COLORS(種運命)
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――destiny05――世界が終わる時
ブリッジに足を踏み入れたカガリは、そこに漂う殺気立った空気に思わず足を止めた。
周囲のやり取りで戦闘が起こっていることを察し、恐る恐るデュランダルの傍に近づく。そこでようやくシオンに目を留めた。
「シオン、どうしてここに? それにアレックスは……?」
「けど、なぜこんな……ユニウスセブンの軌道をずらしたのは、こいつらってことですか?!」
シオンが口を開こうとした時、副長のアーサーの声がタイミングよく割って入る。
その言葉にカガリは耳を疑った。
「え……?」
思わず声が上がる。
事故として起こったことだと思っていたユニウスセブンの移動。
それが人為的に起こされた。カガリは言葉も忘れ、ただ呆然とモニターに映るユニウスセブンを見つめる。
「姫……」
デュランダルに声をかけられ、カガリはハッと我に返り、反射的にそちらを向く。
「あ、申し訳ない……少し、驚いてしまった」
しどろもどろになるカガリとは対照的に、デュランダルは落ち着いた声と笑みを返した。
「どうか落ち着いて。アスランならあそこですよ」
『作業と手伝いたいといってくれてね』とデュランダルが示したのは、戦闘が繰り広げられるユニウスセブンだった。
アスランが出撃した事実を前に、カガリはシオンへと縋るような視線を向ける。
「そんな……どうして止めてくれなかった!?」
しかも、議長がなぜアレックス=アスランだと知っているのか、とカガリは顔色を変えた。
だが、それに答えるシオンの口調は相も変わらず、冷たい。
その間もブリッジでは忙しなく艦長の指示やオペレーターの声が飛び交っている。
「彼が自分から出撃させてほしいと申し出ました。私がどうこう口を挟む問題ではないと。それに議長も特例とはいえ出撃許可をくださいました」
「だがっアスランは……!」
一度棄てた力を再び手にしてまで、地上の人々のためにと戦闘へ赴いたアスランの気持ちを思うと胸が痛かった。
それを知っているはずのシオンがアスランを止めなかった事実に、カガリは泣きたいような気持ちになる。
だが、なによりも、シオンとアスランをこんな目にあわせてしまった自分が不甲斐なくて仕方ない。
カガリは無意識に唇を噛み締めていた。そのまま俯き、視線が足元へ落ちそうになった時――。
「大丈夫。アスランを信じてやれ」
「え」
耳元に囁かれたのは、この場に不似合いなほど優しい声。
その声に、カガリが弾かれるように顔を上げると、ふわりと微笑むシオンと目が合った。
カガリを落ち着かせるかのように、そのまま肩を軽くポンと叩くと、シオンは一瞬で表情を変える。
「それより、今問題なのはアンノウンの部隊とアーモリーワンで新型を奪取した連中。特にあの艦――呼称ボギーワンの扱い。それによって対応が違ってくる」
カガリから視線を外し、考え込むように手を口元へと運んだシオン。最後は誰にとはなく、ひとりごちるように呟いた。
ブリッジに響く、ユニウスセブンの状況と戦闘状況の報告。
破砕作業の邪魔をする所属不明のジンと、攻撃をしかけてくる強奪された3つの機体――カオス、ガイア、アビス。
その状況に焦れた様子でアーサーがボギーワンへの攻撃を提案してきた。
だがタリアは難しい顔で何かを考え込み、しばらくして、ゆっくりと口を開いた。
「先程、そちらの随員の方もおっしゃってましたが……議長は現時点でボギーワンをどう判断されますか?」
唐突に質問されたデュランダルは、顎に手を沿えると考え込む様子を見せる。
そこへ今度はシオンが割って入ってきた。
「海賊か……それとも地球軍と?」
「……難しいね。私としては連合としたくはなかったのだが」
「どんな火種になるか解りませんものね?」
デュランダルの言葉に、タリアがさらりと返す。
この微妙な会話に、近くにいる者皆が固唾を飲んで聞き入っていた。
「だが、状況は変わった」
デュランダルが何かを決意したように言うと、それを引き継いでタリアが口を開く。
「ええ、この非常時に際し、彼らが自らを地球軍もしくはそれに準ずる部隊だと認めるのなら、この場での戦闘には何の意味もありません」
あの不明艦――ボギーワンがこちらの想像通り地球軍のものだとしたら、彼らに破砕作業を妨害する意味などない。
おそらく彼らはこちらのやっていることが理解できずにいるのだ。いや、むしろ……
「逆にあのジン部隊をかばっているとも思われかねないのでは?」
シオンは脳裏を過ぎった考えを隠すことなく口にした。
「そんな!」
心外そうにアーサーが声をあげたが、タリアがなだめる。
「仕方ないわ。もしあの機体がダガーだったら、あなただって地球軍の関与を疑うでしょう?」
そのとおりだ。
事情を知らない者が見れば、ザフトがユニウスセブンを落とそうとしているように見えても仕方のない状況だ。
彼らのやり取りを黙って見守るカガリは拳を握り締めた。
「君ならどう対処するかね」
不意に、デュランダルがシオンに意見を求めた。
オーブ代表の随員という立場を保とうとする自分に、こんな場面で意見を求めてくるとは一体どういう神経をしているのかと、一瞬頭痛がした。
「私、ですか……?」
質問してきた当人へと視線を向けると、何を考えているのか読めない表情で見つめてくる視線とぶつかる。
側にいるタリアとアーサーも、こちらの言葉を待っている様子が伺えた。
シオンは内心小さくため息をつきながらも、この場の指揮官が自分だったら……と、真剣に思考を巡らせ言葉を選ぶ。
「――私ならボギーワンとコンタクトを取ることを考えます。そして、こちらはユニウスセブンの落下阻止のための破砕作業を行っているだけだ、と訴えます」
「……なるほど」
「それで手を引くようなら、この場は放っておけばいいでしょう。あくまで戦闘を続けるのなら……破砕作業を阻止する敵として対処するだけです。最優先すべきはユニウスセブンなのですから」
「まったくその通りだ」
シオンの意見に満足げな笑みを浮かべたデュランダルは、即座にタリアへと指示を出す。
「艦長、ボギーワンとコンタクトを取れるか?」
「国際救難チャンネルを使えば」
「ならばそれで呼びかけてくれ」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
イザークとディアッカを始めとした、懐かしいかつての仲間――ミゲル、ラスティ、ニコルと合流したアスランは、メテオブレイカーを設置する部隊を援護して攻撃を展開していた。
口ではなんのかんのと言い争いをしながらも、6機の連携プレーはみごとで、次々と敵を撃破していく。
『じゃあ、ミネルバにシオンも乗ってるのか!?』
驚くラスティにアスランは短く『そうだ』とだけ答える。
ヤキン戦後に別れてから一度も会うことはなかったが、それぞれが個人的にアスランやキラ、ラクスとは連絡を取り合っていた。
当然、シオンの状態も皆が知っている。
アスランとラスティの通信内容を聞いていたニコルが会話に割って入った。
『冗談じゃありません! ラクスさんから聞きましたが、彼の状態はなにも変わっていないのでしょう? その彼を護衛として連れてきたんですか!?』
『どういうことだ? 答えてもらおうか、アスラン』
ミゲルはモニター越しに鋭い視線を向ける。
ミゲルとニコルの二人から同時に詰め寄られ、アスランは慌てて説明した。
『誤解だ。確かに当初はそういう話もあったことは認める。だが、今回シオンが一緒だったのはシーゲル氏の墓参りをしにプラントへ行く為だ』
『シーゲル・クライン……元議長の?』
ミゲルが確認するようにその人物の名を呟く。元最高評議会議長であり、歌姫の父である、その人の名を。
『あぁ、アーモリーでプラント行きのシャトルに乗り換える前に、今回の事件に巻き込まれたんだ。偶然だ。嘘じゃない』
その必死の様子にミゲルが苦笑いを浮かべていると、ラスティが皆へと声をかける。
『ふーん……理由は解った。けどオーブが、いや地上が危険なことに変わりないよな。さっさとこいつら片付けようぜ』
『了解』
『了解です!』
口々に言って通信が切れる。
かつてこの3人は、シオンに命を助けられ、短い時間ではあったが生活を共にしていたと聞いた。
オーブ軍のMSを駆り、オーブの為に戦闘に参加したことも聞いた。全てはシオンへの恩返しだったと。
その中で自分達の間に存在するものと同じような友情が生まれたことも容易に想像がつく。
(まぁ、俺も同じか……)
最初こそ良い印象を持てなかった相手だったが、親友であるキラを殺したと思って自暴自棄になったあの時、父親との関係で心身が疲弊していたあの時、彼の存在が例えようもないくらいありがたかった。
だからこそ、彼が必死に立ち上がろうとしている今、出来る限りのことをしたいと思う。
アスランの口元に柔らかな笑みが浮かんだ。
ブリッジに足を踏み入れたカガリは、そこに漂う殺気立った空気に思わず足を止めた。
周囲のやり取りで戦闘が起こっていることを察し、恐る恐るデュランダルの傍に近づく。そこでようやくシオンに目を留めた。
「シオン、どうしてここに? それにアレックスは……?」
「けど、なぜこんな……ユニウスセブンの軌道をずらしたのは、こいつらってことですか?!」
シオンが口を開こうとした時、副長のアーサーの声がタイミングよく割って入る。
その言葉にカガリは耳を疑った。
「え……?」
思わず声が上がる。
事故として起こったことだと思っていたユニウスセブンの移動。
それが人為的に起こされた。カガリは言葉も忘れ、ただ呆然とモニターに映るユニウスセブンを見つめる。
「姫……」
デュランダルに声をかけられ、カガリはハッと我に返り、反射的にそちらを向く。
「あ、申し訳ない……少し、驚いてしまった」
しどろもどろになるカガリとは対照的に、デュランダルは落ち着いた声と笑みを返した。
「どうか落ち着いて。アスランならあそこですよ」
『作業と手伝いたいといってくれてね』とデュランダルが示したのは、戦闘が繰り広げられるユニウスセブンだった。
アスランが出撃した事実を前に、カガリはシオンへと縋るような視線を向ける。
「そんな……どうして止めてくれなかった!?」
しかも、議長がなぜアレックス=アスランだと知っているのか、とカガリは顔色を変えた。
だが、それに答えるシオンの口調は相も変わらず、冷たい。
その間もブリッジでは忙しなく艦長の指示やオペレーターの声が飛び交っている。
「彼が自分から出撃させてほしいと申し出ました。私がどうこう口を挟む問題ではないと。それに議長も特例とはいえ出撃許可をくださいました」
「だがっアスランは……!」
一度棄てた力を再び手にしてまで、地上の人々のためにと戦闘へ赴いたアスランの気持ちを思うと胸が痛かった。
それを知っているはずのシオンがアスランを止めなかった事実に、カガリは泣きたいような気持ちになる。
だが、なによりも、シオンとアスランをこんな目にあわせてしまった自分が不甲斐なくて仕方ない。
カガリは無意識に唇を噛み締めていた。そのまま俯き、視線が足元へ落ちそうになった時――。
「大丈夫。アスランを信じてやれ」
「え」
耳元に囁かれたのは、この場に不似合いなほど優しい声。
その声に、カガリが弾かれるように顔を上げると、ふわりと微笑むシオンと目が合った。
カガリを落ち着かせるかのように、そのまま肩を軽くポンと叩くと、シオンは一瞬で表情を変える。
「それより、今問題なのはアンノウンの部隊とアーモリーワンで新型を奪取した連中。特にあの艦――呼称ボギーワンの扱い。それによって対応が違ってくる」
カガリから視線を外し、考え込むように手を口元へと運んだシオン。最後は誰にとはなく、ひとりごちるように呟いた。
ブリッジに響く、ユニウスセブンの状況と戦闘状況の報告。
破砕作業の邪魔をする所属不明のジンと、攻撃をしかけてくる強奪された3つの機体――カオス、ガイア、アビス。
その状況に焦れた様子でアーサーがボギーワンへの攻撃を提案してきた。
だがタリアは難しい顔で何かを考え込み、しばらくして、ゆっくりと口を開いた。
「先程、そちらの随員の方もおっしゃってましたが……議長は現時点でボギーワンをどう判断されますか?」
唐突に質問されたデュランダルは、顎に手を沿えると考え込む様子を見せる。
そこへ今度はシオンが割って入ってきた。
「海賊か……それとも地球軍と?」
「……難しいね。私としては連合としたくはなかったのだが」
「どんな火種になるか解りませんものね?」
デュランダルの言葉に、タリアがさらりと返す。
この微妙な会話に、近くにいる者皆が固唾を飲んで聞き入っていた。
「だが、状況は変わった」
デュランダルが何かを決意したように言うと、それを引き継いでタリアが口を開く。
「ええ、この非常時に際し、彼らが自らを地球軍もしくはそれに準ずる部隊だと認めるのなら、この場での戦闘には何の意味もありません」
あの不明艦――ボギーワンがこちらの想像通り地球軍のものだとしたら、彼らに破砕作業を妨害する意味などない。
おそらく彼らはこちらのやっていることが理解できずにいるのだ。いや、むしろ……
「逆にあのジン部隊をかばっているとも思われかねないのでは?」
シオンは脳裏を過ぎった考えを隠すことなく口にした。
「そんな!」
心外そうにアーサーが声をあげたが、タリアがなだめる。
「仕方ないわ。もしあの機体がダガーだったら、あなただって地球軍の関与を疑うでしょう?」
そのとおりだ。
事情を知らない者が見れば、ザフトがユニウスセブンを落とそうとしているように見えても仕方のない状況だ。
彼らのやり取りを黙って見守るカガリは拳を握り締めた。
「君ならどう対処するかね」
不意に、デュランダルがシオンに意見を求めた。
オーブ代表の随員という立場を保とうとする自分に、こんな場面で意見を求めてくるとは一体どういう神経をしているのかと、一瞬頭痛がした。
「私、ですか……?」
質問してきた当人へと視線を向けると、何を考えているのか読めない表情で見つめてくる視線とぶつかる。
側にいるタリアとアーサーも、こちらの言葉を待っている様子が伺えた。
シオンは内心小さくため息をつきながらも、この場の指揮官が自分だったら……と、真剣に思考を巡らせ言葉を選ぶ。
「――私ならボギーワンとコンタクトを取ることを考えます。そして、こちらはユニウスセブンの落下阻止のための破砕作業を行っているだけだ、と訴えます」
「……なるほど」
「それで手を引くようなら、この場は放っておけばいいでしょう。あくまで戦闘を続けるのなら……破砕作業を阻止する敵として対処するだけです。最優先すべきはユニウスセブンなのですから」
「まったくその通りだ」
シオンの意見に満足げな笑みを浮かべたデュランダルは、即座にタリアへと指示を出す。
「艦長、ボギーワンとコンタクトを取れるか?」
「国際救難チャンネルを使えば」
「ならばそれで呼びかけてくれ」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
イザークとディアッカを始めとした、懐かしいかつての仲間――ミゲル、ラスティ、ニコルと合流したアスランは、メテオブレイカーを設置する部隊を援護して攻撃を展開していた。
口ではなんのかんのと言い争いをしながらも、6機の連携プレーはみごとで、次々と敵を撃破していく。
『じゃあ、ミネルバにシオンも乗ってるのか!?』
驚くラスティにアスランは短く『そうだ』とだけ答える。
ヤキン戦後に別れてから一度も会うことはなかったが、それぞれが個人的にアスランやキラ、ラクスとは連絡を取り合っていた。
当然、シオンの状態も皆が知っている。
アスランとラスティの通信内容を聞いていたニコルが会話に割って入った。
『冗談じゃありません! ラクスさんから聞きましたが、彼の状態はなにも変わっていないのでしょう? その彼を護衛として連れてきたんですか!?』
『どういうことだ? 答えてもらおうか、アスラン』
ミゲルはモニター越しに鋭い視線を向ける。
ミゲルとニコルの二人から同時に詰め寄られ、アスランは慌てて説明した。
『誤解だ。確かに当初はそういう話もあったことは認める。だが、今回シオンが一緒だったのはシーゲル氏の墓参りをしにプラントへ行く為だ』
『シーゲル・クライン……元議長の?』
ミゲルが確認するようにその人物の名を呟く。元最高評議会議長であり、歌姫の父である、その人の名を。
『あぁ、アーモリーでプラント行きのシャトルに乗り換える前に、今回の事件に巻き込まれたんだ。偶然だ。嘘じゃない』
その必死の様子にミゲルが苦笑いを浮かべていると、ラスティが皆へと声をかける。
『ふーん……理由は解った。けどオーブが、いや地上が危険なことに変わりないよな。さっさとこいつら片付けようぜ』
『了解』
『了解です!』
口々に言って通信が切れる。
かつてこの3人は、シオンに命を助けられ、短い時間ではあったが生活を共にしていたと聞いた。
オーブ軍のMSを駆り、オーブの為に戦闘に参加したことも聞いた。全てはシオンへの恩返しだったと。
その中で自分達の間に存在するものと同じような友情が生まれたことも容易に想像がつく。
(まぁ、俺も同じか……)
最初こそ良い印象を持てなかった相手だったが、親友であるキラを殺したと思って自暴自棄になったあの時、父親との関係で心身が疲弊していたあの時、彼の存在が例えようもないくらいありがたかった。
だからこそ、彼が必死に立ち上がろうとしている今、出来る限りのことをしたいと思う。
アスランの口元に柔らかな笑みが浮かんだ。