先生と同じだから

「今日は……どうされましたか?」

淡々とした、どこか機械的な男の声が問いかけた。
ぎぃっと年季の入った回転椅子を回して、向かいあわせの少女に無表情のまま顔を近づける。
その整った顔立ちに思わず顔に熱が集まった。

「あ……えっと、風邪を引いて長引いてしまい……」

「まぁ……そんなところでしょうね」

聞いといてなんなんだ、と風邪でぼうっとする頭で憤慨してみるも
近くに居たナースに手際よく(恐らく風邪薬と思われる)薬の手配を頼む姿すら
格好がつきすぎて悔しい気分になってきた。

ぼうっとしながら眺めていると、急に大きな手のひらが頬を包んだので面食らった。

「貴女がここにくるのはたいてい酷くなった時だけです。――また無理したんでしょう?」

じとっとのぞき込む表情の見えない瞳のまっすぐさに思わずそらしながら言葉を濁した。
そんな様子を男は観察するかのように、相変わらず感情の読めない瞳でしばらくのぞきこみ
やがて小さく悪態をついて、スッと離れた。

「貴女は体があまり丈夫ではないんだ。――ちょっとは自分の体を労りなさい」

今度は男の方が気だるげに視線を外したので、少女は改めてまじまじと見つめた。
宮田先生は羽生蛇村唯一の医者だ。村人からは先生、先生と慕われているものの
私はどこか彼の胡散臭さというか、少し生気のないロボットのような所が苦手だった。
……と同時にそんなミステリアスな部分に惹かれているのも事実だった。
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