銀魂:沖田
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手に入らない、ななしがどうしても手に入らない。
どれだけ俺の隣にいても、突然何かの拍子に、どこかフラフラと行ってしまいそうで、いつも気が気じゃない。
俺だけじゃない、他の奴ら全員に優しく平等な、あいつの心に、俺の入る隙間があるのか、わからない。
(俺はきっとあいつからすりゃ「友人」止まりなんだろう)
そう考えれば考えるほど、毎日が不安で心配で憂鬱で苦しい。
それでも俺はあいつから離れられないし、離れるつもりもない。
離れたら離れたで俺はきっと発狂するだろうから。
(これが依存症というやつかィ)
そんなある日、ななしと二人きりで帰っていると中型犬がこっちに向かって吠えてきた。
するとななしはクスリと笑い、「似てるなあ」と呟く。
何がだ、と問えば、以前飼っていた犬に姿が似ているという。
「あのこも、しっぽをブンブン振っててね、わたしが家に帰ってくるとグワッて突進してくるの。でもかわいいから許しちゃうんだよなあ」
ニコニコと笑うあいつは、今、俺の姿なんざ視界のはじにも映っちゃいねえんだろう。
その死んだ犬を思い出して、胸を痛めて、でもちょっと幸せそうで。
ああ憎い妬ましいその犬が。
なぜ死んでもなおこいつに好かれている?
聞けば何年も前に死んでいる、というのに、いまだその犬はこいつの心に生きていて、そばにいて、それこそ俺よりもずっとずっとそばにいる。
悔しくてしょうがない。
(俺も、こいつにずっと想われてェなァ)
そこで、ふと思いついた、現在、俺は屋上の端にいる。
俺がいる場所の下は、ちょうどZ組の教室あたり。
授業中だから屋上には誰もいない。
それにしても今日は、やけに風が気持ちよくふいて涼しい。
この風にのったらそれこそ空も飛べるんじゃないか、なんてバカなことを考える。
でもそれはいけない。
飛んだらあいつの元へ帰れなくなる。
飛んじゃ駄目だ。
(落ちねェと)
コンクリートでできたヘリの上に立ち、上半身を少し前に傾ける。
徐々に、徐々に傾ける角度を深めていく。
そうして頭から落ちて、俺はZ組の窓ガラスを見ながら死ぬ。
ちょうど窓際に、あいつの席があるからだ。
恐怖なんてものは全然なかった。
だってこれで俺もあいつの飼っていた犬と同じく、ずっと永遠にそばにいられる。
あいつの心の中に、今度こそ居続けられる。
いや、「そば」とか「となり」なんてもんじゃない。
「一緒」にいられるんだ。
(手に入らねェなら、俺からななしの手に入ればいーんだ)
それが俺の出した、結論だった。
素晴らしいほどの素敵なゴール地点は、たかだか数メートル先に固いゴールテープを張って待っている。
あっという間だ。
そう思えば思うほど気分は高揚し、早く落ちてしまいたくなる。
しかしノリに任せて落ちてしまい、万が一死に損ねて重傷で終わってしまうのは絶対に嫌だ。
慎重に、頭から真っ逆さまに落ちていくように、重心をコントロールしていく。
(よし、いくとすっか)
そして、傾けていくうちに足がコンクリートから離れ、空気を蹴った。
Z組の窓ガラスを逆さまから見る俺。
なかなかの速さで落ちているのにも関わらず、その瞬間だけ時間が止まったような感覚を味わう。
そんな俺を、逆さまな俺を見ているのは、あいつ。
ちょうど窓から外を見上げていたところだったらしい。
(これからもよろしくな)
ただでさえ丸い目が、俺が落ちるのを眺めている間、もっと丸くクリクリッとしていた。
マイ、ハッピーエンド
ついに書いてしまったヤン死。