とまそん日記
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午後の眠たい授業から解放されると、私はまっすぐ図書室に向かった。図書室内のいくつかの本棚の横を通り抜け、テラスへ続く扉を開けると穏やかな暖かい風が流れ込んでくる。
以前に比田くんへクッキーを渡してからというもの、図書室に行くとお茶会に誘われるようになり、今日のお茶会には調理実習で作ったカップケーキをそれぞれ持ち寄ることになった。
個性が溢れるカップケーキをテーブル中央に並べている間に、図書委員さんが準備室からティーポットとカップのセットを運んできた。ポットの蓋を開けると比田くんから受け取った茶葉をポットに入れ、電気ケトルですでに沸かせてあるお湯を注ぐ。一連の流れの手際の良さから、何度も行われてきた動きなのだろうと思う。
しばらくすると辺りに華やかなフルーツのいい香りが広がった。
「それでは!頂きます!」
図書委員の号令でティータイムが始まる。
「やっぱりさ、そろそろ暑くなってきたし、冷たいデザートも食べたいよね。」
お茶をふーふーと冷ましながら比田くんが言った。夏休みを目前に控えたこの頃はテラスが日陰になっているとはいえ日差しが暑い。遠くで聞こえる蝉の声が暑さをさらに強調しているようだ。
「焼き菓子じゃないと、この時期は難しいよねぇ。食中毒もあるし、溶けるし。」
図書委員の言葉に私は深く頷いた。クリーム系のお菓子は夏の暑さで食べるまでに溶けてしまうだろう。保冷剤を入れたとしても傷む可能性を考えるとなかなか難しい。
「外で食べるのは難しいけど、家でなら食べられるんじゃない?」
図書委員さんがそう言いながら、こちらをチラチラ見てにやにやと笑っている。
図書室に通うようになってから図書委員さんと親しくなり、比田くんにお菓子を食べて貰えて嬉しかった事を話してからは、何かときっかけを作ってくれている。この言葉もきっとそういうことなのだろう。
「だったら、私の家へきませんか!」
思ったより大きな声が出て自分でもびっくりした。比田くんも少し驚いているようだった。
「え、若草の家に?」
驚いたのは声の大きさだけで無く私の提案もだったようだ。
「家の中なら冷蔵庫もあるし、いいんじゃない?今度の休みとか都合よければどう?」
図書委員さんがすかさず賛成をする。比田くんは少し考えていたようだが図書委員さんの後押しもあって賛成してくれた。詳しい予定はまた後で決めることにして連絡先を交換する。
私は心の中で図書委員さんに感謝をした。
何度かLINEでやりとりし当日はレアチーズケーキをつくることに決まった。土台には形が崩れてしまって渡せなかったクッキーを使うことにしよう。
話が決まってからは家の掃除をしたり、何度もレシピをみて手順を確認したりして、あっという間に約束の日になってしまった。
テーブルに材料を揃え、クッキーをゴリゴリ砕いてバターと合わせケーキ型に敷き詰めたところでスマホに図書委員さんからのメッセージが表示された。「頑張って!(笑)」の一言に首をかしげていると、玄関のチャイムが鳴った。
「少し早かったかな?」
玄関を開けると比田くんが1人で立っていた。制服じゃない比田くんの姿はとても新鮮だ。
「図書委員は腹痛で来れないって。僕だけじゃ気まずいようならまた改めようか?」
気まずそうな比田くんの表情をみて、さっきのメッセージはこのことだと理解した私は、迷わず比田くんを引き留め家の中へと案内した。
「まだ途中だからゆっくりしててね。」
リビングに案内しお茶を出すと私はキッチンでの作業に戻った。あらかじめ出して置いたクリームチーズはいい感じに柔らかくなっている。荷物を置いた比田くんが興味深そうにキッチンにやって来た。
私がボウルに移したチーズを混ぜていると、「ちょっとやらせて。」と比田くんがかわってくれた。木べらで力強く混ぜてくれるので固形だったチーズがみるみるうちにクリーム状になる。
その後も材料を順番に入れながら、その都度かき混ぜる作業を比田くんがずっとやってくれたので、1人で作るよりも早く終わってしまった。最後に出来上がったケーキの元を型に流し込むと冷蔵庫にしまう。
「このまま2~3時間冷やせば出来上がりです。ありがとうございました。」
比田くんにお礼を言うと、彼は軽く肩を回しながら、「どうってことないよ。」と笑った。
「お菓子作りって大変だ。結構力を使うんだね。」
そう言いながらも疲れた素振りを見せない姿に、比田くんの力強さを改めて感じた。
冷えるのを待ってる間に色々な話をした。将来のことを聞かれて、まだ何も決まってないと答えると比田くんは意外そうな顔をしていた。
楽しい時間があっという間に過ぎ、そろそろかな?と冷蔵庫からレアチーズケーキを取り出す。型から外すとほどよく固まっていてとてもおいしそうだ。8等分に切り分けお皿に盛り付け運ぶと、比田くんがお茶を用意してくれていた。
「それでは、頂きます。」
ケーキにフォークを入れるとプルンとした弾力の後に土台のサクッとした感触があった。口に運ぶとほどよい酸味と甘みが広がり土台のサクッとした食感がとてもおいしい。
比田くんもおいしそうに何口か食べた後、何かに気づいたような顔で口を開いた。
「下の部分はいつもくれるクッキーと同じ味がするね。」
「形がよくなかったクッキーを使いました…。」
比田くんの言葉に私はびっくりした。気づいてくれたことが嬉しいやら、恥ずかしいやらで、やっと答えられた言葉は可愛くないものになってしまった。
「おいしいから気にしなくていいのに!でも、少しでもいい物をくれようとしてたんだね。ありがとう。」
その言葉に私は胸が温かくなった。そしてもっと比田くんにお菓子を食べて貰いたい、もっとおいしいと言って貰いたい、そんな気持ちが大きくなるのを感じた。
「このケーキを毎日食べられたらきっと幸せだね。」
ケーキをおいしそうに食べる比田くんの言葉を聞きながら、将来はケーキ屋さんを開くのも良いかもしれないなぁとぼんやり考えた。
以前に比田くんへクッキーを渡してからというもの、図書室に行くとお茶会に誘われるようになり、今日のお茶会には調理実習で作ったカップケーキをそれぞれ持ち寄ることになった。
個性が溢れるカップケーキをテーブル中央に並べている間に、図書委員さんが準備室からティーポットとカップのセットを運んできた。ポットの蓋を開けると比田くんから受け取った茶葉をポットに入れ、電気ケトルですでに沸かせてあるお湯を注ぐ。一連の流れの手際の良さから、何度も行われてきた動きなのだろうと思う。
しばらくすると辺りに華やかなフルーツのいい香りが広がった。
「それでは!頂きます!」
図書委員の号令でティータイムが始まる。
「やっぱりさ、そろそろ暑くなってきたし、冷たいデザートも食べたいよね。」
お茶をふーふーと冷ましながら比田くんが言った。夏休みを目前に控えたこの頃はテラスが日陰になっているとはいえ日差しが暑い。遠くで聞こえる蝉の声が暑さをさらに強調しているようだ。
「焼き菓子じゃないと、この時期は難しいよねぇ。食中毒もあるし、溶けるし。」
図書委員の言葉に私は深く頷いた。クリーム系のお菓子は夏の暑さで食べるまでに溶けてしまうだろう。保冷剤を入れたとしても傷む可能性を考えるとなかなか難しい。
「外で食べるのは難しいけど、家でなら食べられるんじゃない?」
図書委員さんがそう言いながら、こちらをチラチラ見てにやにやと笑っている。
図書室に通うようになってから図書委員さんと親しくなり、比田くんにお菓子を食べて貰えて嬉しかった事を話してからは、何かときっかけを作ってくれている。この言葉もきっとそういうことなのだろう。
「だったら、私の家へきませんか!」
思ったより大きな声が出て自分でもびっくりした。比田くんも少し驚いているようだった。
「え、若草の家に?」
驚いたのは声の大きさだけで無く私の提案もだったようだ。
「家の中なら冷蔵庫もあるし、いいんじゃない?今度の休みとか都合よければどう?」
図書委員さんがすかさず賛成をする。比田くんは少し考えていたようだが図書委員さんの後押しもあって賛成してくれた。詳しい予定はまた後で決めることにして連絡先を交換する。
私は心の中で図書委員さんに感謝をした。
何度かLINEでやりとりし当日はレアチーズケーキをつくることに決まった。土台には形が崩れてしまって渡せなかったクッキーを使うことにしよう。
話が決まってからは家の掃除をしたり、何度もレシピをみて手順を確認したりして、あっという間に約束の日になってしまった。
テーブルに材料を揃え、クッキーをゴリゴリ砕いてバターと合わせケーキ型に敷き詰めたところでスマホに図書委員さんからのメッセージが表示された。「頑張って!(笑)」の一言に首をかしげていると、玄関のチャイムが鳴った。
「少し早かったかな?」
玄関を開けると比田くんが1人で立っていた。制服じゃない比田くんの姿はとても新鮮だ。
「図書委員は腹痛で来れないって。僕だけじゃ気まずいようならまた改めようか?」
気まずそうな比田くんの表情をみて、さっきのメッセージはこのことだと理解した私は、迷わず比田くんを引き留め家の中へと案内した。
「まだ途中だからゆっくりしててね。」
リビングに案内しお茶を出すと私はキッチンでの作業に戻った。あらかじめ出して置いたクリームチーズはいい感じに柔らかくなっている。荷物を置いた比田くんが興味深そうにキッチンにやって来た。
私がボウルに移したチーズを混ぜていると、「ちょっとやらせて。」と比田くんがかわってくれた。木べらで力強く混ぜてくれるので固形だったチーズがみるみるうちにクリーム状になる。
その後も材料を順番に入れながら、その都度かき混ぜる作業を比田くんがずっとやってくれたので、1人で作るよりも早く終わってしまった。最後に出来上がったケーキの元を型に流し込むと冷蔵庫にしまう。
「このまま2~3時間冷やせば出来上がりです。ありがとうございました。」
比田くんにお礼を言うと、彼は軽く肩を回しながら、「どうってことないよ。」と笑った。
「お菓子作りって大変だ。結構力を使うんだね。」
そう言いながらも疲れた素振りを見せない姿に、比田くんの力強さを改めて感じた。
冷えるのを待ってる間に色々な話をした。将来のことを聞かれて、まだ何も決まってないと答えると比田くんは意外そうな顔をしていた。
楽しい時間があっという間に過ぎ、そろそろかな?と冷蔵庫からレアチーズケーキを取り出す。型から外すとほどよく固まっていてとてもおいしそうだ。8等分に切り分けお皿に盛り付け運ぶと、比田くんがお茶を用意してくれていた。
「それでは、頂きます。」
ケーキにフォークを入れるとプルンとした弾力の後に土台のサクッとした感触があった。口に運ぶとほどよい酸味と甘みが広がり土台のサクッとした食感がとてもおいしい。
比田くんもおいしそうに何口か食べた後、何かに気づいたような顔で口を開いた。
「下の部分はいつもくれるクッキーと同じ味がするね。」
「形がよくなかったクッキーを使いました…。」
比田くんの言葉に私はびっくりした。気づいてくれたことが嬉しいやら、恥ずかしいやらで、やっと答えられた言葉は可愛くないものになってしまった。
「おいしいから気にしなくていいのに!でも、少しでもいい物をくれようとしてたんだね。ありがとう。」
その言葉に私は胸が温かくなった。そしてもっと比田くんにお菓子を食べて貰いたい、もっとおいしいと言って貰いたい、そんな気持ちが大きくなるのを感じた。
「このケーキを毎日食べられたらきっと幸せだね。」
ケーキをおいしそうに食べる比田くんの言葉を聞きながら、将来はケーキ屋さんを開くのも良いかもしれないなぁとぼんやり考えた。
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