Northern Lights(種無印)
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7話
「おいおい、無茶言うなよ!」
艦長室に場所を移して再び話し合いをしている最中、ムウが大袈裟に手を振った。
もう一度ストライクを使うと言うマリューに、キラの了承を取ったのかと問うと、返ってきた言葉はムウに乗れというものだった。
「ですが、ストライクの力が必要になるかもしれません。フラガ大尉に乗っていただければ……」
「あれをまた実践に投入なさるのですか?」
「そうでなければ脱出は無理でしょう? ですから――!!」
「冗談。あの坊主が書き換えたっていうOSのデータ見てないのか? あんなもんが俺に、ってか普通の人間に扱えるかよ」
最後の希望とばかりに提案した案が即座に却下されたマリューは愕然とした。
確かに、自分自身がヘリオポリスで、キラのOSのカスタマイズの速さとMSの操縦技術を一番近くで見ていた。
だが、彼は民間人だ。シオンに言われるまでもなく、キラをストライクに乗せることに抵抗がないわけではない。
「なら、OSをもとに戻させて……とにかく、民間人の、しかもコーディネイターの子供に大事な機体をこれ以上まかせるわけには……」
ナタルがすばやく口を挟んだ。そこにはコーディネイターに対する嫌悪感がありありと漂っている。
(ここにフィーリア代理が居なくてよかったわ。いまのバジルール少尉の言葉を聞いていたら、彼がどんな行動に出るか……)
この場で起こらなかったとはいえ、その状況を明確に想像できたマリューは身震いを感じた。
「そんで? 俺にノロクサ出て行って的になれっての?」
「それは……」
ため息をつくムウにマリューとナタルが困ったように顔を合わせるとムウは身を乗り出した。
「あのな。もし、戦闘になったら、あの坊主がめいっぱいまで上げた機体の性能、そして、それを使いこなせるパイロットの両方がいなきゃ、やつらにはとても太刀打ちできないぜ。だから――――」
「駄目です!!」
ムウがなにを言おうとしているのか予想したマリューは机を叩いて大声を上げた。勢いが付きすぎて椅子も床に倒れる。
アングリと口を開ける2人を尻目にマリューは「それだけは許可できません」とキッパリと言い放った。
「なんでだよ? あの坊主以外にアレを扱える人間はいないんだぜ? だったら坊主を乗せるしか他に方法はないだろう。それともなにか? オーブの代表代理に頭を下げて頼むのか? 『どうか俺たちを助けてください』ってな。 つっても、そう簡単に動いてくれるとも思えないけどな」
「もう、断られました……」
搾り出すようにその一言を口にするマリュー。ムウとナタルも顔をしかめた。
「先に彼と2人で話していたときに言われたの……助力はできないって。自分たちの力で乗り越えろって」
「そいつは俺たちがヘリオポリスで戦闘をしたからか?」
表情を硬くするムウ。
自分達が戦場にしたのは、中立の地。
力を貸して欲しいと願う相手は、その国の代表代理だ。普通に考えても、自分達に良い感情を持っているとは考えられない。だから助力できないと断言されたのだろうと思ってしまった。
そんなムウの心情を察してか、マリューは言葉を続ける。
「いいえ。オーブの理念よ。他国を侵略しない、他国の侵略を許さない、他国の争いに介入しない――彼はアスハ氏の代理として全権を担っているから、動くことはできないって言ってたわ。彼が私たちを助ければオーブが連合に付いたと思われるからって。特にあのMSは出せないって……・」
(なによりも、あの子をMSに乗せたらあの人がこの艦を沈めるって……)
シオンの冷徹な意思と殺気を思い出し、マリューは全身の血液がサッと引くのを感じ、思わず右腕で自分の身体を抱きしめた。
「なるほどな……中立国の代表代理としてここにいる以上、下手な真似はできないってことか。まっ、理屈は通っている。通っちゃいるが、んなもん戦場で通じるかっての! 代理が動かないなら、やっぱ、あの坊主を乗せるしか他に手はねぇ。俺だけじゃ無理だ。なんせ外にいるのはクルーゼ隊だからな。あいつらはしつこいぜ~」
「「…………」」
ムウの言葉にマリューとナタルは押し黙るしかなかった。
「キラ・ヤマト」
アークエンジェル内に設けられた居住区の一室にムウとマリューは来ていた。
疲れ果てて眠りについていたキラをトールが慌てて起こす。
寝ぼけ眼で話を聞いていたキラはマリューが硬い表情で用件を話し始めると、一気に目が覚めたように『お断りします!』と叫んだ。
「なぜ、僕がまたアレに乗らなきゃならないんです! あなたが言ったことは正しいのかもしれない。ぼくらの周りでは戦争をしていて、それが現実だって。でも、僕らはそれが嫌でヘリオポリスに移ったんだ! もう、僕らを巻き込まないで下さい!」
「……」
「だが、アレには君しか乗れないんだからしょうがないだろ」
マリューが押し黙ると、代わりにムウが口を開いた。
「しょうがないって! 僕は軍人でもなんでもないんですよ!」
「じゃあ、いずれまた戦闘が始まったとき、そういって死んでいくか? 今この艦を護れるのは俺と君だけなんだぜ」
「MSの操縦なら、シオンさんだっているじゃないですか!? なぜ、僕が!!」
「ごめんなさい……フィーリア代理はこの戦闘に関われないの。私もできれば君をMSに乗せたくないわ。でも、他に頼める人がいないのよ……」
キラの叫びともいえる訴えに申し訳なさそうにするマリュー。
「そんな……でも……僕は……」
「君はできるだけの力を持ってるだろ? なら、できることをしろよ」
声を震わせるキラにムウは言い聞かせるようにやさしく言った。
キラははっとムウの顔を見上げたが、すぐに苦しげに顔を背け、彼らを押しのけるように部屋を飛び出した。
「おいおい、無茶言うなよ!」
艦長室に場所を移して再び話し合いをしている最中、ムウが大袈裟に手を振った。
もう一度ストライクを使うと言うマリューに、キラの了承を取ったのかと問うと、返ってきた言葉はムウに乗れというものだった。
「ですが、ストライクの力が必要になるかもしれません。フラガ大尉に乗っていただければ……」
「あれをまた実践に投入なさるのですか?」
「そうでなければ脱出は無理でしょう? ですから――!!」
「冗談。あの坊主が書き換えたっていうOSのデータ見てないのか? あんなもんが俺に、ってか普通の人間に扱えるかよ」
最後の希望とばかりに提案した案が即座に却下されたマリューは愕然とした。
確かに、自分自身がヘリオポリスで、キラのOSのカスタマイズの速さとMSの操縦技術を一番近くで見ていた。
だが、彼は民間人だ。シオンに言われるまでもなく、キラをストライクに乗せることに抵抗がないわけではない。
「なら、OSをもとに戻させて……とにかく、民間人の、しかもコーディネイターの子供に大事な機体をこれ以上まかせるわけには……」
ナタルがすばやく口を挟んだ。そこにはコーディネイターに対する嫌悪感がありありと漂っている。
(ここにフィーリア代理が居なくてよかったわ。いまのバジルール少尉の言葉を聞いていたら、彼がどんな行動に出るか……)
この場で起こらなかったとはいえ、その状況を明確に想像できたマリューは身震いを感じた。
「そんで? 俺にノロクサ出て行って的になれっての?」
「それは……」
ため息をつくムウにマリューとナタルが困ったように顔を合わせるとムウは身を乗り出した。
「あのな。もし、戦闘になったら、あの坊主がめいっぱいまで上げた機体の性能、そして、それを使いこなせるパイロットの両方がいなきゃ、やつらにはとても太刀打ちできないぜ。だから――――」
「駄目です!!」
ムウがなにを言おうとしているのか予想したマリューは机を叩いて大声を上げた。勢いが付きすぎて椅子も床に倒れる。
アングリと口を開ける2人を尻目にマリューは「それだけは許可できません」とキッパリと言い放った。
「なんでだよ? あの坊主以外にアレを扱える人間はいないんだぜ? だったら坊主を乗せるしか他に方法はないだろう。それともなにか? オーブの代表代理に頭を下げて頼むのか? 『どうか俺たちを助けてください』ってな。 つっても、そう簡単に動いてくれるとも思えないけどな」
「もう、断られました……」
搾り出すようにその一言を口にするマリュー。ムウとナタルも顔をしかめた。
「先に彼と2人で話していたときに言われたの……助力はできないって。自分たちの力で乗り越えろって」
「そいつは俺たちがヘリオポリスで戦闘をしたからか?」
表情を硬くするムウ。
自分達が戦場にしたのは、中立の地。
力を貸して欲しいと願う相手は、その国の代表代理だ。普通に考えても、自分達に良い感情を持っているとは考えられない。だから助力できないと断言されたのだろうと思ってしまった。
そんなムウの心情を察してか、マリューは言葉を続ける。
「いいえ。オーブの理念よ。他国を侵略しない、他国の侵略を許さない、他国の争いに介入しない――彼はアスハ氏の代理として全権を担っているから、動くことはできないって言ってたわ。彼が私たちを助ければオーブが連合に付いたと思われるからって。特にあのMSは出せないって……・」
(なによりも、あの子をMSに乗せたらあの人がこの艦を沈めるって……)
シオンの冷徹な意思と殺気を思い出し、マリューは全身の血液がサッと引くのを感じ、思わず右腕で自分の身体を抱きしめた。
「なるほどな……中立国の代表代理としてここにいる以上、下手な真似はできないってことか。まっ、理屈は通っている。通っちゃいるが、んなもん戦場で通じるかっての! 代理が動かないなら、やっぱ、あの坊主を乗せるしか他に手はねぇ。俺だけじゃ無理だ。なんせ外にいるのはクルーゼ隊だからな。あいつらはしつこいぜ~」
「「…………」」
ムウの言葉にマリューとナタルは押し黙るしかなかった。
「キラ・ヤマト」
アークエンジェル内に設けられた居住区の一室にムウとマリューは来ていた。
疲れ果てて眠りについていたキラをトールが慌てて起こす。
寝ぼけ眼で話を聞いていたキラはマリューが硬い表情で用件を話し始めると、一気に目が覚めたように『お断りします!』と叫んだ。
「なぜ、僕がまたアレに乗らなきゃならないんです! あなたが言ったことは正しいのかもしれない。ぼくらの周りでは戦争をしていて、それが現実だって。でも、僕らはそれが嫌でヘリオポリスに移ったんだ! もう、僕らを巻き込まないで下さい!」
「……」
「だが、アレには君しか乗れないんだからしょうがないだろ」
マリューが押し黙ると、代わりにムウが口を開いた。
「しょうがないって! 僕は軍人でもなんでもないんですよ!」
「じゃあ、いずれまた戦闘が始まったとき、そういって死んでいくか? 今この艦を護れるのは俺と君だけなんだぜ」
「MSの操縦なら、シオンさんだっているじゃないですか!? なぜ、僕が!!」
「ごめんなさい……フィーリア代理はこの戦闘に関われないの。私もできれば君をMSに乗せたくないわ。でも、他に頼める人がいないのよ……」
キラの叫びともいえる訴えに申し訳なさそうにするマリュー。
「そんな……でも……僕は……」
「君はできるだけの力を持ってるだろ? なら、できることをしろよ」
声を震わせるキラにムウは言い聞かせるようにやさしく言った。
キラははっとムウの顔を見上げたが、すぐに苦しげに顔を背け、彼らを押しのけるように部屋を飛び出した。