COLORS(種運命)
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――destiny13―― さまよう眸
「さすが最高評議会議長殿は多忙なようだ」
自室のカギを開け中へと足を踏み入れた瞬間聞こえてきた声に、デュランダルは身体を強張らせた。
ここはザフトの保養施設。当然SPも伴わず移動し自室へと戻った。誰もいないはずの真っ暗な空間から文字通り降って湧いた声に警戒しつつ部屋の明かりをつける。
暗闇から一転した、刺すような眩さにデュランダルは一瞬目を細めたが、部屋の中に居る人物を認めた途端、目を見開いた。
「シオン……どうして君がここにいるのかね?」
まるで我が家で寛ぐかのように、クッションを枕代わりにして三人掛けの長いソファーに身体を横たえていたのは、ユニウスセブン落下前に別れたシオンだった。
「会いに来たに決まっているだろ。ミネルバでは話しもろくにできなかったから、こうして俺のほうから出向いてきたっていうのに……」
そう呟きながら、シオンは身体をゆっくりと起こすと、床に降ろした脚を組む。
そして組んだ脚に片肘を置くと、頬杖をついた姿勢のまま、視線をデュランダルへと真っ直ぐに向けた。
「歓迎してくれないのか」
「馬鹿なことを。嬉しいに決まってるじゃないか」
どこか不貞腐れたようなシオンに、デュランダルは静かに微笑むと、向かい合うソファーへと腰をおろす。
「オーブ政府の件は私も耳にしていたからね。内々に君を探そうと思っていたところさ。それが急に目の前に現れたから、正直驚いてしまったよ。気を悪くしないでくれたまえ。逢いにきてくれて嬉しいよ」
「どうだか。食事もせずにずーっと待ってたのに、お前ときたら一度も部屋に戻ってこないし。やっと戻ったら戻ったでこの時間だし。苦労して侵入したのに話す時間もなくなったじゃないか」
「それは、本当にすまないことをした。よもや君の方から逢いにきてくれるとは思っていなかったんだよ。君が来ると知っていたなら、予定を変更したものを」
「いやいや、最高指導者として、それは駄目だろう」
「君以上に優先させる予定など他にないよ」と、言い切ったデュランダルにシオンは呆れの混じった苦笑をした。
「……ほんと変わってないな、ギルバート。俺が知ってる昔のまんまだ。あの頃俺は、研究員の中でお前にだけは懐いていた」
過去を懐かしむように、ぽつりと呟くシオン。デュランダルも同じように想いを馳せているのか、その表情に宿るものはどこか父性愛に近い。
「そうだね……他の研究員の目を盗んでお菓子を与えていたのは私くらいのものだっただろうね」
「そうそう。俺はそれを目当てにお前によくくっついてた。なぁ、俺はお前を信じていていいんだよな?」
記憶の中の彼とまったく変わらない。
やはりラクス暗殺未遂の真犯人は他にいるのかもしれない。
だが、偽ラクスの存在がシオンの中で燻っていた。デュランダルを素直に信じきることができないのはそのせいでもあった。
「どうしたんだい? 唐突に。なにか心配事でもあったのかな?」
「解ってるだろ。あのラクス・クラインはなんだ? プラント最高評議長のお前なら、本物のラクスが戦後、どこにいたのか知ってたはずだ。なぜ、偽者なんか用意した。 答えてくれ、ギルバート。俺は……俺はお前を疑いたくないし、お前と敵対したくない」
すがるように両手を組んで顔を覆う。デュランダルは立ち上がり、シオンの隣に座りなおすと、その肩に手を置いた。
「私とて君と戦いたくなどないさ。君さえよければ今すぐにでも私の傍に来て欲しいと思っている。あのラクス・クラインの件については、本当に申し訳ないと思う。だが、解って欲しい。我ながら小賢しいとは思っているよ。情けないともね。だが、今の私には彼女の力が必要なのだよ。君を必要としているのと同じにね」
自嘲的な笑いを浮かべる。だが、シオンはデュランダルの言葉に心を動かされることはなかった。
「1つ聞かせて欲しい。アークエンジェルの件だ」
ピクリとシオンが反応した。デュランダルは気付かぬように言葉を続ける。
「共に行動しているのだろう? 教えてくれないか。あの艦が今どこにいるのかを」
「それを聞いてどうする?」
「あの艦とフリーダム、そして君がオーブを出たのなら、ラクス・クラインも一緒なのではないかと思ってね。このような情勢下だ。できれば本物の彼女にプラントに戻ってきてもらえないかと思ったのだよ」
「ふーん」
気のない返事を返すシオン。デュランダルも特に気にした様子はない。
ただじっとシオンの顔を見ていた。
「……無理だろうな。お前の要望には応えられない」
「なぜかね?」
「先日、俺たちが住んでいた邸に賊が侵入した。そいつらはコーディネイターだった。それも正規の戦闘訓練を受けた特殊部隊だ」
「それは……」
「用意のいい事にモビルスーツまで出してきた。よほど確実にしとめたいターゲットだったんだろうさ。使用されたのはアッシュ。これは最近ロールアウトしたばかりで正規軍にしか配備されていないらしい。俺の言いたいことの意味、解るよな?」
鋭い視線を投げかける。デュランダルは瞑目した。
「それは“ザフト”が彼女を殺そうとしたと?」
「あるいは“ザフト”に扮した別の特殊部隊、といいたいが、それならそれで大問題だぞ。ロールアウトされたばかりのモビルスーツのデーターが外部に漏洩しているということだからな。とにかく! 俺が確認したいのは1つだ。ギルバート、お前はこの件に関して無関係だよな? お前はラクスを殺そうとなんてしてないよな?」
「もちろんだとも。私は彼女に戻ってきて欲しいと思っているのだよ? それなのに彼女を殺す理由がない。だが、これは放ってはおけないね。仮にザフトが彼女を襲ったとしたのであれば、私に無断で軍を動かした誰かがいるということになる。それは由々しき問題だ。この件は私も全力を持って解明すると誓う。だから安心してくれたまえ」
「本当に信じていいんだな?」
「もちろん。我らが共通の知己に誓って」
“ラウ・ル・クルーゼ”の名に誓うと言うデュランダル。それでも疑念は晴れなかったが、一応と言う形で折れた。話は終ったとばかりに腰を上げる。
「解った。この件はお前に任せる。俺は帰る」
「待ちたまえ。今から帰るのかい?」
立ち上がったシオンの手をデュランダルが慌てて掴んだ。
「用はすんだからな」
「せめて今夜は泊まって、明日帰ってはどうだい?」
「これでも一応侵入者なんだが?」
「ではこの部屋で休めばいい。せっかくの機会だ。もっとゆっくり話したいのだよ」
昔馴染みとの時間は、僅かながらも心に平穏をもたらしてくれるのは否めない。
ただ、今のシオンにとって、デュランダルはただの昔馴染みではなく、大切な人の命を狙った疑いのある人物。
しかもここは、今の自分にとって油断していい場所ではない。日が昇れは面倒なことになるのは明らかだ。
「俺もそうしたい。けど、今は“ザフト”を信用していない。すまない。会えてよかったよ」
どこか寂しそうに微笑むシオンに、デュランダルは返す言葉もなく、黙ってその手を離した。
シオンはアークエンジェルに戻るべく、アマテラスを隠してある場所へと向かった。
「さすが最高評議会議長殿は多忙なようだ」
自室のカギを開け中へと足を踏み入れた瞬間聞こえてきた声に、デュランダルは身体を強張らせた。
ここはザフトの保養施設。当然SPも伴わず移動し自室へと戻った。誰もいないはずの真っ暗な空間から文字通り降って湧いた声に警戒しつつ部屋の明かりをつける。
暗闇から一転した、刺すような眩さにデュランダルは一瞬目を細めたが、部屋の中に居る人物を認めた途端、目を見開いた。
「シオン……どうして君がここにいるのかね?」
まるで我が家で寛ぐかのように、クッションを枕代わりにして三人掛けの長いソファーに身体を横たえていたのは、ユニウスセブン落下前に別れたシオンだった。
「会いに来たに決まっているだろ。ミネルバでは話しもろくにできなかったから、こうして俺のほうから出向いてきたっていうのに……」
そう呟きながら、シオンは身体をゆっくりと起こすと、床に降ろした脚を組む。
そして組んだ脚に片肘を置くと、頬杖をついた姿勢のまま、視線をデュランダルへと真っ直ぐに向けた。
「歓迎してくれないのか」
「馬鹿なことを。嬉しいに決まってるじゃないか」
どこか不貞腐れたようなシオンに、デュランダルは静かに微笑むと、向かい合うソファーへと腰をおろす。
「オーブ政府の件は私も耳にしていたからね。内々に君を探そうと思っていたところさ。それが急に目の前に現れたから、正直驚いてしまったよ。気を悪くしないでくれたまえ。逢いにきてくれて嬉しいよ」
「どうだか。食事もせずにずーっと待ってたのに、お前ときたら一度も部屋に戻ってこないし。やっと戻ったら戻ったでこの時間だし。苦労して侵入したのに話す時間もなくなったじゃないか」
「それは、本当にすまないことをした。よもや君の方から逢いにきてくれるとは思っていなかったんだよ。君が来ると知っていたなら、予定を変更したものを」
「いやいや、最高指導者として、それは駄目だろう」
「君以上に優先させる予定など他にないよ」と、言い切ったデュランダルにシオンは呆れの混じった苦笑をした。
「……ほんと変わってないな、ギルバート。俺が知ってる昔のまんまだ。あの頃俺は、研究員の中でお前にだけは懐いていた」
過去を懐かしむように、ぽつりと呟くシオン。デュランダルも同じように想いを馳せているのか、その表情に宿るものはどこか父性愛に近い。
「そうだね……他の研究員の目を盗んでお菓子を与えていたのは私くらいのものだっただろうね」
「そうそう。俺はそれを目当てにお前によくくっついてた。なぁ、俺はお前を信じていていいんだよな?」
記憶の中の彼とまったく変わらない。
やはりラクス暗殺未遂の真犯人は他にいるのかもしれない。
だが、偽ラクスの存在がシオンの中で燻っていた。デュランダルを素直に信じきることができないのはそのせいでもあった。
「どうしたんだい? 唐突に。なにか心配事でもあったのかな?」
「解ってるだろ。あのラクス・クラインはなんだ? プラント最高評議長のお前なら、本物のラクスが戦後、どこにいたのか知ってたはずだ。なぜ、偽者なんか用意した。 答えてくれ、ギルバート。俺は……俺はお前を疑いたくないし、お前と敵対したくない」
すがるように両手を組んで顔を覆う。デュランダルは立ち上がり、シオンの隣に座りなおすと、その肩に手を置いた。
「私とて君と戦いたくなどないさ。君さえよければ今すぐにでも私の傍に来て欲しいと思っている。あのラクス・クラインの件については、本当に申し訳ないと思う。だが、解って欲しい。我ながら小賢しいとは思っているよ。情けないともね。だが、今の私には彼女の力が必要なのだよ。君を必要としているのと同じにね」
自嘲的な笑いを浮かべる。だが、シオンはデュランダルの言葉に心を動かされることはなかった。
「1つ聞かせて欲しい。アークエンジェルの件だ」
ピクリとシオンが反応した。デュランダルは気付かぬように言葉を続ける。
「共に行動しているのだろう? 教えてくれないか。あの艦が今どこにいるのかを」
「それを聞いてどうする?」
「あの艦とフリーダム、そして君がオーブを出たのなら、ラクス・クラインも一緒なのではないかと思ってね。このような情勢下だ。できれば本物の彼女にプラントに戻ってきてもらえないかと思ったのだよ」
「ふーん」
気のない返事を返すシオン。デュランダルも特に気にした様子はない。
ただじっとシオンの顔を見ていた。
「……無理だろうな。お前の要望には応えられない」
「なぜかね?」
「先日、俺たちが住んでいた邸に賊が侵入した。そいつらはコーディネイターだった。それも正規の戦闘訓練を受けた特殊部隊だ」
「それは……」
「用意のいい事にモビルスーツまで出してきた。よほど確実にしとめたいターゲットだったんだろうさ。使用されたのはアッシュ。これは最近ロールアウトしたばかりで正規軍にしか配備されていないらしい。俺の言いたいことの意味、解るよな?」
鋭い視線を投げかける。デュランダルは瞑目した。
「それは“ザフト”が彼女を殺そうとしたと?」
「あるいは“ザフト”に扮した別の特殊部隊、といいたいが、それならそれで大問題だぞ。ロールアウトされたばかりのモビルスーツのデーターが外部に漏洩しているということだからな。とにかく! 俺が確認したいのは1つだ。ギルバート、お前はこの件に関して無関係だよな? お前はラクスを殺そうとなんてしてないよな?」
「もちろんだとも。私は彼女に戻ってきて欲しいと思っているのだよ? それなのに彼女を殺す理由がない。だが、これは放ってはおけないね。仮にザフトが彼女を襲ったとしたのであれば、私に無断で軍を動かした誰かがいるということになる。それは由々しき問題だ。この件は私も全力を持って解明すると誓う。だから安心してくれたまえ」
「本当に信じていいんだな?」
「もちろん。我らが共通の知己に誓って」
“ラウ・ル・クルーゼ”の名に誓うと言うデュランダル。それでも疑念は晴れなかったが、一応と言う形で折れた。話は終ったとばかりに腰を上げる。
「解った。この件はお前に任せる。俺は帰る」
「待ちたまえ。今から帰るのかい?」
立ち上がったシオンの手をデュランダルが慌てて掴んだ。
「用はすんだからな」
「せめて今夜は泊まって、明日帰ってはどうだい?」
「これでも一応侵入者なんだが?」
「ではこの部屋で休めばいい。せっかくの機会だ。もっとゆっくり話したいのだよ」
昔馴染みとの時間は、僅かながらも心に平穏をもたらしてくれるのは否めない。
ただ、今のシオンにとって、デュランダルはただの昔馴染みではなく、大切な人の命を狙った疑いのある人物。
しかもここは、今の自分にとって油断していい場所ではない。日が昇れは面倒なことになるのは明らかだ。
「俺もそうしたい。けど、今は“ザフト”を信用していない。すまない。会えてよかったよ」
どこか寂しそうに微笑むシオンに、デュランダルは返す言葉もなく、黙ってその手を離した。
シオンはアークエンジェルに戻るべく、アマテラスを隠してある場所へと向かった。
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