復活:雲雀(姉さんヒロイン固定)
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『恭弥くんへ。今日はタイムバーゲンセールがあるので友達おすすめのスーパーに寄り道します』
「……………」
『多分今日は中学よりこっちが早く終わると思うので、先に行ってます』
「………いない」
ひばりねえのまいにち
あれ。おかしいな。
「………」
とっておきの道がある。
友達にそう言われ(手書きの)地図を手渡され、わたしは今それを手に、
「どこだ、ここ」
閑静な住宅街に立ちつくしている。
「……あーれー…?」
手書きの地図をもう一度よく見てみるけど、学校からスーパーまでの道のりはちゃんとたどっている。右折したでしょ、交差点二つ目左に曲がってまっすぐ歩いて……うんうん、間違ってない。本来ならこの場に立てばスーパーがあって目のぎらついたおばさん方が勇み足で次々と入店してるはず、なんだけど…。でもこの場にスーパーはおろかおばさんたちの姿さえない、つまり間違えたことは確実。しょうがないなあ、さっきのところまで戻ろうか…あ、でもそしたらもうセール間に合わない…よね。あああどうしよう!!
「あれ、ひば…ななしさん?」
「? え?あ」
考え込むわたしに恐る恐るとばかりにかかってきた、聞き覚えのある声。その主はちょうど、目の前の曲がり角から現れた………。
「………」
……………えっと……いや! 忘れたわけじゃないよ…!
「! 沢田くん!」
「…は、はい…(明らかに忘れてたよな今の間…!)」
そうだ、以前バイト先でお世話になった沢田くんだった(ちなみに嫌味ではない、ほんとにお世話になったのだ) とにかく助かった、知り合いがいた…! でもというか気になるというか、
「なんで沢田くんがここに…?」
「え、だって俺ん家ここですよ」
「そうなの?! あれっ学校は?」
「さっき終わって、今帰ってるとこです」
そうなんだ、沢田くん家ってこの住宅街に…! まあそういえばそうだ、ここなら並盛中からも近いし。あ、ということはスーパーの場所も知ってるかな?
「そうだ、あのさ…」
「ガハハハハ!!!」
「!?!」
突然どこからか笑い声がわいてきて、ビックリする。な、なんだこの声は!! どこぞの悪的魔王じゃあるまいし……! あれっなんか電信柱でおしり突き出してるぞ…。
「ちが~う~、ちが~うもんね~、ちっが~うもんね! ランボさんのお家だよ! ツナなんかのお家じゃないよーだ!」
「げっランボ!」
…らら。邪悪なキャラかと思いきや、そうでもない。その小さな魔王は沢田くんの肩に飛び乗ると、わたしにそう言い聞かせてきた。ていうか、ほんとちっちゃい。でもなんだろうこの子の着てる服…。柄、牛柄だよね? まあ本人(というか親)が好んでるならわたしがいちいち言うことじゃないか。それにかわいいし。
「(こンのアホ牛!!)ランボっ初対面のくせに失礼だぞ! ほら、挨拶して、つか鼻ふけ!」
「ん」
鼻から垂れる鼻水をズピッとすするランボくんは、かわいい。うちの弟とは大違いだ。……まああの子とこの子の年齢で比べるのもなんだけど。
「ぼくっの名前はランボー!」
「なーー!(こいつイキナリ歌い出したーー!!?)」
「あはは、ヤンマーの替え歌だね」
「(すげえ、ななしさん笑って流してる…! 山本タイプ?!)」
「ていうか、ランボくんって変わった名前だよね。沢田くんの弟?」
「いや、違いますよ! ていうか俺一人っ子だし。なんていうか、そう、預かってるだけで」
「そうなんだ」
なんにせよ、突然のランボくんの無邪気な歌は、確実にわたしの疲れを癒してくれていた。ああ…救われる…。今度家庭科である幼稚園訪問、絶対満喫しよう…。
「きみーっとぼっくとーで」
「ほらっランボもういいだろ!! 近所迷惑なんだよ!」
「ダメツナのくせに~!!」
「(ムカッ)お前に言われたくないよ!」
つーか重いし!と沢田くんに片手でつままれたランボくんは、わたしを見つめたのち指さした。なんだろう? まさかここで「こいつ誰」とか言うんじゃないだろうか。
「こら、人を指差すなっていつも言ってるだろ」
「だって名前わかんないしい~ツナ教えてくれないしいぃ」
「(あ…やっぱり)あ、えっと、雲雀ななしっていいます。よろしくね、ランボくん」
「わかった!!」
元気よく返事するランボくんが微笑ましくて、思わず頬がゆるんだ。すると「あのう、」と、沢田くんが控えめに口を開いた。
「さっきから気になってたんですけど、ななしさんはなんでここにきたんですか?」
「え? それは……………あ」
お も い だ し た 。バッバーゲン!! スーパーのバーゲンセールスが~~!!!
「あああああ!!! いっ、今! 今何時?!」
「え? 4時半ですけど…」
「ていうか沢田くんがここにいるってことはもう学校終わってるんだよね?!」
「まあ、そうですね…。あ、あの…ななしさん?」
さらに思い出した、弟には学校を出る前スーパーに行くとメールしていたのだ。どうやらわたしは中学が下校時間になってもスーパーにたどり着けなかったらしい。やばい、これは弟に殺される。まさかこの歳で迷子なんて言い訳もできやしない。
「さっさわだくん!! スーパーまでの道のり知らないかな!!」
「スッスーパーですか?!」
「そう!! 早くしないと恭弥くんに怒られちゃう! でもきっと今なら多分まに」
「遅いよ」
「……………」
「……………」
「……………ちょっと、無視?」
素晴らしい程のバッドタイミング。わたしの背後を見た沢田くんがみるみる青ざめていく。それを見て背筋が凍った。沢田くんの表情ってほんとにわかる、いかにうちの弟が怖いのか、彼の顔色をうかがうだけでわかる。それでもそのまま無視するわけにはいかなくて、「姉さん」と声をかけられたわたしは、ロボットのように首を回した。
弟が、トンファーを片手に立っている。両手じゃないのがせめてもの……すくい、なのかな…。
「姉さん、言ったはずだよ。特に並盛中の草食とは群れるなって」
「え、え…?(あれっそんなこと言われたっけ…?!)」
「おまけにスーパーにいるなんて嘘、よくついたね」
「!! いや違うのそれは迷子になって! ね、ねぇっ沢田くん!」
「そっそうなんです!!」
「沢田綱吉は黙って、僕は姉さんと話してるから」
「すいませんでした!!」
即座に謝る沢田くん(ごめんなさいわたしが促したばっかりに…!) 泣く子も黙る鬼風紀委員長は、けれども突然フッと力を抜いた。そして視線を上げる。
「……やあ、赤ん坊」
「また会ったな、ヒバリ」
いつの間にか塀の上に立っていた、黒いスーツに身を包み黒光りする帽子を被る、……とても小さな赤ちゃん。おかしいな、背丈から考えて日本語こんなにべらべら喋れるもんだっけ? けれど、あの弟がこの赤ちゃんに対しては対等な態度なのに驚いた。何、もしかして赤ちゃん好きなの?!!
さらに新事実、沢田くんはこの赤ちゃんとも知り合いみたいだった。
「リッリボーン!! いつからそこにいたんだよ」
「今だぞ。ヒバリより先に気付かねェとは、相変わらずのダメツナだな」
「(むっかー!)うるっさいよ!! 気配なんてわかるはずないだろ!!」
……あ、赤ちゃんにバカにされてる……沢田くん…。でも、ただの赤ちゃんじゃないっていうのは弟の態度でわかる。ていうか赤ちゃんの言動からしてわかるよ。なんだここ、わたしなんかが踏み入れていい領域じゃないよね…?! ひええ、と思わず一歩後ずさりした時、沢田くんの手から脱出したランボくんがわたしの肩を利用し、ピョンと跳ね上がった。
「ちねリボーン!」
「お前がな」
「ぐぴゃ!!」
「!? うわあああランボくーーん!!」
ランボくんの暗殺(あれフォークだよね食器の?! はね返されたフォーク、頭に突き刺さってるんだけど!)をスルーした赤ちゃん(えっと…リボーンくん…?)は、わたしをジッと見下ろした。うわあクリクリとした目、ちょう可愛い…!
「お前がヒバリの姉か」
「!! ……あ、はい…ななしです」
ショックだ。明らかに10年以上歳の差があるのに、ため口で呼び捨てされた……!! くっでもここは立ち直れ! 大人になれ!
その時、弟が不快そうな声を出した。うわあ、すごいムスッとしてる。
「何? 赤ん坊も姉さん狙ってるの?」
「(も?! 俺も入ってんの?!!)」
「違うぞ。ななしはツナが愛人候補にしてるからな、俺はボスの女には手を出さねェ」
「………」
「なあァッ!?!!」
「ちょっな…えっえーー!!」
ニッと笑いながらとんでもない発言を放つ赤ちゃん(なっなんなんだこの子はーー!?) ていうか今のほんと?! わたしが沢田くんの、あ、ああああいじんッ!?!! 考えるだけで顔が爆発しそうだ。ちなみにそんなわたしと対照的なのは我が弟だ。
や ば い こ れ は 。
「そう………姉さんを愛人にだなんて、よく願ったものだね…………咬み殺すだけじゃ物足りない」
「ちっちちちがうんです俺全然そんなこと全く一切ほんとに願ってないです誤解なんです誤解!! 信じてください!!」
「やだ」
「(拒否されたーー!!) リッリボーン! お前いい加減にしろーー!!」
「たまには本気のヒバリと実践しないと、お前の体がなまっちまうからな」
そんなリボーンくんの声は、弟には聞こえちゃいないだろう。ああどうしよう、ほんとにどうしよう…!? とりあえずリボーンくんの指示に従って、ばたんきゅうしてるランボくんを抱いて沢田くんと弟から離れる。失礼かもしれないけど沢田くんは弟と戦えるほど強い…のかな…? 二人を心配しながら眺めていると、腕の中でモゾモゾとランボくんが動いた。
「ん…む…!」
「ラ、」
「ちねっリボーン!!!」
目覚めたランボくんが真っ先に起こした行動は、リボーンくんめがけてスプーンを投げつけることだった。どっから持ち込むんだろう、これ。
「なっ俺のスプーン!」
「沢田くん!?(やっぱ沢田くんとこか…!)」
そして鈍いわたしがその行動を止めることはできず、ランボくんはスプーンをヒュッと放った(赤ん坊の割に正確だな…!) ところが結果は先程と同じで、リボーンくんにはじき返されたスプーンはランボくんのおでこにぐっさりと突き刺さる。おかしいなスプーンなのに。スプーンだからか?(待て待て落ち着けわたし、あまりにも非日常な出来事だからちょっと混乱してるかも)
「う…ぐ…う」
「ら……らんぼくん、だいじょうぶ?」
「……が……ん」
「え?」
「が・ま・ん………」
「(この歳で我慢しようとしてるーーー!!)え、えらいよランボくん!」
「びえええええええ~~!!!」
「(結局泣いたーーーーー!!!)」
ま、まあしょうがないよね、痛いもんね!! よしよしとあやしてあげていると、それでも泣き続けるランボくんは自分のモクモクした頭をかきだした。そして、え、ちょ、何これ。明らかに入ってちゃいけないものがこの子の頭に入ってるんですけど。
「ば、ばばば」
「びええええ!!!!」
バスーカだとおおおおお?!!! ありえないでしょフツー! 小さな子がバズーカとか、ていうかまずバズーカってそんな簡単に手に入るものなの!? やばいようちの弟真っ先に使いそうだよ(あ、それはないか、弟は自らの手で狩るのが好きなんだし)
さらに驚くべきことに、ランボくんは泣きながらそのバズーカの標準を…というか、弾の入っている筒に自分の頭をつきつけた。まさかこの歳で…!
「だっだめーーーー!!」
わたしの制止もむなしく、ランボくんはバズーカの引き金を引いた。とたんに煙も一緒に吹き出し、あたりが見えなくなる。それでもショックなことに変わりはない。ああ、嘘だ。出会って数十分の男の子が、自殺を図るなんて…しかもわたしの腕の中で。これどうやって警察に説明したらいいのかな…。気のせいかランボくんの身体が重い。夢じゃない、ランボくんは本当に……ん? な、に、この…おっ
「重っ……!! ちょ、むり!」
急激に体重が増えるランボくんに耐えきれず、わたしは倒れ込んだ。その上から身を倒してきた、ランボくん…じゃなーい!! 知らない男の人!! だれ、だれこのひと?!(あれっランボくんがいない!)
「やれやれ……人がせっかくボスの掃除をしていたというのに……おや? あなたは」
「う、わあああああ!! だっだれ!?」
「あ……これはこれは十年前のななしさん、お久しぶりです。俺は十年後のラ」
わたしの叫びに、コンマ何秒の早さで駆けつけてくれた弟はすぐに男の人をどかしてくれた。もっと正確に言うと吹っ飛ばしてくれた。……初対面の男の人、ごめんなさい。ていうか爆発音が耳に残ってて、口パクで何を喋ってたのか聞こえなかったです。すいません。
「姉さん大丈夫? ケガはない?」
「う、うん…ありがとう」
「だから言ったでしょ、群れは危ないんだ」
「そ、そうですね…」
「ほら、帰るよ」
腰の抜けたわたしを引っ張り上げると、弟はリボーンくんと沢田くんに振り返った。その目が妙に冷たい。
「僕らは帰るよ。………言っておくけど姉さんは誰の愛人にもならないから。そいつ君らの関係者でしょ? ちゃんと処分しておいてね」
「わかったぞ」
「(絶対、処分のとこわかったって言ったよなリボーン…)」
「(あ、もう決定済みなんだ…別にいいけど)じゃ、じゃあ失礼します。沢田くん、またね」
「あっ、はい。また、」
「(むか)『また』なんてないよ」
え、ええ~~…!? そんな…。
永久独身決定なわたし
「……セール、間に合わなかったね…」