神竜と、花園
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昼下がりのリトスの大地。
青々とした木々がさざめく林の中で、2人の竜族が穏やかな時を過ごしていた。
「ヴェイル、こっちですよ」
「わ、待ってお姉ちゃん!」
長い髪を靡かせ、池のほとりに辿り着いた両者は、透き通った水面を見つめた。
「お姉ちゃん、この池で大物が釣れるって本当?」
「ええ、はるばる来ていただいた妹に大物をご馳走してあげたいんです。勿論、味付けはヴェイルの好み通り、とても辛くしますよ」
「嬉しいわ!でも…」
ヴェイルが恐る恐る遠くに視線を移す。
視線の先では木陰に隠れながらも、ルイが姉妹の様子を密かに見守っていた。
「私…ここにいて大丈夫なの…?ルイ、遠くからものすごく監視しているみたいだけど…」
「あぁ、大丈夫です。きっと私たちを眺めるのが楽しいんですよ。…でも、ヴェイルが気になるならあまり見ないように言っておかないと…」
「ううん、それなら良いのよ。ルイはきっとお姉ちゃんのこと凄く好きだろうから。それに…こっちはこっちでモーヴが見てくれているし」
「……」
モーヴはルイよりもやや近い場所の木陰で黙って2人を眺めている。
「ま、まあ少し恥ずかしいですが…見守られることは慣れていますよ」
「えへへ、お互い様だね」
池に垂らされた釣り糸をじっと眺めながら、ヴェイルがふと呟いた。
「ルイはとても気配り上手で優しいわよね。私の方が年上だけど、お兄ちゃんみたいで…」
そこまで言いかけて、ヴェイルは顔を上げた。
「そっか、『お義兄ちゃん』ってことにはなるのかな?」
リュールは笑顔を浮かべ、ヴェイルと顔を見合わせる。
「ふふ、その言葉、ルイが聞いたらとても喜びますよ。女性のきょうだいが欲しかったと言っていましたから」
「そうなの?なら今度そう呼んでみたいわ」
ヴェイルの嬉しそうな顔を見て、リュールが和かに笑った直後、釣り糸がピンと張る。
「!かかりました!…うわっ、凄い力…ヴェイル、手伝ってくれますか!」
「あわわ!ほ、本当に凄い力!大物に違いないわ…!」
2人がかりで竿を思い切り引っ張り上げるも、かなりの力のようだ。
「2人じゃ駄目…!モーヴ!こっちへ来て貴方も手伝って!」
「えっ…俺がですか!?」
遠巻きで見守っていたモーヴはいきなりのことで驚きを隠せない。
だがすぐに加勢のできる距離だ。
「モーヴ、早く…!」
しかし、普段冷静なはずのモーヴはしどろもどろになりながらそれを拒んだ。
「…すみません…それはできません…!」
「ええっ!?どうしてっ…!」
モーヴはルイの居る方向に目線を送り、焦った様子で答える。
「俺が御二方の中に加わったら…手槍が飛んできそうなんです!」
「ど、どういう意味なのモーヴ!?」
プチンッ
その直後、釣り糸が切れ、2人は反動でその場に倒れた。
「ああっ!逃してしまいました…」
「だ、大丈夫ですか!?」
「ええ…ですが…今のは絶対大物でしたね…」
悲しそうにリュールは釣り糸が消えた水面を眺める。
「すみません、すぐに俺が動いていれば…」
「いいのよ。でも、手槍が飛んでくるってどういうこと?…まさか近くに異形兵が…!」
ヴェイルの焦りにモーヴは顔を曇らせた。
「あ、いえ、ヴェイル様…申し訳ありません。今のことは忘れてください」
首を傾げるヴェイルとは裏腹に、心当たりのあるリュールは困り顔だ。
「あの、ちょっとここで待っていてください」
リュールはそう言い残し、急いでルイの元に駆け寄った。
「もう、ルイ…大切な御客人なんですから、殺気を放つのはやめてください」
「リュール様…すみません、つい…」
やや複雑そうなルイの表情を見て、リュールは心配の声をかける。
「どうしたというのですか?ソラネルにいた頃は見守ることはあってもそこまで過剰ではなかった筈です」
「確かに、以前はリュール様と皆さんの組み合わせを楽しんでおりました。ですが、パートナーとなった今は話が別です」
「ルイ…」
「ヴェイル様は貴女の妹ですので、お二人の組み合わせは大変微笑ましいです。でも…男性が貴女の隣に立つことだけはどうしても…」
右手の手槍がギリギリと音を立てる。
「モーヴさんなら大丈夫というのは分かっているんです…が!あの花園に混ざると思うと…気づけば手槍を持ち、咄嗟に投擲の構えをしてしまいました」
「わ、分かりました…ルイ、手槍を置いてください。」
リュールの言葉に渋々と言った様子でルイは手槍を置く。
「私の隣はルイしか考えられません。私は貴方を心から愛しているんです」
それを聞いてルイは笑みを浮かべた。
「…安心しました。僕も貴女だけを愛するあまり、嫉妬心が強くなってしまったようです」
「全く、ルイがここまで嫉妬深いとは思いませんでした。当の本人としては嬉しい限りですが…」
リュールは歩みを進め、ルイの胸元に顔を埋める。
「リュール様…」
戸惑った素振りでリュールを抱きしめる。
「もう、ルイったら。いつでも私に触れて良いんですよ?」
「…分かりました。では、少しだけ…」
ルイはリュールの顎に手を当て、引き寄せた。
「……ルイ…んっ…」
そっと、優しく口付けを交わす。
リュールはルイの身体を両腕を回し身を委ねた。
それに答える形でルイは舌を入れる。
「はっ…ちゅっ…」
舌使いに全身の力が抜けるも、ルイはしっかりとリュールの身体を支えて離さない。
やがて満足したのか、ルイはその唇をゆっくりと離す。
「んあっ…」
やや物足りなそうにしながらもリュールは唇を離す。
「あの、リュール様…これ以上はいけません」
「何故ですか?もっと…欲しいです」
「いえ、僕はもの凄く続きをしたいんですが…流石に人に見られていると…」
「……」
振り向くと、モーヴが居心地悪そうに立っていた。
「わああっ、モーヴ!待っていてって言ったじゃ無いですか!!」
「…すみません。ですが、遠目からでも何をやっているかは分かる故、ヴェイル様には少々刺激が強すぎるかな、と思い…お止めに参った次第です」
「そ、そうでしたか…気恥ずかしい場面を見せてしまいましたね」
リュールは萎縮し、目を泳がせた。
「モーヴさん、先ほどは殺気を放ってしまい、すみませんでした」
ルイが一歩前へ出て頭を下げる。
「ルイ…戦場を離れても腕は衰えていないようだな。さっきのは流石に肝を冷やした」
「いやあ、リュール様のお近くに男性がいるとどうにも…」
「分かった分かった。そういうやつだったなお前は。まあ、神竜殿のパートナーとしてはこの上なく見合った性分だろうが…」
モーヴは呆れ果てた様子で答える。
「恐縮です。お詫びと言ってはなんですが、僕に魚取りを任せては貰えないでしょうか?」
「ルイも釣りができるのですか?」
「いえ、先ほど手槍を持った際ふと思ったんです。釣りではなく、槍投げでなら魚を仕留められるかもと」
「ヴェイル様にお出しする魚だ。お前ができると言うのなら、大物を期待している。」
「ええ、尽力いたします」
その後、ルイは見事大物を串刺しにし、無事ヴェイルに激辛香草焼きとして振る舞うことができたのだった。
青々とした木々がさざめく林の中で、2人の竜族が穏やかな時を過ごしていた。
「ヴェイル、こっちですよ」
「わ、待ってお姉ちゃん!」
長い髪を靡かせ、池のほとりに辿り着いた両者は、透き通った水面を見つめた。
「お姉ちゃん、この池で大物が釣れるって本当?」
「ええ、はるばる来ていただいた妹に大物をご馳走してあげたいんです。勿論、味付けはヴェイルの好み通り、とても辛くしますよ」
「嬉しいわ!でも…」
ヴェイルが恐る恐る遠くに視線を移す。
視線の先では木陰に隠れながらも、ルイが姉妹の様子を密かに見守っていた。
「私…ここにいて大丈夫なの…?ルイ、遠くからものすごく監視しているみたいだけど…」
「あぁ、大丈夫です。きっと私たちを眺めるのが楽しいんですよ。…でも、ヴェイルが気になるならあまり見ないように言っておかないと…」
「ううん、それなら良いのよ。ルイはきっとお姉ちゃんのこと凄く好きだろうから。それに…こっちはこっちでモーヴが見てくれているし」
「……」
モーヴはルイよりもやや近い場所の木陰で黙って2人を眺めている。
「ま、まあ少し恥ずかしいですが…見守られることは慣れていますよ」
「えへへ、お互い様だね」
池に垂らされた釣り糸をじっと眺めながら、ヴェイルがふと呟いた。
「ルイはとても気配り上手で優しいわよね。私の方が年上だけど、お兄ちゃんみたいで…」
そこまで言いかけて、ヴェイルは顔を上げた。
「そっか、『お義兄ちゃん』ってことにはなるのかな?」
リュールは笑顔を浮かべ、ヴェイルと顔を見合わせる。
「ふふ、その言葉、ルイが聞いたらとても喜びますよ。女性のきょうだいが欲しかったと言っていましたから」
「そうなの?なら今度そう呼んでみたいわ」
ヴェイルの嬉しそうな顔を見て、リュールが和かに笑った直後、釣り糸がピンと張る。
「!かかりました!…うわっ、凄い力…ヴェイル、手伝ってくれますか!」
「あわわ!ほ、本当に凄い力!大物に違いないわ…!」
2人がかりで竿を思い切り引っ張り上げるも、かなりの力のようだ。
「2人じゃ駄目…!モーヴ!こっちへ来て貴方も手伝って!」
「えっ…俺がですか!?」
遠巻きで見守っていたモーヴはいきなりのことで驚きを隠せない。
だがすぐに加勢のできる距離だ。
「モーヴ、早く…!」
しかし、普段冷静なはずのモーヴはしどろもどろになりながらそれを拒んだ。
「…すみません…それはできません…!」
「ええっ!?どうしてっ…!」
モーヴはルイの居る方向に目線を送り、焦った様子で答える。
「俺が御二方の中に加わったら…手槍が飛んできそうなんです!」
「ど、どういう意味なのモーヴ!?」
プチンッ
その直後、釣り糸が切れ、2人は反動でその場に倒れた。
「ああっ!逃してしまいました…」
「だ、大丈夫ですか!?」
「ええ…ですが…今のは絶対大物でしたね…」
悲しそうにリュールは釣り糸が消えた水面を眺める。
「すみません、すぐに俺が動いていれば…」
「いいのよ。でも、手槍が飛んでくるってどういうこと?…まさか近くに異形兵が…!」
ヴェイルの焦りにモーヴは顔を曇らせた。
「あ、いえ、ヴェイル様…申し訳ありません。今のことは忘れてください」
首を傾げるヴェイルとは裏腹に、心当たりのあるリュールは困り顔だ。
「あの、ちょっとここで待っていてください」
リュールはそう言い残し、急いでルイの元に駆け寄った。
「もう、ルイ…大切な御客人なんですから、殺気を放つのはやめてください」
「リュール様…すみません、つい…」
やや複雑そうなルイの表情を見て、リュールは心配の声をかける。
「どうしたというのですか?ソラネルにいた頃は見守ることはあってもそこまで過剰ではなかった筈です」
「確かに、以前はリュール様と皆さんの組み合わせを楽しんでおりました。ですが、パートナーとなった今は話が別です」
「ルイ…」
「ヴェイル様は貴女の妹ですので、お二人の組み合わせは大変微笑ましいです。でも…男性が貴女の隣に立つことだけはどうしても…」
右手の手槍がギリギリと音を立てる。
「モーヴさんなら大丈夫というのは分かっているんです…が!あの花園に混ざると思うと…気づけば手槍を持ち、咄嗟に投擲の構えをしてしまいました」
「わ、分かりました…ルイ、手槍を置いてください。」
リュールの言葉に渋々と言った様子でルイは手槍を置く。
「私の隣はルイしか考えられません。私は貴方を心から愛しているんです」
それを聞いてルイは笑みを浮かべた。
「…安心しました。僕も貴女だけを愛するあまり、嫉妬心が強くなってしまったようです」
「全く、ルイがここまで嫉妬深いとは思いませんでした。当の本人としては嬉しい限りですが…」
リュールは歩みを進め、ルイの胸元に顔を埋める。
「リュール様…」
戸惑った素振りでリュールを抱きしめる。
「もう、ルイったら。いつでも私に触れて良いんですよ?」
「…分かりました。では、少しだけ…」
ルイはリュールの顎に手を当て、引き寄せた。
「……ルイ…んっ…」
そっと、優しく口付けを交わす。
リュールはルイの身体を両腕を回し身を委ねた。
それに答える形でルイは舌を入れる。
「はっ…ちゅっ…」
舌使いに全身の力が抜けるも、ルイはしっかりとリュールの身体を支えて離さない。
やがて満足したのか、ルイはその唇をゆっくりと離す。
「んあっ…」
やや物足りなそうにしながらもリュールは唇を離す。
「あの、リュール様…これ以上はいけません」
「何故ですか?もっと…欲しいです」
「いえ、僕はもの凄く続きをしたいんですが…流石に人に見られていると…」
「……」
振り向くと、モーヴが居心地悪そうに立っていた。
「わああっ、モーヴ!待っていてって言ったじゃ無いですか!!」
「…すみません。ですが、遠目からでも何をやっているかは分かる故、ヴェイル様には少々刺激が強すぎるかな、と思い…お止めに参った次第です」
「そ、そうでしたか…気恥ずかしい場面を見せてしまいましたね」
リュールは萎縮し、目を泳がせた。
「モーヴさん、先ほどは殺気を放ってしまい、すみませんでした」
ルイが一歩前へ出て頭を下げる。
「ルイ…戦場を離れても腕は衰えていないようだな。さっきのは流石に肝を冷やした」
「いやあ、リュール様のお近くに男性がいるとどうにも…」
「分かった分かった。そういうやつだったなお前は。まあ、神竜殿のパートナーとしてはこの上なく見合った性分だろうが…」
モーヴは呆れ果てた様子で答える。
「恐縮です。お詫びと言ってはなんですが、僕に魚取りを任せては貰えないでしょうか?」
「ルイも釣りができるのですか?」
「いえ、先ほど手槍を持った際ふと思ったんです。釣りではなく、槍投げでなら魚を仕留められるかもと」
「ヴェイル様にお出しする魚だ。お前ができると言うのなら、大物を期待している。」
「ええ、尽力いたします」
その後、ルイは見事大物を串刺しにし、無事ヴェイルに激辛香草焼きとして振る舞うことができたのだった。
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