銀魂:沖田
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「はぁぁ……」
「どうしたんですかィ、ななし先生」
ため息もつきたくなる理由の源が、向かいの席で心配そうに眉をひそめる。
いや、きみだから。わたしを困らせてるの。
「まさか教師内でイジメがあったんじゃあ……」
「そんなことあるわけないでしょ。どうして、わたしがここにいるのか全然わからないの!」
電球色のライトがシャンデリアに吊され、床から螺旋階段まで柔らかいカーペットがしいてある。
ショーウィンドウには、純白のウェディングドレス。
そう。
放課後 沖田くんに強制連行されて、到着した所は結婚式場だった。
「そいつァ簡単な話でィ。俺が連れて来た」
「そういう話じゃないから、誰もそんな答え求めてないから」
全く、積もる話があるとか言って、結局悪ふざけか。
大方新任教師をからかってやろうなんて魂胆だろう。
ソファに身を沈めるわたしとは対照的に、彼は身を乗り出した。
「それで、いつにしやすかィ?」
「……何を?」
「すっとぼけても無駄でさァ。俺らの式の日取りに決まってんでしょう」
「すみません、お断りします」
即答して頭を下げる。
きっとこの後「チェッつまんねぇ」とか、とにかく彼の本性が出るはずだ。
こうべを垂れながらそう思ったんだけど、いつまで経っても沖田くんの声がしない。というか、動きがない。
痺れを切らしたわたしは、ゆっくりと顔を上げて、
「!?(え゛え゛え゛!!)」
愕然とした。
沖田くんは暗い表情で、今にも泣きそうだったのだ。
「……なんでですかィ?」
「え、…だ、だって……」
さっきまでは強い口調も平気だったのに、今の弱々しい沖田くんにはそんなことができない。
そっちのジョークなのに、なんでそんなに悲しむの?!慌てるわたしを、沖田くんはジッと見つめる。
「俺のどこが嫌いなんです? 言ってくだせェ、すぐに直しやすから」
「いや、あのね、そういうんじゃないよ…うん」
できるだけ沖田くんを刺激しないように、戸惑いながらも話した。
「わたしは今日初めて沖田くんに会ったの。それなのに、沖田くんが運命とか結婚とか言い出すからビックリしちゃって…。だから素直に受け入れることができないんだよ」
わかった?と尋ねる。正直これで駄々をこねられたら怒るしかない。ドキドキしながら相手の様子を窺う。
一拍おいて、沖田くんはコクリと頷いてくれた。それにホッとし、良かったぁと息をつく。
「すいやせんでした。急にこんな話しちまって」
「ううん、大丈夫」
「でも先生、これだけは信じてくだせェ。ななし先生は、俺と結婚する運命ってことを」
わたしに反論を言わせないように間髪いれず、沖田くんが続けて言い放つ。
「昔、とある占い師から教えてもらったんでさァ。運命となる人の、名前と誕生日と血液型と出身地を」
「……それが、わたしだったの?」
黙って首肯する沖田くん。
まさか、と疑うわたしを察したのか、学生鞄に手を突っ込むと一枚の紙を取り出した。
正方形で、四つに折り畳まれたそれはやけに古くさく、何度も開いて折ってを繰り返していたのがわかるくらい、折り目がきっちりついている。
「この紙は、ガキん時に占い師からもらいやした。この相手は必ず俺の前に現れるから、持っとけって」
「……沖田くんて、占い好きなんだ」
「まぁ、暇つぶしにやって、なんとなく持ち歩いてたんで……。けど新任の…アンタの名前を、たまたま掲示板で見た時は、心臓が止まりそうになりやした」
「え…」
この高校は、新しく入ってきた先生は紙で紹介されるだけた。その用紙は各クラスに配布され、教室の掲示板に貼り付けられる。
沖田くんの笑みにつられることはなく、わたしは少し緊張した。
も、もしかして、一致してたとか…?!
「そうだ。これ、読んでみてくだせェ」
沖田くんはわたしの心を見透かしたように、紙をスッと差し出した。
一瞬躊躇したものの、結局好奇心に負けてそれを受け取る。
パラ、パラと四つ折りの紙を開いていき、わたしの目に筆文字が飛び込んできた。
「!!!」
名前。
誕生日。
血液型。
出身地。
「そ…んな…!」
全ての項目が、わたしに当てはまっていた。
それを事実として認めた瞬間、本能的に鳥肌がたつ。
この紙に記された予言が当たったからというのもある。
しかしそれより恐ろしかったのは、沖田くんが、本気で、わたしを運命の人だと言い張っていることだった。
わたしの内面や人間性を全く知らないのに。まるでそれ以外には興味がないような…。
「沖田くんは、名前から出身地まで全部あえば誰でもいいの?」
きつい口調で責めると、沖田くんはきょとんとした。
「何言ってんでさァ。世界の隅っこで息する俺の前に現れて、これに全部該当する人間は、この世にななし先生しかいやせんぜ」
「……」
「これは運命以外に考えられねェ」
嘘だ。
たまたま、あの高校に入っただけで。
それだけで、いきなりわたしの未来が決まってしまうなんて。
しかしわたしがどれだけ否定しようとも、沖田くんは全て「運命だから」で片付けるだろう。
たとえわたしが、沖田くんを拒否したくても。
「ななし」
名前を呼び捨てにされ、キッとして前を見ると、不気味なくらい笑顔の沖田くんが手をのばしていた。
「よろしく」
絶対、逃がさねェ。
隠れて呟いた言葉は、わたしの耳にはっきり届いた。
fatalism</big>