フラダリさんとの旅
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※フラダリ視点
「…雲行きが怪しい」
窓の外を見ながらふと、独り言を呟く。
ガラルは天候の変わりやすい地方だ。
…だが、私の心境は変わり映えのしない日々が続いている。
セイカさんが出ていってからもう幾日が過ぎた。
あの年頃によくある家出…のようなものだと信じたい。
だが…言い過ぎてしまっただろうか。
杞憂で終わればいいが。
…いや、彼女は強い筈だ。
自分の道を探し、見つけたか。
あるいはミアレや、自身の地元に帰ったか。
それならばそれで良い。良い筈だ。
元より1人で歩むべき贖罪の道筋。
私は…私だけで夢を実現させるだけだ。
「……」
錯綜とした思考を紛らわすためにニュースをつけた。
「本日のガラル・リーグニュースです。急遽決まった現ガラルチャンピオンVSカロスから刺客、セイカ戦!なんでも元チャンピオン、ダンデが実現に一枚噛んでいるとの噂です…!ご覧ください!もうシュートスタジアムは超満員です!はたして今夜、新チャンピオンが誕生するのか!?それとも絶対的無敗の死守か!?」
「……っ!」
テレビにセイカさんが映る。
荒れた表情、乱れた呼吸。
鋭く研ぎ澄まされた目つき。
ポケモンの勝利を絶対的な価値と信じるような、あの眼。
ーふと昔の記憶が蘇る。
あれは、以前の私だ。
勝ちに固執していた頃の自分。
バトルの楽しさを教えてくれた筈のきみが…そんな顔をするとは。
夜の曇天に雷鳴が混ざりだした。
…アーマーガアタクシーが使えなくなる前に行かなければ。
私は居ても立っても居られずに、シュートシティに向かった。
・・・
雨が降り頻る中、スマホロトムで情報を追う。
シュートスタジアムは、今までにない熱気に包まれ、チャンピオン戦は終わった。
結果は…
ーーー現チャンピオンの勝利。
そしてそれは同時に、セイカさんの敗北を意味していた。
試合の内容は、とてもじゃないがセイカさんのバトルスタイルとは思えなかった。
目を背けたくなるほどに。
…私の胸が焼けるように痛む。
重い足を引きずるようにシュートスタジアムへ向かって歩く。
駅には、もう既に多くの観客が帰りの電車やタクシーを待っていた。
フードを被り、その人通りを避けるように脚を速める。
雨足も速くなってきた。
きっとまだスタジアムか、その近くにいる筈。
自責の念で胃が締め付けられる。
その時ーー
「…やっぱりあなたも来たか、Fさん」
前方の人影ー紫色の髪が雨風に揺れた。
「……ダンデさん。何故こんな所に…?」
「こんな大雨じゃリザードンを連れ歩けなくてな。迷ってしまった」
…そういえばこの人は方向の感覚が鈍い人だったか。
しかし、そんな状況下でもダンデさんは珍しく、笑いも冗談もない、真剣な表情をしていた。
「Fさん、セイカの試合結果をご存知で?」
「…ええ。セイカさんは…負けたんですね…」
「ああ…昔、オレの弟があんな感じだった時があって、それを思い出したよ」
「そう、ですか…」
ダンデさんは深く息を吐いた。
「なぁ、Fさんは知ってるか?あの子が……どうして急にあんな戦い方をするようになったのか」
返事はできなかった。自らの胸に刺さる言葉。
「オレとバトルした時はもっと楽しそうに戦ってたんだけどな。少なくとも、あんな勝つことだけに縛られる子じゃなかった」
「…………」
「まあ、今のチャンピオンは無敗だったオレを初めて負かした奴だ。そう気に病むことじゃないさ」
ダンデさんの声は優しかったが、その優しさが逆に胸を抉った。
「……ダンデさん。あなたに……ひとつ、話さなければならないことがあります」
ダンデが目を細める。
ゆっくりと逃げずに、私は口を開いた。
「……セイカさんと私は……“実の父娘”ではありません。」
「…そうか」
怒りでも失望でもない。ただ、何かを理解したような声。
「別に変に詮索はしない…あなたが誰であろうと、セイカとの関係も」
そう言うとダンデさんは背中を見せ、言葉を続けた。
「…でももし、ああなった原因がFさんなら、まだ間に合う…!」
ダンデさんはバトルタワー仕様の黒いキャップを被ると、しっかりと、まっすぐに指を指す。
「スタジアムはあっちだ。…セイカに今一番必要な人はFさん、あなただ」
私は彼に微笑み、頷いた。
罪人であっても。
長く生きる体であっても。
私は会わなければならない。
闇へ沈みかけた彼女に。
「ありがとうございます、ダンデさん。あと、スタジアムはこっちです」
「…そうだっけ?」
「…雲行きが怪しい」
窓の外を見ながらふと、独り言を呟く。
ガラルは天候の変わりやすい地方だ。
…だが、私の心境は変わり映えのしない日々が続いている。
セイカさんが出ていってからもう幾日が過ぎた。
あの年頃によくある家出…のようなものだと信じたい。
だが…言い過ぎてしまっただろうか。
杞憂で終わればいいが。
…いや、彼女は強い筈だ。
自分の道を探し、見つけたか。
あるいはミアレや、自身の地元に帰ったか。
それならばそれで良い。良い筈だ。
元より1人で歩むべき贖罪の道筋。
私は…私だけで夢を実現させるだけだ。
「……」
錯綜とした思考を紛らわすためにニュースをつけた。
「本日のガラル・リーグニュースです。急遽決まった現ガラルチャンピオンVSカロスから刺客、セイカ戦!なんでも元チャンピオン、ダンデが実現に一枚噛んでいるとの噂です…!ご覧ください!もうシュートスタジアムは超満員です!はたして今夜、新チャンピオンが誕生するのか!?それとも絶対的無敗の死守か!?」
「……っ!」
テレビにセイカさんが映る。
荒れた表情、乱れた呼吸。
鋭く研ぎ澄まされた目つき。
ポケモンの勝利を絶対的な価値と信じるような、あの眼。
ーふと昔の記憶が蘇る。
あれは、以前の私だ。
勝ちに固執していた頃の自分。
バトルの楽しさを教えてくれた筈のきみが…そんな顔をするとは。
夜の曇天に雷鳴が混ざりだした。
…アーマーガアタクシーが使えなくなる前に行かなければ。
私は居ても立っても居られずに、シュートシティに向かった。
・・・
雨が降り頻る中、スマホロトムで情報を追う。
シュートスタジアムは、今までにない熱気に包まれ、チャンピオン戦は終わった。
結果は…
ーーー現チャンピオンの勝利。
そしてそれは同時に、セイカさんの敗北を意味していた。
試合の内容は、とてもじゃないがセイカさんのバトルスタイルとは思えなかった。
目を背けたくなるほどに。
…私の胸が焼けるように痛む。
重い足を引きずるようにシュートスタジアムへ向かって歩く。
駅には、もう既に多くの観客が帰りの電車やタクシーを待っていた。
フードを被り、その人通りを避けるように脚を速める。
雨足も速くなってきた。
きっとまだスタジアムか、その近くにいる筈。
自責の念で胃が締め付けられる。
その時ーー
「…やっぱりあなたも来たか、Fさん」
前方の人影ー紫色の髪が雨風に揺れた。
「……ダンデさん。何故こんな所に…?」
「こんな大雨じゃリザードンを連れ歩けなくてな。迷ってしまった」
…そういえばこの人は方向の感覚が鈍い人だったか。
しかし、そんな状況下でもダンデさんは珍しく、笑いも冗談もない、真剣な表情をしていた。
「Fさん、セイカの試合結果をご存知で?」
「…ええ。セイカさんは…負けたんですね…」
「ああ…昔、オレの弟があんな感じだった時があって、それを思い出したよ」
「そう、ですか…」
ダンデさんは深く息を吐いた。
「なぁ、Fさんは知ってるか?あの子が……どうして急にあんな戦い方をするようになったのか」
返事はできなかった。自らの胸に刺さる言葉。
「オレとバトルした時はもっと楽しそうに戦ってたんだけどな。少なくとも、あんな勝つことだけに縛られる子じゃなかった」
「…………」
「まあ、今のチャンピオンは無敗だったオレを初めて負かした奴だ。そう気に病むことじゃないさ」
ダンデさんの声は優しかったが、その優しさが逆に胸を抉った。
「……ダンデさん。あなたに……ひとつ、話さなければならないことがあります」
ダンデが目を細める。
ゆっくりと逃げずに、私は口を開いた。
「……セイカさんと私は……“実の父娘”ではありません。」
「…そうか」
怒りでも失望でもない。ただ、何かを理解したような声。
「別に変に詮索はしない…あなたが誰であろうと、セイカとの関係も」
そう言うとダンデさんは背中を見せ、言葉を続けた。
「…でももし、ああなった原因がFさんなら、まだ間に合う…!」
ダンデさんはバトルタワー仕様の黒いキャップを被ると、しっかりと、まっすぐに指を指す。
「スタジアムはあっちだ。…セイカに今一番必要な人はFさん、あなただ」
私は彼に微笑み、頷いた。
罪人であっても。
長く生きる体であっても。
私は会わなければならない。
闇へ沈みかけた彼女に。
「ありがとうございます、ダンデさん。あと、スタジアムはこっちです」
「…そうだっけ?」