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朽ちてゆく約束と君(幽白)
「大きくなったね」
あれはちょうど私が中学生の夏。
町中でふと聞こえた優しい声に立ち止まると
声の方を振り向けば、儚げな今にも消えてしまいそうな青年が立っていた。
ポマードで後ろになでつけたオールバックの黒髪に
ラフな服装で、どこにでもいそうな若い男性。
一見普通そうだけれど、彼だけこの人混みから浮いているように見えた。
いい年した大人をこういう風に例えるのは失礼かも知れないが
日の光を真上から浴びた彼は、どこか危うげで
このまま目を離したらいつの間にかスッと消えてしまいそうな空気をまとっていた。
私が言葉に詰まっていると、彼はぶれないまっすぐな目線で
さらに眉を下げた後に、まるで困らせてしまったことを詫びるように薄く笑った。
もう一度男は、今度は誰に言うでもなく本当に大きくなったなと呟いた。
沈黙の間、やけにセミの声がうるさく感じた。
猛暑のじりじりとした遠赤外線の熱にやられ
アスファルトの照り返しで出来た蜃気楼が男の向こうに見える。
気まずさから泳いでいた視線を男に戻し、息を飲んだ。
どうしてそんな目をしているのだろうか。
まるで幼い子供に対するような慈しみ、愛おしさが男の瞳から滲んでいた。
その視線に、私は余計に誰ですかと聞きづらくなってしまう。
「約束を守れなくてごめん。でも、もうすぐ終わるから」
全てが終わったときは、君を迎えに行くよ。
男はそう告げると、少し悲しそうな笑みを浮かべた後
踵 を返して人混みに紛れていった。
男の言葉を飲み込んだ後、どういう意味か聞こうと我に返り
慌てて追いかけるも、もう男の姿はどこにもなかった。
その約束を思い出すのは、もう少し先。
「大きくなったね」
あれはちょうど私が中学生の夏。
町中でふと聞こえた優しい声に立ち止まると
声の方を振り向けば、儚げな今にも消えてしまいそうな青年が立っていた。
ポマードで後ろになでつけたオールバックの黒髪に
ラフな服装で、どこにでもいそうな若い男性。
一見普通そうだけれど、彼だけこの人混みから浮いているように見えた。
いい年した大人をこういう風に例えるのは失礼かも知れないが
日の光を真上から浴びた彼は、どこか危うげで
このまま目を離したらいつの間にかスッと消えてしまいそうな空気をまとっていた。
私が言葉に詰まっていると、彼はぶれないまっすぐな目線で
さらに眉を下げた後に、まるで困らせてしまったことを詫びるように薄く笑った。
もう一度男は、今度は誰に言うでもなく本当に大きくなったなと呟いた。
沈黙の間、やけにセミの声がうるさく感じた。
猛暑のじりじりとした遠赤外線の熱にやられ
アスファルトの照り返しで出来た蜃気楼が男の向こうに見える。
気まずさから泳いでいた視線を男に戻し、息を飲んだ。
どうしてそんな目をしているのだろうか。
まるで幼い子供に対するような慈しみ、愛おしさが男の瞳から滲んでいた。
その視線に、私は余計に誰ですかと聞きづらくなってしまう。
「約束を守れなくてごめん。でも、もうすぐ終わるから」
全てが終わったときは、君を迎えに行くよ。
男はそう告げると、少し悲しそうな笑みを浮かべた後
男の言葉を飲み込んだ後、どういう意味か聞こうと我に返り
慌てて追いかけるも、もう男の姿はどこにもなかった。
その約束を思い出すのは、もう少し先。
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