だからお腹すいているんだーと言いかけてハッとする。
やばい、映画館というイベントに無理やり誘ってるくせに、我慢我慢!と頭をふると
そんな美緒の様子に小さく気づかない程度の微笑を雲雀は浮かべると
珍しく少女を呼び止めて呟いた。

「じゃあ……お昼にする?」

「えっ、でも……」

あっ、気を遣わせたかな?と慌てて否定しようとするとぐぅーと腹の虫がなったので赤面して俯いた。
そんな様子に珍しくツボに入ったのかクスクス彼は笑う。

「もっもう笑わないでくださいよ～!?――実は私、今日慌てていて……。
朝ご飯もきちんと食べていないんですよ～」

最後の方は尻つぼみとなってしまった言い訳だが、きちんと聞こえていたようで
雲雀は実は僕も食べていないからと気を遣わせたのか、本当にお腹がすいているのか分からないが
とりあえず映画館に行く前にお昼を取ることにした。

お洒落で少しオカルトテイストな（恐らく魔女の家をモチーフにした?）店内に入り
案内されるまま席に通されると、興奮した声を必死に落としながら微笑む。

「じっ、実はここ……ネットで特集されていて……。ず～っと行きたいと思っていたんですよ!!」
「そう……良かったね」

向かいあわせで座る雲雀さんに楽しそうに少女は微笑む。
洋風な作り、古びた本や謎の瓶のようなものが並ぶ店内に感嘆のため息をついた。