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君の羽を射落したくて仕方がなかったんだ
「なぁ…洗脳とけてるんだろ?」
不意に聞こえた声に一瞬ビクッとしたが
流石にバレては隠し通せまいと観念して
だったらどうするのかと問えば
彼はあーと声を出したまま項垂れた。
まるでこの状況を嘆くようでもあり
表情は見えないが自嘲気味な笑みを浮かべて
どうにも出来ないと諦めているようでもある。
「潔いな…ウソの一つでもついてたら
案外俺をだませたかも知れないぞ?」
「いや…樹にいはきっと騙せないよ」
静かに呟いた。
分かってる。だってこの人は……。
「だます側だと思うから」
思ってもなかった言葉なのだろう。
彼は一瞬目を見開いたかと思えば
クツクツと綺麗な顔をゆがめて笑い出した。
「ハハッ…心外だな」
「だって…私や忍にいを騙してる」
ムっとした声で呟いた。
彼はきっと自分すら騙してるんじゃないだろうか。
じゃなければ、こんな自暴自棄みたいな忍を援助したりしない。
だってメリットがない。
だけど、どこかでこれが最善であるかのように肯定するだけ肯定し
時折、それに手を貸す。
枯れそうな花に水をあげるだけあげて
次の瞬間には何もしていないふりをし
どんどん太陽を遠ざけて、日陰に導こうとしている。
それは騙してることではないのか。
スッと彼が近づく、男性にしては綺麗な指先が
少女の顎をグッと持ち上げ
のぞき込むように視線を落とした。
「俺は案外正直者だと思うけどな」
その言葉に少女は小さく息をはき
端正な顔が、ましてやかなり年上とは言え
異性が顔を近づけてきたのでやや頬を赤らめて
固定されて動かない顔はともかく、視線だけあらがうように外した。
「正直者…それが本当だとしたら性格悪いよ」
「ああ。別に正直者がイイヤツとは限らないだろ?」
耳元で低い声が色っぽく囁く。
「欲望に正直なだけさ」
ゾクッとして、少女は思わず身震いする。
さらに真っ赤になった頬に気づいたのか
樹は可愛いなと幼さの残る丸い頬を冷たい指先で撫でて
からかって悪かったと言わんばかりに肩をすくめてさっと身を引いた。
少女は相変わらず視線をかわせないまま呟く。
「欲望に正直なら……これが樹にいが望んだ結末だってこと?」
「…というと?」
とぼけるような声色に怒りで声を荒げる。
「っ…この惨状だよ!!
忍にいが暴走したのになぜ止めないの?
しかも、まるでガソリンに火を注ぐように
とめるどころか、助長させてるじゃない!!」
何も言わない彼にさらに苛立ちが混じる。
「わかるよ…人間は善だけじゃない。
この世界は悪意に満ちてる!!
でもさ…それを否定して人間を抹殺して
いったい何が残る?
あまりにも極端じゃん!!
忍にいが全ての元凶で悪いのは分かってる。
でも、それならどうして私を誘拐して
洗脳までしたの?――なんですぐに殺さなかったの?」
涙がこぼれそうになるのをグッとこらえる。
笑っていた彼は少し申し訳なさそうな
どこか遠くをみるような儚い表情で近づき
ゆっくりと頭を撫でた後に抱きしめた。
「はっ…はなして」
胸板を押し返すようにたたくも、男の力には
ましてや妖怪と人間ならなおのこと
霊力をこめればどかせるのかも知れないけど
それだけはなぜかしたくなかった。
「あの頃は…よかったな」
ぽつりと呟く言葉に、胸板をたたいていた手がとまる。
「そうだね。――でも、もう戻れないよ。
ある意味幼い私よりもずっと純粋で無垢だった忍にいは…もうどこにもいないから」
「いや…まだいるさ。
忍は君といて初めて完璧な天使になれるんだ。
君という明確に守るべきものがいて
自分が悪を裁く、善であると教えてくれる存在。
だからこそ…君が日本に…この街に戻ってきてるのが分かったからこそ…
君たちの天使の羽を射落としたくて仕方が無かった」
その笑顔はどこまでも残酷で
だけど、どこまでも綺麗で
「俺と忍のワガママだ。
――いっしょに落ちてくれないか?」
囁く言葉は毒のように身体をしびれさせた。
「なぁ…洗脳とけてるんだろ?」
不意に聞こえた声に一瞬ビクッとしたが
流石にバレては隠し通せまいと観念して
だったらどうするのかと問えば
彼はあーと声を出したまま項垂れた。
まるでこの状況を嘆くようでもあり
表情は見えないが自嘲気味な笑みを浮かべて
どうにも出来ないと諦めているようでもある。
「潔いな…ウソの一つでもついてたら
案外俺をだませたかも知れないぞ?」
「いや…樹にいはきっと騙せないよ」
静かに呟いた。
分かってる。だってこの人は……。
「だます側だと思うから」
思ってもなかった言葉なのだろう。
彼は一瞬目を見開いたかと思えば
クツクツと綺麗な顔をゆがめて笑い出した。
「ハハッ…心外だな」
「だって…私や忍にいを騙してる」
ムっとした声で呟いた。
彼はきっと自分すら騙してるんじゃないだろうか。
じゃなければ、こんな自暴自棄みたいな忍を援助したりしない。
だってメリットがない。
だけど、どこかでこれが最善であるかのように肯定するだけ肯定し
時折、それに手を貸す。
枯れそうな花に水をあげるだけあげて
次の瞬間には何もしていないふりをし
どんどん太陽を遠ざけて、日陰に導こうとしている。
それは騙してることではないのか。
スッと彼が近づく、男性にしては綺麗な指先が
少女の顎をグッと持ち上げ
のぞき込むように視線を落とした。
「俺は案外正直者だと思うけどな」
その言葉に少女は小さく息をはき
端正な顔が、ましてやかなり年上とは言え
異性が顔を近づけてきたのでやや頬を赤らめて
固定されて動かない顔はともかく、視線だけあらがうように外した。
「正直者…それが本当だとしたら性格悪いよ」
「ああ。別に正直者がイイヤツとは限らないだろ?」
耳元で低い声が色っぽく囁く。
「欲望に正直なだけさ」
ゾクッとして、少女は思わず身震いする。
さらに真っ赤になった頬に気づいたのか
樹は可愛いなと幼さの残る丸い頬を冷たい指先で撫でて
からかって悪かったと言わんばかりに肩をすくめてさっと身を引いた。
少女は相変わらず視線をかわせないまま呟く。
「欲望に正直なら……これが樹にいが望んだ結末だってこと?」
「…というと?」
とぼけるような声色に怒りで声を荒げる。
「っ…この惨状だよ!!
忍にいが暴走したのになぜ止めないの?
しかも、まるでガソリンに火を注ぐように
とめるどころか、助長させてるじゃない!!」
何も言わない彼にさらに苛立ちが混じる。
「わかるよ…人間は善だけじゃない。
この世界は悪意に満ちてる!!
でもさ…それを否定して人間を抹殺して
いったい何が残る?
あまりにも極端じゃん!!
忍にいが全ての元凶で悪いのは分かってる。
でも、それならどうして私を誘拐して
洗脳までしたの?――なんですぐに殺さなかったの?」
涙がこぼれそうになるのをグッとこらえる。
笑っていた彼は少し申し訳なさそうな
どこか遠くをみるような儚い表情で近づき
ゆっくりと頭を撫でた後に抱きしめた。
「はっ…はなして」
胸板を押し返すようにたたくも、男の力には
ましてや妖怪と人間ならなおのこと
霊力をこめればどかせるのかも知れないけど
それだけはなぜかしたくなかった。
「あの頃は…よかったな」
ぽつりと呟く言葉に、胸板をたたいていた手がとまる。
「そうだね。――でも、もう戻れないよ。
ある意味幼い私よりもずっと純粋で無垢だった忍にいは…もうどこにもいないから」
「いや…まだいるさ。
忍は君といて初めて完璧な天使になれるんだ。
君という明確に守るべきものがいて
自分が悪を裁く、善であると教えてくれる存在。
だからこそ…君が日本に…この街に戻ってきてるのが分かったからこそ…
君たちの天使の羽を射落としたくて仕方が無かった」
その笑顔はどこまでも残酷で
だけど、どこまでも綺麗で
「俺と忍のワガママだ。
――いっしょに落ちてくれないか?」
囁く言葉は毒のように身体をしびれさせた。