と一言呟いて顔が真っ青になって、そそくさと私から離れていった。それを見て今度こそくーちゃんは教室から出ていってしまった。
……くーちゃん喋ってないのに、鳥束くんは返事してる。それが頭の中で引っかかっていた。