復活:雲雀(姉さんヒロイン固定)
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放課後、いつものように迎えにやってきた弟。
しかしわたしがバイクにまたがり、さあ帰ろうとした矢先、そのケータイは鳴った。
「……何?」
ものすごーく不機嫌そうな声で応答する弟(相手が可哀相だ…用件があってかけてるはずなのに…!)
しばらくの間、相手の話を聞きながら「うん」としか相づちをうたなかったけど、最後の最後に、
「………………わかったよ」
弟はため息をついて、通話を切った。
そしてわたしを振り返る。
「ごめん、姉さん。ここに来る前に狩った奴らが、まだあがいてるらしいから、とどめさしてくる。ここで待ってて」
「あ、うん、わかった。気をつけてね!」
とどめってなんだ。まさか殺すことじゃないよね? 違うよね?!
しかし今 最高にバッドムードを漂わせている弟には、何を言っても通じない。わたしは素直に頷き、手のひらを振って走り出すバイクを見送ったのだった。
「さーて…。友達はみんな帰っちゃったし…」
独り言を聞かれないうちに、図書室にやってくる。
たまに図書委員の子が普通のファッション雑誌なんかをコーナーに置いてくれるので、それが目当てだったりする。
部活に所属している人は勿論、帰宅部の人はほとんどがまっすぐ家に帰る。そのため図書室で動くのは、図書委員一名と女生徒一名のみだった。全く知り合いではないので、雑誌を手に取り、奥の席へ腰掛ける。鞄をテーブルの上に置いて、早速ページをめくった。
『都市伝説! ドッペルゲンガーは本当にいた!!』
いや、これファッション雑誌だからね。
「姉さん」
「ん……」
頭を優しくなでられる。その気持ちよさに動きたくなかったけど、上からふってきた声が弟だったので、すぐに顔を上げた。
「わ! 恭弥くん!」
「お待たせ」
「や、だいじょぶ…」
いけない、どうやら寝ていたらしい。途中から机にあごをつけ、本を立てて読んでいたけど、今はその本を下敷きにしていた。あわわ、学校の本なのに!! よっよだれついてないよね!?
口元をゴシゴシとこするわたし(よかった、よだれはついてない)の頭を、弟がもう一度なでた。うう、なんでかいつもより優しい。姉思いの弟だ、うんうん。
「随分眠っていたけど、疲れてた?」
「え? 今来たんじゃないの?」
「来たのは十分前だよ」
ということはその間、この弟は姉のアホ面を面白おかしくおがんでいたというのか。羞恥プレイにもほどがあるわ!!
「姉さんの寝顔が可愛かったから、起こしたくなかった」
「なっ!! …だからそういうことは、彼女に言ってあげなさいって」
「そうだね」
「そうそ…え?」
「どうかした?」
「…いや、なんでもない」
気のせいだろうか。
なんだか弟の返事が意外だったから。
だっていつもは……。
「それじゃ、帰ろうか」
ま、いちいち考えてても きりがない。
不良たちをボッコボコにしたのが余程楽しかったのか、大分機嫌の良い弟を連れて、夕日がさしている図書室を出た。
弟も昇降口で靴を脱いだようで、二人そろって下駄箱を出て、校門までの道のりを歩く。
「はい」
「え?」
一歩前を歩いた弟から、左手がさしだされる。
……手をつなげということだろうか。
まあいいか。手くらいなら。仲の良い姉弟ってところで。
「…はい…」
それでも少し照れくさくて、弟の手をとった時、そっぽを向いて表情を見せないようにした。隣で弟がクスクス笑う。
「姉さんは可愛らしいね」
「それはないからっ!」
「そうやってそっぽ向くの、照れ隠し?」
「…なんとなく」
「へぇ」
突然、つないで手をぐいっと引かれ、弟の両腕に胴体を拘束された。
「え」
目線をそのまま上げれば、超ドアップの弟。
え…。
え……。
え゛え゛え゛え゛え゛え゛え!!!!!?!
「な………なっなにやってんのーーー!」
「姉さんがそっぽ向いて逃げないように」
「にっ逃げない! 逃げてないって!!」
「とてつもなくわかりやすい嘘だね」
「ほ、ほんと…だって…!」
「ねえ、僕のこと好き?」
「は!?!」
突然、話題がぐるんと変わった。
意味がわからな…いやその前にここ学校! 高校!! わたしは一応雲雀恭弥の姉で今抱きしめているのはその本人だから別に変な噂は立ちはしないだろうけど、でもやっぱなんか危ない! かな!?
そっちの、つまり第三者による介入または目撃の心配をしていたわたしは弟の問いに答えられなかった。それに対し弟が、今度はわざわざ頭を下げ、わたしの耳もとでゆっくりと囁く。
「僕のこと…」
「(ひいいいいい鳥肌がーーー)」
「好きですか…?」
「…え…『ですか』…?」
瞬間、あの圧迫感が消えた。たった今まで眼前にいた弟が視界から消える。
途端に自由になった体は、重心がわからないまま後ろへ下がり、尻餅をつきそうになる。
だけど、後ろからまた誰かに抱きしめられた。
「大丈夫? 姉さん」
「え? あれっきょ…きょーやくん…?」
一体、いつの間に背後に回り込んだというんだ。
しかし弟からは、三秒前までの上機嫌さが見事に吹っ飛んでいる。
弟が睨みつけた先をたどったそこには。
「…………恭弥くん…?」
魔法かと、思った。
後ろにいるのは弟。前で今、まるで猫のように空中から見事に着地したのも弟。
…ふ、……ふたごか!?! いや、それはない。もし本当だとしたらとんでもないカミングアウトだ。
………もしかして、…図書室で読んだ…!!
「ドッ、ドッペルゲンガー!!?」
信じられなくて、首が痛くなるのも構わずに前後振り続ける。
「クフフ……」
その時、膝をついていた前方の弟が、愉しそうに笑った。ちなみにさっきまで消えていたのは、後ろの弟に宙へ飛ばされていたようだ。
それにしても、なんだあの笑い声は。
………気のせいか、どこかで聞いたことあるような…。
「相も変わらず、姉想いですねぇ……雲雀恭弥」
「え、は…え、?!」
おかしな笑い方をする弟の声が、次第に変わっていく。
手のひらで顔を覆い、その面を一周してなでる。
その手がどけられた時、顔は完全に他人だった。変な髪型をした、男の子。
「て、……てじな……!!?」
「違うから」
冷静に突っ込まれ、思わず口をつぐむ。
その光景に、見知らぬ男子は手を口に添え笑う。
「以前から思ってましたが、本当に血を分けた姉弟とは到底考えられないですね。弟はかわいげがまったくないが、姉の方は非常に可愛らしい。……欲しくなる」
「ふざけるな」
「おお、お…おちついて…いた…痛い…ッ!!」
そろそろ限界。弟の腕力に、つぶされそうだ。グロい表現かもしれないけど、内蔵が出そうな、とにかく腕で抱きすくめている物わたしだということを忘れて全力でつぶしている気がする。
必死で声をしぼりだすと、ようやく、ゆっくりと腕から解放された。
へろへろになりながら、深呼吸をするわたし。
その前に立った弟は、どうやら知人らしい男の子に対して武器を構えた。
「姉さんに二度と近づくな…なんていわないよ」
「おや、優しい」
「そんな言葉必要ないからね。今から殺す」
うわあ、怒ってる。というかキレてる。今の弟には、何を言っても無駄だ。
どうしよう、どうしよう。相手は強いんだろうか。もし弟が暴れてその攻撃が見事に当たって病院送りになったら……!
「何やってんだ」
「!!」
聞き覚えのある、高い声がしたので振り返る。
でもそこには誰もいない。
と、首に衝撃が走った。
落ちていく意識の中で、「ちゃおっす」なんてやっぱり聞き覚えのある声が耳をかすめた。
「お前ら、ボスに隠れて戦闘はダメだぞ」
突然現れた赤ん坊は、うつぶせで倒れる少女の上に立っていた。
それを、剣呑な目つきで雲雀が赤ん坊をそこから追い払い、抱き起こす。どうやら首を刺激され失神しているようだ。
無事を確認した後、雲雀は赤ん坊を嫌悪の視線で射貫いた。
「赤ん坊、邪魔しないでくれるかい」
「俺が邪魔なら、一般人で生身のコイツはもっと邪魔じゃねェか? 骸がどういうヤツか、知ってんだろ」
前に、赤ん坊からその情報を聞いたことがある。今自分の姉に手を出そうとするこの、六道骸という男は、妙な武器を使って傷をつけた人間を乗っ取る……と。
もしこのまま奴の挑発に乗って戦いを始めれば、間違いなく弱点ともなる姉を狙ってくるはずだ。相手はあの草食動物ではない。汚い手だって笑いながら平気で使う、闇に身を染めた人物だ。
「………」
「それに骸、お前もクロームの体を借りて遊びすぎるな」
「クフフ…お見通しですか」
赤ん坊に注意されると、意外にも六道はあっさりと身を引いた。さっきまでこっそり隠し持っていた武器から手を離すと、雲雀を見てニヤリと笑う。
「最強だの化け物だの、言葉で散々もて囃されても……やはり君も、人間だ。そんなことでは、いつかそのお荷物に足をすくわれる」
「そう。さっさと消えれば」
冷静になった雲雀は、六道の言葉に耳を傾けることなく冷たい目を向けた。
それに肩をすくめると、六道は黒い霧に包まれる。
「ああ、それから」
思い出したように、雲雀が眉をひそめる。
「あいつら、弱すぎ」
「クフフ……弱いからこそ、大勢用意したんです。時間稼ぎ用にね」
ケータイで呼び出された先に、風紀委員達と戦っていたのは大勢の黒曜生だった。一応全て片付けてから姉を迎えにきたはずだったが、どうやら例の奇術で操られたらしく、今度は完全に仕留めてきた。
そして六道の気配が消えたと赤ん坊が察知すると同時に、霧が体から晴れた時、人物は女子へと変わっていた。眼帯をしているが、髪型が非常に奴と似ている。
「それ、知らないから」
「ああ。すぐに気づいて自分で出ていくから気にすんな」
二人とも少女を放置したまま、歩き出した。もしここに沢田綱吉なる者がいれば、可哀相だと運んでいくかもしれないが、事実、雲雀たちの姿がそこから消えた後目覚めた少女は、小首をかしげながらも無表情で高校をあとにする。
雲雀は姉をおんぶしていた。その時はまだ目をつぶったままの少女を一度も振り返ることなく、校門を出る。
そこで後ろをてちてち歩いていた赤ん坊が、校門の塀に飛び乗った。
「骸はからかいにきただけだ」
「そうだろうね」
「……わかってるわりにゃ、結構苛立ってんな」
「………(姉さんが、鈍いのはしょうがないけど)」
自分じゃない『自分』と手をつないで。
自分じゃない『自分』に抱きしめられて赤面して。
偽物の『自分』にされてあんな反応をされたことが悔しくて、少し寂しかった。しかし、姉が六道という人物を知らないことも、自分のように体を鍛えたりしているわけでもない。ただ、純粋に平和を日常的に楽しんでいる、可愛い姉だ。
「もう二度と、奴に近づけさせないからいい」
「あっちから接触してくる可能性もあるけどな。なんならボンゴレで守ることも…」
「それはお断りするよ」
赤ん坊の提案を、即拒否する雲雀。
その目には、暗い暗い、何かの炎がちらついている。
「姉さんは誰にも護らせない。譲らない。渡さない。姉さんには僕だけがいればいい」
「……そうか」
他人事のように相づちをうつ赤ん坊だったが、さすがのヒットマンにも、この宣言に対する正確な返しは思いつかないようだった。
この世界に他(の)人はいらない
見事に独占欲の塊ですね。