銀魂:神威(同行者ヒロイン固定)
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1月1日。
この日は人類にとって、特別な日だ。
なんてったって、新たな年の幕開けの日だから。
「あけましておめでとうございます! ことしもよろしくお願いいたします!」
「A HAPPY NEW YEAR!!」
「あけおめーことよろー!」
江戸中の、新年の挨拶が飛び交う。
私はその道を気持ち良く通りながら、しかし次第に気を沈ませていった。
「……戻りました、神威さん」
「ん、お疲れ~」
口いっぱいにおせち料理をほおばる、我らが団長。
その横には大勢の美女をはべらせている。
文字どおりタカネの花(高値と高嶺をかけてみました、どう?)である美女たちは、神威さんが食べ物を飲み込んだ瞬間に、えびだの数の子だのを我先に押し込もうと暴れ出す。
神威さんも器用なもので、押し込まれたものは全て口にほおばり、ムシャムシャと噛んでいく。
……なんだ、この新年ハーレム。おみくじなんか引かなくても、ことしの私は”凶”一直線だと悟るほどの酷い光景だ。まあいいや。諦めよう、そしてことしの座右の銘は「長いものには巻かれろ」にしよう。
ため息をつきながら、でもワクワクしながら重箱をぱかっと開ける。さてさて、私もおせちを食べ…………
「(……られてるんですけどォォォォ!!)」
私の重箱には、中身が全く残っていなかった。あまりにも中身がきれいさっぱりとないため、「ああ、これからお料理詰めるのかな」と馬鹿な発想を抱くほどだ。
いや、落ち着け。私はしっかり覚えている。私が出て行く前に、私のおせち料理は残っていた!!
そうなると、もう犯人は一人しかいない。
新年早々、怒りがこみ上げるのを抑えながら、ゆっくり声を出した。
「あの、神威さん、私の、分の、おせちは……?」
神威さんは私の態度もなんのその、さらりと答えた。
「ごめん、真っ先に食べた。だってあんたの料理のほうが美味しそうだったから」
「ハアアア!? 料理の内容が一緒なのに、もっとおいしそうとかないでしょ! なんで自分のおせちより先に食べるんですか!?」
「まあ、こわーい」
私の剣幕に、神威さんは楽しそうで、美女軍団がクスクス笑う。きっと私の怒りがなんて小さなことだと思ってるんだろう。
だがしかし!! 私は新年のおせち料理をとっても楽しみにしていたのだ。
あの神威さんが年末、「知り合いがおせちっていう食べ物を用意してくれたから、そこに泊まろう」と誘ってくれた。
とても嬉しかった。毎日がデンジャラスの中、年末だけでも、品の良い旅館で、新年を穏やかに迎えることができる、と思った、のに!
拳をかたく握りながら、神威さんをきっと睨む。
「初詣に行ってる間に、よくも食べてくれましたね……」
「食べ物を前に、俺が大人しくすると思う?」
「思…いませんけど、でも私言いましたよね! 起きたら初詣に行ってくるって!!」
「うん、聞いた。でも、それに対して”じゃあそれまで待ってるね”なんて答えたおぼえはないよ」
神威さんの冷静な事実に、ぐっと言葉に詰まる。
確かに、そう言われればそうだった。
ちなみに言い合いの最中でも、美女たちは神威さんのそばでおせちの具を箸先でつまんでいた。
「ななしが帰ってくるまで暇だって言ったら、こんなに女が寄ってきたよ。どう?」
「(食べ物の)憎しみしか感じません」
「何、妬いてるの?」
「女の嫉妬は見苦しいわぁ」
ちげーよ、そっちじゃねえよ。
女たちに向かって、思わず育ちの悪さを口で表現しそうになる。
まずい。今の状況、私の味方は一人もいない。
美女は全員神威さん側だし、神威さんは私をいじめることが楽しみだし。
結局私は年末年始、いや365日、神威さんにいじめられる日々なんだ。
「……はあ……」
そう思ったら、身体中から力が抜けた。
きっと私が一人前に口を聞けるようになるには、神威さんと同じくらい強くならなくちゃいけないんだと悟ったのだ。つまりそれは絶望的に無理な話で。
やれやれと頭をかきながら、食べ物が何も残っていない席に、勢いよく腰をおろす。
その拍子に、財布が床にぽとりと落ちた。同時に、チリンとかわいらしい音が控えめに響く。
私は音のほうに従い財布を見たため、神威さんの様子を見ていなかった。
「何、それ」
財布に紐を通してつけた鈴、これは神威さんが知らないものだ。
だってついさっき、もらったものだから。
「これはさっき初詣で行った神社で、ことしも無事に生きれるようなお守りないですかって神主さんに聞いて教えてもらった鈴です」
「へえ」
ようやくそこで神威さんのほうを振り向き、私は後悔した。
にこにこ、してる。
やばい。何かのスイッチが入ってる。しかし女たちは気づかないので、単に神威さんが微笑んだくらいにか映っていない。今すぐその歩く時限爆弾から離れるんだァァァ!!
「物に釣られたんだ。相変わらず可哀相な人間だね、あんた」
「いや、自分で買ったものだから釣られたわけじゃ」
「捨てなヨ、俺がもっといいもの買ってあげる」
「え? い、いや……いいです、これで十分なんで」
「なんで? そんなにそれがいいの? それともその神主に何か言われた?」
「い、いや、その、そういうわけではなくて……」
おいィィィィ!! 神主さん、早速生死の危険迫ってるんですけど!!!
無駄に口答えした分、彼のまとうオーラがどんどんどす黒くなっていく。しまった、選択肢を間違えた。しかし後悔しても遅い。
今の笑顔式神威さんに、果たしてどう答えたらいいのかわからずオロオロしていると、あちらがしびれを切らしたらしく、立ち上がろうとした。ギャー殺される!!
「あん、待って……」
そこを止めようと、神威さんの片腕にすがっていた女の一人が、くいっと腕を引っ張る。
神威さんは、ぴくりと止まった。
「俺を待たせていいのは、ななしだけだよ」
あっという間だった。
まるで長袖に腕を通すような、なんてことのない仕草で、しかしその女は部屋のふすまをミサイルのように貫通し、もの凄い音を立てて廊下に激突した。
「…………!!」
「…………」
私も、美女たちも、ただただ、女の行った先を呆然と見つめる。
沈黙ののち、ややあって、
「あ、あと銀髪の侍もかな」
神威さんが追伸を述べたところで、ゲルマン民族ならぬ美女軍団の大移動が始まった。
耳をつんざくような悲鳴、または金切り声を上げて、畳の上をドタバタと下品そうに走って行く。
「(待ってェェェェ私を置いてかないでェェェェェ!!!!!)」
心の中で絶叫はできても、身体は縫い付けられたように畳から動けない。それは自分自身が神威さんに対して恐怖心を抱いているし、何より前方から向かってくる神威さんから、殺気が向けられているから。
「これでも、数十分は待ってたんだ。でも俺が待ってる間に、あんたは男と話してたわけだネ」
「ちょっ、すごく人聞きの悪い言い方……いえ、すみません。おっしゃるとおりです」
神威さんの目を見て、すぐに謝罪を述べる。
うん、殺されそう。
「わかったなら、その鈴。――よこせよ」
最後の一言、目が細くなる。
瞬間、私は財布から鈴を紐ごと引きちぎり、神威さんに献上した。
彼はそれを人差し指と親指でつまみ、私の目の前で、潰した。
「これで、匂いは消えたね」
「え?」
「この鈴、男から手渡しでもらったんだろ? 匂いがついてたよ」
恐るべき嗅覚。まさにおっしゃる通りだ。私はがくがくと頷いた。
しかし神主さんも予想だにしてないだろう。よかれと思って参拝者に渡した鈴で、参拝者に危機が迫るだなんて。つーか、普通考えられないよね!
「さて、腹ごしらえも済んだことだし……」
「(済んでねーよ!)」
「行こうか」
突如の移動に、頭がついていけず、きょとんとした。
「……え、どこにですか? もう次の任務先に……」
「何言ってるのななし、相変わらず低脳だね。見合い結婚でも相手が見つからなくなるよ」
ねえ、どういうこと。
ちょっと発言ずれたら、こんなに攻撃されるって、どういうこと?!!
もうななしのライフポイントは0だ。カードゲームだったら死んでた。
対する神威さんは、私の表情が固くなったのを見て笑いながら言った。この鬼畜。
「神社だよ。代わりの鈴、買ってあげるから」
…………!!!!?
マ、マジでか!!!
あの、神威さんが、物を買ってくれるなんて……!!
「…………こ、これは夢ですか」
「つねってあげようか?」
「い、いいです!!」
神威さんにつねられたら最後、その部分を、どこぞのパンヒーローのように「はい、食べてね」と差し出されること確実だ。私は人間であって、小麦粉でできてはいないのだ。
ここは彼に大人しく従おう。
それに正直嬉しい。本当に買ってくれると思わなかったから。
「あの……ありがとうございます、神威さん」
とりあえず感謝の気持ちを伝える。今までの原因を全て取っ払った上でだ(だってそもそもの原因、目の前にいるから)
私が正座したままで見上げると、神威さんは目を少し丸くした。――のもつかの間、すぐに笑う。
「ななしに言われると、気持ち悪いネ」
「ちょっと、どういうことですか?!!」
「さ、俺の気持ちが変わらないうちに、早く行くよ」
言うが早いか、神威さんが歩き出したのを見て、私も慌てて立ち上がる。
が、しかし。
私は短時間の正座だから大丈夫だと思っていたが、神威さんの殺気にあてられている間、身体中が緊張していたことを知らなかった。
立ち上がろうと足をふんばらせるも、その足に力が入らず、また畳に突っ伏した。
「何やってんの、ななし。一人芸?」
「……そんな、感じです。あの、先に行っててください」
足がジンジンする。
おまけに、神威さんがふすまを開けたままこちらに来るものだから、部屋に寒さが入り込んできた。
「っくしょい!!」
「そんなに面白くないよ。早食い競争とかなら、まだ芸だと思うけど」
「そうですね。狙ったわけじゃないんで……!」
もう一度手足をぷるぷるさせながら畳の上で子ジカよろしく四つん這いになる。
だがしかし、奴からの緊張感はそうとうなものだったようで、まだ足がしびれたままだった。
代わりに、その奴が事態を察知したようだった。
「なーんだ。俺の殺気に身体が言うこと聞かなくなっちゃったんだ。弱いね、あんた」
「ぐう……! 誰だって神威さんの殺気くらったら、こうなりますよ……!」
「そうだね、確かに。この間に俺はとどめさすんだけど」
「(あ、死ぬわこれ。とどめさされる)」
すると、私の思いに反して、私の前に立った神威さんが、すっとしゃがんだ。
その腕が私の脇を通り、持ち上げられる。
そして持ち上げられたことで、神威さんとほぼ対等の高さになり、見つめ合う。
わあ、なんて優しいの神威さ――
「もう面倒だから、窓から飛び降りるよ」
飛び降りるよ→ななしはこの状態→抱える→俵式(自ら命名)に抱えられる→移動。
瞬間、俵式の抱えられ方で、去年はさんざん腹部を痛めたことをフラッシュバックさせた。
既に神威さんは私を俵式で持ち上げようと動いている。
「だめ!!」
身体が動いたと思った。
腕が神威さんの首に巻き付き、さらに身体を密着させ、持ち上げられまいとがっちりホールドした。
その時は咄嗟の行動だったけども、
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
私、何やってんの。
何、自分から神威さんに抱きついてる(格好になってる)の。
「あ……わわわわばばば……」
声にならない声が、のどから震え出てくる。
もう死んじゃう。恥ずかしすぎて。あと神威さんにボコられて。
彼は必要以上に触られると「殺しちゃうぞ☆」とスイッチが簡単に入る。
「ごっごごごごめんなさい! 俵式、俵式がちょっとおおおおなかにふ、ふたんかっかかって! それであの、ちょっときょうは俵式が」
神威さんの顔を見るのがあまりにも怖くて、胸板に向かって懺悔をする。
そして首に巻き付いた腕を外そうとした。
「え」
背中に何か触れて、それが私の胴体を神威さんにより近づけた。
「あんた、あったかいね」
それは他ならぬ、神威さんだった。私の脇を抱えていた腕がそのまま背中に曲がっているのだろう。
至近距離だからか、相手の声量が少し落ちている。何この気遣い。
それが余計に、羞恥心をかき立てた。
「(ど、どどどどどどうなってんのォォォォ!!!!)」
心中で頭を抱え込みひたすらローリングしている私は、ただ固まり、神威さんの謎の抱擁を受けるしかなかった。
「――か、神威さん。……もう大丈夫です」
数分も経つと、足の感覚が戻る。
つまり数分間、私は神威さんと熱い抱擁をしていたということになる。
よかった、ここに誰もいなくて。
「うん、そうみたいだね」
神威さんは、ゆっくりと私の脇から腕を外した。
ふと神威さんを見上げると、私を見ていた。
「…………」
「…………」
え――何、この雰囲気。
雰囲気にのまれたのか、なぜか勝手に緊張してしまい、心臓がバクバクと高鳴る。どうした、私?!
しかし、場の雰囲気を目の前の男がぶち壊してくれた。
「……キスする?」
「し・ま・せ・ん!!」
よかった、いつもの(?)神威さんだ。
私は逆ギレの状態を維持しながら、「行きますよ!」とのっしのっし歩き出した。
廊下をミシミシ音を立てながら歩くと、後ろからケラケラと笑う声がする。
「象みたいな歩き方、ざんしーん」
「だァれが象ですか!!?」
結局、神威さんは神社に着くまで、ひたすら私をけなしていた。
私は、沸騰しそうなほど朱に染まった顔を冷やすことで頭がいっぱいだった。
「ななし」
「なんですか!」
「次の移動は、飛んで行こうね」
「!!(味を占められた!!?)」
I LOVE YOU.=「抱きしめていいですか」</b>