フラダリさんとの旅
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“F”として行動するフラダリさんの周囲には、いつのまにか多くの人が集まる。
「Fさん、いつもありがとうございます!」
「私たちも協力したいです、ぜひお手伝いさせてください!」
老若男女問わず誰もが、彼の言葉に惹かれる。
フラダリさんは、そんな彼らひとりひとりに丁寧に頷き、穏やかに微笑む。
求められるだけでなく、その術を教える姿は見ていてとても気分が良い。
記憶を失っていてもなお人々の心を掴む、あの独特のカリスマーー。
……やっぱり、フラダリさんってすごい。
その姿を見つめながら、胸の奥がじんわり熱くなる。
けれど同時に何故か、ちくりと痛む感情があった。
…どうしてこんなに、胸が苦しいんだろう。
彼は大勢の人を導く存在…。
元より私なんかより、ずっと遠いところにいる人だ。
でももし、彼の周りにいる女性のひとりが、彼の心に触れたら?
そんな想像をしてしまった瞬間、胸が締めつけられた。
活動を終えた夕方。
仮宿の窓辺で、私は思いきって口を開いた。
「ねぇ、フラダリさん……」
「?…どうしました、セイカさん」
いつもの穏やかな声音。けれど、言葉が喉で詰まる。
「えっと、その……もしもですよ? フラダリさんが、誰かを好きになったり、そういうことって……あるのかな〜って」
恐る恐るフラダリさんの顔に視線をやる。
彼は一瞬だけ瞬きをして、ゆっくりと私を見る。
瞳に映るのは、優しさでもなく、戸惑いでもなくーー静かな決意だった。
「ありません」
「えっ…」
思いがけない即答に心臓が、きゅっと痛んだ。
「私は大罪を犯した人間です。過去に世界を壊そうとした愚者…今はその贖罪の機会を与えられただけに過ぎません。その私が“誰かと共に未来を歩む”など、望んではいけない」
断言する声があまりに冷たくて、私は息を飲んだ。
「…セイカさんは、これからもっと多くの人と出会うでしょう。きみには年相応の、誠実で健やかな人がふさわしい」
その言葉は、“あなたと私は違う世界の人間だ”と言われているようで。
胸の奥がずっとチクチクと痛み、私は唇を噛みしめた。
「…私は…フラダリさんのことが好きですよ」
今まで言うのを躊躇っていたはずなのに、妙にすんなりと告白できた。
…それはきっと多分、答えに期待を持てなくなったからだ。
沈黙の後、フラダリさんは口を開いた。
「…きみが私に特別な想いを寄せてくださっていることは…前から、気付いていました」
胸の奥が灼けるように熱くなった。
「…なら、どうして……!」
「だからこそです」
「…え…?」
「…きみが私を想ってくださる気持ちは嬉しすぎるほどです。ですが、私はきみの人生を縛りたくはない」
なら、なんで……
どうして、あの時助けてくれたんだろう。
どうして、あんなに優しくしてくれたんだろう。
どうして、あんな顔で私を見つめたんだろう。
言葉を飲み込むほど、胸の奥につまった黒いものが膨らんでいく。
でも、フラダリさんは気づいていない。
「…セイカさん。私はきみを自由にさせたいだけです」
それは、優しさだと分かっている。でも…
「…私の気持ち、どうでもいいんですか?」
思わず零れた声は、自分でも驚くほど冷たかった。
フラダリさんが言葉を失った。
「…勿論きみの気持ちは大切です。ですがそれに応える資格を私は持ち合わせてはいません」
…資格なんていらないのに。
フラダリさんを好きでいる限り、他の誰かなんて目に入らない。
それなのにーー
胸の奥に沈んでいく暗い影。
それは、様々な気持ちが絡み合って生まれた、小さな黒い芽。
フラダリさんは、私の瞳の奥に宿った影に気づかず、ただ静かに私に言った。
「…きみの為です。どうか許してください」
その優しさが、逆につらかった。
私はその夜、眠れぬまま、部屋の暗闇の中で天井を見つめ続けた。
心に根を下ろした宿り木は、じわじわと精神を蝕んでいく。
(……フラダリさん……あなたは……)
その先の言葉は、夜に飲まれて、誰にも届かなかった。
光ある美しい世界を目指すフラダリさんとは対照的に、私の心に初めて暗い感情が宿った瞬間。
・・・
…翌日、私は荷物をまとめて借宿を出た。
このまま一緒にいても辛いだけーーそう感じて。
私は、とうとうフラダリさんの側にいられなくなったんだ…。
どれだけ想いを伝えても、彼は優しく、残酷に距離を取る。
大切にされているのはわかってる。
だからこそ拒むその態度が、胸を切り裂くほど苦しい。
でも、フラダリさんの望む美しい世界に、私は含まれていないのだろうか?
…わかってる。そんなわけがないことも。
私は気づけば、強いトレーナーを探して1人でガラルの各地をひたすら歩き回っていた。
だって私には、ポケモンバトルしかないから…。
勝てば少しだけ、胸の痛みは遠のいた。
次第に、勝たなければ意味がない。そう思うようになった。
「このポケモンは…ダメだ、弱点が多すぎる…このポケモンはダイジェットを積んで…よし、いける…」
今までは好きなポケモンを手持ちに入れていた。
でもそれだけじゃ厳しいことを知る。
ポケモンごとに違うタイプ…そして絶対に覆ることのない、種族の差。
やがて、より強いポケモンで構築を考えるようになった。
私は、ビビヨンをボックスの隅に仕舞い込んだ。
「……」
…もっと強い人とバトルして勝てたら、もっと気分が晴れるだろうか。
もう各地のジム戦も網羅してしまった。
限界を感じた私は、スマホロトムを手に取る。
「もしもし、ダンデさん…ガラルスタートーナメントに、私も出場させてください」
「Fさん、いつもありがとうございます!」
「私たちも協力したいです、ぜひお手伝いさせてください!」
老若男女問わず誰もが、彼の言葉に惹かれる。
フラダリさんは、そんな彼らひとりひとりに丁寧に頷き、穏やかに微笑む。
求められるだけでなく、その術を教える姿は見ていてとても気分が良い。
記憶を失っていてもなお人々の心を掴む、あの独特のカリスマーー。
……やっぱり、フラダリさんってすごい。
その姿を見つめながら、胸の奥がじんわり熱くなる。
けれど同時に何故か、ちくりと痛む感情があった。
…どうしてこんなに、胸が苦しいんだろう。
彼は大勢の人を導く存在…。
元より私なんかより、ずっと遠いところにいる人だ。
でももし、彼の周りにいる女性のひとりが、彼の心に触れたら?
そんな想像をしてしまった瞬間、胸が締めつけられた。
活動を終えた夕方。
仮宿の窓辺で、私は思いきって口を開いた。
「ねぇ、フラダリさん……」
「?…どうしました、セイカさん」
いつもの穏やかな声音。けれど、言葉が喉で詰まる。
「えっと、その……もしもですよ? フラダリさんが、誰かを好きになったり、そういうことって……あるのかな〜って」
恐る恐るフラダリさんの顔に視線をやる。
彼は一瞬だけ瞬きをして、ゆっくりと私を見る。
瞳に映るのは、優しさでもなく、戸惑いでもなくーー静かな決意だった。
「ありません」
「えっ…」
思いがけない即答に心臓が、きゅっと痛んだ。
「私は大罪を犯した人間です。過去に世界を壊そうとした愚者…今はその贖罪の機会を与えられただけに過ぎません。その私が“誰かと共に未来を歩む”など、望んではいけない」
断言する声があまりに冷たくて、私は息を飲んだ。
「…セイカさんは、これからもっと多くの人と出会うでしょう。きみには年相応の、誠実で健やかな人がふさわしい」
その言葉は、“あなたと私は違う世界の人間だ”と言われているようで。
胸の奥がずっとチクチクと痛み、私は唇を噛みしめた。
「…私は…フラダリさんのことが好きですよ」
今まで言うのを躊躇っていたはずなのに、妙にすんなりと告白できた。
…それはきっと多分、答えに期待を持てなくなったからだ。
沈黙の後、フラダリさんは口を開いた。
「…きみが私に特別な想いを寄せてくださっていることは…前から、気付いていました」
胸の奥が灼けるように熱くなった。
「…なら、どうして……!」
「だからこそです」
「…え…?」
「…きみが私を想ってくださる気持ちは嬉しすぎるほどです。ですが、私はきみの人生を縛りたくはない」
なら、なんで……
どうして、あの時助けてくれたんだろう。
どうして、あんなに優しくしてくれたんだろう。
どうして、あんな顔で私を見つめたんだろう。
言葉を飲み込むほど、胸の奥につまった黒いものが膨らんでいく。
でも、フラダリさんは気づいていない。
「…セイカさん。私はきみを自由にさせたいだけです」
それは、優しさだと分かっている。でも…
「…私の気持ち、どうでもいいんですか?」
思わず零れた声は、自分でも驚くほど冷たかった。
フラダリさんが言葉を失った。
「…勿論きみの気持ちは大切です。ですがそれに応える資格を私は持ち合わせてはいません」
…資格なんていらないのに。
フラダリさんを好きでいる限り、他の誰かなんて目に入らない。
それなのにーー
胸の奥に沈んでいく暗い影。
それは、様々な気持ちが絡み合って生まれた、小さな黒い芽。
フラダリさんは、私の瞳の奥に宿った影に気づかず、ただ静かに私に言った。
「…きみの為です。どうか許してください」
その優しさが、逆につらかった。
私はその夜、眠れぬまま、部屋の暗闇の中で天井を見つめ続けた。
心に根を下ろした宿り木は、じわじわと精神を蝕んでいく。
(……フラダリさん……あなたは……)
その先の言葉は、夜に飲まれて、誰にも届かなかった。
光ある美しい世界を目指すフラダリさんとは対照的に、私の心に初めて暗い感情が宿った瞬間。
・・・
…翌日、私は荷物をまとめて借宿を出た。
このまま一緒にいても辛いだけーーそう感じて。
私は、とうとうフラダリさんの側にいられなくなったんだ…。
どれだけ想いを伝えても、彼は優しく、残酷に距離を取る。
大切にされているのはわかってる。
だからこそ拒むその態度が、胸を切り裂くほど苦しい。
でも、フラダリさんの望む美しい世界に、私は含まれていないのだろうか?
…わかってる。そんなわけがないことも。
私は気づけば、強いトレーナーを探して1人でガラルの各地をひたすら歩き回っていた。
だって私には、ポケモンバトルしかないから…。
勝てば少しだけ、胸の痛みは遠のいた。
次第に、勝たなければ意味がない。そう思うようになった。
「このポケモンは…ダメだ、弱点が多すぎる…このポケモンはダイジェットを積んで…よし、いける…」
今までは好きなポケモンを手持ちに入れていた。
でもそれだけじゃ厳しいことを知る。
ポケモンごとに違うタイプ…そして絶対に覆ることのない、種族の差。
やがて、より強いポケモンで構築を考えるようになった。
私は、ビビヨンをボックスの隅に仕舞い込んだ。
「……」
…もっと強い人とバトルして勝てたら、もっと気分が晴れるだろうか。
もう各地のジム戦も網羅してしまった。
限界を感じた私は、スマホロトムを手に取る。
「もしもし、ダンデさん…ガラルスタートーナメントに、私も出場させてください」