銀魂:坂田
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私は、普通の女だ。
誰もが振り返るような美人ではない。
名の知れた剣客でも最強キャラでもない。
微笑を浮かべても相手の心臓を高鳴らせるようなことはない。
誰にでも優しさを差し伸べてあげるような、人情のある人気者でもない。
私という人間がどんな人間かと聞かれれば、特に特徴のないモブだというのが妥当だろう。
それでも、世界に一人はこんな私を愛する人はいるのだ。
とある教会にて、今日、私は一人の男と式を挙げる。
「よう、ななし」
「あ、」
時間が有り余る中、ノックとともに現れたのは見慣れた顔だった。
昔からの悪友が、しまりのないいつもどおりの顔で、片手を挙げた。
純白の衣装がよほどまぶしいのか、目を細めている。
「銀さん! 今日は来てくれてありがとう!」
「馬子にも衣装ってやつか。ダサイ奴がまともな人間に見えるわー」
「うっさいな!」
着慣れないスーツを見事に着こなしている(ように見える)銀さんは、昔から私と喧嘩っ早い相手のことをサポートしてくれた。
文句をブチブチ言いながら、である。
「何で俺が」「多忙なスケジュールの合間にぬってやって」「こんな奴らのために」の3つのフレーズは、3人の中で毎年流行語大賞に輝いている。
ちなみにスケジュールうんぬんは信じていない。
「あのクソヤローはまだか?」
「うん、外で煙草吸ってるよ。落ち着かないみたい」
「そうか、余命も短くなっていいことだ」
「やめて、銀さんが言うと冗談に聞こえないから。仲悪いんだかいいんだか」
苦笑すると、銀さんはふっと笑った。
「何にしても、こんな日がくるのはめでてェことだ。幸せになれよ」
「……ありがとう。銀さんも、い」
いつかいい人が、見つかりますように。
その言葉は、言葉とならなかった。
突然目の前が、真っ白になる。
文字通り、真っ白に。
「わっ!!」
慌てて受け取ったそれは、
「これ、カーネーション?」
「おう。万年金欠銀さんからのすてきなプレゼントだ」
「へえー、すごい! こんなの初めて見るよ!」
私の知っているカーネーションは母の日に渡す真っ赤なものだった。
しかし今銀さんから受け取った花束には、真っ白なカーネーションたち。
ウエディングドレスに負けないくらい、とてもきらきらと輝いている。
こんなクールなことができるなんて、銀さんも大人になったのね。
「銀さん、ありがとう! 大事にするね!」
嬉しくてたまらず、ドレスを着ているのも忘れてはしゃぐ私を見て、銀さんは「ガキ」と呟いた。
そういう銀さんも嬉しそうな顔しちゃってるよ。
本当によかった。
・・
私は普通の人間だけど、いい友人に恵まれた。
私は銀さんの気持ちを知らないまま、馬鹿みたいに笑っていた。
*
ななしに渡した花。
その意味をななしは知らない。
知らないから、新妻の現在も、今まで通り万事屋に顔を出す。
「やっほー、繁盛してる?」
「嫌味なら金だけ置いて帰ってくださーい」
「待ってヨ銀ちゃん、料理もしてから帰ってくださーいアル」
「んじゃそれで」
「いやいや神楽ちゃん?! ダメだよ、言動がマダオ一直線だよ!」
「ケッ、母親面するならあのニコチン中毒とオサラバしてから言えヨ」
「あ、あはは……の割には披露宴の食事おかわりしてくれたよね」
「当たり前アル! 食いモンに罪はないネ!!」
神楽は子供だから、素直に言えるんだろう。
俺は言えねェ。
「ななしー」
「何?」
客のくせに、自分で茶の準備をし出す背中に向かって声をかけた。
こちとらソファから体を起こす体力がない。つーか気がない。
「結婚式に渡した花ァ、もう枯れたか?」
「えー、枯れる前提? ななしちゃんをなめないでよねー。ちゃんと手入れしてるから枯れてないよ。それに最後はドライフラワーにするつもりなんだ。うまくできるかわかんないけど」
その言葉に、なんだか救われた気持ちになった。
「でもさァ、ひじ……トシさんが、相変わらず銀さんを目の敵にしてて、困っちゃうよね。花にすらかみつくんだもん」
「へェ……」
あいつのことだ。
俺に関すること、特にななしがらみは調べ上げるに決まってる。
調べ上げて、ななしには言わねェ。
せっかく手に入れた女だもんな。
余計なことは言わねーに限る。
「早く捨てろってか?」
「うん……それでまたケンカ」
「ヨッシャー!」
「ちょっと、その反応おかしいから」
姉のような存在をあいつにとられたとわめいていた神楽は、この時間が楽しくてしょーがねェようだ。
ななしの困った顔もお構いなしにわがまま言い放題で、うらやましいったらありゃしねえ。
高音の会話を聞き流すため、そいつらから視線を離すと天井を見上げた。
強面の花屋に……花屋様に聞いて買った、あの花。
その花言葉。
隠された言葉がひそんでいる。
“私の愛は生きています”
多分、一生。
誰もが振り返るような美人ではない。
名の知れた剣客でも最強キャラでもない。
微笑を浮かべても相手の心臓を高鳴らせるようなことはない。
誰にでも優しさを差し伸べてあげるような、人情のある人気者でもない。
私という人間がどんな人間かと聞かれれば、特に特徴のないモブだというのが妥当だろう。
それでも、世界に一人はこんな私を愛する人はいるのだ。
とある教会にて、今日、私は一人の男と式を挙げる。
「よう、ななし」
「あ、」
時間が有り余る中、ノックとともに現れたのは見慣れた顔だった。
昔からの悪友が、しまりのないいつもどおりの顔で、片手を挙げた。
純白の衣装がよほどまぶしいのか、目を細めている。
「銀さん! 今日は来てくれてありがとう!」
「馬子にも衣装ってやつか。ダサイ奴がまともな人間に見えるわー」
「うっさいな!」
着慣れないスーツを見事に着こなしている(ように見える)銀さんは、昔から私と喧嘩っ早い相手のことをサポートしてくれた。
文句をブチブチ言いながら、である。
「何で俺が」「多忙なスケジュールの合間にぬってやって」「こんな奴らのために」の3つのフレーズは、3人の中で毎年流行語大賞に輝いている。
ちなみにスケジュールうんぬんは信じていない。
「あのクソヤローはまだか?」
「うん、外で煙草吸ってるよ。落ち着かないみたい」
「そうか、余命も短くなっていいことだ」
「やめて、銀さんが言うと冗談に聞こえないから。仲悪いんだかいいんだか」
苦笑すると、銀さんはふっと笑った。
「何にしても、こんな日がくるのはめでてェことだ。幸せになれよ」
「……ありがとう。銀さんも、い」
いつかいい人が、見つかりますように。
その言葉は、言葉とならなかった。
突然目の前が、真っ白になる。
文字通り、真っ白に。
「わっ!!」
慌てて受け取ったそれは、
「これ、カーネーション?」
「おう。万年金欠銀さんからのすてきなプレゼントだ」
「へえー、すごい! こんなの初めて見るよ!」
私の知っているカーネーションは母の日に渡す真っ赤なものだった。
しかし今銀さんから受け取った花束には、真っ白なカーネーションたち。
ウエディングドレスに負けないくらい、とてもきらきらと輝いている。
こんなクールなことができるなんて、銀さんも大人になったのね。
「銀さん、ありがとう! 大事にするね!」
嬉しくてたまらず、ドレスを着ているのも忘れてはしゃぐ私を見て、銀さんは「ガキ」と呟いた。
そういう銀さんも嬉しそうな顔しちゃってるよ。
本当によかった。
・・
私は普通の人間だけど、いい友人に恵まれた。
私は銀さんの気持ちを知らないまま、馬鹿みたいに笑っていた。
*
ななしに渡した花。
その意味をななしは知らない。
知らないから、新妻の現在も、今まで通り万事屋に顔を出す。
「やっほー、繁盛してる?」
「嫌味なら金だけ置いて帰ってくださーい」
「待ってヨ銀ちゃん、料理もしてから帰ってくださーいアル」
「んじゃそれで」
「いやいや神楽ちゃん?! ダメだよ、言動がマダオ一直線だよ!」
「ケッ、母親面するならあのニコチン中毒とオサラバしてから言えヨ」
「あ、あはは……の割には披露宴の食事おかわりしてくれたよね」
「当たり前アル! 食いモンに罪はないネ!!」
神楽は子供だから、素直に言えるんだろう。
俺は言えねェ。
「ななしー」
「何?」
客のくせに、自分で茶の準備をし出す背中に向かって声をかけた。
こちとらソファから体を起こす体力がない。つーか気がない。
「結婚式に渡した花ァ、もう枯れたか?」
「えー、枯れる前提? ななしちゃんをなめないでよねー。ちゃんと手入れしてるから枯れてないよ。それに最後はドライフラワーにするつもりなんだ。うまくできるかわかんないけど」
その言葉に、なんだか救われた気持ちになった。
「でもさァ、ひじ……トシさんが、相変わらず銀さんを目の敵にしてて、困っちゃうよね。花にすらかみつくんだもん」
「へェ……」
あいつのことだ。
俺に関すること、特にななしがらみは調べ上げるに決まってる。
調べ上げて、ななしには言わねェ。
せっかく手に入れた女だもんな。
余計なことは言わねーに限る。
「早く捨てろってか?」
「うん……それでまたケンカ」
「ヨッシャー!」
「ちょっと、その反応おかしいから」
姉のような存在をあいつにとられたとわめいていた神楽は、この時間が楽しくてしょーがねェようだ。
ななしの困った顔もお構いなしにわがまま言い放題で、うらやましいったらありゃしねえ。
高音の会話を聞き流すため、そいつらから視線を離すと天井を見上げた。
強面の花屋に……花屋様に聞いて買った、あの花。
その花言葉。
隠された言葉がひそんでいる。
“私の愛は生きています”
多分、一生。