先生と同じだから

真白でシミ一つ無い完璧な白衣に身を包んでいかにも全うなお医者様という出で立ちだが
よく見ると寝不足だろうか隈と、年の割には老けたような表情は何か背負う業のようなものを感じさせる。

「――辛いですか?」

「えっ」

あんまり黙ってじろじろ見ていたからか、変に勘違いさせてしまったらしく
彼は少しいつもの堅い表情を崩してため息をついた。

「貴女は……[#dn=1#]さんは大事な実となるんです」

実という言葉にビクッと体を硬直させた。
小さく唇を噛みしめる。

「分かってます」

少し拗ねたような声色が混じったことに自分でも驚きつつ
彼が全て分かっていたことに焦りと苛立ちに似たようなものを禁じ得なかった。

いつかこの身は神に捧げられ、私はそこで人生の幕を閉じる。
幼い頃から繰り返し言われてきたし、生まれつき体も弱い私は外の世界に出たこともない。
家族以外の周囲との繋がりも濃いとも言えないこともあり、あんまり俗世に興味も未練も感じない。
むしろ案外アッサリとこんな幕引きもありかもなんて冷めた思考だった。

「ねぇ……宮田先生」

「ん?」

「宮田先生もね、もっとご自愛しなきゃダメだよ?」

ごほっと咳こみながらはにかむと、面食らったような表情で彼はこちらを見ていた。
その姿がやけに子供っぽく、無防備に見えて思わず笑みがこぼれた。
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