フラダリさんとの旅
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
翌日。
冷たい風が吹き、連日の雨模様だ。
昼間でも外は妙に暗いまま。
私は精神的な疲労も相まってか、急激に体調を崩し、ベッドの上で荒く息をしていた。
「……っ、はぁ……はぁ……」
額に触れると、驚くほど熱い。
完全に風邪をひいてしまった。
フラダリさんはタオルと水を用意してくれて、そばの椅子を引き寄せる。
「やはり昨日の雨で冷えて…つらくはありませんか」
返事をしようとしたが、夢とも現ともつかない声だけが漏れる。
「ふ……ら、だりさん……いかないで……」
フラダリさんは静かに私の手を握り、震える指を温め続けてくれた。
・・・
夢を、見ていた。
果ての見えない道で、フラダリさんの背中が遠ざかっていく。
追いかけても追いかけても、上手く走れずに距離は縮まらない。
足は重く、次第に体はどんどん老いていき、声も掠れていく。
なんで……どうして届かないの……!?
「フラダリさん……!待ってよ……!まだ一緒にいたい……」
叫んでも、声がうまく出ない。
彼は振り返らない。
遠く、永く生き続ける男の姿。
それに引き換え、短い人生しか持たない自分。
そこで気づいてしまう。
ーー自分は必ず、彼を置いていく側なんだ。
私が死んだら、フラダリさんはまた一人になる。
やだ……やだよ……
夢の中で私は崩れ落ちた。
・・・
「セイカさん!」
「……っ!」
私ははっと目を覚まし、荒い呼吸のまま天井を見上げる。
気がつくと涙を流していた。
「…うなされていましたよ」
隣で看病していたフラダリさんが、すぐに身をかがめる。
「大丈夫です…私はここにいます。離れません」
「…っ…酷い夢を……見ました……」
涙で濡れた頬を押さえ、フラダリさんの手をぎゅっと掴む。
「フラダリさんが……遠くに行っちゃう夢……どんなに追いかけても……届かなくて……私だけ……死んで……もう会えなくなるところで……っ」
あまりにも鮮明で、現実かと思うほど克明な夢だった。
未だ褪せない脳裏の恐怖が声を震わせる。
「それは…」
「…正夢になるんです…絶対…私…ずっと考えないようにしてたけど…いつかは…」
息を詰まらせ、吐き出すように言った。
酷く哀しげな表情を私に向けたフラダリさんは、静かに私の手を包み込んだ。
少しだけ不安が和らぐ。
「…確かに…私は3000年生き続けなくてはならない。それはいずれ、きみの最期を看取ることを意味します」
フラダリさんも、声が震えていた。
「私も、その事実に耐えられるほど…強くはありません」
「……え…」
「セイカさんと距離を保っていた昨日まで…ずっときみの未来のためだと言っていましたが、あれは詭弁です」
フラダリさんは私の涙を指で拭う。
「AZさんのように、愛する者を生き返らせる…私がそんな過ちをしないと思いますか?また最終兵器を起動させるかもしれない。それが…恐ろしかった」
「…それで…私から離れようとしてたんですか……?」
「はい。私は…ただ勝手に恐れていただけです」
「…そう…だったんですね…」
「ええ…でも今は違います。覚悟ができたんです。言ったでしょう?今、セイカさんを失う方が何よりも恐ろしいと」
その瞳は真剣で、揺るぎなかった。
そして少し間を置き、穏やかな声で問う。
「……セイカさんは、『生まれ変わり』を信じますか?」
私は涙の中で瞬きをする。
「え……?」
フラダリさんはゆっくりと語りはじめた。
「以前、シンオウ地方の文献を読んだんです。…亡くなったポケモンの骨を綺麗にして丁寧に水の中に送る。するとポケモンは、再び肉体を付けてこの世界に戻ってくる…そんなことが書かれていたんです」
「それが…生まれ変わり…」
「そうです、私はそれを読んで人も同じように、生まれ変わる先があるのではないかと」
「……」
「セイカさんは……私よりずっと早く歳を重ね、いずれ先に旅立ってしまう……それは避けられない事実」
痛みに耐えるように目を伏せたあと、彼は続けた。
「ですが…もしきみが生まれ変わってくれたなら。また私を見つけてほしいのです」
フラダリさんは微笑む。
「生まれ変わった姿が、ポケモンでもいい。空を飛ぶひこうタイプでも、海を渡るみずタイプでも…あるいは1000年生きるキュウコンや、ゴーストタイプのポケモンなら、もっと共に過ごせますね」
やや紺碧を残した右目は、蝋燭に灯る青い炎のように温かく輝いていた。
「きみが私の元へ来てくれたら…きっとすぐに分かります。“ああ、セイカさんだ”と」
「……っ」
「私は長く生きます。どれだけでも探します。きみの魂がどこに生まれ変わろうとーー必ず。ふたたび、セイカさんと一緒に過ごせることを願って」
涙が静かにあふれ続ける。
「そんな……そんなの……ずるい……っそんなこと言われたら……ずっと一緒にいたくなる……!」
フラダリさんは私の額に手を添え、優しく熱を確かめた。
「そう思ってくれると嬉しいです」
「……もう…ひとりにしないですか……?」
「しません」
「ずっと……?」
「ずっとです」
彼はそっと私の手を両の手で包み込む。
「あなたの人生も、魂もーーすべて大切にします」
私は涙の中で笑った。
「……私も……何度生まれ変わっても……フラダリさんを見つけます」
私たちの心は、もう離れることのない場所で結ばれているのだと、胸を張って思える。
冷たい風が吹き、連日の雨模様だ。
昼間でも外は妙に暗いまま。
私は精神的な疲労も相まってか、急激に体調を崩し、ベッドの上で荒く息をしていた。
「……っ、はぁ……はぁ……」
額に触れると、驚くほど熱い。
完全に風邪をひいてしまった。
フラダリさんはタオルと水を用意してくれて、そばの椅子を引き寄せる。
「やはり昨日の雨で冷えて…つらくはありませんか」
返事をしようとしたが、夢とも現ともつかない声だけが漏れる。
「ふ……ら、だりさん……いかないで……」
フラダリさんは静かに私の手を握り、震える指を温め続けてくれた。
・・・
夢を、見ていた。
果ての見えない道で、フラダリさんの背中が遠ざかっていく。
追いかけても追いかけても、上手く走れずに距離は縮まらない。
足は重く、次第に体はどんどん老いていき、声も掠れていく。
なんで……どうして届かないの……!?
「フラダリさん……!待ってよ……!まだ一緒にいたい……」
叫んでも、声がうまく出ない。
彼は振り返らない。
遠く、永く生き続ける男の姿。
それに引き換え、短い人生しか持たない自分。
そこで気づいてしまう。
ーー自分は必ず、彼を置いていく側なんだ。
私が死んだら、フラダリさんはまた一人になる。
やだ……やだよ……
夢の中で私は崩れ落ちた。
・・・
「セイカさん!」
「……っ!」
私ははっと目を覚まし、荒い呼吸のまま天井を見上げる。
気がつくと涙を流していた。
「…うなされていましたよ」
隣で看病していたフラダリさんが、すぐに身をかがめる。
「大丈夫です…私はここにいます。離れません」
「…っ…酷い夢を……見ました……」
涙で濡れた頬を押さえ、フラダリさんの手をぎゅっと掴む。
「フラダリさんが……遠くに行っちゃう夢……どんなに追いかけても……届かなくて……私だけ……死んで……もう会えなくなるところで……っ」
あまりにも鮮明で、現実かと思うほど克明な夢だった。
未だ褪せない脳裏の恐怖が声を震わせる。
「それは…」
「…正夢になるんです…絶対…私…ずっと考えないようにしてたけど…いつかは…」
息を詰まらせ、吐き出すように言った。
酷く哀しげな表情を私に向けたフラダリさんは、静かに私の手を包み込んだ。
少しだけ不安が和らぐ。
「…確かに…私は3000年生き続けなくてはならない。それはいずれ、きみの最期を看取ることを意味します」
フラダリさんも、声が震えていた。
「私も、その事実に耐えられるほど…強くはありません」
「……え…」
「セイカさんと距離を保っていた昨日まで…ずっときみの未来のためだと言っていましたが、あれは詭弁です」
フラダリさんは私の涙を指で拭う。
「AZさんのように、愛する者を生き返らせる…私がそんな過ちをしないと思いますか?また最終兵器を起動させるかもしれない。それが…恐ろしかった」
「…それで…私から離れようとしてたんですか……?」
「はい。私は…ただ勝手に恐れていただけです」
「…そう…だったんですね…」
「ええ…でも今は違います。覚悟ができたんです。言ったでしょう?今、セイカさんを失う方が何よりも恐ろしいと」
その瞳は真剣で、揺るぎなかった。
そして少し間を置き、穏やかな声で問う。
「……セイカさんは、『生まれ変わり』を信じますか?」
私は涙の中で瞬きをする。
「え……?」
フラダリさんはゆっくりと語りはじめた。
「以前、シンオウ地方の文献を読んだんです。…亡くなったポケモンの骨を綺麗にして丁寧に水の中に送る。するとポケモンは、再び肉体を付けてこの世界に戻ってくる…そんなことが書かれていたんです」
「それが…生まれ変わり…」
「そうです、私はそれを読んで人も同じように、生まれ変わる先があるのではないかと」
「……」
「セイカさんは……私よりずっと早く歳を重ね、いずれ先に旅立ってしまう……それは避けられない事実」
痛みに耐えるように目を伏せたあと、彼は続けた。
「ですが…もしきみが生まれ変わってくれたなら。また私を見つけてほしいのです」
フラダリさんは微笑む。
「生まれ変わった姿が、ポケモンでもいい。空を飛ぶひこうタイプでも、海を渡るみずタイプでも…あるいは1000年生きるキュウコンや、ゴーストタイプのポケモンなら、もっと共に過ごせますね」
やや紺碧を残した右目は、蝋燭に灯る青い炎のように温かく輝いていた。
「きみが私の元へ来てくれたら…きっとすぐに分かります。“ああ、セイカさんだ”と」
「……っ」
「私は長く生きます。どれだけでも探します。きみの魂がどこに生まれ変わろうとーー必ず。ふたたび、セイカさんと一緒に過ごせることを願って」
涙が静かにあふれ続ける。
「そんな……そんなの……ずるい……っそんなこと言われたら……ずっと一緒にいたくなる……!」
フラダリさんは私の額に手を添え、優しく熱を確かめた。
「そう思ってくれると嬉しいです」
「……もう…ひとりにしないですか……?」
「しません」
「ずっと……?」
「ずっとです」
彼はそっと私の手を両の手で包み込む。
「あなたの人生も、魂もーーすべて大切にします」
私は涙の中で笑った。
「……私も……何度生まれ変わっても……フラダリさんを見つけます」
私たちの心は、もう離れることのない場所で結ばれているのだと、胸を張って思える。