フラダリさんとの旅
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数日後。
静かな朝日が差していた。
借宿の部屋で、私はソファの片側に座っているフラダリさんの横に、遠慮なくすとんと座った。
「もう風邪は大丈夫のようですね」
「はい!」
そう笑って、彼の肩に頭を預ける。
以前の私なら絶対にできなかったこと。
でも、今はもう迷いなんてなかった。
この人を好きになっていい。
この人に寄りかかっていい。
フラダリさんはもう私を拒むことはない。
至近距離で、私に微笑みかけてくれる。
私は少し調子に乗って、フラダリさんの片腕に自分の腕を絡ませる。
彼は一瞬だけ目を瞬かせたけれど、すぐに肩の力をそっと抜いて、絡めた私の腕に自分の手を添えてくれた。
その触れ方があまりにも丁寧で、胸の奥がじんわり熱くなる。
「…随分と大胆ですね、セイカさん」
「えへへ、だってずっと夢だったんです」
彼は照れたように苦笑しながらも、逃げず、むしろ受け止めるように体の向きを少しこちらへ寄せた。
「きみの気が済むまで、触れて良いですよ」
その言葉だけで、また心がふわっと浮く。
「ふふ、じゃあ…お願いも聞いてくれますか?」
「私が叶えられることなら」
そう言われて、私は今までのフラダリさんとの会話を思い返していた。
「…その…好きって言って欲しいです」
「…言ったこと、ありませんでしたっけ」
「…な、ないんですよ…」
そう、似たような言葉は何度も言われた。
でも直球で好意を伝えられたことはまだ無かった。
「それは失礼しました」
フラダリさんは私に向かって真っ直ぐに見つめる。
その嫋やかな仕草、優しげな眼差し。
目を背けたくなるほど大好きな人。
やがて顔を私の耳元に持っていき、低く囁いた。
「セイカさん、愛しています」
それは、最大級の愛の言葉だった。
何故か思考が一瞬停止して、言葉の意味を理解して、途端に自分の顔が赤面していくのが分かる。
「…可愛い反応ですね。もっと言いましょうか?」
「わ…わかりました…っ…もっ…大丈夫です…」
思っていた以上に今の自分には少々刺激が、いや、破壊力が強すぎる。
だが、フラダリさんは珍しく、やけに積極的になってしまった。
「本当にきみは愛くるしいです…全部私のものですからね」
「フ、フラダリさん…!?あの…嬉しいんですけどこれ以上言われると…」
「言われると…どうなってしまいますか?」
それは…その…
全部を捧げたくなるというか…
でももしそんなこと言ったら…
言ったら…?
どうなっちゃうの…?
勝手に赤面が酷くなっていく。
もじもじしていると、不意にフラダリさんが人差し指を私の唇に当てる。
「…考えていないわけじゃないですよ。でも徐々に、ですからね。今は…ここまで」
そう言って口付けをしてくれた。
…正直、理性がふっ飛びそうだった。
「かっ…買い出し!行きましょう!もう夕方なので…!」
慌てて話題を切り替える。
そんな私を見て、フラダリさんは余裕のある大人な笑みを向けた。
・・・
夕方のナックルシティの街並みの上を、一匹のビビヨンが軽やかに舞う。
夕日を浴びた桃色の羽は、まるでピンクダイヤモンドを散りばめたかのように輝いている。
その羽の模様は希少かつ見事で、街を行き交うガラルの人々の目を引いていた。
「ねぇ見て!ビビヨンだ!キレイ!」
「ガラルじゃ滅多に見ないよな…」
私はそんな周囲の反応に少し照れながら笑い、フラダリさんの横を歩く。
フラダリさんは右目を細め、ビビヨンの優雅な舞いを見つめた。
「セイカさんのビビヨンは、とても大切にされてきたのですね」
その声には、言葉にしきれない感情が滲んでいた。
「はい。小さい頃からずっと一緒にいます」
ビビヨンは、その言葉が嬉しい様子でふわりと私の側に舞い降りた。
「この子がまだコフキムシだったとき…弱って倒れてたんです。それを捕まえたんですよ」
フラダリさんのまつげが、かすかに震えた気がした。
「私はコフキムシを助けたくて…でも大人の人に助けを呼べなくて、泣いてたんです。そしたらーー」
風がそよぎ、ビビヨンが羽を広げる。
その瞬間、羽の模様が夕日に照らされ、桃色の光が周囲に広がった。
「男の人が、声をかけてくれました」
「…男の人?」
「はい。ちょっと怖そうで、でも凄くカッコよくて…優しい人でした」
「…その人は…?」
「…ずっと探してました。実はミアレに旅行に来たのも、その人を探すのを踏まえていて…私、やっと再会できたんです」
そこまで話すと、フラダリさんは少し険しい顔つきになった。
「…もしかして、その人はセイカさんの初恋の方とか、でしょうか」
…予想通り、フラダリさんはその時の記憶がない。
でも良いんだ。私もビビヨンも分かってるから。
それにフラダリさんには申し訳ないけど、さっきのからかいの仕返しをしたい。
そんないたずらごころが芽生えた。
「ふふ、今思えばそうだったかもしれません」
「…そうですか…少しだけ、嫉妬してしまいますね」
私は、フラダリさんの顔を覗き込むようにして微笑んだ。
「過去の自分に嫉妬しちゃったんですか?」
「……え?」
フラダリさんは固まってしまった。
「ふふ、すみません。でも妬いてるフラダリさんが可愛くて…!」
フラダリさんは相変わらずぽかんとしている。
「その時助けてくれたのは、赤い髪をしていた頃の過去のフラダリさんですよ。このボールはその時に貴方から貰ったんです」
そう、これは私とフラダリさんの最初の絆の証だ。
フラダリさんは目を丸くしてまじまじと、ビビヨンのモンスターボールを見つめた。
彼はやがて記憶の奥底を探るように目を閉じたが、記憶喪失の壁は彼の意識を静かに遮ったようだ。
「……すみません。私はその時の記憶を…持っていません」
フラダリさんは頭を抱え、下を向く。
「セイカさんと私にとっての最初の大切な思い出の筈なのに…何も思い出せない自分が…不甲斐ない…」
そんな様子のフラダリさんを見て、私は首を振る。
「とんでもないです。初恋の人にまた会えて、しかもこんなに大切にしてくれて一緒に過ごせて…幸せすぎますよ」
「……そう、ですか」
フラダリさんの声がかすかに震えていた。
「過去の私は罪しかないものだと思っていました…まさか…こんな大切な方との…」
そう言うとフラダリさんは私を抱きしめた。
「ちょっ…!?フラダリさん…ひ、人前ですって…」
嬉しい反面恥ずかしい。
でも、フラダリさんは全く離してくれない。
「…からかいましたね」
「…はい…」
「全く…本当に動揺してしまったんですよ。帰ったらまた、囁かなくてはいけませんね」
「…ほ、本当にごめんなさ…いや…でもちょっとだけ…」
ビビヨンもまた、からかうように羽をきらめかせた。
静かな朝日が差していた。
借宿の部屋で、私はソファの片側に座っているフラダリさんの横に、遠慮なくすとんと座った。
「もう風邪は大丈夫のようですね」
「はい!」
そう笑って、彼の肩に頭を預ける。
以前の私なら絶対にできなかったこと。
でも、今はもう迷いなんてなかった。
この人を好きになっていい。
この人に寄りかかっていい。
フラダリさんはもう私を拒むことはない。
至近距離で、私に微笑みかけてくれる。
私は少し調子に乗って、フラダリさんの片腕に自分の腕を絡ませる。
彼は一瞬だけ目を瞬かせたけれど、すぐに肩の力をそっと抜いて、絡めた私の腕に自分の手を添えてくれた。
その触れ方があまりにも丁寧で、胸の奥がじんわり熱くなる。
「…随分と大胆ですね、セイカさん」
「えへへ、だってずっと夢だったんです」
彼は照れたように苦笑しながらも、逃げず、むしろ受け止めるように体の向きを少しこちらへ寄せた。
「きみの気が済むまで、触れて良いですよ」
その言葉だけで、また心がふわっと浮く。
「ふふ、じゃあ…お願いも聞いてくれますか?」
「私が叶えられることなら」
そう言われて、私は今までのフラダリさんとの会話を思い返していた。
「…その…好きって言って欲しいです」
「…言ったこと、ありませんでしたっけ」
「…な、ないんですよ…」
そう、似たような言葉は何度も言われた。
でも直球で好意を伝えられたことはまだ無かった。
「それは失礼しました」
フラダリさんは私に向かって真っ直ぐに見つめる。
その嫋やかな仕草、優しげな眼差し。
目を背けたくなるほど大好きな人。
やがて顔を私の耳元に持っていき、低く囁いた。
「セイカさん、愛しています」
それは、最大級の愛の言葉だった。
何故か思考が一瞬停止して、言葉の意味を理解して、途端に自分の顔が赤面していくのが分かる。
「…可愛い反応ですね。もっと言いましょうか?」
「わ…わかりました…っ…もっ…大丈夫です…」
思っていた以上に今の自分には少々刺激が、いや、破壊力が強すぎる。
だが、フラダリさんは珍しく、やけに積極的になってしまった。
「本当にきみは愛くるしいです…全部私のものですからね」
「フ、フラダリさん…!?あの…嬉しいんですけどこれ以上言われると…」
「言われると…どうなってしまいますか?」
それは…その…
全部を捧げたくなるというか…
でももしそんなこと言ったら…
言ったら…?
どうなっちゃうの…?
勝手に赤面が酷くなっていく。
もじもじしていると、不意にフラダリさんが人差し指を私の唇に当てる。
「…考えていないわけじゃないですよ。でも徐々に、ですからね。今は…ここまで」
そう言って口付けをしてくれた。
…正直、理性がふっ飛びそうだった。
「かっ…買い出し!行きましょう!もう夕方なので…!」
慌てて話題を切り替える。
そんな私を見て、フラダリさんは余裕のある大人な笑みを向けた。
・・・
夕方のナックルシティの街並みの上を、一匹のビビヨンが軽やかに舞う。
夕日を浴びた桃色の羽は、まるでピンクダイヤモンドを散りばめたかのように輝いている。
その羽の模様は希少かつ見事で、街を行き交うガラルの人々の目を引いていた。
「ねぇ見て!ビビヨンだ!キレイ!」
「ガラルじゃ滅多に見ないよな…」
私はそんな周囲の反応に少し照れながら笑い、フラダリさんの横を歩く。
フラダリさんは右目を細め、ビビヨンの優雅な舞いを見つめた。
「セイカさんのビビヨンは、とても大切にされてきたのですね」
その声には、言葉にしきれない感情が滲んでいた。
「はい。小さい頃からずっと一緒にいます」
ビビヨンは、その言葉が嬉しい様子でふわりと私の側に舞い降りた。
「この子がまだコフキムシだったとき…弱って倒れてたんです。それを捕まえたんですよ」
フラダリさんのまつげが、かすかに震えた気がした。
「私はコフキムシを助けたくて…でも大人の人に助けを呼べなくて、泣いてたんです。そしたらーー」
風がそよぎ、ビビヨンが羽を広げる。
その瞬間、羽の模様が夕日に照らされ、桃色の光が周囲に広がった。
「男の人が、声をかけてくれました」
「…男の人?」
「はい。ちょっと怖そうで、でも凄くカッコよくて…優しい人でした」
「…その人は…?」
「…ずっと探してました。実はミアレに旅行に来たのも、その人を探すのを踏まえていて…私、やっと再会できたんです」
そこまで話すと、フラダリさんは少し険しい顔つきになった。
「…もしかして、その人はセイカさんの初恋の方とか、でしょうか」
…予想通り、フラダリさんはその時の記憶がない。
でも良いんだ。私もビビヨンも分かってるから。
それにフラダリさんには申し訳ないけど、さっきのからかいの仕返しをしたい。
そんないたずらごころが芽生えた。
「ふふ、今思えばそうだったかもしれません」
「…そうですか…少しだけ、嫉妬してしまいますね」
私は、フラダリさんの顔を覗き込むようにして微笑んだ。
「過去の自分に嫉妬しちゃったんですか?」
「……え?」
フラダリさんは固まってしまった。
「ふふ、すみません。でも妬いてるフラダリさんが可愛くて…!」
フラダリさんは相変わらずぽかんとしている。
「その時助けてくれたのは、赤い髪をしていた頃の過去のフラダリさんですよ。このボールはその時に貴方から貰ったんです」
そう、これは私とフラダリさんの最初の絆の証だ。
フラダリさんは目を丸くしてまじまじと、ビビヨンのモンスターボールを見つめた。
彼はやがて記憶の奥底を探るように目を閉じたが、記憶喪失の壁は彼の意識を静かに遮ったようだ。
「……すみません。私はその時の記憶を…持っていません」
フラダリさんは頭を抱え、下を向く。
「セイカさんと私にとっての最初の大切な思い出の筈なのに…何も思い出せない自分が…不甲斐ない…」
そんな様子のフラダリさんを見て、私は首を振る。
「とんでもないです。初恋の人にまた会えて、しかもこんなに大切にしてくれて一緒に過ごせて…幸せすぎますよ」
「……そう、ですか」
フラダリさんの声がかすかに震えていた。
「過去の私は罪しかないものだと思っていました…まさか…こんな大切な方との…」
そう言うとフラダリさんは私を抱きしめた。
「ちょっ…!?フラダリさん…ひ、人前ですって…」
嬉しい反面恥ずかしい。
でも、フラダリさんは全く離してくれない。
「…からかいましたね」
「…はい…」
「全く…本当に動揺してしまったんですよ。帰ったらまた、囁かなくてはいけませんね」
「…ほ、本当にごめんなさ…いや…でもちょっとだけ…」
ビビヨンもまた、からかうように羽をきらめかせた。