とまそん日記
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「黒森ってさ~いつも本読んでるね?」
最近よく図書室に来るやつに話しかけられた。いつもは比田とお喋りして図書委員が仕事を終えるのを待っているのだが、今日は比田がいない。あいにく図書委員も返却本の整理で忙しそうだ。俺は本に集中している振りをして無視することにした。
無視されたことを気にすることもなく彼女は、よくこんなに読めるよねー。と、机に置いてあるいくつかの本から1つをとって、適当にパラパラと捲っている。
「雑誌か漫画しか読まないから良くわかんないや~。」
彼女は別の本を取り、またパラパラとページを捲っているが、本の半ば辺りでピタリと手を止めた。
「あれ、この名前見たことあると思ったらこの間ゲームでボコボコにしたやつじゃん!」
彼女が驚きの声を上げる。どうやら見慣れた名前があったらしい。
「え、私が使ってたキャラ、めっちゃ悪いやつなんですけど!?」
時折静かになったかと思うと驚きの声が入る。その後も、あいつこんなことしてたのか~。や、こんなキャラいたっけかな~?などたびたび呟く声が聞こえる。普段から煩いやつだとは思っていたが読書の時まで煩いのか…。げんなりしながら、流石に本に集中できなくなってきたので注意をしようと、本から顔を上げると彼女と目が合った。
「黒森!本って面白いね!?」
キラキラした表情でそう言われてしまい、なんだか注意がしにくくなってしまった。
「ね、ね、黒森のおすすめってどんな本??」
本格的に読書に興味が出てきたのか、お薦めの本を聞いてきた。だが、本を読み始めたばかりのやつに今読んでいるような文学的なものは難しいだろう。
「ちょっと待ってろ」
重い腰を上げて本棚の本を取りに行く。ちょうど今持っている本も読み終えたから新しい本を取りに行くついでだ、と自分で自分に言い訳をしながら彼女が興味を持てそうな本を選んだ。
「これが黒森のおすすめ?」
机に戻り選んできた本を渡す。興味津々な顔で聞いてきたが、違う。と一言返すと、きょとんとした顔になった。
「さっき出てた人物視点での同じ話だ。」
渡したのはさっきまで彼女が読んでいた本の別解釈の本だ。あちらが史実に則った話なら、こちらは若干脚色が入っているが内容としては断然面白い。純文学よりこっちの方が読みやすいだろう。せっかく読書好きが増えそうなのだからわざわざ難しい本を渡してやる必要は無い。これで彼女も少しは静かになるといいのだが…。
「へー、わざわざ選んでくれたんだぁ…。」
こっちの気持ちを知らないからか、彼女は渡された本を見つめながらにこにこしている。
「ありがと。」
本から目を離さずにお礼を言うと彼女は早速本を読み始めた。集中しているのかさっきとは違い、一言も発さずただ黙々と読んでいる。図書室は本のページを捲る、かすかな音がするだけの空間に戻っていた。
放課後を伝えるチャイムの音で我に返る。どうやら集中して本を読みすぎていたらしい。あまりにも静かで彼女は飽きて先に帰ったか?と本から顔を上げると目の前には軽く本の山が出来ていた。
「黒森、黒森、本って楽しいね!」
山の向こう側からひょいっと顔を出して彼女が言う。手渡された本を読み終わってから似たような本を何冊か選んで運び、ずっと読んでいたらしい。
「…全部読んだのか?」
山が出来るほど1日で本を読むなんてどんなペースだよ…と戸惑いながら声をかけると
「ううん、半分も読めてないから後は持って帰ろっかな~って。」
流石に全ては読めていないと言う返答に、なぜだかほっとした。
「かなりの重さになるからやめておいたほうがいいぞ。」
「大丈夫、大丈夫!」
彼女は自分の鞄に本を詰めると若干重そうにしながらも肩に背負った。
こんな時、比田だったら鞄を持ってあげるのだろうか。そんなことが一瞬よぎったが自分には出来ないことなので、言うのはやめておいた。
「じゃ、私は帰るね。またおすすめの本教えてね!」
彼女の後ろ姿を見送りながら、今度はどんな本を薦めようか、面倒に思いながらもどこか楽しさを感じていた。
最近よく図書室に来るやつに話しかけられた。いつもは比田とお喋りして図書委員が仕事を終えるのを待っているのだが、今日は比田がいない。あいにく図書委員も返却本の整理で忙しそうだ。俺は本に集中している振りをして無視することにした。
無視されたことを気にすることもなく彼女は、よくこんなに読めるよねー。と、机に置いてあるいくつかの本から1つをとって、適当にパラパラと捲っている。
「雑誌か漫画しか読まないから良くわかんないや~。」
彼女は別の本を取り、またパラパラとページを捲っているが、本の半ば辺りでピタリと手を止めた。
「あれ、この名前見たことあると思ったらこの間ゲームでボコボコにしたやつじゃん!」
彼女が驚きの声を上げる。どうやら見慣れた名前があったらしい。
「え、私が使ってたキャラ、めっちゃ悪いやつなんですけど!?」
時折静かになったかと思うと驚きの声が入る。その後も、あいつこんなことしてたのか~。や、こんなキャラいたっけかな~?などたびたび呟く声が聞こえる。普段から煩いやつだとは思っていたが読書の時まで煩いのか…。げんなりしながら、流石に本に集中できなくなってきたので注意をしようと、本から顔を上げると彼女と目が合った。
「黒森!本って面白いね!?」
キラキラした表情でそう言われてしまい、なんだか注意がしにくくなってしまった。
「ね、ね、黒森のおすすめってどんな本??」
本格的に読書に興味が出てきたのか、お薦めの本を聞いてきた。だが、本を読み始めたばかりのやつに今読んでいるような文学的なものは難しいだろう。
「ちょっと待ってろ」
重い腰を上げて本棚の本を取りに行く。ちょうど今持っている本も読み終えたから新しい本を取りに行くついでだ、と自分で自分に言い訳をしながら彼女が興味を持てそうな本を選んだ。
「これが黒森のおすすめ?」
机に戻り選んできた本を渡す。興味津々な顔で聞いてきたが、違う。と一言返すと、きょとんとした顔になった。
「さっき出てた人物視点での同じ話だ。」
渡したのはさっきまで彼女が読んでいた本の別解釈の本だ。あちらが史実に則った話なら、こちらは若干脚色が入っているが内容としては断然面白い。純文学よりこっちの方が読みやすいだろう。せっかく読書好きが増えそうなのだからわざわざ難しい本を渡してやる必要は無い。これで彼女も少しは静かになるといいのだが…。
「へー、わざわざ選んでくれたんだぁ…。」
こっちの気持ちを知らないからか、彼女は渡された本を見つめながらにこにこしている。
「ありがと。」
本から目を離さずにお礼を言うと彼女は早速本を読み始めた。集中しているのかさっきとは違い、一言も発さずただ黙々と読んでいる。図書室は本のページを捲る、かすかな音がするだけの空間に戻っていた。
放課後を伝えるチャイムの音で我に返る。どうやら集中して本を読みすぎていたらしい。あまりにも静かで彼女は飽きて先に帰ったか?と本から顔を上げると目の前には軽く本の山が出来ていた。
「黒森、黒森、本って楽しいね!」
山の向こう側からひょいっと顔を出して彼女が言う。手渡された本を読み終わってから似たような本を何冊か選んで運び、ずっと読んでいたらしい。
「…全部読んだのか?」
山が出来るほど1日で本を読むなんてどんなペースだよ…と戸惑いながら声をかけると
「ううん、半分も読めてないから後は持って帰ろっかな~って。」
流石に全ては読めていないと言う返答に、なぜだかほっとした。
「かなりの重さになるからやめておいたほうがいいぞ。」
「大丈夫、大丈夫!」
彼女は自分の鞄に本を詰めると若干重そうにしながらも肩に背負った。
こんな時、比田だったら鞄を持ってあげるのだろうか。そんなことが一瞬よぎったが自分には出来ないことなので、言うのはやめておいた。
「じゃ、私は帰るね。またおすすめの本教えてね!」
彼女の後ろ姿を見送りながら、今度はどんな本を薦めようか、面倒に思いながらもどこか楽しさを感じていた。