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花嵐(幽白)
「Ring-a-ring o' roses,
A pocket full of posies~♪」
ふわふわと心地が良い。まだ幼い少女は辺り一面の花々に大きな瞳を輝かせた。
小学校で習いたての曲を口ずさみながら、バラの冠をつくり
「えっと、えっと…あっ!――We all fall down!」
思いっきり絨毯のような花々に背中からダイブする。
柔らかくて温かい心地。背中から思いっきりダイブしたので
花びらが自分の顔の上を舞うのにクスクス笑う少女。ふと、そんな少女に大きな影が差した。
「探したぞ」
「え、だあれ…おにいちゃん」
美しい銀髪に、ぴょこんと耳と尻尾が生えている青年。
その耳と尻尾に、どらえもん?と小声で紅葉は尋ねたが
男は分からないと言った顔をしていたので、これは夢なんだと幼いながらに分かった。
「きれいなおにいちゃんだね」
「そうか……お前は、ずいぶん可愛くなってしまったな」
幼い少女にむける可愛いとは少し違う、誰かと比較して悲しむかのような声色に小さく首をかしげた。
「かわいいのはダメなの?」
「いや、そういうつもりじゃない」
はじめて彼は仏頂面から少し困ったように笑みを浮かべたので
ニコッと顔いっぱいに少女は笑みをうかべた。
「ねぇ、おにいちゃんはどこからきたの?
どうして、動物みたいなお耳としっぽがあるの?」
子供らしく次々浮かんでくる疑問を青年にぶつけると
青年はそれを怒ることなく、静かに一つ一つ説き伏せた。
そして最後にお前を連れて行くとだけ告げて。
「え、どこに?」
急に少女の顔が曇った。ここは天国みたいなところだ。
でも青年は少し悲しそうな顔をしている。
これから連れて行かれるのはあまりいい所ではないのかも知れないと
幼いながらに本能で理解し、警戒しはじめた。
「あ、あの…でもね、ここはいいところだよ?
紅葉はずっとここにいたいの…」
学校に行ってもあまり言葉が通じないのでからかわれるし
家に帰っても幼い弟が両親の愛を一身にうけている。
小さくもう一度ここから離れたくないとだけ少女は呟いた。
それを否定するわけでもなく、青年は少女の横に腰を下ろしてそうだなとうなずいた。
「ここは俺のようなやつには毒だが、お前にとっては極楽なのかも知れないな」
「ごく…らく?」
「しかし、俺にはまだお前が必要なんだ」
「ひつようって…なにもできないよ?」
自分が子供だと少女自身も分かっている。
大人と子供の年齢差で何が手伝えるのだろうか。
それに、一番疑問に思っていたのは。
「あのね…おにいちゃんは会ったばかりだよ?」
どうして紅葉のことを連れて行こうとするのと尋ねると
少し遠くに視線をうつして、静かにお前のせいだと呟いた。
「え?」
「これは儚い夢に過ぎない。いいか?今お前が見ているのは
お前にとって都合がいい夢なんだ。――本当の俺はもう
お前を忘れて魔界でまだ盗賊をしているはずだ」
「はず?」
でも、おにいちゃんはここにいるのに?
どうして他人事のように言うんだろう。
それに、紅葉のせいってどういう意味?
「お前も難儀なやつだ。人間に転生したと言うのに
俺のことを忘れることが出来ず、自身にこんな呪いを残すとは」
綺麗な顔が少女に近づく。
「そんなに俺を好いていたのか?」
ドサッと花畑に優しく押し倒されながら
少女は目を丸くして青年を見上げた。
「すい?」
「紅葉…俺のことは好きか?」
「うーん。おにいちゃんは…」
少女が好きの順番を家族と友達と並べ替えながら考えていると
後ろから凜としたアルトボイスがいなすように響いた。
「そんな可愛いものではありません」
男は弾かれるように起き上がる。視線の先には男と同じように
獣の耳と尻尾をはやした人が立っていた。
少女と視線があうと、ニッコリとその人物は微笑む。
「……ッ」
男は何か名前のようなものを呟いたが聞き取れなかった。
代わりに視線の先の人物の声だけがやけに頭に残った。
「ただの好奇心に殺されてしまいました」
物騒な物言いだが、口調はやけに穏やかだった。
まるでそうなっても後悔はない。むしろよかったと言うような口ぶり。
花がブワッと舞う。やがて視界の多くが花びらに飲まれて
少女は、目覚ましの音で目を覚ました。
なぜか瞳からは大粒の涙を流して。
★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━★
【あとがき】
連載夢のややネタバレあります。(読むかは任せます)
青年はお察しの通り、妖狐の時の蔵馬です。
でも途中で彼の口からしゃべっている内容が
まるで他人事のように聞こえるのは
夢主の記憶の中の彼が話しているという設定です。
夢主は蔵馬が人間に転生したことを知りません。
また逆に蔵馬自身も夢主が人間に転生したことを知りません。
自分も人間に転生しましたが、蔵馬が本当に魔界のトップにのし上がっているのか
それだけが気がかりで、蔵馬の記憶を消して
自分が転生したあとも、深層心理ではもう一度魔界にいって蔵馬の姿を見たいという
好奇心だけのために、自分にとある術をかけました。
蔵馬からすればそれはただの呪いのようなものでしかないけれど。
連載夢のタイトルが日本語訳すると「好奇心は猫をも殺す」ということわざをもじってます。
好奇心を優先して、平和に暮らせたはずの人間への転生を捨てているのは
蔵馬からすれば呪いに近いかも知れません。
「Ring-a-ring o' roses,
A pocket full of posies~♪」
ふわふわと心地が良い。まだ幼い少女は辺り一面の花々に大きな瞳を輝かせた。
小学校で習いたての曲を口ずさみながら、バラの冠をつくり
「えっと、えっと…あっ!――We all fall down!」
思いっきり絨毯のような花々に背中からダイブする。
柔らかくて温かい心地。背中から思いっきりダイブしたので
花びらが自分の顔の上を舞うのにクスクス笑う少女。ふと、そんな少女に大きな影が差した。
「探したぞ」
「え、だあれ…おにいちゃん」
美しい銀髪に、ぴょこんと耳と尻尾が生えている青年。
その耳と尻尾に、どらえもん?と小声で紅葉は尋ねたが
男は分からないと言った顔をしていたので、これは夢なんだと幼いながらに分かった。
「きれいなおにいちゃんだね」
「そうか……お前は、ずいぶん可愛くなってしまったな」
幼い少女にむける可愛いとは少し違う、誰かと比較して悲しむかのような声色に小さく首をかしげた。
「かわいいのはダメなの?」
「いや、そういうつもりじゃない」
はじめて彼は仏頂面から少し困ったように笑みを浮かべたので
ニコッと顔いっぱいに少女は笑みをうかべた。
「ねぇ、おにいちゃんはどこからきたの?
どうして、動物みたいなお耳としっぽがあるの?」
子供らしく次々浮かんでくる疑問を青年にぶつけると
青年はそれを怒ることなく、静かに一つ一つ説き伏せた。
そして最後にお前を連れて行くとだけ告げて。
「え、どこに?」
急に少女の顔が曇った。ここは天国みたいなところだ。
でも青年は少し悲しそうな顔をしている。
これから連れて行かれるのはあまりいい所ではないのかも知れないと
幼いながらに本能で理解し、警戒しはじめた。
「あ、あの…でもね、ここはいいところだよ?
紅葉はずっとここにいたいの…」
学校に行ってもあまり言葉が通じないのでからかわれるし
家に帰っても幼い弟が両親の愛を一身にうけている。
小さくもう一度ここから離れたくないとだけ少女は呟いた。
それを否定するわけでもなく、青年は少女の横に腰を下ろしてそうだなとうなずいた。
「ここは俺のようなやつには毒だが、お前にとっては極楽なのかも知れないな」
「ごく…らく?」
「しかし、俺にはまだお前が必要なんだ」
「ひつようって…なにもできないよ?」
自分が子供だと少女自身も分かっている。
大人と子供の年齢差で何が手伝えるのだろうか。
それに、一番疑問に思っていたのは。
「あのね…おにいちゃんは会ったばかりだよ?」
どうして紅葉のことを連れて行こうとするのと尋ねると
少し遠くに視線をうつして、静かにお前のせいだと呟いた。
「え?」
「これは儚い夢に過ぎない。いいか?今お前が見ているのは
お前にとって都合がいい夢なんだ。――本当の俺はもう
お前を忘れて魔界でまだ盗賊をしているはずだ」
「はず?」
でも、おにいちゃんはここにいるのに?
どうして他人事のように言うんだろう。
それに、紅葉のせいってどういう意味?
「お前も難儀なやつだ。人間に転生したと言うのに
俺のことを忘れることが出来ず、自身にこんな呪いを残すとは」
綺麗な顔が少女に近づく。
「そんなに俺を好いていたのか?」
ドサッと花畑に優しく押し倒されながら
少女は目を丸くして青年を見上げた。
「すい?」
「紅葉…俺のことは好きか?」
「うーん。おにいちゃんは…」
少女が好きの順番を家族と友達と並べ替えながら考えていると
後ろから凜としたアルトボイスがいなすように響いた。
「そんな可愛いものではありません」
男は弾かれるように起き上がる。視線の先には男と同じように
獣の耳と尻尾をはやした人が立っていた。
少女と視線があうと、ニッコリとその人物は微笑む。
「……ッ」
男は何か名前のようなものを呟いたが聞き取れなかった。
代わりに視線の先の人物の声だけがやけに頭に残った。
「ただの好奇心に殺されてしまいました」
物騒な物言いだが、口調はやけに穏やかだった。
まるでそうなっても後悔はない。むしろよかったと言うような口ぶり。
花がブワッと舞う。やがて視界の多くが花びらに飲まれて
少女は、目覚ましの音で目を覚ました。
なぜか瞳からは大粒の涙を流して。
★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━★
【あとがき】
連載夢のややネタバレあります。(読むかは任せます)
青年はお察しの通り、妖狐の時の蔵馬です。
でも途中で彼の口からしゃべっている内容が
まるで他人事のように聞こえるのは
夢主の記憶の中の彼が話しているという設定です。
夢主は蔵馬が人間に転生したことを知りません。
また逆に蔵馬自身も夢主が人間に転生したことを知りません。
自分も人間に転生しましたが、蔵馬が本当に魔界のトップにのし上がっているのか
それだけが気がかりで、蔵馬の記憶を消して
自分が転生したあとも、深層心理ではもう一度魔界にいって蔵馬の姿を見たいという
好奇心だけのために、自分にとある術をかけました。
蔵馬からすればそれはただの呪いのようなものでしかないけれど。
連載夢のタイトルが日本語訳すると「好奇心は猫をも殺す」ということわざをもじってます。
好奇心を優先して、平和に暮らせたはずの人間への転生を捨てているのは
蔵馬からすれば呪いに近いかも知れません。