COLORS(種運命)
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――destiny21―― FATES
「――すでにない生命と思うならアークエンジェルへ行けと……」
ブリッジに多くのオーブ兵が集まっていた。
アマギの口からトダカの最後の言葉を聞いたカガリが涙を流す。
トダカの遺志を継ぐ一握りの将兵は残った艦や連合に合流せずにアークエンジェルに来たのだった。
「幾たびもご命令に背いて戦い、艦と多くの将兵を失ったことは、まことにお詫びのしようもございません」
アマギを始めオーブ兵が深々と頭を下げる。カガリは駆け寄り、アマギの手を取って逆に頭を下げた。
「すまない……私が愚かだったばかりに……私が非力だったばかりに……オーブの大事な……心あるものたちを……」
カガリは嗚咽をこらえながら謝罪の言葉を口にする。だが、耐え切れずに泣き崩れた。
同時にプシュと扉が開き、シオンがパイロットスーツ姿のままヘルメットを肩に抱えてブリッジへと足を踏み入れる。
「……カガリ? なにを泣いてる。さっきハンガーで見かけたモビルスーツはお前たちのか?」
戦闘での疲労が残った表情のまま、シオンは視線だけをアマギたちへ向けた。
「シオン様……」
アマギが言葉を失って頭を下げる。カガリだけでなく、シオンにまでも逆らう行為を犯してきたのだ。そう思うと言うべき言葉が見つからなかった。
その場にいたオーブ兵全員が同じ気持ちで自らを恥じた。
「辛気臭いって……トダカが死んだんだぞ! 兄様の方こそ、なんでそんなふうにしてられるんだ!!」
悲しむどころか疲労感を隠そうともせず、ともすれば不機嫌極まりないシオンの様子に、カガリが拳を握りしめて声を荒げた。
だがシオンは気にするふうでもなく、いま来た通路を軽く振り返ると「人望があってなによりだ」と呟く。
そこで初めてその場にいた全員が、シオンから少し離れて後ろに佇む人物に気がついた。
シオンは小さくため息をつくと、窮屈だったスーツの前を半分開け、身体を半歩ずらす。
そこには困ったように苦笑いを浮かべるトダカがいた。
「……ト、ダカ?」
状況が読み込めないカガリがトダカとアマギを交合にみる。アマギも訳がわからないと困惑する。
困惑する周囲を気にすることなく、シオンはモニターを操作をしはじめた。
今から向かう場所――かつて極秘裏に作られたラボ――への安全かつ、最短ルートを模索する。
カガリの呼びかけにも応じようとしない。というよりも集中しすぎて聞こえていないのだろう。
しかたなくトダカが「闇の獅子の勅命で死ねなくなった」とだけ説明した。それだけでアークエンジェルのクルーには通じた。
マリュー、ノイマン、チャンドラーが頷き、キラとミリアリアは顔を合わせて「やっぱりね」と笑いあった。
「よし、このルートだ」
唐突にシオンが声を上げた。
周囲の視線が一斉に集まる。だがシオンは一向に解せず、マリューに「出かけてくる」とだけ言い残しアマテラスで飛び出していった。
◇ ◇ ◇
「もう一度ここに戻ってくる羽目になるなんてな……」
ミラージュコロイドを展開させ、慎重に慎重を重ねてある研究所……とは言っても今は放棄された場所に降り立った。
長い間閉鎖された研究所はそこかしこに塵が積もっている。
他には目もくれず目的のものを見つけたシオンはそれを搬送用の巨大エレベーターに乗せた。万が一を考え、設計図の入ったデータも持ち出す。
半日後、アークエンジェルに戻った。
◇ ◇ ◇
「なんだ、こいつは?」
宝物のように運び込まれた、それをみたマードックの反応はそれだった。
他のクルーも似たような反応をする。周囲の疑問に答えることもなく、われ関せずを貫いてせっせとハンガーの隅に置いたそれの設置にかかる。
出来ればハンガー以外の場所に置きたかったが、今は時間が惜しい。
試作機であるこのゆりかご――エクステンデッドメンテナンス用カプセル――が役に立ってくれるのを祈るばかりだ。
設置を完了させたシオンは足早に医務室へ向かう。
ハイネとの会話もそこそこに眠っているアウルを抱かかえ、踵を返してハンガーへと向かった。ゆりかごにアウルを寝かせ、装置を作動させる。
苦悶の表情を浮かべていたアウルだったが、次第にその表情が穏やかなものへと変わっていく。
それを確認してようやっとシオンは安堵の溜息をついて床に座り込んだ。
「ベッド……だよね? これを取りに出かけてたんですか?」
シオンを追ってハンガーに足を踏み入れたキラは、水色の髪の少年が眠るベッドらしき装置を指さした。
先の戦闘中に保護した連合のパイロットだということはクルーから聞いていたが、彼らの関係性や素性は一切知らない。
装置に横たわる少年を見守るようなシオンの柔らかな視線に、キラは胸中に広がる感情を持て余していた。
「まあな。間に合ってよかった」
「間に合う?」
「アウルが生きる為には、このゆりかごと呼ばれる睡眠カプセルが必要なんだ」
「睡眠カプセル……彼、アウルって名前なんですね」
話しながら、キラはシオンの隣へと腰を降ろすと、ゆりかごに眠るアウルに視線を向ける。
「あぁ、そうか。まだちゃんと話してなかったな」
「仕方ないですよ。戦闘後はバタバタするし、オーブの人たちも加わって大所帯になったし、シオンさんはこの装置を取りにどこか行っちゃうし」
抱えた膝に顎をのせて呟くキラの子供じみた仕草に、彼の心情を察したシオンは小さく笑う。
「昔……少しの間、一緒にいたんだ。家族……弟みたいな奴かな」
「一緒に? オーブで?」
キラにとっては何の意図もなく、ただ率直に脳裏をよぎった疑問だった。
シオンの出生がコロニーメンデルであるということは聞かされていたが、その後はオーブに渡ったと思いこんでいた。
ラウ・ル・クルーゼによってキラ自身もコロニーメンデルで作られた存在だと知らされた時、クルーゼはシオンの置かれた境遇について何か口にしていたが、キラは気が動転するあまり記憶が曖昧になっていたのだ。
「詳しいことはまた……アウルが目覚めたら話すよ――それよりさっきの戦闘での赤いモビルスーツ……」
「? ああ。アスランのセイバーですか?」
「セイバーって名か。あれのパイロットはアスランだったのか」
「うん。ザフトに復隊したって言ってました」
沈んだ口調で呟いたキラは、そのまま押し黙ってしまった。
ザフトに戻るということは、自分たちとも刃を交える可能性があるということだ。確かにアスランの行動も理解できる。
強引に難癖をつけて戦禍を切った連合。それに従うオーブ。
カガリは条約に加盟してはいけなかったのだ。
あの事件さえなければ、自分たちも行動を起こすことはなかったと思う。
けれど自分たちは行動を起こしてしまった。1つ芽生えた疑惑の種は時を追うごとに開花した。
今ではもう、プラントが正しいなんて思えない。
殺されそうになったラクス――時を同じくして現れたプラント最高評議長の傍らのラクス――。
彼の口から発せられる耳障りのいい言葉は、なにか大きな目的が他にありそれを隠しているようにしか思えない。
両者の起こした戦争がより多くの悲劇を生み出す。
〝なぜそれが伝わらない!〟
誰よりも解り合えていると信じていた親友の心変わり。
「まぁ、あいつにも考えあってのことだろうさ。それにしても相手がアスランなら、なおさらアレはやりすぎだろう」
シオンは意識してキラと視線を合わせることをせず、アスランを擁護する言葉を口にした。
彼が迷っていたことには気付いていた。
オーブでの自分の立場。
カガリとユウナの関係。
なにより1番大きかったのはユニウス・セブンの一件だったのだろう。
しかし、あの戦闘結果は機体性能だけの差なのだろうか?
キラとほぼ互角の実力を持つアスランをあそこまで完膚なきまでに叩き潰すとは……迷いが腕を鈍らせ、それが確固たる意思を持ってモビルスーツに乗ったキラとの差になったのか。
まるでアスランの肩を持つようなシオンの発言が気に入らなかったようで、キラは意地を張って言い張る。
「だって、アスランってば僕の邪魔をしたんだ! カガリが泣いてるんだって言ったのに……なにもかも諦めて犠牲が出るのもしかたがないって、すべてをカガリとオーブのせいにして彼らを撃つのかって何度も聞いたのに! アスランは……カガリやシオンさんが必死で守ろうとしたものを撃とうとしたんだ!」
〝だから僕は自分の信じるもののために戦ったんだ!〟キラは瞳に涙を溜めて叫んだ。
シオンはキラをなだめるように彼の頭を軽く撫でた。
「ありがとう。キラの気持ちは確かに嬉しい。けど、あそこまでズタボロじゃ、さすがのアスランも立つ瀬がないだろう」
「でもっ!」
「きっと今頃落ち込んでるぞ、あいつ。同じ墜とすにしても、もう少しやり方があったんじゃないかと思うけどな」
小さく笑いながらそう告げるシオンの言葉に、キラは不承不承といった感じで頷いた。
「――すでにない生命と思うならアークエンジェルへ行けと……」
ブリッジに多くのオーブ兵が集まっていた。
アマギの口からトダカの最後の言葉を聞いたカガリが涙を流す。
トダカの遺志を継ぐ一握りの将兵は残った艦や連合に合流せずにアークエンジェルに来たのだった。
「幾たびもご命令に背いて戦い、艦と多くの将兵を失ったことは、まことにお詫びのしようもございません」
アマギを始めオーブ兵が深々と頭を下げる。カガリは駆け寄り、アマギの手を取って逆に頭を下げた。
「すまない……私が愚かだったばかりに……私が非力だったばかりに……オーブの大事な……心あるものたちを……」
カガリは嗚咽をこらえながら謝罪の言葉を口にする。だが、耐え切れずに泣き崩れた。
同時にプシュと扉が開き、シオンがパイロットスーツ姿のままヘルメットを肩に抱えてブリッジへと足を踏み入れる。
「……カガリ? なにを泣いてる。さっきハンガーで見かけたモビルスーツはお前たちのか?」
戦闘での疲労が残った表情のまま、シオンは視線だけをアマギたちへ向けた。
「シオン様……」
アマギが言葉を失って頭を下げる。カガリだけでなく、シオンにまでも逆らう行為を犯してきたのだ。そう思うと言うべき言葉が見つからなかった。
その場にいたオーブ兵全員が同じ気持ちで自らを恥じた。
「辛気臭いって……トダカが死んだんだぞ! 兄様の方こそ、なんでそんなふうにしてられるんだ!!」
悲しむどころか疲労感を隠そうともせず、ともすれば不機嫌極まりないシオンの様子に、カガリが拳を握りしめて声を荒げた。
だがシオンは気にするふうでもなく、いま来た通路を軽く振り返ると「人望があってなによりだ」と呟く。
そこで初めてその場にいた全員が、シオンから少し離れて後ろに佇む人物に気がついた。
シオンは小さくため息をつくと、窮屈だったスーツの前を半分開け、身体を半歩ずらす。
そこには困ったように苦笑いを浮かべるトダカがいた。
「……ト、ダカ?」
状況が読み込めないカガリがトダカとアマギを交合にみる。アマギも訳がわからないと困惑する。
困惑する周囲を気にすることなく、シオンはモニターを操作をしはじめた。
今から向かう場所――かつて極秘裏に作られたラボ――への安全かつ、最短ルートを模索する。
カガリの呼びかけにも応じようとしない。というよりも集中しすぎて聞こえていないのだろう。
しかたなくトダカが「闇の獅子の勅命で死ねなくなった」とだけ説明した。それだけでアークエンジェルのクルーには通じた。
マリュー、ノイマン、チャンドラーが頷き、キラとミリアリアは顔を合わせて「やっぱりね」と笑いあった。
「よし、このルートだ」
唐突にシオンが声を上げた。
周囲の視線が一斉に集まる。だがシオンは一向に解せず、マリューに「出かけてくる」とだけ言い残しアマテラスで飛び出していった。
◇ ◇ ◇
「もう一度ここに戻ってくる羽目になるなんてな……」
ミラージュコロイドを展開させ、慎重に慎重を重ねてある研究所……とは言っても今は放棄された場所に降り立った。
長い間閉鎖された研究所はそこかしこに塵が積もっている。
他には目もくれず目的のものを見つけたシオンはそれを搬送用の巨大エレベーターに乗せた。万が一を考え、設計図の入ったデータも持ち出す。
半日後、アークエンジェルに戻った。
◇ ◇ ◇
「なんだ、こいつは?」
宝物のように運び込まれた、それをみたマードックの反応はそれだった。
他のクルーも似たような反応をする。周囲の疑問に答えることもなく、われ関せずを貫いてせっせとハンガーの隅に置いたそれの設置にかかる。
出来ればハンガー以外の場所に置きたかったが、今は時間が惜しい。
試作機であるこのゆりかご――エクステンデッドメンテナンス用カプセル――が役に立ってくれるのを祈るばかりだ。
設置を完了させたシオンは足早に医務室へ向かう。
ハイネとの会話もそこそこに眠っているアウルを抱かかえ、踵を返してハンガーへと向かった。ゆりかごにアウルを寝かせ、装置を作動させる。
苦悶の表情を浮かべていたアウルだったが、次第にその表情が穏やかなものへと変わっていく。
それを確認してようやっとシオンは安堵の溜息をついて床に座り込んだ。
「ベッド……だよね? これを取りに出かけてたんですか?」
シオンを追ってハンガーに足を踏み入れたキラは、水色の髪の少年が眠るベッドらしき装置を指さした。
先の戦闘中に保護した連合のパイロットだということはクルーから聞いていたが、彼らの関係性や素性は一切知らない。
装置に横たわる少年を見守るようなシオンの柔らかな視線に、キラは胸中に広がる感情を持て余していた。
「まあな。間に合ってよかった」
「間に合う?」
「アウルが生きる為には、このゆりかごと呼ばれる睡眠カプセルが必要なんだ」
「睡眠カプセル……彼、アウルって名前なんですね」
話しながら、キラはシオンの隣へと腰を降ろすと、ゆりかごに眠るアウルに視線を向ける。
「あぁ、そうか。まだちゃんと話してなかったな」
「仕方ないですよ。戦闘後はバタバタするし、オーブの人たちも加わって大所帯になったし、シオンさんはこの装置を取りにどこか行っちゃうし」
抱えた膝に顎をのせて呟くキラの子供じみた仕草に、彼の心情を察したシオンは小さく笑う。
「昔……少しの間、一緒にいたんだ。家族……弟みたいな奴かな」
「一緒に? オーブで?」
キラにとっては何の意図もなく、ただ率直に脳裏をよぎった疑問だった。
シオンの出生がコロニーメンデルであるということは聞かされていたが、その後はオーブに渡ったと思いこんでいた。
ラウ・ル・クルーゼによってキラ自身もコロニーメンデルで作られた存在だと知らされた時、クルーゼはシオンの置かれた境遇について何か口にしていたが、キラは気が動転するあまり記憶が曖昧になっていたのだ。
「詳しいことはまた……アウルが目覚めたら話すよ――それよりさっきの戦闘での赤いモビルスーツ……」
「? ああ。アスランのセイバーですか?」
「セイバーって名か。あれのパイロットはアスランだったのか」
「うん。ザフトに復隊したって言ってました」
沈んだ口調で呟いたキラは、そのまま押し黙ってしまった。
ザフトに戻るということは、自分たちとも刃を交える可能性があるということだ。確かにアスランの行動も理解できる。
強引に難癖をつけて戦禍を切った連合。それに従うオーブ。
カガリは条約に加盟してはいけなかったのだ。
あの事件さえなければ、自分たちも行動を起こすことはなかったと思う。
けれど自分たちは行動を起こしてしまった。1つ芽生えた疑惑の種は時を追うごとに開花した。
今ではもう、プラントが正しいなんて思えない。
殺されそうになったラクス――時を同じくして現れたプラント最高評議長の傍らのラクス――。
彼の口から発せられる耳障りのいい言葉は、なにか大きな目的が他にありそれを隠しているようにしか思えない。
両者の起こした戦争がより多くの悲劇を生み出す。
〝なぜそれが伝わらない!〟
誰よりも解り合えていると信じていた親友の心変わり。
「まぁ、あいつにも考えあってのことだろうさ。それにしても相手がアスランなら、なおさらアレはやりすぎだろう」
シオンは意識してキラと視線を合わせることをせず、アスランを擁護する言葉を口にした。
彼が迷っていたことには気付いていた。
オーブでの自分の立場。
カガリとユウナの関係。
なにより1番大きかったのはユニウス・セブンの一件だったのだろう。
しかし、あの戦闘結果は機体性能だけの差なのだろうか?
キラとほぼ互角の実力を持つアスランをあそこまで完膚なきまでに叩き潰すとは……迷いが腕を鈍らせ、それが確固たる意思を持ってモビルスーツに乗ったキラとの差になったのか。
まるでアスランの肩を持つようなシオンの発言が気に入らなかったようで、キラは意地を張って言い張る。
「だって、アスランってば僕の邪魔をしたんだ! カガリが泣いてるんだって言ったのに……なにもかも諦めて犠牲が出るのもしかたがないって、すべてをカガリとオーブのせいにして彼らを撃つのかって何度も聞いたのに! アスランは……カガリやシオンさんが必死で守ろうとしたものを撃とうとしたんだ!」
〝だから僕は自分の信じるもののために戦ったんだ!〟キラは瞳に涙を溜めて叫んだ。
シオンはキラをなだめるように彼の頭を軽く撫でた。
「ありがとう。キラの気持ちは確かに嬉しい。けど、あそこまでズタボロじゃ、さすがのアスランも立つ瀬がないだろう」
「でもっ!」
「きっと今頃落ち込んでるぞ、あいつ。同じ墜とすにしても、もう少しやり方があったんじゃないかと思うけどな」
小さく笑いながらそう告げるシオンの言葉に、キラは不承不承といった感じで頷いた。
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