神竜と、花園
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夜遅くの神竜城。
クランが自室で作業をしていたところに、優しくノックの音が鳴り響いた。
「あ、はい…!」
クランが慌てて振り返り扉に声をかけると、ルイが茶を運んで来てくれていた。
「僭越ながら紅茶をお持ちいたしました。外から灯りがついているのを見て、遅くまで働いていらっしゃるかと思いまして」
「ル、ルイさん!すみません…ありがたく頂戴しますね。こっちは散らかっているので、そちらのテーブルに置いていただければ」
「ええ、ではここに置いておきますね」
ルイはお茶をテーブルに置きつつ、ふと横目でクランの机を見た。
「おや、クランさん、その膨大な紙は一体…」
「今、各地の民衆から届いた神竜様へのお便りをチェックしていたところなんです。一応手紙の仲介は僕が担っておりますので!」
「手紙でしたか、それは責任重大ですね。民からの想いを聞ける貴重な機会…僕もお手伝いしましょうか?」
「うぅ、ありがたいです…神竜様の目に触れるものに万一不備があってはいけな…」
手元に視線を戻したクランの顔が途端に曇る。
「…クランさん、どうされました?」
「…あ、あはは、すみません!とても読めないほど汚い字の手紙で拍子抜けしてしまって…」
クランは半ば慌てた様子で、その手紙だけを引き出しにしまった。
「流石にこれを神竜様やルイさんにお見せするわけにはいきません」
ルイは暫く考えた後、和かな笑顔をクランに向けた。
「…ふむ、分かりました。クランさん、リュール様の身の周りは僕がお世話させていただいておりますので、あまり働き詰めにならないで下さいね」
「すみません、ルイさんは神竜様のパートナーたるお方、本来は僕ら守り人のご奉仕の対象であらせられるのに…」
「いえ、好きでやっていることなので。それでは僕はこれで」
ルイはふっと笑ってその場を後にした。
1人になったクランは、温かい紅茶を静かを飲みながら呟く。
「ルイさんや神竜様に心配事を増やすわけにはいかない…」
翌日、クランの自室に2人の守り人が集った。
クランの妹、フランは神妙な面持ちで話を切り出す。
「それで、問題の手紙っていうのは…」
「これらなんだけど…」
フランはクランから手紙を受け取り、内容を読み上げた。
「なになに…『平民が神竜に近づくな』…『神竜様を信じていたのに』…はぁ、同じような内容はもうこれで10件目ね…」
フランは幾つかの手紙の裏側を確認する。
「差し出し人は不明、筆跡も分からないようにしているわ…これじゃあ特定は難しそう…」
「や、やっぱり邪竜信仰者が神竜様に危害を加えようとしているんじゃ…」
「いえ…これはいきすぎた神竜信仰者の可能性もあるわ。最近ファンクラブの会員が異常に激増してるもの」
怪訝な顔つきで憶測を巡らす両者。
その時、ふと部屋の扉が開くと共に降ってきた陽気な声が空気を変えた。
「ウェーイ!お二人さん、久しぶり!」
「パ…パンドロさん!?」
白いローブに身を包むかつての仲間が手を挙げにこやかに入室してきた。
意外な人物の登場に、思わず双子は戸惑い顔を見合わせる。
さらにその場には、全身に黒を纏う男がもう1人。
「やはり…件の噂は「本当」のようだな」
「ゼルコバさんまで!どうしてリトスに…いや、そもそもどうやって城の中へ!?」
「僕が2人を案内をしたんですよ」
2人と共に現れたのはルイだった。
「ル、ルイさん…」
「聖地を訪れる陽気な聖職者と影の暗殺者…あぁ、相反する異質な組み合わせに思わず胸がときめいてしまいました」
「ギャハハ!神竜様の元で暮らしてもルイは相変わらずみてーだな!ゼルコバとはたまたま鉢合わせただけだっつーの」
「全く心外だな…暗殺者としての「足」は洗った。今日は「報告」をしにアイビー様より「命令」を受け参った次第だ」
「俺もフォガート様から伝達を任されたんだ。えっーと、案内して貰った手前で悪いが、ルイは席を外してくれないか…?」
パンドロはちらりとルイに視線を送る。
「…話してください。大体の察しはついています」
ルイの言葉に、パンドロは意を決したかのような神妙な面持ちで話を続けた。
「…実は、ここ最近神竜様の信徒が激増してんだよ。いや、それだけならスゲーありがたいんだけど、中には盲信的なヤツらもいるみたいでさ…その…」
一呼吸を置き、パンドロは結論に至る。
「…神竜様とルイの仲を良く思わない連中がいる。ルイが元々平民だったっていうのが知れ渡ってんだ」
ルイは顔色を変えずに答える。
「やはりそうでしたか。先の手紙は…」
「ご、ごめんなさい!隠すつもりじゃ…」
「いえ、クランさんは謝らなくても良いんです。僕とリュール様を慮ってのことですから」
「俺も「似た」ようなことを「伝え」に来た」
ゼルコバも険しい顔つきを崩さぬまま、口火を切る。
「イルシオンには未だに「邪竜信徒」が多い。邪竜を倒された恨みを晴らすべく、神竜様の「暗殺」を企てているという「不穏」な動きが観測されている」
それを聞いたルイは目を開き、顔を顰める。
「それは許せませんね。僕を狙う分には良いんですが、リュール様をとなると…」
「近々フルルの風車村の復興記念として式典があるらしいな。…なあ、今はリトスを離れない方が良いんじゃねーか?」
その提案に腕を組み考え込む守り人2人だったが、唐突に鶴の一声が降り注いだ。
「…それはできません」
その場の全員がハッとして振り返ると、そこにはリュールがいた。
「神竜様…!今の話、お聞きしていたのですか?」
「ええ、経緯は分かりました。でも、あの村は私たちの戦いに巻き込まれたようなもの。犠牲者となった村民たちの前に顔向けできないだなどど…そんなことはあってはなりません」
「ですが…!」
「…それに、今匿ってもまた同じようなことの繰り返しです」
「それは…そうですが……」
皆が推し黙る中、ルイが沈黙を破る。
「…貴女が向かうのであれば、僕もここに留まる訳にはいきません。どうかお近くで見守らせてください」
「ルイ…分かりました。でもどうかお互いにお気をつけましょう」
「ええ、勿論です」
様子を見守っていたパンドロたちがやれやれといった様子で前に出る。
「だったらしょうがねえな、俺たちも力になるぜ!」
「守り人の「数」は多い方が良いだろう。「賊」の顔も分かるやもしれん」
「2人とも…!ありがたい申し出に感謝いたします」
こうして、6人は神竜城の護衛と共にフィレネ王国のフルル村に赴くことになった。
クランが自室で作業をしていたところに、優しくノックの音が鳴り響いた。
「あ、はい…!」
クランが慌てて振り返り扉に声をかけると、ルイが茶を運んで来てくれていた。
「僭越ながら紅茶をお持ちいたしました。外から灯りがついているのを見て、遅くまで働いていらっしゃるかと思いまして」
「ル、ルイさん!すみません…ありがたく頂戴しますね。こっちは散らかっているので、そちらのテーブルに置いていただければ」
「ええ、ではここに置いておきますね」
ルイはお茶をテーブルに置きつつ、ふと横目でクランの机を見た。
「おや、クランさん、その膨大な紙は一体…」
「今、各地の民衆から届いた神竜様へのお便りをチェックしていたところなんです。一応手紙の仲介は僕が担っておりますので!」
「手紙でしたか、それは責任重大ですね。民からの想いを聞ける貴重な機会…僕もお手伝いしましょうか?」
「うぅ、ありがたいです…神竜様の目に触れるものに万一不備があってはいけな…」
手元に視線を戻したクランの顔が途端に曇る。
「…クランさん、どうされました?」
「…あ、あはは、すみません!とても読めないほど汚い字の手紙で拍子抜けしてしまって…」
クランは半ば慌てた様子で、その手紙だけを引き出しにしまった。
「流石にこれを神竜様やルイさんにお見せするわけにはいきません」
ルイは暫く考えた後、和かな笑顔をクランに向けた。
「…ふむ、分かりました。クランさん、リュール様の身の周りは僕がお世話させていただいておりますので、あまり働き詰めにならないで下さいね」
「すみません、ルイさんは神竜様のパートナーたるお方、本来は僕ら守り人のご奉仕の対象であらせられるのに…」
「いえ、好きでやっていることなので。それでは僕はこれで」
ルイはふっと笑ってその場を後にした。
1人になったクランは、温かい紅茶を静かを飲みながら呟く。
「ルイさんや神竜様に心配事を増やすわけにはいかない…」
翌日、クランの自室に2人の守り人が集った。
クランの妹、フランは神妙な面持ちで話を切り出す。
「それで、問題の手紙っていうのは…」
「これらなんだけど…」
フランはクランから手紙を受け取り、内容を読み上げた。
「なになに…『平民が神竜に近づくな』…『神竜様を信じていたのに』…はぁ、同じような内容はもうこれで10件目ね…」
フランは幾つかの手紙の裏側を確認する。
「差し出し人は不明、筆跡も分からないようにしているわ…これじゃあ特定は難しそう…」
「や、やっぱり邪竜信仰者が神竜様に危害を加えようとしているんじゃ…」
「いえ…これはいきすぎた神竜信仰者の可能性もあるわ。最近ファンクラブの会員が異常に激増してるもの」
怪訝な顔つきで憶測を巡らす両者。
その時、ふと部屋の扉が開くと共に降ってきた陽気な声が空気を変えた。
「ウェーイ!お二人さん、久しぶり!」
「パ…パンドロさん!?」
白いローブに身を包むかつての仲間が手を挙げにこやかに入室してきた。
意外な人物の登場に、思わず双子は戸惑い顔を見合わせる。
さらにその場には、全身に黒を纏う男がもう1人。
「やはり…件の噂は「本当」のようだな」
「ゼルコバさんまで!どうしてリトスに…いや、そもそもどうやって城の中へ!?」
「僕が2人を案内をしたんですよ」
2人と共に現れたのはルイだった。
「ル、ルイさん…」
「聖地を訪れる陽気な聖職者と影の暗殺者…あぁ、相反する異質な組み合わせに思わず胸がときめいてしまいました」
「ギャハハ!神竜様の元で暮らしてもルイは相変わらずみてーだな!ゼルコバとはたまたま鉢合わせただけだっつーの」
「全く心外だな…暗殺者としての「足」は洗った。今日は「報告」をしにアイビー様より「命令」を受け参った次第だ」
「俺もフォガート様から伝達を任されたんだ。えっーと、案内して貰った手前で悪いが、ルイは席を外してくれないか…?」
パンドロはちらりとルイに視線を送る。
「…話してください。大体の察しはついています」
ルイの言葉に、パンドロは意を決したかのような神妙な面持ちで話を続けた。
「…実は、ここ最近神竜様の信徒が激増してんだよ。いや、それだけならスゲーありがたいんだけど、中には盲信的なヤツらもいるみたいでさ…その…」
一呼吸を置き、パンドロは結論に至る。
「…神竜様とルイの仲を良く思わない連中がいる。ルイが元々平民だったっていうのが知れ渡ってんだ」
ルイは顔色を変えずに答える。
「やはりそうでしたか。先の手紙は…」
「ご、ごめんなさい!隠すつもりじゃ…」
「いえ、クランさんは謝らなくても良いんです。僕とリュール様を慮ってのことですから」
「俺も「似た」ようなことを「伝え」に来た」
ゼルコバも険しい顔つきを崩さぬまま、口火を切る。
「イルシオンには未だに「邪竜信徒」が多い。邪竜を倒された恨みを晴らすべく、神竜様の「暗殺」を企てているという「不穏」な動きが観測されている」
それを聞いたルイは目を開き、顔を顰める。
「それは許せませんね。僕を狙う分には良いんですが、リュール様をとなると…」
「近々フルルの風車村の復興記念として式典があるらしいな。…なあ、今はリトスを離れない方が良いんじゃねーか?」
その提案に腕を組み考え込む守り人2人だったが、唐突に鶴の一声が降り注いだ。
「…それはできません」
その場の全員がハッとして振り返ると、そこにはリュールがいた。
「神竜様…!今の話、お聞きしていたのですか?」
「ええ、経緯は分かりました。でも、あの村は私たちの戦いに巻き込まれたようなもの。犠牲者となった村民たちの前に顔向けできないだなどど…そんなことはあってはなりません」
「ですが…!」
「…それに、今匿ってもまた同じようなことの繰り返しです」
「それは…そうですが……」
皆が推し黙る中、ルイが沈黙を破る。
「…貴女が向かうのであれば、僕もここに留まる訳にはいきません。どうかお近くで見守らせてください」
「ルイ…分かりました。でもどうかお互いにお気をつけましょう」
「ええ、勿論です」
様子を見守っていたパンドロたちがやれやれといった様子で前に出る。
「だったらしょうがねえな、俺たちも力になるぜ!」
「守り人の「数」は多い方が良いだろう。「賊」の顔も分かるやもしれん」
「2人とも…!ありがたい申し出に感謝いたします」
こうして、6人は神竜城の護衛と共にフィレネ王国のフルル村に赴くことになった。