Northern Lights(種無印)
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20話 ニコル
少年の手術が始まって数時間。
オペ中を示すランプが消え、ストレッチャーに乗せられた少年が病室へと運ばれていく。
その後に手術マスクを外しながら執刀医が出てきた。
「先生、彼は?」
「最善は尽くしました。意識が回復しないことには、まだなんとも言えませんが……彼の生命力を信じましょう。では、わたしはこれで」
シオンは立ち去る医師に深々と頭を下げた。
静かな病室内に、小さな呼吸音と機械の規則正しい電子音だけが響く。
生命があるのが奇跡と医師に言わしめただけあって、見ているほうが痛々しいその姿をシオンはただ見下ろしていた。
(ブリッツのパイロットか……あいつらならこの子のこと知ってるかな)
事態が落ち着いた今、ミゲルとラスティのことを思い出したシオンは当初の予定通り一度マンションに戻った。
「ただいま」
「「おかえり」」
相変わらず見事にハモる出迎えに、シオンの表情が緩む。
それぞれの部屋で寛いでいた2人をダイニングへ呼ぶと、シオンはお気に入りのローストした豆とサイフォン、フィルターなどを取り出し、セットしていく。
「なになに? うわー良い匂いする~」
「言ってくれればコーヒーくらい淹れてやるのに」
帰宅してすぐのシオンを気遣うように小さく笑うミゲルに「ありがとう、次は頼むよ」と返し、3つのカップへとコーヒーを注いだ。
椅子に腰掛けシオンの行動を見守っている2人の前にカップを差し出すと、自分も椅子へと腰を降ろしてコーヒーを一口啜る。
1拍、2拍……タイミングを置いてから口を開いた。
「数日前の戦闘は知っているな」
「足つきとザフトの戦闘だろ?」
「まぁな。つか、あんな大々的に中継されてりゃな。で? それがどうかしたのか?」
自分達はザフトだが今は捕虜の身。間近でザフトが戦おうが何も出来ない。
そんな戦闘の話をなぜ今ここでするのか。ミゲルとラスティの頭には疑問符が浮かぶ。
「……数時間前、オーブ領域内を出たところで足つき――アークエンジェルがザフトと戦闘に入った。その中でイージスを庇ってブリッツがストライクに撃たれた……俺が言っている意味は解るな?」
シオンはカップを置くと、ジッと2人を見つめた。
「ブリッツがストライクに……」
ミゲルはカップから手を離すと、その手前で指を組んで視線を落とした。ラスティも複雑な表情を浮かべ、両手で持つカップに力を込める。
(――ブリッツのパイロットとは顔見知りだな……そうでなければここまでの反応は……)
シオンの中で、憶測が確信へと変わる。
確かに、同胞が敵に撃たれればショックだろう。しかし、目の前の2人はそれ以上の衝撃を受けているように思えた。
「本来なら俺がしてはならない行動だったんだが……ブリッツを捜索してパイロットを救出した。奇跡的に生命は取り留めたが、危険な状態なのは間違いない」
――危険な状態――
その言葉に、ミゲルは組んでいた手へと額を押し付けるように項垂れ、ラスティは唇を噛み締めた。
「それで、だ。お前たち、俺と一緒に軍病院へ行かないか?」
「……! 行ってもいいのか?!」
椅子が後ろに倒れるのではと思うくらいの勢いで立ち上がるラスティをシオンが静かに見上げた。
「ああ。お前たちさえよければな。それに意識不明とはいっても、知り合いが傍にいれば回復も早いかも知れない」
「なんで俺らが知り合いだって……」
シオンの口から発せられた言葉に、ミゲルが驚いたように呟く。
「知り合いでなかったら、さっき俺がイージスとブリッツの話を出したとき、あそこまで沈んだ顔になるか。準備が出来次第行くぞ」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「間違いない。ニコルだ」
病室に入ったミゲルとラスティは眠っている少年――ニコルに近づくなり、そう言った。
「ひでぇな……助かるのか?」
名も知らぬ同胞のこんな姿は数え切れないほど見てきた。その経験が無意識にそんな言葉を紡がせたのだろう。
呟いた当の本人――ミゲルは、まるで自分が傷ついたように辛そうな表情を浮かべていた。
「後は彼次第だそうだ。出来る限りの手は打った。――信じよう。それ以外、今の俺たちにはできないさ。病院サイドには俺が交渉してくるから、出来る限り彼の傍にいてやれ」
「いいのか?!」
「仲間は大事にしろよ」
「……サンキュー」
ラスティの頭を乱暴な仕草で撫でると、シオンは病室を後にした。
ニコルの顔を覗き込むようにしていたミゲルはやり切れない思いに、ただニコルの名を口にすることしかできなかった。
「――彼の名前がニコル・アマルフィだということは解った。ついでだからイージスとデュエル、後、バスターのパイロットの名前も教えてくれないか」
医師に泊り込みの許可を貰ったシオンは病室に戻るなり、開口一番そう言った。
ミゲルとラスティはお互いの顔を見合わせたが、フルフルと頭を横に振る。
「名前は言えるけどさ。誰がどの機体に乗ってるか解んないんだよな」
ラスティが『お前、知ってるか?』と視線をミゲルに向ければ『知るわけないだろう』という返事が返ってくる。当然と言えば当然だろう。
ラスティは任務に失敗して意識を失っているうちに捕虜になり、ミゲルもストライクに落される寸前にシオンに助けられたのだ。
誰がどの機体に乗っているかの確認など出来ていない。
「あっ、けど、紅い機体なら解る」
フッと気づいたように顔を上げるミゲルに、ラスティはその先の言葉を促すような視線だけをミゲルへと向ける。
「紅い機体、イージスに乗ってるのはアスランだ。アスラン・ザラ」
「……確か……プラント最高評議会の国防委員長って〝ザラ〟って言わなかったか?」
ミゲルが口にした名が、シオンの記憶の中の情報と重なる。
まさかな、と思いながらも口にした言葉に、ラスティがあっけらかんと『パトリック・ザラはアスランの親父だぜ』と答えた。
「パトリック・ザラ……ねぇ。資料を見たことがあるが、厳つい顔してるよな。息子もそんな感じか?」
「ぜんっぜん! まったく似てないぜ。絶対母親似だって! ――あ……そういやさ、アスランで思い出しだけど、あいつってラクス嬢の婚約者なんだよな~」
「……!」
「シオン?」
婚約者という言葉に愕然となるシオンを、ラスティが覗き込むように話しかける。
「あ、いや……婚約って、まだ子供みたいな歳なのに?」
動揺を悟られまいと必死に言葉を探す。
(そうか……そうだよな。プラントの婚姻統制を考えれば当然か……)
本人達の意思を無視し、遺伝子だけが全ての婚姻制度。そんな制度を用いてまで繁栄を望む人々。
仮に、世界に平和が訪れても、その先に本当の意味での幸せというものは存在するのだろうか。考えがどんどん波及していく。
シオンの言葉に今度はミゲルが答えた。
「プラントじゃもう成人だ。婚姻統制は知ってるだろ? でもまぁ、あのふたりの場合は政治的策略っていうか、親の戦略っていうか……そんなのもあるんだろ」
「婚姻統制は知ってるが、政治的策略って」
「国の歌姫で評議長の娘、ラクス・クラインとザフトのエースパイロットで国防委員長の息子、アスラン・ザラ。まさにプラントの未来は安泰ってな」
「……」
その微笑みが自分ではない他の男だけに向けられ、
その唇が紡ぐのは自分の名ではなく、
その伸ばされた細く白い指を取るのは自分の手ではない。
(……俺は、何を考えて……)
シオンは頭を振って思考を必死に戻す。
そんなシオンの心情を知ってか知らずか、ミゲルとラスティは話を進めていく。
「デュエルとバスターのパイロットが誰かは解らないが、残ってるのはイザーク・ジュールとディアッカ・エルスマンの2人」
「おい、もしかして〝ジュール〟と〝エルスマン〟って……」
またも記憶の中の情報と一致する名前に、シオンが驚いたように呟くと、まるで自慢話でも聞かせるようにラスティが得意げに話す。
「ご名答。クルーゼ隊の紅は全員評議員の子息なんだよ。プラントじゃ一時、話題になったんだぜ?」
「評議員の息子がザフト……で、敵MS強奪作戦に参加か」
シオンは、感心とも呆れとも取れる溜め息をついた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「……っ……こ……こは?」
「気がついたようだね」
意識を取り戻したニコルにシオンはやさしく語りかけた。
「あな……たは?」
「わたしはシオン・フィーリア。ここはオーブだ。君は我が国の領海近くで行われた戦闘で負傷した。覚えているかい?」
足つきとの戦闘を思い出し、頷くニコル。
シオンの背後でラスティが『アレ誰だよ』『別人だ!』と小声でミゲルに抗議している。
その声にニコルは視線を移すと、視界に入ってきた人物を見て目を見開いた。
驚愕の表情を浮かべ、必死に声を発しようとするのをシオンが止める。
「無理をしてはいけない。君は助かったのが奇跡なほどの重傷だったんだ。あの2人はヘリオポリスでわたしが保護したんだ。君をここに運び込んだのもわたしだ。詳しい話は君が元気になったらしてあげるから、今はゆっくりと静養しなさい」
シオンがニコルの頭を撫でてやると、安心したのか、ニコルは再び眠りについた。
ニコルの意識が戻ってから数日後、ラスティとミゲルを病室に残して、シオンはまた行政府詰めの日々を送っていた。
少年の手術が始まって数時間。
オペ中を示すランプが消え、ストレッチャーに乗せられた少年が病室へと運ばれていく。
その後に手術マスクを外しながら執刀医が出てきた。
「先生、彼は?」
「最善は尽くしました。意識が回復しないことには、まだなんとも言えませんが……彼の生命力を信じましょう。では、わたしはこれで」
シオンは立ち去る医師に深々と頭を下げた。
静かな病室内に、小さな呼吸音と機械の規則正しい電子音だけが響く。
生命があるのが奇跡と医師に言わしめただけあって、見ているほうが痛々しいその姿をシオンはただ見下ろしていた。
(ブリッツのパイロットか……あいつらならこの子のこと知ってるかな)
事態が落ち着いた今、ミゲルとラスティのことを思い出したシオンは当初の予定通り一度マンションに戻った。
「ただいま」
「「おかえり」」
相変わらず見事にハモる出迎えに、シオンの表情が緩む。
それぞれの部屋で寛いでいた2人をダイニングへ呼ぶと、シオンはお気に入りのローストした豆とサイフォン、フィルターなどを取り出し、セットしていく。
「なになに? うわー良い匂いする~」
「言ってくれればコーヒーくらい淹れてやるのに」
帰宅してすぐのシオンを気遣うように小さく笑うミゲルに「ありがとう、次は頼むよ」と返し、3つのカップへとコーヒーを注いだ。
椅子に腰掛けシオンの行動を見守っている2人の前にカップを差し出すと、自分も椅子へと腰を降ろしてコーヒーを一口啜る。
1拍、2拍……タイミングを置いてから口を開いた。
「数日前の戦闘は知っているな」
「足つきとザフトの戦闘だろ?」
「まぁな。つか、あんな大々的に中継されてりゃな。で? それがどうかしたのか?」
自分達はザフトだが今は捕虜の身。間近でザフトが戦おうが何も出来ない。
そんな戦闘の話をなぜ今ここでするのか。ミゲルとラスティの頭には疑問符が浮かぶ。
「……数時間前、オーブ領域内を出たところで足つき――アークエンジェルがザフトと戦闘に入った。その中でイージスを庇ってブリッツがストライクに撃たれた……俺が言っている意味は解るな?」
シオンはカップを置くと、ジッと2人を見つめた。
「ブリッツがストライクに……」
ミゲルはカップから手を離すと、その手前で指を組んで視線を落とした。ラスティも複雑な表情を浮かべ、両手で持つカップに力を込める。
(――ブリッツのパイロットとは顔見知りだな……そうでなければここまでの反応は……)
シオンの中で、憶測が確信へと変わる。
確かに、同胞が敵に撃たれればショックだろう。しかし、目の前の2人はそれ以上の衝撃を受けているように思えた。
「本来なら俺がしてはならない行動だったんだが……ブリッツを捜索してパイロットを救出した。奇跡的に生命は取り留めたが、危険な状態なのは間違いない」
――危険な状態――
その言葉に、ミゲルは組んでいた手へと額を押し付けるように項垂れ、ラスティは唇を噛み締めた。
「それで、だ。お前たち、俺と一緒に軍病院へ行かないか?」
「……! 行ってもいいのか?!」
椅子が後ろに倒れるのではと思うくらいの勢いで立ち上がるラスティをシオンが静かに見上げた。
「ああ。お前たちさえよければな。それに意識不明とはいっても、知り合いが傍にいれば回復も早いかも知れない」
「なんで俺らが知り合いだって……」
シオンの口から発せられた言葉に、ミゲルが驚いたように呟く。
「知り合いでなかったら、さっき俺がイージスとブリッツの話を出したとき、あそこまで沈んだ顔になるか。準備が出来次第行くぞ」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「間違いない。ニコルだ」
病室に入ったミゲルとラスティは眠っている少年――ニコルに近づくなり、そう言った。
「ひでぇな……助かるのか?」
名も知らぬ同胞のこんな姿は数え切れないほど見てきた。その経験が無意識にそんな言葉を紡がせたのだろう。
呟いた当の本人――ミゲルは、まるで自分が傷ついたように辛そうな表情を浮かべていた。
「後は彼次第だそうだ。出来る限りの手は打った。――信じよう。それ以外、今の俺たちにはできないさ。病院サイドには俺が交渉してくるから、出来る限り彼の傍にいてやれ」
「いいのか?!」
「仲間は大事にしろよ」
「……サンキュー」
ラスティの頭を乱暴な仕草で撫でると、シオンは病室を後にした。
ニコルの顔を覗き込むようにしていたミゲルはやり切れない思いに、ただニコルの名を口にすることしかできなかった。
「――彼の名前がニコル・アマルフィだということは解った。ついでだからイージスとデュエル、後、バスターのパイロットの名前も教えてくれないか」
医師に泊り込みの許可を貰ったシオンは病室に戻るなり、開口一番そう言った。
ミゲルとラスティはお互いの顔を見合わせたが、フルフルと頭を横に振る。
「名前は言えるけどさ。誰がどの機体に乗ってるか解んないんだよな」
ラスティが『お前、知ってるか?』と視線をミゲルに向ければ『知るわけないだろう』という返事が返ってくる。当然と言えば当然だろう。
ラスティは任務に失敗して意識を失っているうちに捕虜になり、ミゲルもストライクに落される寸前にシオンに助けられたのだ。
誰がどの機体に乗っているかの確認など出来ていない。
「あっ、けど、紅い機体なら解る」
フッと気づいたように顔を上げるミゲルに、ラスティはその先の言葉を促すような視線だけをミゲルへと向ける。
「紅い機体、イージスに乗ってるのはアスランだ。アスラン・ザラ」
「……確か……プラント最高評議会の国防委員長って〝ザラ〟って言わなかったか?」
ミゲルが口にした名が、シオンの記憶の中の情報と重なる。
まさかな、と思いながらも口にした言葉に、ラスティがあっけらかんと『パトリック・ザラはアスランの親父だぜ』と答えた。
「パトリック・ザラ……ねぇ。資料を見たことがあるが、厳つい顔してるよな。息子もそんな感じか?」
「ぜんっぜん! まったく似てないぜ。絶対母親似だって! ――あ……そういやさ、アスランで思い出しだけど、あいつってラクス嬢の婚約者なんだよな~」
「……!」
「シオン?」
婚約者という言葉に愕然となるシオンを、ラスティが覗き込むように話しかける。
「あ、いや……婚約って、まだ子供みたいな歳なのに?」
動揺を悟られまいと必死に言葉を探す。
(そうか……そうだよな。プラントの婚姻統制を考えれば当然か……)
本人達の意思を無視し、遺伝子だけが全ての婚姻制度。そんな制度を用いてまで繁栄を望む人々。
仮に、世界に平和が訪れても、その先に本当の意味での幸せというものは存在するのだろうか。考えがどんどん波及していく。
シオンの言葉に今度はミゲルが答えた。
「プラントじゃもう成人だ。婚姻統制は知ってるだろ? でもまぁ、あのふたりの場合は政治的策略っていうか、親の戦略っていうか……そんなのもあるんだろ」
「婚姻統制は知ってるが、政治的策略って」
「国の歌姫で評議長の娘、ラクス・クラインとザフトのエースパイロットで国防委員長の息子、アスラン・ザラ。まさにプラントの未来は安泰ってな」
「……」
その微笑みが自分ではない他の男だけに向けられ、
その唇が紡ぐのは自分の名ではなく、
その伸ばされた細く白い指を取るのは自分の手ではない。
(……俺は、何を考えて……)
シオンは頭を振って思考を必死に戻す。
そんなシオンの心情を知ってか知らずか、ミゲルとラスティは話を進めていく。
「デュエルとバスターのパイロットが誰かは解らないが、残ってるのはイザーク・ジュールとディアッカ・エルスマンの2人」
「おい、もしかして〝ジュール〟と〝エルスマン〟って……」
またも記憶の中の情報と一致する名前に、シオンが驚いたように呟くと、まるで自慢話でも聞かせるようにラスティが得意げに話す。
「ご名答。クルーゼ隊の紅は全員評議員の子息なんだよ。プラントじゃ一時、話題になったんだぜ?」
「評議員の息子がザフト……で、敵MS強奪作戦に参加か」
シオンは、感心とも呆れとも取れる溜め息をついた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「……っ……こ……こは?」
「気がついたようだね」
意識を取り戻したニコルにシオンはやさしく語りかけた。
「あな……たは?」
「わたしはシオン・フィーリア。ここはオーブだ。君は我が国の領海近くで行われた戦闘で負傷した。覚えているかい?」
足つきとの戦闘を思い出し、頷くニコル。
シオンの背後でラスティが『アレ誰だよ』『別人だ!』と小声でミゲルに抗議している。
その声にニコルは視線を移すと、視界に入ってきた人物を見て目を見開いた。
驚愕の表情を浮かべ、必死に声を発しようとするのをシオンが止める。
「無理をしてはいけない。君は助かったのが奇跡なほどの重傷だったんだ。あの2人はヘリオポリスでわたしが保護したんだ。君をここに運び込んだのもわたしだ。詳しい話は君が元気になったらしてあげるから、今はゆっくりと静養しなさい」
シオンがニコルの頭を撫でてやると、安心したのか、ニコルは再び眠りについた。
ニコルの意識が戻ってから数日後、ラスティとミゲルを病室に残して、シオンはまた行政府詰めの日々を送っていた。