COLORS(種運命)
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――destiny09――明日への出航-後編
ハウメアの神殿
この結婚がカガリの意思に反するものであることを象徴するかのようにモビルスーツが周囲を護衛という名の監視をする中、結婚式は進んでいた。
祭壇の最上部で待ち構えていた司祭が浪々と語り始める。
「今、あらためて問う。互いに誓いし心に偽りはないか?」
間髪いれずに「はい」と答えたユウナ。
カガリも続いて同じ言葉を口にしようとしたが、声が出ない。
この問いに答えてしまえば、もう引き返せないのだ。
脳裏を過ぎる様々な風景、思い。
最後に髪に触れた父の手、
「カガリに会えてよかった」と微笑んだ翡翠の瞳、
今は無い左薬指の指輪、
「獅子の国を導いて行ってくれ」と優しく頭を撫でた手――それら全てを失うのだろうか。
――イヤだ、私には答えることができない
カガリが強くそう思った時だった。
周囲が騒然となり、警備の兵が慌ただしく動く。
「駄目です。軍本部の警告を無視して、こちらに向かっています!」
「ちょっと、ちょっと! なにが起こったっていうの!?」
ユウナが苛立たしげに警備兵に報告を求める。招待客もざわつき、席から立ち上がった。
「申し訳ございません。本部の警告を無視してモビルスーツが2機、こちらに向かっているとのことです」
「だったら、すぐに攻撃しろよ! 迎撃開始!」
「で、ですが、そのモビルスーツというのが……」
警備兵は言いよどんだ。
海上からこちらに向かってくるモビルスーツの機影が次第に鮮明になり、肉眼でもその機体の姿が確認できた。
『アマテラス』と『フリーダム』
政府関係者や首長たち、軍関係者ならば知らぬ者はいない『オーブの守護神』が数年ぶりにその姿を現したのだ。しかも『伝説の鬼神』を従えて。
ユウナの命令を受けたアストレイがライフルを構えるが、攻撃を躊躇する。
その隙を突いてアマテラスとフリーダムはアストレイ全機のライフルだけを撃ち飛ばした。
ユウナが間の抜けた悲鳴を上げ、カガリの背後に隠れるが、当のカガリは呆然とその機体を見つめている。
鳩の入ったケージが倒れ、中に入っていた鳩が一斉に飛び立った。
ゆっくりと空から舞い降りる黄金の機体とのコントラストに、カガリは目を奪われていた。
「兄様……?」
現状が理解できず立ち尽くしながらも、今まで閉ざしていた心が解けていくような気がして、なぜか嬉しさが込み上げてくる。
だれひとり、味方の居ないこの場所で、世界でたったひとりきりになってしまったような気がしていた。
そこへ尊敬する大切な人が現れた。数々の呪縛から解き放してくれるように。
<私はシオン・フィーリア。かつてオーブ連合首長国代表代理として、オーブの獅子と共にあった者>
黄金のモビルスーツから発せられたのは、穏やかでありながらも凛とした声。
その声が静かに告げた『シオン・フィーリア』の名と『オーブの獅子』という言葉に皆が固唾を呑んだ。
この場に居合わせた者を始めとする、放送を聞いていた全軍がそれまでの行動を中止して、次に発せられる言葉を待った。
<2年前突然姿を消し、このような形で姿を現した私の真偽を疑う者もいるだろう。私も、その件に関しては謝罪するより他に方法が見つからない。さて、此度のユニウスセブン落下事件に伴った開戦に当たっての我が国の決定に関し、私は信頼の置ける第三者を通して独自に情報を集めた。大西洋連邦との同盟締結、その裏に隠された真実……なによりも重要なのは現オーブ政府と世界情勢――特に大西洋連邦との状況をかんがみ、現在のままでは代表が正常な判断を下すことは困難と判断するに至った>
ウナトを始めとする首長たちがざわめいた。
ウズミ・ナラ・アスハ亡き後、幼くして代表となったカガリの片腕として、誰もがシオンのその能力・手腕を期待していた。
だが、オーブの混乱が落ち着くと同時に彼は「自分の役目は終わった」という言葉だけを残してその姿を消したのだ。
それを好機とばかりに、カガリをいいように操り、オーブを裏から掌握しようと画策していた者たちは、シオンの登場に慌て始める。
そんな混乱を他所にシオンの言葉は静かに続いた。
<このまま行政府に残っての政務は国政に著しい影響が出ると判断し、私が一時的に代表を保護し、その護衛の任に就く。我らが祖国を焼いた国と手を結ぶなどという愚かな行為――他の首長が許しても私は許さぬ。オーブの理念とウズミ・ナラ・アスハの意思は、その後継者と共に私が護る!>
怒気を込めた宣言を下されたユウナは悲鳴を上げて、へっぴり腰で逃げ出す。
アマテラスを呆然と見上げるカガリの目の前に、その巨大な手がゆっくりと降りてきた。
状況が飲み込めず立ちすくんでいるうちに、アマテラスは繊細な動きでカガリの身体を包み込む。
「っ!? 何、をっ、兄様!?」
抗うこともできず、アマテラスの手の中へと転げ込んだカガリをそのまま持ち上げ、シオンはコックピットハッチを開いた。
「カガリ!」
「兄様っ」
差し伸べられた手の意味を理解する前に、カガリは無意識に手を伸ばす。
下方でユウナがわめいていたが、目前にフリーダムが舞い降りたのを見て完全に腰を抜かした。
伸ばした手を引かれ、カガリはシオンに抱えられるようにしてアマテラスのコックピットへと連れ込まれた。
「――すごいドレスだな」
コックピットを埋め尽くしたベールと裳裾にシオンが驚いたような声をあげる。
「兄様っ、どうして……っ」
「掴まっていろ」
ドレスの長いスカートを脇へとよけると、シオンはスロットルを開き、ペダルを踏み込む。
機体に強いGがかかる。
アマテラスはカガリを乗せたまま、上空へと舞い上がった。
助けを求めるように、夢中でその手を伸ばしたカガリだが、今になってシオンの意図に気づく。
シオンは自分をこの場――結婚から奪い去ろうとしている。
けれど、こんなこと許されるはずがない。
結婚式にモビルスーツで乱入し、国家元首でもある花嫁を拉致するなど。
「……!! 兄様! 下ろしてくれ!」
「黙ってろ。しっかり掴まってないと舌をかむぞ」
突如コックピットに響いたアラートに、シオンの表情に緊張が走る。
同時に機体が旋回し、振り飛ばされそうになったカガリは慌ててシオンの首にしがみついた。
<こちらはオーブ軍本部。アマテラス、フリーダム、ただちに着陸せよ>
モニターに映るのは接近してくる2機の戦闘機――飛行形態のムラサメ。
M1アストレイの次世代機として現在配備が進んでいる変形機構を持ったモビルスーツだ。
<アマテラス、フリーダム、ただちに着陸せよ――>
『シオンさん』
キラが指示を仰ぐようにシオンの名を呼ぶ。
「強行突破……以外の方法があるなら、それに越したことはないよな」
独り言のように呟いたシオンは、領海線上に待機しているオーブ艦隊に向かって通信回線を開いた。
<領海上のオーブ艦隊指揮官に告ぐ。私はシオン・フィーリア。先程の宣言通り、代表の身柄は私が責任を持って保護する。ただちに全武装を解除し、我らに道をあけよ。繰り返す。ただちに全武装を解除し、我らに道をあけよ――我らは必ずこの国に戻ってくる。だから今は行かせて欲しい。我が要求が受け入れられることを切に願う>
最後は懇願するように言葉を発する。
追ってきていた別のムラサメが、明らかにその速度を落した。
「四時の方向にモビルスーツ2! アマテラスとフリーダムです! 本部より入電! シオン・フィーリアの名を騙る人物がカガリ様を式場から拉致。対応は慎重を要する」
通信兵が本部からの伝令を読み上げる。トダカの眉間にくっきりと皺が刻まれた。
結婚式場での『シオン・フィーリア』を名乗る人物の言葉は、トダカを始めとしたオーブの理念に誇りを持って集まった兵たちの心に深く刻み込まれた。
2年前、ヤキン・ドゥーエ戦線において、故ウズミに代わり軍を指揮し、混乱する国を立て直した青年シオン・フィーリア。
そして、あの黄金のモビルスーツから聞こえてきた声――忘れることなどできはしない。
「包囲して押さえ込み“カガリ様の救出を第一に考えよ”とのとこです!」
通信兵が再び本部からの伝令を伝えた。副官のアマギも困惑の表情だ。
「いかが致しますか?」
「なにもしない。先ほどの言葉を忘れたのか? 彼は『シオン・フィーリア』の名と代表代理権限においてカガリ様を保護すると言ったのだ。オーブ軍人である以上、その命令に背くことはできない。これは誘拐ではではないのだからな。それに、事は“対応は慎重を要する”のだろう? 本部は彼の正体の真偽を確認していない。もしも、彼が本物であったのなら、我々は命令違反のうえ、国家反逆罪を適用される恐れもある」
「しかし……」
絶句するアマギを横目に、トダカは言葉を続けた。
「それに前大戦の英雄機2機を相手に我らが叶うとでも? 余計な犠牲は出したくはない。必ず戻ってくるといった彼の言葉を信じよう」
オーブ護衛艦隊は海上に浮かぶアークエンジェルを包囲しつつあった。
その艦のハッチが開き、舞い降りるアマテラスとフリーダムを収容したかと思うと、いきなり海中へと沈み始めた。
トダカは背筋を伸ばし、敬意を込めて礼を取った。その姿を見たアマギも何かを悟ったような表情を浮かべる。
他の艦を指揮する者たちもトダカと同じ思いを抱いているのだろう。アークエンジェルが完全に海中へと姿を消すまで、ただの一度も砲撃はなかった。
ハウメアの神殿
この結婚がカガリの意思に反するものであることを象徴するかのようにモビルスーツが周囲を護衛という名の監視をする中、結婚式は進んでいた。
祭壇の最上部で待ち構えていた司祭が浪々と語り始める。
「今、あらためて問う。互いに誓いし心に偽りはないか?」
間髪いれずに「はい」と答えたユウナ。
カガリも続いて同じ言葉を口にしようとしたが、声が出ない。
この問いに答えてしまえば、もう引き返せないのだ。
脳裏を過ぎる様々な風景、思い。
最後に髪に触れた父の手、
「カガリに会えてよかった」と微笑んだ翡翠の瞳、
今は無い左薬指の指輪、
「獅子の国を導いて行ってくれ」と優しく頭を撫でた手――それら全てを失うのだろうか。
――イヤだ、私には答えることができない
カガリが強くそう思った時だった。
周囲が騒然となり、警備の兵が慌ただしく動く。
「駄目です。軍本部の警告を無視して、こちらに向かっています!」
「ちょっと、ちょっと! なにが起こったっていうの!?」
ユウナが苛立たしげに警備兵に報告を求める。招待客もざわつき、席から立ち上がった。
「申し訳ございません。本部の警告を無視してモビルスーツが2機、こちらに向かっているとのことです」
「だったら、すぐに攻撃しろよ! 迎撃開始!」
「で、ですが、そのモビルスーツというのが……」
警備兵は言いよどんだ。
海上からこちらに向かってくるモビルスーツの機影が次第に鮮明になり、肉眼でもその機体の姿が確認できた。
『アマテラス』と『フリーダム』
政府関係者や首長たち、軍関係者ならば知らぬ者はいない『オーブの守護神』が数年ぶりにその姿を現したのだ。しかも『伝説の鬼神』を従えて。
ユウナの命令を受けたアストレイがライフルを構えるが、攻撃を躊躇する。
その隙を突いてアマテラスとフリーダムはアストレイ全機のライフルだけを撃ち飛ばした。
ユウナが間の抜けた悲鳴を上げ、カガリの背後に隠れるが、当のカガリは呆然とその機体を見つめている。
鳩の入ったケージが倒れ、中に入っていた鳩が一斉に飛び立った。
ゆっくりと空から舞い降りる黄金の機体とのコントラストに、カガリは目を奪われていた。
「兄様……?」
現状が理解できず立ち尽くしながらも、今まで閉ざしていた心が解けていくような気がして、なぜか嬉しさが込み上げてくる。
だれひとり、味方の居ないこの場所で、世界でたったひとりきりになってしまったような気がしていた。
そこへ尊敬する大切な人が現れた。数々の呪縛から解き放してくれるように。
<私はシオン・フィーリア。かつてオーブ連合首長国代表代理として、オーブの獅子と共にあった者>
黄金のモビルスーツから発せられたのは、穏やかでありながらも凛とした声。
その声が静かに告げた『シオン・フィーリア』の名と『オーブの獅子』という言葉に皆が固唾を呑んだ。
この場に居合わせた者を始めとする、放送を聞いていた全軍がそれまでの行動を中止して、次に発せられる言葉を待った。
<2年前突然姿を消し、このような形で姿を現した私の真偽を疑う者もいるだろう。私も、その件に関しては謝罪するより他に方法が見つからない。さて、此度のユニウスセブン落下事件に伴った開戦に当たっての我が国の決定に関し、私は信頼の置ける第三者を通して独自に情報を集めた。大西洋連邦との同盟締結、その裏に隠された真実……なによりも重要なのは現オーブ政府と世界情勢――特に大西洋連邦との状況をかんがみ、現在のままでは代表が正常な判断を下すことは困難と判断するに至った>
ウナトを始めとする首長たちがざわめいた。
ウズミ・ナラ・アスハ亡き後、幼くして代表となったカガリの片腕として、誰もがシオンのその能力・手腕を期待していた。
だが、オーブの混乱が落ち着くと同時に彼は「自分の役目は終わった」という言葉だけを残してその姿を消したのだ。
それを好機とばかりに、カガリをいいように操り、オーブを裏から掌握しようと画策していた者たちは、シオンの登場に慌て始める。
そんな混乱を他所にシオンの言葉は静かに続いた。
<このまま行政府に残っての政務は国政に著しい影響が出ると判断し、私が一時的に代表を保護し、その護衛の任に就く。我らが祖国を焼いた国と手を結ぶなどという愚かな行為――他の首長が許しても私は許さぬ。オーブの理念とウズミ・ナラ・アスハの意思は、その後継者と共に私が護る!>
怒気を込めた宣言を下されたユウナは悲鳴を上げて、へっぴり腰で逃げ出す。
アマテラスを呆然と見上げるカガリの目の前に、その巨大な手がゆっくりと降りてきた。
状況が飲み込めず立ちすくんでいるうちに、アマテラスは繊細な動きでカガリの身体を包み込む。
「っ!? 何、をっ、兄様!?」
抗うこともできず、アマテラスの手の中へと転げ込んだカガリをそのまま持ち上げ、シオンはコックピットハッチを開いた。
「カガリ!」
「兄様っ」
差し伸べられた手の意味を理解する前に、カガリは無意識に手を伸ばす。
下方でユウナがわめいていたが、目前にフリーダムが舞い降りたのを見て完全に腰を抜かした。
伸ばした手を引かれ、カガリはシオンに抱えられるようにしてアマテラスのコックピットへと連れ込まれた。
「――すごいドレスだな」
コックピットを埋め尽くしたベールと裳裾にシオンが驚いたような声をあげる。
「兄様っ、どうして……っ」
「掴まっていろ」
ドレスの長いスカートを脇へとよけると、シオンはスロットルを開き、ペダルを踏み込む。
機体に強いGがかかる。
アマテラスはカガリを乗せたまま、上空へと舞い上がった。
助けを求めるように、夢中でその手を伸ばしたカガリだが、今になってシオンの意図に気づく。
シオンは自分をこの場――結婚から奪い去ろうとしている。
けれど、こんなこと許されるはずがない。
結婚式にモビルスーツで乱入し、国家元首でもある花嫁を拉致するなど。
「……!! 兄様! 下ろしてくれ!」
「黙ってろ。しっかり掴まってないと舌をかむぞ」
突如コックピットに響いたアラートに、シオンの表情に緊張が走る。
同時に機体が旋回し、振り飛ばされそうになったカガリは慌ててシオンの首にしがみついた。
<こちらはオーブ軍本部。アマテラス、フリーダム、ただちに着陸せよ>
モニターに映るのは接近してくる2機の戦闘機――飛行形態のムラサメ。
M1アストレイの次世代機として現在配備が進んでいる変形機構を持ったモビルスーツだ。
<アマテラス、フリーダム、ただちに着陸せよ――>
『シオンさん』
キラが指示を仰ぐようにシオンの名を呼ぶ。
「強行突破……以外の方法があるなら、それに越したことはないよな」
独り言のように呟いたシオンは、領海線上に待機しているオーブ艦隊に向かって通信回線を開いた。
<領海上のオーブ艦隊指揮官に告ぐ。私はシオン・フィーリア。先程の宣言通り、代表の身柄は私が責任を持って保護する。ただちに全武装を解除し、我らに道をあけよ。繰り返す。ただちに全武装を解除し、我らに道をあけよ――我らは必ずこの国に戻ってくる。だから今は行かせて欲しい。我が要求が受け入れられることを切に願う>
最後は懇願するように言葉を発する。
追ってきていた別のムラサメが、明らかにその速度を落した。
「四時の方向にモビルスーツ2! アマテラスとフリーダムです! 本部より入電! シオン・フィーリアの名を騙る人物がカガリ様を式場から拉致。対応は慎重を要する」
通信兵が本部からの伝令を読み上げる。トダカの眉間にくっきりと皺が刻まれた。
結婚式場での『シオン・フィーリア』を名乗る人物の言葉は、トダカを始めとしたオーブの理念に誇りを持って集まった兵たちの心に深く刻み込まれた。
2年前、ヤキン・ドゥーエ戦線において、故ウズミに代わり軍を指揮し、混乱する国を立て直した青年シオン・フィーリア。
そして、あの黄金のモビルスーツから聞こえてきた声――忘れることなどできはしない。
「包囲して押さえ込み“カガリ様の救出を第一に考えよ”とのとこです!」
通信兵が再び本部からの伝令を伝えた。副官のアマギも困惑の表情だ。
「いかが致しますか?」
「なにもしない。先ほどの言葉を忘れたのか? 彼は『シオン・フィーリア』の名と代表代理権限においてカガリ様を保護すると言ったのだ。オーブ軍人である以上、その命令に背くことはできない。これは誘拐ではではないのだからな。それに、事は“対応は慎重を要する”のだろう? 本部は彼の正体の真偽を確認していない。もしも、彼が本物であったのなら、我々は命令違反のうえ、国家反逆罪を適用される恐れもある」
「しかし……」
絶句するアマギを横目に、トダカは言葉を続けた。
「それに前大戦の英雄機2機を相手に我らが叶うとでも? 余計な犠牲は出したくはない。必ず戻ってくるといった彼の言葉を信じよう」
オーブ護衛艦隊は海上に浮かぶアークエンジェルを包囲しつつあった。
その艦のハッチが開き、舞い降りるアマテラスとフリーダムを収容したかと思うと、いきなり海中へと沈み始めた。
トダカは背筋を伸ばし、敬意を込めて礼を取った。その姿を見たアマギも何かを悟ったような表情を浮かべる。
他の艦を指揮する者たちもトダカと同じ思いを抱いているのだろう。アークエンジェルが完全に海中へと姿を消すまで、ただの一度も砲撃はなかった。