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高山×深山

「あんたってどういうつもりでヒモやってんの」
「……ん〜?」
間延びした声を出しながら良が振り返る。質問の意図がわからないようで、クッションに顔を填めながら首を傾げていた。
「私が思ってたヒモのイメージとだいぶ違うから。もっとギャンブルしたり、何もしなかったりだと思ってた」
「俺パチンコとかジッとしてられないもん」
「競馬は?」
「雰囲気は好きだけど賭けるほどじゃないかな」
「やっぱ働きたくないの?」
「俺としては働いてるつもりだよ、ヒモとして」
「馬鹿、働いてる内に入らないわよ」
“働く”っていうのはもっとこう、自分がしたくないことも我慢してこなしたり、性格の合わない人とも上手く折り合いをつけて生活したりすることのはずだ。良みたいに好きなことをして、気楽に過ごすのは“仕事”じゃない。
「ヤリチンかと思ってたのに違うし」
「がっかりした?」
「そうじゃなくて!」
ヒモといえば、孤独な女性を狙って付き合って、何もかも奪い去っていくイメージがあったのだ。お金も心も、体も。でも良は彼氏ではないし、お金こそ渡しているけれど向こうからせびられることはほぼないし。
「一人はさ、寂しいじゃん?」
ね? 相変わらずクッションに顔を埋めて、甘えるように小首を傾げながら彼はそう言った。
「家に帰ったらさ、ご飯の匂いがして、おかえりって言って貰えて。それってやっぱり嬉しいでしょ」
「……まぁ、ね」
だからやってると言いたいのだろうか。なんか、それじゃあまるで
「私のためみたいじゃない」
良は愉快そうに笑って、私と目を合わせると、からかうように目を細めた。
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