銀魂:沖田
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朝、教師用昇降口にて。
「ななし先生、おはようごぜェやす」
休み時間、職員室前で。
「ななし先生、ちょいと相談が」
教室へ移動する最中、廊下の向こう側から。
「今からどこのクラスに行くんですかィ?」
昼休み、職員室へ入ろうとするわたしの手をつかみ。
「ななし先生の分買ってきやした」
あれから1ヶ月。
わたしは毎日毎時間、常に沖田くんに付きまとわれていた。
唯一解放されるのは朝のHRと授業中だけ。
放課後になると、わからない問題があるなんて言って堂々と職員室に滞在するのだ。おかげで仕事がたまりにたまる。
「はい、先生」
そして今日も沖田くんに屋上まで連れて行かれ、購買にあったサンドイッチとカフェオレを手渡された。
わたしにピッタリ寄り添う沖田くんは、青空を見上げながら言った。
「明日は土曜ですぜ。今度はどこに行きやすかィ? 俺はななし先生が行きたいところならドコでも構わねェでさァ」
「ダメ。無理」
即答するわたしを、ギョッとしたように見る沖田くん。
「なんででさァ?!」
「なんでって…。原因はきみなんだけど」
「え?」
さっき言った通り、わたしの放課後に沖田くんがお邪魔する為、雑務がたまっているのだ。
部活顧問も委員会担当もないわたしは、土日は基本休み。だから平日にたまるなら休日出勤すればいい話なんだけど、そううまくいかない。
沖田くんが朝、わたしの家まで迎えに来るのだ。そして遊園地だの水族館だの、当日になって宣言して連れて行く。
朝は本気で嫌がるものの、実際そこに行くとやはりテンションはあがり、最終的に「楽しかったね」で落ち着くわたしが情けない……。
しかし、今日は幸い沖田くんが先に言ってくれた。
だからこれはチャンスとばかりに先手を打ったわけだ。
「放課後に片付けるべき仕事がどんどんたまってるの。翌日はまた忙しいし……。だから明日は無理、明後日も無理!」
「……そうなんですかィ…。けど、しょうがねェ」
俺のせいでさァ、としょんぼりする彼を見て、少し言い方が悪かったかな…なんて後悔する。
いやいや、元々沖田くんが原因なんだっ。相手の落ち込みに同情してはいけない!
「俺は、先生の邪魔ばっかしてたんですねィ」
「あ、はは……」
「わかりやした、また来週誘うんで。だから俺を嫌わないでくだせェ」
前のように、泣きそうな顔をしてこちらを見る沖田くん。
なぜそうなる。この六文字がわたしの脳内をぐるりと回った。
いくら出現率が異常に高いとはいえ、わたしを慕ってくれる生徒を嫌うわけがない。
わたしは口に入っていたパンを飲み込むと、沖田くんにできるだけ微笑んだ。
「嫌うわけないよ」
「本当ですかィ! それじゃいつ結婚しやす?」
えええええ。
なんかこの子、またぶっ飛んだこと言い出したよ!!
「なっ…今すぐ結婚とか無理! …あ、嫌いとか好きとか、そういい問題じゃなくてねっ? わたしと沖田くんは、教師と生徒でしょ。ご両親からすれば、自分の大事な子供に先生が手を出すなんて、信じられないことだよ」
もしかしたら、この人は自分より世間体を気にする教師なんだと気持ちが冷えるかもしれない。でも、わたしからすればそれが一番良い。
それに、沖田くんは占いに踊らされているだけ。結婚は本当に心の底から好きになった人としなくちゃいけないんだから。
しかし、沖田くんはしばらく黙り込んだ後、力強く頷いた。
「わかりやした、結婚は俺が卒業するまで待つってこと事ですねィ」
「え゛!? いや言ってな…」
「さっき言ったでしょう、今すぐは無理だって」
にこっと笑う沖田くん。
「…そ……」
その発想はなかったァァァァ!!!
なんてこった、余計にややこしいことに。
「…えーと、あの、ごめん、そういう」
「安心してくだせェ。これからは、放課後になってもアンタの邪魔しねェように、現れやせんから」
「あ、…うん…」
「? なんですかィ?」
「や………もういいや」
なんだか、いちいち訂正するのが面倒になってきた。
どうせ卒業する頃には、他に好きな人ができるだろう。
これからの放課後は邪魔しないっていうんだから、それだけで良い。
わたしはそう結論づけると、サンドイッチを包んでいた紙をクシャクシャにした。
ダモクレスの剣</big>