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振り向けば我が身(D灰)
「なぁなぁ…あのエクソシスト……」
「あぁ、どうやらマジらしいよな…」
いつものように食堂に入ると、そのただならぬ空気に面食らった。
朝の気だるい寝起きスタイルのままだるそうに入ってきた私は
持ち前の勘の鋭さで入った瞬間に姿勢を正して一歩引き瞳を細める。
状況を分析しようと視界を見渡した。
いつものように人はまばらだが閑散としているわけではない食堂内。
ところが、どこかやはり違和感がある。
中に入って注文するのをためらわれつつも、誰もこちらには気づいていないことにホッとしつつ
いつもの食堂との違和感を脳内で列挙していく。あれ、この配置は……少し引っかかりを感じた。
――こんなにざわついた配置は某同人イベント以来だぜ、と脳内でボケつつも話を戻そう。
配置、というのは食堂内の人の配置で、普段は花形と言わんばかりに
敬愛の視線を纏っていたはずのエクソシストは肩身が狭そうに隅に追いやられ
ファインダー達がいつもの集団のまとまりではなくバラバラに集まりを作って座っている点がひっかかる。
しかも彼らのプレートの食事はあまり進んでおらず、むしろ食堂だというのに
飲食物の一切を持たずに話し込む輩も少なくなかった。
あちゃ~、なんかちょっちタイミング悪くねぇ? 脳内で毒づく。
最初は自分の教団内にちりばめた隠れネズミ的なイタズラの数々が発覚して
人々がプチパニックになったのかと思ったがどうやらこれは個人に向けられたものではなさそう。
というかエクソシストが肩身を狭そうにしているということは……。
エクソシスト絡みのなんかじゃね? え、やだなぁ~。
自分の責任なら自分で負うけど誰かヘマしたのが
日本人の大好きな連帯責任ってやつに繋がるならノーサンキューだ。
その時だった。ファインダーの一人が我慢できないと声を荒げたのは。
「俺たちが命をかけているのに、神に選ばれた優秀なエクソシストがなぜ神に背くような行為が出来たんだ!!」
食堂内がシーンとする。
エクソシストが神に背いた?……もしそれが本当であれば
そのエクソシストは恐らく咎落ちということになっているかも知れない。
先ほどまでの軽く見ていた責任がのしかかる。
悔しいがエクソシストとしてはどうしても咎落ちした人に連帯責任を感じざる終えない。
むしろ、咎落ちという現象事態も大嫌いだった。なぜなら私自身が神の神聖なる信徒ではないのだから。
リナリーも私も、ミランダも…きっと他のエクソシストだって
なりたくてエクソシストなんかになったわけじゃない。
AKUMAを狩る私達もいわば人間離れしたようなものだ。死がぐっと近づく。
穏やかな人生なぞ望めないし、望めばきっと。
――神の天罰にあたる。
はぁ。早いうちにエクソシスト叩きが(そんな度胸はないだろうけど)
始まる前に朝食は諦めて部屋に戻るか。
その時、見知った影が少女に小さく声をかけた。
「大丈夫ですか?今はタイミングが悪いので出直した方がいいですよ?
――それか私がお部屋までお持ち致しますかエクソシスト様」
「あれっ、久しぶり…トマじゃん!!」
小声で反応するが、彼の誠意はやんわりと断った。
彼を含め一部のファインダーはどうもエクソシストを神格化しすぎて
敬愛を通り越して崇拝しがちな傾向にある。
私はそういう人達とは一線を引いていたが、トマは任務でも同行経験があり
彼の言葉は彼自身の誠実で優しいところも相まってか本心だと分かっているので嫌いじゃ無かった。
「ねぇ、私まだ状況把握できてないんだけど…この凍り付いた空気どうしたん?」
原因が身近な人ではないことを願いながら、トマの返答を待った。
トマは気まずそうに、一人の男の名前をあげた。
それはたまに見かけたことがあった人だった。
「まさかスーマンが情報を売ったなんて」
確認するかのようにトマの言葉を繰り返す。
思っていたよりも声は震えず、むしろ他人事のように淡々としていた事になぜか腹が立った。
トマは事実をやんわりと伝えたが実際仲間の情報を売ったのはスーマン自身の行いということを認識させられる。
まだ情報は断片的にしか入ってきていないらしい。
しかし恐らくもう彼は………。
寂しそうにチェスをしていた姿が目に浮かぶ。握った拳に爪が食い込んだ。
「まさかエクソシスト様が味方の情報を流すなど誰も考えつかないでしょう。
それで力を持たぬ我々の多くは怯えているのです」
ですが…とトマは続ける。
「だからと言って私達はあなたたちを見捨てません。
神の代行人であり唯一人類を勝利へと導いてくれる貴重なあなた方を……」
その言葉に息をのんだ。
そうだ…ファインダーはイノセンスに選ばれることもなかった。
しかし人類の勝利の犠牲になると喜んで身体を差し出してくれる。
その思いに私達、皮肉にも選ばれた側は応えなきゃならない。
スーマン……裏切った時はどういう気持ちだったんだろうか。
私は事の全貌を知らないが、彼は罪悪感があったんだろうか。
罪悪感……そう考えるとなぜか自分も言い逃れできないぞと言わんばかりの一人のノアの姿が思い浮かんだ。
「あぁ……気をつけないとなぁ」
振り向けば我が身。
そこに愛があろうとなかろうと、罪悪感があろうとなかろうときっと無慈悲な神は許してくれない。
★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━★
【あとがき】
スーマンのエピソードは本当に可哀想ですよね。そして当時小学6年生くらいだった私はあの咎落ちシーンで面食らいました。
ただ家族に会いたかっただけなのに…最新刊ちょいネタバレ?なりますが
イノセンスってかなり残酷ですよね。
夢主も振り向けば我が身と思いつつも、それでもいいや人間いつか死ぬんだしとちょっと楽観的そう。
(でも実際はまだ18くらいで死についてなんて考えないから実感なんてわきませんよね)
エクソシストって(メインキャラなんか)若いのに生き死にの世界で生きてることを考えると凄いです。
アレンは初期下手したら中3だしリナリーも年齢的にJKよ。
あ、でもそれくらいならもうあの時代設定だと大人に近い感じなのかな。
管理人は二十歳超えてちょっとですが、明日死ぬぜと言われたら
めちゃくちゃあがきますwイノセンスなんか持たされたら、きっと咎落ち回避のために放置して逃亡するかもw
「なぁなぁ…あのエクソシスト……」
「あぁ、どうやらマジらしいよな…」
いつものように食堂に入ると、そのただならぬ空気に面食らった。
朝の気だるい寝起きスタイルのままだるそうに入ってきた私は
持ち前の勘の鋭さで入った瞬間に姿勢を正して一歩引き瞳を細める。
状況を分析しようと視界を見渡した。
いつものように人はまばらだが閑散としているわけではない食堂内。
ところが、どこかやはり違和感がある。
中に入って注文するのをためらわれつつも、誰もこちらには気づいていないことにホッとしつつ
いつもの食堂との違和感を脳内で列挙していく。あれ、この配置は……少し引っかかりを感じた。
――こんなにざわついた配置は某同人イベント以来だぜ、と脳内でボケつつも話を戻そう。
配置、というのは食堂内の人の配置で、普段は花形と言わんばかりに
敬愛の視線を纏っていたはずのエクソシストは肩身が狭そうに隅に追いやられ
ファインダー達がいつもの集団のまとまりではなくバラバラに集まりを作って座っている点がひっかかる。
しかも彼らのプレートの食事はあまり進んでおらず、むしろ食堂だというのに
飲食物の一切を持たずに話し込む輩も少なくなかった。
あちゃ~、なんかちょっちタイミング悪くねぇ? 脳内で毒づく。
最初は自分の教団内にちりばめた隠れネズミ的なイタズラの数々が発覚して
人々がプチパニックになったのかと思ったがどうやらこれは個人に向けられたものではなさそう。
というかエクソシストが肩身を狭そうにしているということは……。
エクソシスト絡みのなんかじゃね? え、やだなぁ~。
自分の責任なら自分で負うけど誰かヘマしたのが
日本人の大好きな連帯責任ってやつに繋がるならノーサンキューだ。
その時だった。ファインダーの一人が我慢できないと声を荒げたのは。
「俺たちが命をかけているのに、神に選ばれた優秀なエクソシストがなぜ神に背くような行為が出来たんだ!!」
食堂内がシーンとする。
エクソシストが神に背いた?……もしそれが本当であれば
そのエクソシストは恐らく咎落ちということになっているかも知れない。
先ほどまでの軽く見ていた責任がのしかかる。
悔しいがエクソシストとしてはどうしても咎落ちした人に連帯責任を感じざる終えない。
むしろ、咎落ちという現象事態も大嫌いだった。なぜなら私自身が神の神聖なる信徒ではないのだから。
リナリーも私も、ミランダも…きっと他のエクソシストだって
なりたくてエクソシストなんかになったわけじゃない。
AKUMAを狩る私達もいわば人間離れしたようなものだ。死がぐっと近づく。
穏やかな人生なぞ望めないし、望めばきっと。
――神の天罰にあたる。
はぁ。早いうちにエクソシスト叩きが(そんな度胸はないだろうけど)
始まる前に朝食は諦めて部屋に戻るか。
その時、見知った影が少女に小さく声をかけた。
「大丈夫ですか?今はタイミングが悪いので出直した方がいいですよ?
――それか私がお部屋までお持ち致しますかエクソシスト様」
「あれっ、久しぶり…トマじゃん!!」
小声で反応するが、彼の誠意はやんわりと断った。
彼を含め一部のファインダーはどうもエクソシストを神格化しすぎて
敬愛を通り越して崇拝しがちな傾向にある。
私はそういう人達とは一線を引いていたが、トマは任務でも同行経験があり
彼の言葉は彼自身の誠実で優しいところも相まってか本心だと分かっているので嫌いじゃ無かった。
「ねぇ、私まだ状況把握できてないんだけど…この凍り付いた空気どうしたん?」
原因が身近な人ではないことを願いながら、トマの返答を待った。
トマは気まずそうに、一人の男の名前をあげた。
それはたまに見かけたことがあった人だった。
「まさかスーマンが情報を売ったなんて」
確認するかのようにトマの言葉を繰り返す。
思っていたよりも声は震えず、むしろ他人事のように淡々としていた事になぜか腹が立った。
トマは事実をやんわりと伝えたが実際仲間の情報を売ったのはスーマン自身の行いということを認識させられる。
まだ情報は断片的にしか入ってきていないらしい。
しかし恐らくもう彼は………。
寂しそうにチェスをしていた姿が目に浮かぶ。握った拳に爪が食い込んだ。
「まさかエクソシスト様が味方の情報を流すなど誰も考えつかないでしょう。
それで力を持たぬ我々の多くは怯えているのです」
ですが…とトマは続ける。
「だからと言って私達はあなたたちを見捨てません。
神の代行人であり唯一人類を勝利へと導いてくれる貴重なあなた方を……」
その言葉に息をのんだ。
そうだ…ファインダーはイノセンスに選ばれることもなかった。
しかし人類の勝利の犠牲になると喜んで身体を差し出してくれる。
その思いに私達、皮肉にも選ばれた側は応えなきゃならない。
スーマン……裏切った時はどういう気持ちだったんだろうか。
私は事の全貌を知らないが、彼は罪悪感があったんだろうか。
罪悪感……そう考えるとなぜか自分も言い逃れできないぞと言わんばかりの一人のノアの姿が思い浮かんだ。
「あぁ……気をつけないとなぁ」
振り向けば我が身。
そこに愛があろうとなかろうと、罪悪感があろうとなかろうときっと無慈悲な神は許してくれない。
★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━★
【あとがき】
スーマンのエピソードは本当に可哀想ですよね。そして当時小学6年生くらいだった私はあの咎落ちシーンで面食らいました。
ただ家族に会いたかっただけなのに…最新刊ちょいネタバレ?なりますが
イノセンスってかなり残酷ですよね。
夢主も振り向けば我が身と思いつつも、それでもいいや人間いつか死ぬんだしとちょっと楽観的そう。
(でも実際はまだ18くらいで死についてなんて考えないから実感なんてわきませんよね)
エクソシストって(メインキャラなんか)若いのに生き死にの世界で生きてることを考えると凄いです。
アレンは初期下手したら中3だしリナリーも年齢的にJKよ。
あ、でもそれくらいならもうあの時代設定だと大人に近い感じなのかな。
管理人は二十歳超えてちょっとですが、明日死ぬぜと言われたら
めちゃくちゃあがきますwイノセンスなんか持たされたら、きっと咎落ち回避のために放置して逃亡するかもw