復活:雲雀(姉さんヒロイン固定)
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「雲雀さん、雲雀さん」
「何?」
「今日も来てるよ、」
「………」
「弟さん」
「え゛」
ひばりねえのまいにち
クラスメートに一応礼を言って、教室の窓側へおそるおそる近寄る。そしてそこから見える校門をちらっと見やり、わたしは自然とため息をついた。ほ、ほんとに来てる………。
「えっあれななしの弟? わーちょうかっこいいじゃん! ほんとにアンタと血つながってんの?!」
「今のどういう意味ですかちょっと」
友達に消極的ながら突っ込みを入れるが、実際それどころじゃない。あの子は自分から来てるくせにいつも「遅い」と姉のわたしを責めるのだ。
「じゃ、また明日」
「うん、また明日ねー」
どうせ放課後は彼氏とデートだろう。チッねたましい。わたしだって高校生なのだ、彼氏だって一度はほしい。でもわかってる、それが絶対に無理だってこと。だってわたしの弟は、
「遅い」
「ごめんなさい」
最強で最凶で最恐なんだもの。
そんな弟に逆らえないわたしは、今日も人目を気にしながら弟の乗っているバイクにまたがった。
「恭弥くん」
「何」
弟を呼び捨てにできないわたし(ていうか前一度うっかり呼び捨てした時がものすごく恐ろしい展開になったのでもう金輪際しない)は、弟の細い腰に腕を回したまま言ってみた。
「あの…今日は何もないの?」
「ないよ。もう掃除はすんである」
だいたい帰り道は、弟を根に持つ奴らが待ち構えていたりする。そのせいで、再放送のドラマに間に合わなかったりするのだ。でも今日は、そうか、大丈夫なのか、良かった良かった。
そして、弟の運転で走り出すバイクは順調に我が家へ近づいていった。
かに見えた。
「……恭弥くん、嘘ついた?」
「僕を疑うと姉さんでも許さないよ」
嘘つけ、誰であろうとも許さないくせに!!
そんな反論をすんでのところで飲み込み、無言でコクコクと頷いた。やばい、危うく犯罪の被害者になるところだった。
「じゃあこれは……」
ああ、そうそう、で、話は戻る。弟がいくら掃除しても、他にこの子を恨んでる人なんてそれ以上にいるわけで。きっと掃除した軍団とは別の軍団であろう軍団が(軍団軍団うるさいなこれ)わたしたち雲雀姉弟を取り囲んでいた。こ、怖い。
「よォ雲雀、こないだはどうも」
「前にも言ったよね、僕の前で群れないでって。なのにまだ群れてるって、君たち、馬鹿なんじゃない?」
「ッテメェ」
無表情で言い放った弟は、ドゥルンドゥルンとバイクをうならせる。ま、まさか、
「え、ちょ、」
「ちゃんと捕まってて」
言っておきますが前方にもきちんと人が、って、
「ギャアアアアアアアアアア!!!!!」
なんという弟だ。たとえ相手が不良だとしても人間だ。人だ。その人めがけてバイクを疾走させるなんて! さすがの肝っ玉軍団もこれには縮んだらしく、ひえええと情けない声をあげながら道をあけてくれた。なんにしても、今日は無駄な戦闘なく、終わることができた。被害もなかったし、良かった、良かった。
って、良くない! いかんいかん、うっかり雰囲気というか、展開に騙されるところだった。何にせよ今のは流石に世の中では「ひき逃げ」未遂というくくりに入れられる。将来の弟のために、ここは姉として、ガツンと言ってやらねば!
家に到着し、バイクを直す弟の背中をわたしは無意識のうちに睨み付けていた。緊張の為だ。
「きょっ…恭弥くん!」
「ああ、そういえば隣の人から飲み物もらったんだっけ。いる?」
「え? あ、うん」
……じゃないッ!! 負けるなわたし!
深く息を吸い込むと、車庫にバイクをおさめる弟に人差し指を突きつけた。それにしても、たかが弟に注意するためにここまで勇気がいるとは思わなかった。
「恭弥くん! さっきのは危ないでしょ、人轢いちゃうとこだったんだよ!」
「…ふーん。じゃあ姉さんはあのままバイク降りて戦ったほうが良かったってこと?」
「え、いや、そうは言ってないけど…」
「じゃあ良いじゃないか。あんな草食の一匹や二匹」
「え、ええ~~………(ていうか人間…)」
突きつけられているわたしの人差し指をぴしっとはたいて(痛い!) 弟は鍵を鍵穴に差し込んだ。そしてゆっくりと回しながら、わたしを見つめる。
「姉さんはあいつらのことなんか、一切考えなくていいよ」
いや、あの状況じゃどうしても今後のこと考えちゃうから。
でもまあ、いいか。もしかしたら今のは弟なりの気遣い、なのかもしれない。わたしは素直じゃない弟に続き、家に入った。良かった。今日は、再放送のドラマに間に合った。
「恭弥くん、ジュースいる?」
「いらない」
「…さっきいるって言ったじゃん……」
「僕が姉さんに聞いただけでしょ」
「……………(そういえばそうだ)」
そんな反抗的な弟は、今日もわたしの隣に座る。
被害者兼目撃者なわたし。
「ねえ、これって恭弥くんの言う群れてるっていうやつじゃ……ないね違うねすいませんほんとなんでもないです忘れてください群れてないですよねこれは!!!!!」