Northern Lights(種無印)
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14話 地球連合軍第8艦隊
数十に及ぶ戦艦と駆逐艦を引きつれ〝メネラオス〟がアークエンジェルと合流する。
「180度回答頭、減速、さらに20%。相対速度合わせ」
〝ようやくここまで来た〟指示を出すマリューの顔だけでなく、今現在ブリッジにいるクルー全員の思いは1つだった。
メネラオスから飛び立ったランチを感慨深げに見つめる。次いで医務室への呼び出しコードを押してシオンにハルバートンの到着を告げる。
「いや、ヘリオポリス崩壊の知らせを受けたときには、もう駄目だと思ったよ。それがまさかここで諸君と会えるとは」
「ありがとうございます、閣下。お久しぶりです」
ハルバートンの登場にマリューをはじめ、その場にいる全クルーが一斉に敬礼した。その中にムウの姿を見つけハルバートンがねぎらいの言葉を掛ける。
ムウは『さして役に立てませんでした』と苦笑した。
士官たちとの挨拶が済むと、ハルバートンは後方で整列しているキラたちと扉の前に佇むひとりの青年に目を向けた。
「彼らがそうかね?」
「はい。操艦を手伝ってくれたヘリオポリスの学生たちです」
誇らしげにキラたちを紹介するマリュー。ハルバートンの彼らを見つめる目は優しかった。
「君たちのご家族の消息も確認してきたぞ。みなさん、ご無事だ。とんでもない状況の中、よく頑張ってくれた。私からも礼を言う。後でゆっくりと話したいものだな」
そう言って今度はシオンに視線を向け、近づく。
「地球連合軍第8艦隊司令官デュエイン・ハルバートン准将です。あなたがオーブ連合首長国代表代理シオン・フィーリア殿ですね?」
「お初にお目にかかります、ハルバートン提督。このような格好で申し訳ありません。今回、公式訪問ではなかったものですから」
シオンは人当たりの良い笑顔と共に手を差し出すと握手を求めた。
その場慣れした、余裕さえ感じる振る舞いに、マリューはシオンの身分を改めて思い知った。
ここにいる学生達とさほど変わらない年齢でありながら、一国の代表の片腕なのだと。
握手を解くと、シオンは真っ直ぐハルバートンを見据えながら言葉を続けた。
「改めてご挨拶させていただきます。シオン・フィーリアです。この艦には先日起きたヘリオポリス内での戦闘と崩壊に関する説明をしていただく為に一時的に着艦させていただきました」
「それで、納得のいく説明はさせていただいたのでしょうか?」
「ええ。それに関してはもうラミアス艦長からご説明をいただきました。それでも私がここにお邪魔しているのは、この艦に保護及び拘束されている我が国の民間人の身柄の引渡し要求の為です。この件に関してはさすがにラミアス艦長でも自分の一存では許可しかねるとのことでしたので」
チラリと視線をマリューに移せばバツが悪そうに視線をそらした。
「そういうわけで場所を移してゆっくりと話し合いをさせていただきたいのですが、よろしいですか? ハルバートン提督」
「そうですな」
シオンの言葉に頷き、格納庫を後にした。
艦長室にマリュー、ムウ、ナタル、ハルバートン、ホフマン、そしてシオンが同席した。
「しかしまぁ、この艦1つと〝G〟1機の為にヘリオポリスとアルテミスを落とすとはな……」
「だが、彼女らがストライクとこの艦だけでも守った事はいずれ必ず我ら地球軍の利となる」
「アラスカはそうは思っていないようですが?」
「ふん! 奴らに宇宙の戦いのなにが解る」
ホフマンの苦々しい口調にハルバートンが擁護の言葉を開く。
シオンは彼らの言い合いを目を閉じてただ黙って聞いていた。その中でマリューだけが1人心配そうな視線をシオンに向ける。
マリューにしてみればシオンの沈黙が何より怖い。彼の怒気を知っているからこそ、この会話の中で彼が黙っているのが心配なのだ。
会話はなおも続く。
「ではコーディネイターの子供の件は? これも不問ですかな?」
「キラ・ヤマトは友人を救いたいという一心でストライクに乗ってくれたのです!」
会話がキラに及ぶなりマリューは身を乗り出して口を開いた。
元々無関係の彼を巻き込み、無理やりMSに乗せ続けたのは自分たちなのだ。非はそれを許可した自分にある。
「彼の力がなければ我々はここまで辿り着くことはできませんでした。またそのせいで彼は同胞と戦わなくてはならなくなり非常に悩んでいました。その彼に戦うことを強要したのは自分たちです。責任はMSに乗せることを許可した自分にあります。誠実でやさしい子です。我々は彼に信頼で答えるべきだと私は考えます」
「しかし、このまま解放するには……」
「僭越でありますが、自分はホフマン大佐の意見に賛成であります」
ホフマンの意見に賛成するようにナタルが口を開いた。
「彼の能力には目を見張るものがあります。Gの機密を知り尽くした彼をこのまま解放するなど……」
「ふん! すでにザフトに4機も渡っているのだ。今更機密もない」
ハルバートンの言葉にナタルが『ですが!』と叫ぶ。
「彼の戦力は貴重です。できればこのまま我が軍の力とすべきです!」
「だが、ラミアス大尉の話だと彼にその気はないようだが?」
「彼の両親はナチュラルでヘリオポリス崩壊後に脱出し、今は地球にいます。彼らを我々が保護できれば……」
ナタルの言葉にハルバートンが拳を強く机に打ち付けた。
「ふざけたことを言うな! そんな兵がなんの役に立つ!!」
「もっ、申し訳ありません」
先程とはうって変わった厳しい声にさすがのナタルもすくみ上がった。
その間もシオンは口を開かない。この場に彼の存在などないように醜い意見が飛び交う。
そんな中、マリューの脳裏を疑問がよぎった。
黙っているとはいえ、なぜハルバートンはシオンの同席を許可したのだろう? いや、許可というよりもその場にいて当然とも言うべき扱いではなかっただろうか……
ふと、『彼らは知り合いなのでは?』という考えが浮かぶが、なにを馬鹿なと打ち消す。なによりも格納庫で初対面の挨拶をしていたではないか。
マリューはそれ以上考えないようにその場の会話に意識を集中させた。
「――ヘリオポリスが崩壊し、すべてのデーターが失われた今、アークエンジェルとGはなんとしてもアラスカへ送らねばならん! 軌道離脱ポイントまでは我々が護衛する。君らはそこからまっすぐに本部へ降下すればいい」
ハルバートンの言葉にマリューは『わかりました』と答えた。
マリュー、ムウ、ナタル、そしてホフマンが退出し、シオンだけがその場に残った。
「さて、待たせてすまなかったな。シオン」
2人きりになるのを確認してハルバートンはシオンの前に座った。それまで沈黙を守っていたシオンが口を開いた。
「お久しぶりです。提督」
数十に及ぶ戦艦と駆逐艦を引きつれ〝メネラオス〟がアークエンジェルと合流する。
「180度回答頭、減速、さらに20%。相対速度合わせ」
〝ようやくここまで来た〟指示を出すマリューの顔だけでなく、今現在ブリッジにいるクルー全員の思いは1つだった。
メネラオスから飛び立ったランチを感慨深げに見つめる。次いで医務室への呼び出しコードを押してシオンにハルバートンの到着を告げる。
「いや、ヘリオポリス崩壊の知らせを受けたときには、もう駄目だと思ったよ。それがまさかここで諸君と会えるとは」
「ありがとうございます、閣下。お久しぶりです」
ハルバートンの登場にマリューをはじめ、その場にいる全クルーが一斉に敬礼した。その中にムウの姿を見つけハルバートンがねぎらいの言葉を掛ける。
ムウは『さして役に立てませんでした』と苦笑した。
士官たちとの挨拶が済むと、ハルバートンは後方で整列しているキラたちと扉の前に佇むひとりの青年に目を向けた。
「彼らがそうかね?」
「はい。操艦を手伝ってくれたヘリオポリスの学生たちです」
誇らしげにキラたちを紹介するマリュー。ハルバートンの彼らを見つめる目は優しかった。
「君たちのご家族の消息も確認してきたぞ。みなさん、ご無事だ。とんでもない状況の中、よく頑張ってくれた。私からも礼を言う。後でゆっくりと話したいものだな」
そう言って今度はシオンに視線を向け、近づく。
「地球連合軍第8艦隊司令官デュエイン・ハルバートン准将です。あなたがオーブ連合首長国代表代理シオン・フィーリア殿ですね?」
「お初にお目にかかります、ハルバートン提督。このような格好で申し訳ありません。今回、公式訪問ではなかったものですから」
シオンは人当たりの良い笑顔と共に手を差し出すと握手を求めた。
その場慣れした、余裕さえ感じる振る舞いに、マリューはシオンの身分を改めて思い知った。
ここにいる学生達とさほど変わらない年齢でありながら、一国の代表の片腕なのだと。
握手を解くと、シオンは真っ直ぐハルバートンを見据えながら言葉を続けた。
「改めてご挨拶させていただきます。シオン・フィーリアです。この艦には先日起きたヘリオポリス内での戦闘と崩壊に関する説明をしていただく為に一時的に着艦させていただきました」
「それで、納得のいく説明はさせていただいたのでしょうか?」
「ええ。それに関してはもうラミアス艦長からご説明をいただきました。それでも私がここにお邪魔しているのは、この艦に保護及び拘束されている我が国の民間人の身柄の引渡し要求の為です。この件に関してはさすがにラミアス艦長でも自分の一存では許可しかねるとのことでしたので」
チラリと視線をマリューに移せばバツが悪そうに視線をそらした。
「そういうわけで場所を移してゆっくりと話し合いをさせていただきたいのですが、よろしいですか? ハルバートン提督」
「そうですな」
シオンの言葉に頷き、格納庫を後にした。
艦長室にマリュー、ムウ、ナタル、ハルバートン、ホフマン、そしてシオンが同席した。
「しかしまぁ、この艦1つと〝G〟1機の為にヘリオポリスとアルテミスを落とすとはな……」
「だが、彼女らがストライクとこの艦だけでも守った事はいずれ必ず我ら地球軍の利となる」
「アラスカはそうは思っていないようですが?」
「ふん! 奴らに宇宙の戦いのなにが解る」
ホフマンの苦々しい口調にハルバートンが擁護の言葉を開く。
シオンは彼らの言い合いを目を閉じてただ黙って聞いていた。その中でマリューだけが1人心配そうな視線をシオンに向ける。
マリューにしてみればシオンの沈黙が何より怖い。彼の怒気を知っているからこそ、この会話の中で彼が黙っているのが心配なのだ。
会話はなおも続く。
「ではコーディネイターの子供の件は? これも不問ですかな?」
「キラ・ヤマトは友人を救いたいという一心でストライクに乗ってくれたのです!」
会話がキラに及ぶなりマリューは身を乗り出して口を開いた。
元々無関係の彼を巻き込み、無理やりMSに乗せ続けたのは自分たちなのだ。非はそれを許可した自分にある。
「彼の力がなければ我々はここまで辿り着くことはできませんでした。またそのせいで彼は同胞と戦わなくてはならなくなり非常に悩んでいました。その彼に戦うことを強要したのは自分たちです。責任はMSに乗せることを許可した自分にあります。誠実でやさしい子です。我々は彼に信頼で答えるべきだと私は考えます」
「しかし、このまま解放するには……」
「僭越でありますが、自分はホフマン大佐の意見に賛成であります」
ホフマンの意見に賛成するようにナタルが口を開いた。
「彼の能力には目を見張るものがあります。Gの機密を知り尽くした彼をこのまま解放するなど……」
「ふん! すでにザフトに4機も渡っているのだ。今更機密もない」
ハルバートンの言葉にナタルが『ですが!』と叫ぶ。
「彼の戦力は貴重です。できればこのまま我が軍の力とすべきです!」
「だが、ラミアス大尉の話だと彼にその気はないようだが?」
「彼の両親はナチュラルでヘリオポリス崩壊後に脱出し、今は地球にいます。彼らを我々が保護できれば……」
ナタルの言葉にハルバートンが拳を強く机に打ち付けた。
「ふざけたことを言うな! そんな兵がなんの役に立つ!!」
「もっ、申し訳ありません」
先程とはうって変わった厳しい声にさすがのナタルもすくみ上がった。
その間もシオンは口を開かない。この場に彼の存在などないように醜い意見が飛び交う。
そんな中、マリューの脳裏を疑問がよぎった。
黙っているとはいえ、なぜハルバートンはシオンの同席を許可したのだろう? いや、許可というよりもその場にいて当然とも言うべき扱いではなかっただろうか……
ふと、『彼らは知り合いなのでは?』という考えが浮かぶが、なにを馬鹿なと打ち消す。なによりも格納庫で初対面の挨拶をしていたではないか。
マリューはそれ以上考えないようにその場の会話に意識を集中させた。
「――ヘリオポリスが崩壊し、すべてのデーターが失われた今、アークエンジェルとGはなんとしてもアラスカへ送らねばならん! 軌道離脱ポイントまでは我々が護衛する。君らはそこからまっすぐに本部へ降下すればいい」
ハルバートンの言葉にマリューは『わかりました』と答えた。
マリュー、ムウ、ナタル、そしてホフマンが退出し、シオンだけがその場に残った。
「さて、待たせてすまなかったな。シオン」
2人きりになるのを確認してハルバートンはシオンの前に座った。それまで沈黙を守っていたシオンが口を開いた。
「お久しぶりです。提督」