過去編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
フレネがスペインの家に来てから3か月が経った。
ロマーノはフレネと毎日喧嘩をしてはちぎぎと鳴いて負け越している……ということはなくいつも通りのぐーたら生活を送っていた。朝はスペインを頭突きで起こして飯を催促するところから始まり、朝食を平らげると部屋の掃除に向かう。ある程度掃除 して掃除用具をほったらかしたら、日々の腹いせにスペインの邪魔をしに行く。構いすぎて上司に怒られたスペインがロマーノを部屋からつまみ出すころには、昼食の時間。好きなだけ食べたら、午後は畑の様子を見に行ったり屋敷をうろついてイタズラをしたりしてシエスタの時間まで適当に過ごす。シエスタでたっぷり寝こけて、起きたらおやつを堪能する。その後は気が向いたら庭掃除をしたり、向かなかったらまたスペインの邪魔をしにいったり。夕飯もお腹がいっぱいになったら明日の支度をして布団で眠る。おおよそこのルーティンでの生活が続いていた。
ロマーノは初め、フレネに突っかかっていた。部屋を隣にされたのだが、フレネの方が起きるのが早いらしく部屋の前で鉢合わせることは殆どなかった。顔を合わせるのは食事の時と掃除に向かうとき、屋敷内ですれ違う時くらいだったが、それこそ行動すべてに文句を言っていた。
「お前本当に1人で掃除なんかできるのかよ。この屋敷すげぇ広いんだぞ」
「はぁ? そんなもん見りゃわかる。誰が一日で掃除するんだよ。毎日順番に部屋を回ってちょっとずつ掃除していけばいいだろ。庭も廊下も同じだ」
「そんなにトマト見つめて、好き嫌いか? お子ちゃまだな、ぷぷっ」
「あ? 違ぇよ。オレんちに無ぇ食い物だから、慣れねぇだけだ」
「おい、さっきからフラフラフラフラ、何やってるんだよ」
「デッキブラシが折れたんだよ。だから、新しいのを探してんだ」
「へっ。よく働くやつだな。下働きが似合ってるぞちくしょう」
「下働きも何も、仕事なんだからやるだろ。……おっ、ちょうどいいや。それ、使わないんなら借りるぜ」
「っおい、まだ途中だ! 勝手に持ってくなよこのやろっー!」
「ピザ食って座り込んでんだから別にいいだろ。それに……よく見りゃ全然やってねぇみたいだからな。じゃあ借りてくぜ。後で返してやるからよ」
「ちぎー!!! なんなんだあいつ!!! 」
嫌味を言っても大した手応えもなく躱される。構ってやってる気だったロマーノは真っ赤にして怒っていても、フレネは歯牙にもかけない様だった。
ある日、日課のスペインの邪魔をしている最中のことだった。
「そういえば、ロマーノ掃除上手くなったん? 最近屋敷が全然荒れとらんし、本棚も倒さへんし、知らん間に庭めっちゃ綺麗になっとるし。フレネに教えてもらったん? なぁ」
邪魔しに来たロマーノの頬をもちもちと触りながら、ロマーノの目論見通りに仕事を放棄したスペインは話しかけた。
「ちぎっ、触るな! なんで俺があいつに教わらなきゃならないんだよこのやろー! 」
「ええ!? ロマーノが掃除教わってまともにできるようになったからやないの?」
「俺はいつも通りやってるだけだぞちくしょう」
「いつも通りって……。ロマーノ、ほんまにちゃんと掃除やっとるん? 」
「しつこい! ちゃんとやってるぞ!」
「あぁ、うん、てことは散らしとるな……。やとしたら……片付けとる誰かがおるってことやろ? 今までそんなこと無かったんやし、そうやなぁ、ちょうどフレネが来てから家がごっつ綺麗になっとる気ぃするわ」
「なんだよ! 俺は仕事してないっていうのかちくしょう!」
怒ったロマーノがスペインに頭突きを繰り出した。
「ぐふっ、は、腹はやめたって……」
みぞおちに一撃を食らったスペインは後ろに倒れ込んだ。ロマーノはその上に乗っかってポカポカと殴っている。
「ロマーノ、そうやなくて、2人に任せたんやから、2人で仲良くやってほしいだけなんよ。フレネにだけ仕事を押し付けんのはよくないやろ? ロマーノは自分だけ楽しようなんてそんな悪い子や無いちゃうもんな? 」
「そっ、それは……」
正直、楽できるならそれでいいロマーノは言葉に詰まった。
「1回フレネんとこ行って、ちゃんと話してき。俺もこれ終わらせんとまた怒られてまうから、仕事戻るで。ほなまたな」
スペインはロマーノを自分の腹の上から退かすとロマーノの頭を撫でて本当に仕事に戻ってしまった。スペインに声をかける気が無くなったロマーノは大人しく部屋を出てフレネを探すか迷った。フレネは生意気な奴だ。こっちがせっかく気を使って話しかけてやってるのに冷たい奴だ。確かに初めて会った時に、少し、ほんの少しだけ悪くないかもしれないと思ったけど、やっぱり嫌いな奴だ。そうだよ、仕事はしたくない。自分の分も勝手にやってくれるんだったらそれでいい。本当はちょっとだけある罪悪感を消すかのように、ロマーノは胸の中で自分に言い聞かせた。ロマーノはフレネを本気で探す気にもなれずに、あてもなくただ続いている屋敷の廊下を歩いていた。邪魔しに来て早々にスペインに追い出されたせいで、昼食の時間はまだ先だった。なんとなしに曲がり角を曲がったら、スペインの所に行く前に自分が掃除 した部屋に辿り着いた。そういえば、掃除用具をほっぽらかしにしたままだった。いや、いつも片付けていたかどうか覚えていない。たまにはちゃんとやるか、そう思ったロマーノが小さく開いている扉に近付けばそこにはフレネが居た。
「っっ! 」
ロマーノは驚いて出そうになった声を呑み込んだ。数秒前まで話してこいと言われて迷っていた本人がいるのに、見つかりたくなかった。ロマーノは息を潜めて部屋を見回した。出ていく前にめくれていたカーペットが直されている。コケた拍子にぶつかって位置がズレたテーブルも元に戻っている。落とした絵も壁にかけられていた。それ以外にもいろいろ……。ロマーノがめちゃめちゃにした部屋は元の整頓された空間に戻っていた。それをやったであろうフレネ本人はバケツで雑巾を洗っている。ロマーノの視線に気づきもしないで下を向いている。ロマーノは無性に腹がたった。
――ちくしょう! 全部お前1人でやりやがって! 俺は役に立たないって? 1人でできるってデカい口叩いてたもんな! お前、俺がさんざん話しかけてやってたのに! ずっと俺を見下してたもんな! このやろう、このやろう!
声をかけることなく、ロマーノはその場から離れた。ロマーノ は頼りにならないと、そう突きつけられている気分になった。
――ふんっ! お前が全部1人でやればいいんだ! 俺は何もしねぇからなちくしょー!
怒り狂ったロマーノは大股で歩きながらイライラを発散すべくスペインの部屋を荒らしに向かった。
その日からずっとロマーノのぐーたら生活が続いていた。
ロマーノはフレネと毎日喧嘩をしてはちぎぎと鳴いて負け越している……ということはなくいつも通りのぐーたら生活を送っていた。朝はスペインを頭突きで起こして飯を催促するところから始まり、朝食を平らげると部屋の掃除に向かう。ある程度
ロマーノは初め、フレネに突っかかっていた。部屋を隣にされたのだが、フレネの方が起きるのが早いらしく部屋の前で鉢合わせることは殆どなかった。顔を合わせるのは食事の時と掃除に向かうとき、屋敷内ですれ違う時くらいだったが、それこそ行動すべてに文句を言っていた。
「お前本当に1人で掃除なんかできるのかよ。この屋敷すげぇ広いんだぞ」
「はぁ? そんなもん見りゃわかる。誰が一日で掃除するんだよ。毎日順番に部屋を回ってちょっとずつ掃除していけばいいだろ。庭も廊下も同じだ」
「そんなにトマト見つめて、好き嫌いか? お子ちゃまだな、ぷぷっ」
「あ? 違ぇよ。オレんちに無ぇ食い物だから、慣れねぇだけだ」
「おい、さっきからフラフラフラフラ、何やってるんだよ」
「デッキブラシが折れたんだよ。だから、新しいのを探してんだ」
「へっ。よく働くやつだな。下働きが似合ってるぞちくしょう」
「下働きも何も、仕事なんだからやるだろ。……おっ、ちょうどいいや。それ、使わないんなら借りるぜ」
「っおい、まだ途中だ! 勝手に持ってくなよこのやろっー!」
「ピザ食って座り込んでんだから別にいいだろ。それに……よく見りゃ全然やってねぇみたいだからな。じゃあ借りてくぜ。後で返してやるからよ」
「ちぎー!!! なんなんだあいつ!!! 」
嫌味を言っても大した手応えもなく躱される。構ってやってる気だったロマーノは真っ赤にして怒っていても、フレネは歯牙にもかけない様だった。
ある日、日課のスペインの邪魔をしている最中のことだった。
「そういえば、ロマーノ掃除上手くなったん? 最近屋敷が全然荒れとらんし、本棚も倒さへんし、知らん間に庭めっちゃ綺麗になっとるし。フレネに教えてもらったん? なぁ」
邪魔しに来たロマーノの頬をもちもちと触りながら、ロマーノの目論見通りに仕事を放棄したスペインは話しかけた。
「ちぎっ、触るな! なんで俺があいつに教わらなきゃならないんだよこのやろー! 」
「ええ!? ロマーノが掃除教わってまともにできるようになったからやないの?」
「俺はいつも通りやってるだけだぞちくしょう」
「いつも通りって……。ロマーノ、ほんまにちゃんと掃除やっとるん? 」
「しつこい! ちゃんとやってるぞ!」
「あぁ、うん、てことは散らしとるな……。やとしたら……片付けとる誰かがおるってことやろ? 今までそんなこと無かったんやし、そうやなぁ、ちょうどフレネが来てから家がごっつ綺麗になっとる気ぃするわ」
「なんだよ! 俺は仕事してないっていうのかちくしょう!」
怒ったロマーノがスペインに頭突きを繰り出した。
「ぐふっ、は、腹はやめたって……」
みぞおちに一撃を食らったスペインは後ろに倒れ込んだ。ロマーノはその上に乗っかってポカポカと殴っている。
「ロマーノ、そうやなくて、2人に任せたんやから、2人で仲良くやってほしいだけなんよ。フレネにだけ仕事を押し付けんのはよくないやろ? ロマーノは自分だけ楽しようなんてそんな悪い子や無いちゃうもんな? 」
「そっ、それは……」
正直、楽できるならそれでいいロマーノは言葉に詰まった。
「1回フレネんとこ行って、ちゃんと話してき。俺もこれ終わらせんとまた怒られてまうから、仕事戻るで。ほなまたな」
スペインはロマーノを自分の腹の上から退かすとロマーノの頭を撫でて本当に仕事に戻ってしまった。スペインに声をかける気が無くなったロマーノは大人しく部屋を出てフレネを探すか迷った。フレネは生意気な奴だ。こっちがせっかく気を使って話しかけてやってるのに冷たい奴だ。確かに初めて会った時に、少し、ほんの少しだけ悪くないかもしれないと思ったけど、やっぱり嫌いな奴だ。そうだよ、仕事はしたくない。自分の分も勝手にやってくれるんだったらそれでいい。本当はちょっとだけある罪悪感を消すかのように、ロマーノは胸の中で自分に言い聞かせた。ロマーノはフレネを本気で探す気にもなれずに、あてもなくただ続いている屋敷の廊下を歩いていた。邪魔しに来て早々にスペインに追い出されたせいで、昼食の時間はまだ先だった。なんとなしに曲がり角を曲がったら、スペインの所に行く前に自分が
「っっ! 」
ロマーノは驚いて出そうになった声を呑み込んだ。数秒前まで話してこいと言われて迷っていた本人がいるのに、見つかりたくなかった。ロマーノは息を潜めて部屋を見回した。出ていく前にめくれていたカーペットが直されている。コケた拍子にぶつかって位置がズレたテーブルも元に戻っている。落とした絵も壁にかけられていた。それ以外にもいろいろ……。ロマーノがめちゃめちゃにした部屋は元の整頓された空間に戻っていた。それをやったであろうフレネ本人はバケツで雑巾を洗っている。ロマーノの視線に気づきもしないで下を向いている。ロマーノは無性に腹がたった。
――ちくしょう! 全部お前1人でやりやがって! 俺は役に立たないって? 1人でできるってデカい口叩いてたもんな! お前、俺がさんざん話しかけてやってたのに! ずっと俺を見下してたもんな! このやろう、このやろう!
声をかけることなく、ロマーノはその場から離れた。
――ふんっ! お前が全部1人でやればいいんだ! 俺は何もしねぇからなちくしょー!
怒り狂ったロマーノは大股で歩きながらイライラを発散すべくスペインの部屋を荒らしに向かった。
その日からずっとロマーノのぐーたら生活が続いていた。
2/2ページ