復活:雲雀(姉さんヒロイン固定)
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「ななし、あたし引っ越したんだ」
「えっ?! ていうか過去形? どこ?」
「あはは、面白い反応! 隣から隣。家リフォームしてさ、古い家から引っ越したってワケ」
「ああ…なんだそういうことか。いいなあ新築」
「なら今度の週末ウチに泊まりくれば?」
「えっ…!」
ひばりねえのまいにち
「駄目」
ピシャリと言い放つ弟は、とっても不快そうに眉をひそめながらお茶を飲んだ。酷い、今わたしが「お願いがある」って言っただけでまだ何も言ってないのに! ていうか姉大事にしてるならお願いくらい聞けっての!(ていうかまず話を聞こう、うん、まずそこから)
「まだ何も言ってないのに!」
「姉さんの『お願い』はいつも僕を不快にさせるからやだ」
「(ガーン!!)え、そうだっけ…?!」
あ、もしかしてバーゲンセールのことを言ってるんだろうか。いや、よくちらしに「お一人様〇個まで!」とか載ってる商品は、弟を引きずって連れていってるから………あ、あとあれかな? 学校に宿題置いてきて、弟と一緒に取りに行ったの。…ま、まあ確かに弟の嫌がりそうなお願いばかりだな…。でもだからといって諦めるわけにはいかない。
「お願いっ!! 今度の週末に友達の家に泊まらせてください!」
「誰? ちょっと行ってくる」
「わあああああダメダメ!! 行かないでーーー!!」
お願いだから、わたしの友達を減らさないでよ…! もし弟にそんなことされたらきっと、いや絶対その友達は二度とわたしと付き合わないだろう。
「べっ別に良いでしょ、恭弥くんの前で…む、群れるわけじゃないんだし」
「うん、僕の前ではね。でも姉さんは本来誰とも群れちゃ駄目なんだ」
「なっ…!? 何その法律的な…!! そんなこと誰がかん……ですよねー」
途中で弟が微笑んだ為わたしは汗をたらしながら微笑み返した。あれ以上言ってたら週末は部屋に軟禁されてたに違いない。
ていうか友達宅への宿泊を親ではなく弟に許可願いするわたしもわたしだよね。あーやだよう、宿泊すごく楽しみにしてるのに…!
「こんなことなら黙っておけば……」
「そんなことしたら」
「ぬああああすいませんでしたそれ以上言わないでください!!」
やめて、君が口にするの全部本気だから! ていうか恐い、何今の目 草食を狩る気満々の肉食クンだったよ!?
そのうち、どうしよう、どうしようとあれこれ考えこむわたしを見兼ねたのか。ふいに弟が「姉さん」と声をかけてきた。
「そんなに行きたいなら、泊まってもいいよ」
「!! ほんとっ?!」
「うん」
「(やったー!)わーありがとう! 恭弥くんありがとう! でもなんで?」
「……別に」
……なんという気まぐれ。しかしこれで助かった。弟の気が変わらないうちに急ごう。いそいそと立ち上がったわたしは早速荷造りの為、リビングをあとにしようとした。が、「ただし」と弟がふいに声をあげる。
何、その表情。
「2つ条件があるんだけど」
どう見ても、わたしにとっての好条件を口にしそうにない表情。ま、まさかここで条件付きとは…! 緊張が走り、ごくりと唾をのみこむ。
「な…何?」
「そんな身構えないでよ。あっちの家に着いたら一時間ごとにメールして。あと、姉さんが泊まる日は僕が姉さんの部屋に泊まるから」
「な…?! なん」
「駄目なら、それはそれでも僕は構わないけどね」
「いいえとんでもない」
メールは面倒だけど、無理でもない。ましてやわたしの部屋なんて、それこそ「どーぞどーぞ」だ。
わたしは余裕を気取って微笑んでみせた。
「いいよ、じゃあ許可もらったからね」
「うん」
「………後でナシにしようとしないでよ」
「しないよ」
…まあ、弟はなかなか約束しない分、約束をすると必ず守ってくれるし(守れない約束はしないタイプと言うべきか)
とにもかくにも、わたしは無事、週末の予定を入れることができたのだった(やったね!)
土曜日に泊まって日曜日に帰宅というプランは、見事に遂行できた。朝から友達と町へくり出し(弟とメールしながら)夕方に友達と彼女のお母さんと一緒に夕食を作り(煮込んでる間にメールを送って)夜は友達の家族みんなでバラエティ番組を観て(メールの返事が妙に遅いと思いながら)お風呂入って深夜寝るまで友達とおしゃべりして(完全にメールが返ってこなくなったが気にしなかった)翌日の昼、わたしは友達とその家族の方々に見送られ帰宅した。
「……………」
……なんでメール返事来なかったんだろう。宿泊中まったく考えなかったけど、自宅のドアを前にして、急にそれが気になってきた。もしかしてメールの内容にむかついて切った?(超楽しい!みたいな文章しか送らなかったし) うう、でも帰らなくちゃ……。
「た…だいま~あ…」
ゆっくりドアを開けながら、ひっそりと呟く。
……あれ、なんでこんな静かなの? いつもなら聞こえるテレビの音も、というか物音一つしない。出かけた…という考えは、そこにある弟愛用の靴が否定した。
それなら部屋にいるのかもしれない。まあいいや、先に荷物を片付けよう。そう思ってわたしは自分の部屋に向かった、のだけど。
「きょ…きょうやくん」
なんと弟がベッドを占領し眠りについていた。いや確かにわたしは一日部屋を貸したけど、まさか、規則正しい生活を送る弟が、まだ睡眠なんて、……よほど疲れてたのかな、昨日。
起こしちゃ悪い、よね。わたしは荷物を机に置くと、部屋を出ようとした。
「姉さん…」
「! はいィ!!」
慌てて振り向いたものの、当の本人はまぶたを閉じている。ね、ねごと…? 弟にしちゃ珍しい。ていうか弟の寝顔を見ること自体久しぶりだ。なんとなくもっと近くで見たくなって、そっと近寄る。
「(……まつげ長い)」
かつらかぶせて女の子の服着せたらかわいいだろうな…って、わたしは親ばかか。でも弟はわたしに似ず本当に容姿が整っていて、事実、かっこいい。
「これで、なんで彼女ができないんだろうね」
「できないんじゃなくていらないんだよ」
「うわ!!!」
独り言だったのにまさか返答がくるとは、ていうか起きてたのね。
「おはよう恭弥くん、さっき帰ってきたよ」
「うん」
「朝ご飯は食べた?」
「食べてない」
「……昨日は夕方何食べた?」
「食べてない」
「え」
「寝てたんだ」
「え」
「姉さんが出て行ってから、ずっとここにいたから」
わーお、どんだけなの君は。ひくついた頬を引き締めて、とりあえずお風呂にいかせた。ありえないでしょ、トイレにもお風呂にも行ってないなんて!!
「姉さん」
「何?」
部屋を出る前、弟が振り向いた。なんだ、そのほほえみ。
「しばらくこの服洗わないでね。においが落ちると、やだから」
「………………りょ、りょうかいです」
わたしは心から問いたい、いったいわたしのどこがいいのかと。
とりあえず彼女つくってよ、そしてわたしを安心させて!!
no sister, no life!な弟
「でももしこれでわたしが他人だったら、立派なへん…………だよね…」