Northern Lights(種無印)
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16話 黄金と闇と
「アンノウンMS1機。こちらに向かってきます!」
ヘリオポリス崩壊から、常に警戒態勢を布いているオーブ軍司令室内にオペレーターの硬い声が響いた。
緊迫した空気が司令室内を覆う中、更にオペレーターの報告が続く。
「モニターに映像出ます」
「……黄金の……MS?」
正面の大型モニターに映し出された機体を見たソガが思わず呟いたとき、そのMSからと思われる音声が司令室内に届いた。
<私の名はシオン・フィーリア。国防本部、聞こえるか?>
その突然の通信に、ただでさえ緊迫した空気に包まれていた司令室内が一気にざわつく。
「シオン・フィーリア? 誰だ?」
「知らん。機体の所属認識番号は不明、パイロットも知らない人間……」
「じゃあ敵だろ?! 攻撃準備だ!」
周囲の焦った様子の中、『シオン・フィーリア』の名を知るソガと数名の士官が顔を見合わせた。
(シオン様……そして黄金のMS――“闇の獅子”が目覚められたのか……)
その事実にオーブの未来を想い、ソガは眉を寄せる。
「迎撃体制を解除! あのMSは味方だ。攻撃することは許さん。すぐに回線を開け!」
ソガの命を受けたオペレーターが慌ててアンノウンへ回線を繋ぐと、それを受けたシオンは計器を操作し、コックピット内の画像が出ないよう音声のみで回線を繋いだ。
側に居るミゲルとラスティの姿を晒すのが躊躇われた為だった。
正体不明のMSが突如現れるだけでも混乱するというのに、そこへザフトのパイロットスーツに身を包んだ二人を晒すなど、愚かな行為でしかない。
「こちらオーブ軍司令室。お待たせして申し訳ありません、わたしはソガ一佐であります」
<久しぶりだなソガ一佐、ウズミ様は行政府か?>
そう問いかける声は、先ほどのものよりも若干柔らかさを含んだもののように感じられた。
それを感じ取ったのか、何も写っていないモニターを見つめるソガの表情から厳しさが消えていく。
「はい。ただいま行政府にて他の首長方と会議中であります。お急ぎでしたら行政府に繋ぎますので少々お待ち―――」
<その必要はない。このまま行政府へ向かう。それと後ほど連合のシャトルが降下してくる。その中に乗っているのはヘリオポリスの民間人だ。そちらの対応を頼む>
「了解しました」
そこで通信が切れ、黄金のMSが行政府へと向かった。
「何があっても外に出るなよ。通信も無視していい」
行政府前に着地したアマテラス。
ミゲルとラスティをコックピットに残したまま、シオンは足早に会議室へと向かった。
途中、自分が普段使っている部屋へと立ち寄り、手早くパイロットスーツを脱ぎ捨ててオーブの軍服へと着替えると、パイロットスーツとは逆に白を基調としたその服に気が引き締まる思いがする。
シオンの立場上、その制服にはカガリと同じ装飾が施されており、一軍人のそれとは違っている。
これから向かう場所で、ウズミに恥を掻かせてはいけないと、その身だしなみにも細心の注意を払いつつ、部屋を後にした。
扉をノックし、中へ足を踏み入れると室内の視線が一斉にシオンに注がれた。
突き刺さるような数々の視線に怯むことなく佇む。
「重要な会議中、失礼します。急ぎの報告のため参りました」
敬礼と共に発せられた声が、会議室内を更にざわつかせた。
シオンの顔を知る者は、“闇の獅子”の登場と“急ぎの報告”の言葉に厳しい表情を浮かべ彼の行動を見守る。
シオンの顔を知らぬ者は、突然乱入してきた人物に不信感を顕わにし、「あれは何者だ」と口々に呟いた。
それらを気にすることなくウズミの傍へと足を進める。
「よく戻った。シオン。そなたの報告、目を通したぞ。Xシリーズとアークエンジェル……厄介な問題を抱え込んだものだ。〝アレ〟は目覚めたのか?」
「はい。ですがまだ調整が必要です。改良も含めてしばらくは実戦投入は無理かと」
「だが、アストレイは使えまい。そなたの動きにMSがついてゆけぬ」
「ええ。ですがあいつの調整にかかりきりになると思いますからアストレイに乗ることはありません。それと……〝例の2人〟を外に待たせてあります。後でお会いになりますか?」
あえて〝捕虜〟という言葉を避けたシオンの心中を察したウズミは、目を細めると「後ほど連れて来てくれ」とだけ呟いた。
会議が終わり、執務室に戻ったウズミはシオンとミゲルとラスティの3人を呼んだ。
一応捕虜扱いではあるがその場に4人しかいないこともあり、思った以上に穏便に話は続いた。
「――ふむ。ではクルーゼ隊長の独断でヘリオポリスのXシリーズ奪取は行われたのだな?」
「そうです。評議会からの返事を待っていては遅いと隊長が判断したんです」
「ラウル・クルーゼ――有能すぎるほど切れる男だな」
机に両肘をついて思案するウズミ。シオンも違う意味でにクルーゼに警戒心を抱いていた。
「それではウズミ様、彼らの今後の扱いですが……」
話しが終わり、今度はミゲルとラスティの処置についての話に及んでいた。
(やっぱ投獄だよな)
(そりゃそうだろ。怪我も完治してるし……ザフトに身柄を引き渡されるまではそうなるだろうな)
ひそひそと小声で話すラスティの言葉に、ミゲルもまた小声で返す。
「無理を言っているのは承知です。少なくともアークエンジェル内で共に過ごした時間の中で、彼らの人となりは理解したつもりです。捕虜にしたとはいえ、我が国は中立。人道的立場から見ても、彼らに逃亡の意思がないのなら投獄の必要はないと考えます。どうか彼らの身柄は私に預けてはいただけないでしょうか」
「相変わらずだな。一度懐に入れた人間は放っておけない……それがそなたの弱点にも繋がるのだぞ。それでもか?」
「此処まで面倒を見てきた人間に投獄生活をさせたくありません。万が一その間に何か起こったら責任は私が取ります」
シオンは厳しい表情のまま真っ直ぐな瞳でウズミを見据え、「それに……」と言葉を続ける。
「もう二度と後悔はしたくありませんから」
「好きにするがよい」
若干の諦めを含んだウズミの言葉に、シオンは「ありがとうございます」と頭を下げた。
「アンノウンMS1機。こちらに向かってきます!」
ヘリオポリス崩壊から、常に警戒態勢を布いているオーブ軍司令室内にオペレーターの硬い声が響いた。
緊迫した空気が司令室内を覆う中、更にオペレーターの報告が続く。
「モニターに映像出ます」
「……黄金の……MS?」
正面の大型モニターに映し出された機体を見たソガが思わず呟いたとき、そのMSからと思われる音声が司令室内に届いた。
<私の名はシオン・フィーリア。国防本部、聞こえるか?>
その突然の通信に、ただでさえ緊迫した空気に包まれていた司令室内が一気にざわつく。
「シオン・フィーリア? 誰だ?」
「知らん。機体の所属認識番号は不明、パイロットも知らない人間……」
「じゃあ敵だろ?! 攻撃準備だ!」
周囲の焦った様子の中、『シオン・フィーリア』の名を知るソガと数名の士官が顔を見合わせた。
(シオン様……そして黄金のMS――“闇の獅子”が目覚められたのか……)
その事実にオーブの未来を想い、ソガは眉を寄せる。
「迎撃体制を解除! あのMSは味方だ。攻撃することは許さん。すぐに回線を開け!」
ソガの命を受けたオペレーターが慌ててアンノウンへ回線を繋ぐと、それを受けたシオンは計器を操作し、コックピット内の画像が出ないよう音声のみで回線を繋いだ。
側に居るミゲルとラスティの姿を晒すのが躊躇われた為だった。
正体不明のMSが突如現れるだけでも混乱するというのに、そこへザフトのパイロットスーツに身を包んだ二人を晒すなど、愚かな行為でしかない。
「こちらオーブ軍司令室。お待たせして申し訳ありません、わたしはソガ一佐であります」
<久しぶりだなソガ一佐、ウズミ様は行政府か?>
そう問いかける声は、先ほどのものよりも若干柔らかさを含んだもののように感じられた。
それを感じ取ったのか、何も写っていないモニターを見つめるソガの表情から厳しさが消えていく。
「はい。ただいま行政府にて他の首長方と会議中であります。お急ぎでしたら行政府に繋ぎますので少々お待ち―――」
<その必要はない。このまま行政府へ向かう。それと後ほど連合のシャトルが降下してくる。その中に乗っているのはヘリオポリスの民間人だ。そちらの対応を頼む>
「了解しました」
そこで通信が切れ、黄金のMSが行政府へと向かった。
「何があっても外に出るなよ。通信も無視していい」
行政府前に着地したアマテラス。
ミゲルとラスティをコックピットに残したまま、シオンは足早に会議室へと向かった。
途中、自分が普段使っている部屋へと立ち寄り、手早くパイロットスーツを脱ぎ捨ててオーブの軍服へと着替えると、パイロットスーツとは逆に白を基調としたその服に気が引き締まる思いがする。
シオンの立場上、その制服にはカガリと同じ装飾が施されており、一軍人のそれとは違っている。
これから向かう場所で、ウズミに恥を掻かせてはいけないと、その身だしなみにも細心の注意を払いつつ、部屋を後にした。
扉をノックし、中へ足を踏み入れると室内の視線が一斉にシオンに注がれた。
突き刺さるような数々の視線に怯むことなく佇む。
「重要な会議中、失礼します。急ぎの報告のため参りました」
敬礼と共に発せられた声が、会議室内を更にざわつかせた。
シオンの顔を知る者は、“闇の獅子”の登場と“急ぎの報告”の言葉に厳しい表情を浮かべ彼の行動を見守る。
シオンの顔を知らぬ者は、突然乱入してきた人物に不信感を顕わにし、「あれは何者だ」と口々に呟いた。
それらを気にすることなくウズミの傍へと足を進める。
「よく戻った。シオン。そなたの報告、目を通したぞ。Xシリーズとアークエンジェル……厄介な問題を抱え込んだものだ。〝アレ〟は目覚めたのか?」
「はい。ですがまだ調整が必要です。改良も含めてしばらくは実戦投入は無理かと」
「だが、アストレイは使えまい。そなたの動きにMSがついてゆけぬ」
「ええ。ですがあいつの調整にかかりきりになると思いますからアストレイに乗ることはありません。それと……〝例の2人〟を外に待たせてあります。後でお会いになりますか?」
あえて〝捕虜〟という言葉を避けたシオンの心中を察したウズミは、目を細めると「後ほど連れて来てくれ」とだけ呟いた。
会議が終わり、執務室に戻ったウズミはシオンとミゲルとラスティの3人を呼んだ。
一応捕虜扱いではあるがその場に4人しかいないこともあり、思った以上に穏便に話は続いた。
「――ふむ。ではクルーゼ隊長の独断でヘリオポリスのXシリーズ奪取は行われたのだな?」
「そうです。評議会からの返事を待っていては遅いと隊長が判断したんです」
「ラウル・クルーゼ――有能すぎるほど切れる男だな」
机に両肘をついて思案するウズミ。シオンも違う意味でにクルーゼに警戒心を抱いていた。
「それではウズミ様、彼らの今後の扱いですが……」
話しが終わり、今度はミゲルとラスティの処置についての話に及んでいた。
(やっぱ投獄だよな)
(そりゃそうだろ。怪我も完治してるし……ザフトに身柄を引き渡されるまではそうなるだろうな)
ひそひそと小声で話すラスティの言葉に、ミゲルもまた小声で返す。
「無理を言っているのは承知です。少なくともアークエンジェル内で共に過ごした時間の中で、彼らの人となりは理解したつもりです。捕虜にしたとはいえ、我が国は中立。人道的立場から見ても、彼らに逃亡の意思がないのなら投獄の必要はないと考えます。どうか彼らの身柄は私に預けてはいただけないでしょうか」
「相変わらずだな。一度懐に入れた人間は放っておけない……それがそなたの弱点にも繋がるのだぞ。それでもか?」
「此処まで面倒を見てきた人間に投獄生活をさせたくありません。万が一その間に何か起こったら責任は私が取ります」
シオンは厳しい表情のまま真っ直ぐな瞳でウズミを見据え、「それに……」と言葉を続ける。
「もう二度と後悔はしたくありませんから」
「好きにするがよい」
若干の諦めを含んだウズミの言葉に、シオンは「ありがとうございます」と頭を下げた。