鬼滅:竈門
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わたしが開ける前に、ドアが開いた。
わたしが家に入る前に、家に体がすいこまれた。
つまり全て相手がいて、わたしはそれを受けた形だ。
帰宅したはずの家の中は真っ暗で、どこも明かりがついていない。
誰かが玄関で、わたしを抱きすくめている、が、誰なのかはわからない。
何も受け身をとっていない自分を助けてくれたというよりも、確保した、という気がしないでもない。
理由は、このような状況になっても、一言もしゃべらず、自由にもならないからだ。
空き巣か? 強盗か? 何もわからない。
「……」
相手を刺激しないほうがいいと判断し、出方を待つ。
すると、聞き覚えのある声が落ちてきた。
「ななし」
「……た、炭治郎、なの?」
炭治郎の声がする。
目が暗闇になれてきたが、後頭部に彼の手のひらが添えられていることで、見上げることができない。
でも、きっと炭治郎だ。
「あ、あの」
「おかえり」
「あ、ただいま……って、なんで家にいるの?」
「合鍵をつくってもらった」
「へ、へえ……」
「あとは?」
「え?」
「俺に聞くことは?」
「え、えと……」
そんな急におかわりを聞かれても、とっさに思いつかない。
もういいかな、と返すと、「じゃあ俺の番」と言った。
「一緒にいた奴は誰だ?」
「えと、」
「ななしとどういう関係なんだ?」
「え? それは、」
「何故ななしから奴の匂いがするんだ? 何故商店街にいたんだ? 何故本屋を何軒も回る必要が? ななしは奴をどう思っているんだ? 奴と一緒にいてどう思った? 俺と奴のどちらが好みなんだ? 奴はいつもななしと学校で一緒にいるのか? 俺の知らないところで、ななしとどれだけ会話しているんだ? それから……」
「ま、まってまって炭治郎!! ストップ、ストップ!」
暗記したものを述べるかのような、質問の嵐だった。
全くついていけない。ていうか一問一答方式と思ったら違ったわ、一括方式だったわ。
そして聞き逃しそうになったけど、商店街に行ったことバレてた。いや別に商店街は悪くないんだけど、なんで炭治郎が知ってるの?! 後でもつけていたの?!
しかもこの炭治郎は、機嫌が悪い状態だ。
たまにあるのだ、そういうスイッチが。
その原因が、商店街の光景だったとしたら……。
まさかとは思うけど、一応これだけは伝えよう。
「炭治郎、わたし、あの人とは何もないよ」
はっきり、それだけ言う。
一拍おいて、炭治郎が「本当なのか?」と聞き直す。
「あの人、彼女いるから」
とどめの一言。
全て事実である。
というか、委員長クンの彼女が、例の――わたしと炭治郎御一行を会わせた、友人である。
そこまで話すと、ふっと、わたしを抱きしめていた力がゆるんだ。
そして、ぱちんと音がした。
炭治郎が、玄関の電気をつけたのだ。
視界が良好になり、話していた相手が炭治郎一人だったということも再認識した。
「そう、なのか」
いつの間にか、こちらに背中を見せていた。
そして、少し歩きだしたところで立ち止まり、振り向かないまま「ななし」と呼んだ。
「一つだけ、聞いていいか?」
「な、なに?」
「あの人、と商店街にいた理由って……」
どんだけ気になるのよ。
ずっと炭治郎に疑われていることに、うれしさよりも、嫌な気持ちが上回る自分がいた。
さっき、少しだけど怖い思いもしたのだ。
冷静さも取り戻したところで、今度はこっちの機嫌が悪くなる。
「炭治郎」
「!!」
「こっちきて」
「はっ、はい!!」
炭治郎は、わたしの不機嫌オーラにしょんぼりしながらリビングについてきた。
どっかりと椅子に腰かけたわたしの前の席に、炭治郎を座らせる。
そして年上らしく、はっきり言った。
「わたしは、炭治郎に誤解されたくない。だから全て話す。でも、わたしと委員長クンは互いに友達だから、何もないことを信じてほしい」
全て詳細に語った。二人で行った理由も、よろめいたことも、後ろから抱きしめられたことも。
炭治郎は真剣に耳を傾けていた。
話しながら、わたしは自分で思った。
「(これでわたしのことラブじゃなくてライクだったら、恥ずか死ぬな)」
ちなみに、炭治郎も実は家の用事で商店街に行っていたらしい。
そこで偶然わたしと委員長クンのコンビを見かけてしまったそうだ。
……ということにしよう、うん。
*
それから目に見えて、炭治郎がルンルン気分の上機嫌だった。
たまにある図書委員活動の日は、帰宅したら炭治郎が家にいるようになった。
そしてわたしをぎゅっとして、制服をぱっぱっと軽くはたいてくる。
「これ、いつも何してるの?」
「家に、外の菌やほこりを入れたら駄目だろう」
「あーなるほど」
そこまで深く考えてなかったわ、と返すと、だろうな!と元気よく言われた。
めっちゃあおってくるやん、この子。
しかし、二人の仲は進展したと思う。
少なくとも、炭治郎に抱きしめられても嫌な気持ちはしなくなった。
むしろ落ち着くというか、好きというか。
正直、毎日好意的に接せられ、ニコニコと過ごされれば、誰でも意識せざるを得ない。
「ななし」
「どうしたの?」
「好きだ」
それなのに、どうしてだろう。
これだけ炭治郎を意識しているのに、彼からの告白に応えられる勇気がない。
言葉が出ないのだ。
「わたしも好き」と。
声に出そうとしても、のどに何かがつっかえて、そこで止まってしまう。
「……ありがとう」
だから、かわりじゃないけど、感謝を述べることにした。
ハグから解放されたところで、炭治郎を見上げる。
彼の大きな瞳が、わたしをじっと見つめていたた。
「俺は、我慢強いんだ。長男だから」
「え?」
「ななしを待つよ。大人になっても、おじいさんになっても、ずっとななしを待つから」
いつも炭治郎は、このように言う。
目をそらさず語る口調に、照れ隠しで冗談を言った。
「そんなこと言って、どっちか違う人とくっついたらどーするの? ……あ」
言ってから、まずいと焦った。
また機嫌が悪くなっちゃう……。
と思いきや、炭治郎はきょとんとして、ああ、と思い出したように言った。
・・・・
「大丈夫だったぞ」
それから、にっこりと笑った。
・・
「ほら、また会えたじゃないか」
無限ループ</big>
「わたし」と「彼」は「何」でつながっているのか
わたしが家に入る前に、家に体がすいこまれた。
つまり全て相手がいて、わたしはそれを受けた形だ。
帰宅したはずの家の中は真っ暗で、どこも明かりがついていない。
誰かが玄関で、わたしを抱きすくめている、が、誰なのかはわからない。
何も受け身をとっていない自分を助けてくれたというよりも、確保した、という気がしないでもない。
理由は、このような状況になっても、一言もしゃべらず、自由にもならないからだ。
空き巣か? 強盗か? 何もわからない。
「……」
相手を刺激しないほうがいいと判断し、出方を待つ。
すると、聞き覚えのある声が落ちてきた。
「ななし」
「……た、炭治郎、なの?」
炭治郎の声がする。
目が暗闇になれてきたが、後頭部に彼の手のひらが添えられていることで、見上げることができない。
でも、きっと炭治郎だ。
「あ、あの」
「おかえり」
「あ、ただいま……って、なんで家にいるの?」
「合鍵をつくってもらった」
「へ、へえ……」
「あとは?」
「え?」
「俺に聞くことは?」
「え、えと……」
そんな急におかわりを聞かれても、とっさに思いつかない。
もういいかな、と返すと、「じゃあ俺の番」と言った。
「一緒にいた奴は誰だ?」
「えと、」
「ななしとどういう関係なんだ?」
「え? それは、」
「何故ななしから奴の匂いがするんだ? 何故商店街にいたんだ? 何故本屋を何軒も回る必要が? ななしは奴をどう思っているんだ? 奴と一緒にいてどう思った? 俺と奴のどちらが好みなんだ? 奴はいつもななしと学校で一緒にいるのか? 俺の知らないところで、ななしとどれだけ会話しているんだ? それから……」
「ま、まってまって炭治郎!! ストップ、ストップ!」
暗記したものを述べるかのような、質問の嵐だった。
全くついていけない。ていうか一問一答方式と思ったら違ったわ、一括方式だったわ。
そして聞き逃しそうになったけど、商店街に行ったことバレてた。いや別に商店街は悪くないんだけど、なんで炭治郎が知ってるの?! 後でもつけていたの?!
しかもこの炭治郎は、機嫌が悪い状態だ。
たまにあるのだ、そういうスイッチが。
その原因が、商店街の光景だったとしたら……。
まさかとは思うけど、一応これだけは伝えよう。
「炭治郎、わたし、あの人とは何もないよ」
はっきり、それだけ言う。
一拍おいて、炭治郎が「本当なのか?」と聞き直す。
「あの人、彼女いるから」
とどめの一言。
全て事実である。
というか、委員長クンの彼女が、例の――わたしと炭治郎御一行を会わせた、友人である。
そこまで話すと、ふっと、わたしを抱きしめていた力がゆるんだ。
そして、ぱちんと音がした。
炭治郎が、玄関の電気をつけたのだ。
視界が良好になり、話していた相手が炭治郎一人だったということも再認識した。
「そう、なのか」
いつの間にか、こちらに背中を見せていた。
そして、少し歩きだしたところで立ち止まり、振り向かないまま「ななし」と呼んだ。
「一つだけ、聞いていいか?」
「な、なに?」
「あの人、と商店街にいた理由って……」
どんだけ気になるのよ。
ずっと炭治郎に疑われていることに、うれしさよりも、嫌な気持ちが上回る自分がいた。
さっき、少しだけど怖い思いもしたのだ。
冷静さも取り戻したところで、今度はこっちの機嫌が悪くなる。
「炭治郎」
「!!」
「こっちきて」
「はっ、はい!!」
炭治郎は、わたしの不機嫌オーラにしょんぼりしながらリビングについてきた。
どっかりと椅子に腰かけたわたしの前の席に、炭治郎を座らせる。
そして年上らしく、はっきり言った。
「わたしは、炭治郎に誤解されたくない。だから全て話す。でも、わたしと委員長クンは互いに友達だから、何もないことを信じてほしい」
全て詳細に語った。二人で行った理由も、よろめいたことも、後ろから抱きしめられたことも。
炭治郎は真剣に耳を傾けていた。
話しながら、わたしは自分で思った。
「(これでわたしのことラブじゃなくてライクだったら、恥ずか死ぬな)」
ちなみに、炭治郎も実は家の用事で商店街に行っていたらしい。
そこで偶然わたしと委員長クンのコンビを見かけてしまったそうだ。
……ということにしよう、うん。
*
それから目に見えて、炭治郎がルンルン気分の上機嫌だった。
たまにある図書委員活動の日は、帰宅したら炭治郎が家にいるようになった。
そしてわたしをぎゅっとして、制服をぱっぱっと軽くはたいてくる。
「これ、いつも何してるの?」
「家に、外の菌やほこりを入れたら駄目だろう」
「あーなるほど」
そこまで深く考えてなかったわ、と返すと、だろうな!と元気よく言われた。
めっちゃあおってくるやん、この子。
しかし、二人の仲は進展したと思う。
少なくとも、炭治郎に抱きしめられても嫌な気持ちはしなくなった。
むしろ落ち着くというか、好きというか。
正直、毎日好意的に接せられ、ニコニコと過ごされれば、誰でも意識せざるを得ない。
「ななし」
「どうしたの?」
「好きだ」
それなのに、どうしてだろう。
これだけ炭治郎を意識しているのに、彼からの告白に応えられる勇気がない。
言葉が出ないのだ。
「わたしも好き」と。
声に出そうとしても、のどに何かがつっかえて、そこで止まってしまう。
「……ありがとう」
だから、かわりじゃないけど、感謝を述べることにした。
ハグから解放されたところで、炭治郎を見上げる。
彼の大きな瞳が、わたしをじっと見つめていたた。
「俺は、我慢強いんだ。長男だから」
「え?」
「ななしを待つよ。大人になっても、おじいさんになっても、ずっとななしを待つから」
いつも炭治郎は、このように言う。
目をそらさず語る口調に、照れ隠しで冗談を言った。
「そんなこと言って、どっちか違う人とくっついたらどーするの? ……あ」
言ってから、まずいと焦った。
また機嫌が悪くなっちゃう……。
と思いきや、炭治郎はきょとんとして、ああ、と思い出したように言った。
・・・・
「大丈夫だったぞ」
それから、にっこりと笑った。
・・
「ほら、また会えたじゃないか」
無限ループ</big>
「わたし」と「彼」は「何」でつながっているのか
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