Northern Lights(種無印)
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
4話 ナチュラルとコーディネイター
キラはシオンと共に救命ボートを拾って帰ってくるやいなやその処遇を巡ってデッキで揉めていた。
「認められないってどういうことです!? 推進部が壊れて漂流してたんです。それをまた、このまま放り出せとでも言うんですか? 避難したヘリオポリスの人たちが乗っているんですよ?!」
『すぐに救援艦がくる!』
頑なに受け入れを渋る女性士官の声は冷たい。
『……いいわ。許可します』
『本艦はまだ戦闘中です!避難民の受け入れなど』
ため息をついてマリューが許可を出すと、隣にいた女性士官がキッと睨んだ。
(……連合は民間人の人命などどうでもいいらしいな。俺がいる前でよくもまぁこんなセリフを言える)
モニター越しにその会話を聞いていたシオンはその整った顔を渋面に歪めた。
『壊れていては仕方がないでしょう? 今はそんなことで揉めて時間を取りたくないの』
『ですが!!……・』
女性士官が更に口を開こうとすると同時にアークエンジェルのエアーロックが開き、二機と救命艇が発着デッキへと導かれた。
ストライクが格納庫に入るとエアーロックが閉まる。傍には被弾したモビルアーマーが収容されていた。
ストライクのハッチが開きキラが降りてくると、クルーが口々にざわめきを漏らした。
「おいおい、なんだってんだぁ? 子供じゃねぇか。こんな坊主がアレに乗ってたってぇのか?」
整備士がみんなの意見を代弁するように言い放った。
ストライクの着艦を聞いた友人たちがキラに飛びついた。
「よかったぁ、キラ」
「無事だったんだな」
トールに抱きつかれ、サイに頭をグシャグシャにかき回されつつもキラは笑った。
その様子をモニター越しに見守っていたシオンはアマテラスのハッチを開き、下へと降りていった。
「サイ!」
救命艇から出てきた紅い髪の少女がサイの胸に飛び込んだ。突然のことに驚いたサイだったが、すぐに嬉しそうに少女を抱きしめた。
「へぇ、こいつは驚いた」
愛想の良さそうな笑みを浮かべ一人の青年軍人がキラの傍に近づいてきた。
「君、コーディネイターだろ?」
(――――!! あいつ、この状況でなんてことを)
「……はい」
青年の言葉に周囲の空気が凍り付いた。
キラの肯定の返事に艦橋から降りてきたマリューの背後に控えていた兵士たちが一斉に銃を構えた。
ちっ、と舌打ちしてシオンはキラを護るために走り出した。
「止めろ! 銃を下ろせ!」
キラを庇うように兵士たちの前に立ちはだかったシオンに兵士たちは一瞬驚いたものの、銃を構えなおす。当然、シオンの身分など知らない者たちばかりだ。
敵意に満ちた数々の銃口を向けられながらも、シオンは臆することなく、その凛とした声を格納庫に響かせた。
「なんの権限があって我が国の民間人に銃を向ける? 仮にも自分たちを護ろうと戦った恩人だろう、彼は。その彼がコーディネイターだからという理由だけで、民間人の、それも少年に銃を向けるのが連合のやり方か!
我が国は中立国家だ。そのコロニーにコーディネイターがいることのどこがおかしい? 戦火に巻きこまれるのが嫌でここに移ってきた者がいても不思議じゃないだろう。ヘリオポリスの件は後日、我が国を通して正式に連合に抗議させていただく」
「お言葉ですが、あれはザフトが――――」
「あなたはこの艦の最高責任者か?」
シオンの言葉に抗議するように口を開いた女性士官へと視線を移す。
「いえ、自分は……」
「なら黙っていてください。私が用があるのはこの艦の最高責任者だけだ。あなたの意見など聞いてはいない」
ピシャリと言い捨て、シオンはいまだ自分達へと向けられる銃口を睨みつけた。
(この状況なら十分正当防衛が成立するよな……)
話しても埒が明かないのなら一戦交えることも辞さない、と戦闘態勢に移ろうと身体を動かそうとした、その時――――
「銃を下ろしなさい。あなたは……フィーリア代理ですか?」
シオンが行動を起こす前にマリューが静止の声をあげた。
「そうですが、あなたは?」
「失礼しました。地球連合軍第2宙域第5特務師団所属、マリュー・ラミアス大尉であります。現在、本艦アークエンジェルの艦長を勤めさせていただいております」
「では、あなたがこの艦の最高責任者ということですね?」
「はい」
「そうですか。では貴艦に着艦する前にも言ったように、今回のヘリオポリス内での戦闘と崩壊についての説明をしていただきたい。それと、ナチュラルであろうがコーディネーターであろうが、二度と我が国の民を侮辱する発言及び行動は慎んでいただきたい。特にそこの軽率そうな彼には、ね」
「いや、悪かったな。とんだ騒ぎにしちまって。ところでお前さん、一世代目? 二世代目?」
まったく反省していない様子の張本人が悪びれないようにキラに聞いた。
(こいつは……!! 一回殺してやろうか)
物騒なことを考えているシオンだが、聞かれた当の本人であるキラが「ええ、僕は一世代目ですし……」と言った。
「そっか。俺はただ聞きたかっただけなんだ。ここに来るまでの道中、ストライクのパイロットになるはずだった連中のシミュレーションをけっこう見てきたからさ。やつらノロクサ動かすにも四苦八苦してたんだぜ? それをいきなりあんなに簡単に動かしてくれちまうんだからさ」
青年は肩をすくませ、きびすを返した。
それを見送ったマリューは「では艦長室にご案内します」と言った。
「ありがとう、ラミアス艦長。だが、その前に医務室をお借りしたい」
「どこかお怪我でも?」
「ああ。私ではなく、捕獲した捕虜二人がね」
「捕虜?」
「そう。ザフト兵を二人ほど、ね」
「ザフト兵!?」
サラリと言い放ったシオンにマリューと女性士官は驚愕し、踵を返して立ち去ろうとしていた青年まで脚を止めて振り返った。
「許可できません! なぜザフト兵などを!!―――」
「私はラミアス艦長と話をしているんだ。あなたには聞いていない。それに彼らには今回の件に関して色々と聞かなければならない事がある。それを聞き出すまでは死なれては困るんです。オーブ代表代理である私が必要と判断し、捕虜にした。
ご心配なく、彼らの看護はすべて私がする。そういう訳で艦長、医務室をお借りしたいのですが?」
柔らかな声色と言葉遣いとは裏腹に、マリューを捕らえるシオンの瞳はどこまでも深い色で射抜くように鋭く光る。
有無を言わせぬ雰囲気に、マリューは壊れた人形のように頭を縦に振るしかできなかった。
その返答に、シオンは「ありがとう」と優雅に微笑むとアマテラスに戻り、コックピットから一人、半壊したジンからもう一人、二人のザフト兵をストレッチャーに乗せるとマリューに先導させ、医務室へと向かったのだった。
キラはシオンと共に救命ボートを拾って帰ってくるやいなやその処遇を巡ってデッキで揉めていた。
「認められないってどういうことです!? 推進部が壊れて漂流してたんです。それをまた、このまま放り出せとでも言うんですか? 避難したヘリオポリスの人たちが乗っているんですよ?!」
『すぐに救援艦がくる!』
頑なに受け入れを渋る女性士官の声は冷たい。
『……いいわ。許可します』
『本艦はまだ戦闘中です!避難民の受け入れなど』
ため息をついてマリューが許可を出すと、隣にいた女性士官がキッと睨んだ。
(……連合は民間人の人命などどうでもいいらしいな。俺がいる前でよくもまぁこんなセリフを言える)
モニター越しにその会話を聞いていたシオンはその整った顔を渋面に歪めた。
『壊れていては仕方がないでしょう? 今はそんなことで揉めて時間を取りたくないの』
『ですが!!……・』
女性士官が更に口を開こうとすると同時にアークエンジェルのエアーロックが開き、二機と救命艇が発着デッキへと導かれた。
ストライクが格納庫に入るとエアーロックが閉まる。傍には被弾したモビルアーマーが収容されていた。
ストライクのハッチが開きキラが降りてくると、クルーが口々にざわめきを漏らした。
「おいおい、なんだってんだぁ? 子供じゃねぇか。こんな坊主がアレに乗ってたってぇのか?」
整備士がみんなの意見を代弁するように言い放った。
ストライクの着艦を聞いた友人たちがキラに飛びついた。
「よかったぁ、キラ」
「無事だったんだな」
トールに抱きつかれ、サイに頭をグシャグシャにかき回されつつもキラは笑った。
その様子をモニター越しに見守っていたシオンはアマテラスのハッチを開き、下へと降りていった。
「サイ!」
救命艇から出てきた紅い髪の少女がサイの胸に飛び込んだ。突然のことに驚いたサイだったが、すぐに嬉しそうに少女を抱きしめた。
「へぇ、こいつは驚いた」
愛想の良さそうな笑みを浮かべ一人の青年軍人がキラの傍に近づいてきた。
「君、コーディネイターだろ?」
(――――!! あいつ、この状況でなんてことを)
「……はい」
青年の言葉に周囲の空気が凍り付いた。
キラの肯定の返事に艦橋から降りてきたマリューの背後に控えていた兵士たちが一斉に銃を構えた。
ちっ、と舌打ちしてシオンはキラを護るために走り出した。
「止めろ! 銃を下ろせ!」
キラを庇うように兵士たちの前に立ちはだかったシオンに兵士たちは一瞬驚いたものの、銃を構えなおす。当然、シオンの身分など知らない者たちばかりだ。
敵意に満ちた数々の銃口を向けられながらも、シオンは臆することなく、その凛とした声を格納庫に響かせた。
「なんの権限があって我が国の民間人に銃を向ける? 仮にも自分たちを護ろうと戦った恩人だろう、彼は。その彼がコーディネイターだからという理由だけで、民間人の、それも少年に銃を向けるのが連合のやり方か!
我が国は中立国家だ。そのコロニーにコーディネイターがいることのどこがおかしい? 戦火に巻きこまれるのが嫌でここに移ってきた者がいても不思議じゃないだろう。ヘリオポリスの件は後日、我が国を通して正式に連合に抗議させていただく」
「お言葉ですが、あれはザフトが――――」
「あなたはこの艦の最高責任者か?」
シオンの言葉に抗議するように口を開いた女性士官へと視線を移す。
「いえ、自分は……」
「なら黙っていてください。私が用があるのはこの艦の最高責任者だけだ。あなたの意見など聞いてはいない」
ピシャリと言い捨て、シオンはいまだ自分達へと向けられる銃口を睨みつけた。
(この状況なら十分正当防衛が成立するよな……)
話しても埒が明かないのなら一戦交えることも辞さない、と戦闘態勢に移ろうと身体を動かそうとした、その時――――
「銃を下ろしなさい。あなたは……フィーリア代理ですか?」
シオンが行動を起こす前にマリューが静止の声をあげた。
「そうですが、あなたは?」
「失礼しました。地球連合軍第2宙域第5特務師団所属、マリュー・ラミアス大尉であります。現在、本艦アークエンジェルの艦長を勤めさせていただいております」
「では、あなたがこの艦の最高責任者ということですね?」
「はい」
「そうですか。では貴艦に着艦する前にも言ったように、今回のヘリオポリス内での戦闘と崩壊についての説明をしていただきたい。それと、ナチュラルであろうがコーディネーターであろうが、二度と我が国の民を侮辱する発言及び行動は慎んでいただきたい。特にそこの軽率そうな彼には、ね」
「いや、悪かったな。とんだ騒ぎにしちまって。ところでお前さん、一世代目? 二世代目?」
まったく反省していない様子の張本人が悪びれないようにキラに聞いた。
(こいつは……!! 一回殺してやろうか)
物騒なことを考えているシオンだが、聞かれた当の本人であるキラが「ええ、僕は一世代目ですし……」と言った。
「そっか。俺はただ聞きたかっただけなんだ。ここに来るまでの道中、ストライクのパイロットになるはずだった連中のシミュレーションをけっこう見てきたからさ。やつらノロクサ動かすにも四苦八苦してたんだぜ? それをいきなりあんなに簡単に動かしてくれちまうんだからさ」
青年は肩をすくませ、きびすを返した。
それを見送ったマリューは「では艦長室にご案内します」と言った。
「ありがとう、ラミアス艦長。だが、その前に医務室をお借りしたい」
「どこかお怪我でも?」
「ああ。私ではなく、捕獲した捕虜二人がね」
「捕虜?」
「そう。ザフト兵を二人ほど、ね」
「ザフト兵!?」
サラリと言い放ったシオンにマリューと女性士官は驚愕し、踵を返して立ち去ろうとしていた青年まで脚を止めて振り返った。
「許可できません! なぜザフト兵などを!!―――」
「私はラミアス艦長と話をしているんだ。あなたには聞いていない。それに彼らには今回の件に関して色々と聞かなければならない事がある。それを聞き出すまでは死なれては困るんです。オーブ代表代理である私が必要と判断し、捕虜にした。
ご心配なく、彼らの看護はすべて私がする。そういう訳で艦長、医務室をお借りしたいのですが?」
柔らかな声色と言葉遣いとは裏腹に、マリューを捕らえるシオンの瞳はどこまでも深い色で射抜くように鋭く光る。
有無を言わせぬ雰囲気に、マリューは壊れた人形のように頭を縦に振るしかできなかった。
その返答に、シオンは「ありがとう」と優雅に微笑むとアマテラスに戻り、コックピットから一人、半壊したジンからもう一人、二人のザフト兵をストレッチャーに乗せるとマリューに先導させ、医務室へと向かったのだった。