復活:雲雀(姉さんヒロイン固定)
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とある日の放課後、弟は何やら不機嫌な顔でバイクにもたれていた。
今日もわたしの迎えで校門まで来てくれたのはいいんだけど、なんだ、そのすごいムッスーとした表情……(わたしか? でもわたしは今日は何も気にさわることしてないと思うんだけど)
「あの、恭弥くん? お待たせ」
「…やあ、姉さん。それじゃ、行こうか」
「う、うん……」
そのまま二人乗りで帰り道を走って、途中いつもの不良に絡まれそうになったけど強制退去(という名の半ひき逃げ…!)してもらって、無事帰宅する。
けれど弟はまだ、眉をひそめたままだった。
いつもなら余計な詮索はしないんだけど(だって八つ当たりされるの目に見えてるから)あまりにも弟がその表情を崩さないものだから、ああ、これは相談役が必要かもと思い、勇気を出して声をかけてみた。
「あーあの、恭弥くん?」
「何? 姉さん」
「いや、あのさ……。どうかした? 学校で何かあったの?」
「…まあね」
「そうなんだ。…わたしで良ければ話とか聞くけど…」
「…ありがとう」
フッと笑った弟は、ソファに腰掛けるわたしの隣に着くとポツリポツリと話してくれた。
どうやら数日前からわたしの知っている並中生、沢田くんと山本くん他数名が不登校になっているらしい。いや、不登校というより行方不明というのが当てはまる。家にすら帰っていないのだそうだ。
ああ、なるほど。風紀委員長からしたらさぞ心配なんだろ…
「学校を勝手に休むなんて、良い度胸してるよね…。帰ってきたらどうやってかみ殺そうか考えるんだけど、なかなか良い案が思いつかなくて」
「(そっちかいィィィィィ!!!)」
思わずジャンル違いのやり方でツッコミを絶叫する。しかし、これでも弟はボケてるんじゃないんです、本気なんです、だから下手にツッコめないんです…!!
「きょ、恭弥くん…きっと沢田くんたちも、好きで行方不明になったわけじゃないと思うよ…? だから見つかった時の制裁方法より、捜索の方に力を入れたらいいんじゃないかな」
「捜索は既に部下にさせてるよ。だから僕は見つかった時のことを考えてるんだ」
「そ、そうですか」
ひいい、こりゃ沢田くんたち、見つからなくても見つかっても命は危ないな…。
こんな弟が風紀委員ですみません、と心の底から謝罪を述べつつ、
「(でも、行方不明なんて……心配だよなあ)」
そして翌朝。
「ありがと、恭弥くん」
「うん。何かあったら電話してね」
「はーい。じゃ、いってきます」
「いってらっしゃい」
高校に着いたわたしはバイクを降りて、弟を振り返って。
いつもの会話を交わして、にっこり笑って。
弟も、他の人には決してしない微笑みを少しだけ浮かべて。
バイクにまたがって校門から離れていって。
「いってらっしゃーい!」
全てが、朝は、いつも通りだったのに。
その日の放課後、弟は迎えに来なかった。
今まで、一日の内でわたしが弟に電話をかけたことが何回あっただろうか。メールだって、片手で数えるほどしかない。
でも、今日は違った。
校門で、待てども待てども、いつまで経っても来ない。
時間に厳しい弟がもし遅れてくるようなら、その時 必ずわたしに連絡が来るはずだ。
連絡がとれない程きっと仕事が忙しいんだろう、と思いながら電話をかけても、いつもなら2コール以内に必ずつながるのに、全然つながらない。
どうしたんだろう、なんだか胸騒ぎがする。
「………恭弥くん…」
結局 しびれを切らしたわたしは一人で帰った。一応メールで「先に帰ってるね」と送ったけど、返事はない。ちなみに道中、幸いにも不良たちの待ち伏せにあうこともなく、無事に帰宅できた。
「はあ…」
静かすぎるリビングに、不安が倍増する。テレビにリモコンを向けて電源をつけると、音楽番組があったのでそれを見ることにした。
……もしかして、昨日の言ってた並中生行方不明と関係があるのかな。
「(そういえば、)」
以前似たような事件あったっけ。並中生が片っ端から黒曜中の人に暴力をふるわれた事件。あの事件の真っ最中も、弟は数日間帰ってこなかった。
でも今回とは違う。あの時は弟は事前にわたしへ連絡をよこしていたのだ。数日間帰ってこないかもしれない、とは言ってなかったけど。それでも、「今からアジトへ向かう」とメールをくれた。
……今回の場合、それがない。
としたら、弟は、いや、弟にかぎってそれはないはずだけど……でも、一応あれでも人の子だし…。
「~~~~っあ~~~ダメダメ!! 風呂! 風呂に入ろうっ!!」
嫌なイメージばかりがふくらんでしまう。わたしは一人絶叫すると、勢いよく立ち上がった。
別にいいじゃないか、たまには携帯電子機器を放り投げてフリーダムに行動したい時があるんだ、きっと!! だってあの子は雲雀恭弥、一般常識が通じない人間なんだから。
ていうかこの状況さえもプラス思考で考えたらどうだろう? わたしは24時間弟とともに行動させられてる。でも今のわたしは弟同様フリーダム。何をしても怒られない、ご飯の前にお菓子を食べても、ゴロゴロしながらテレビを見ても、色々な物を出しっぱなしにしても、夜更かししても!!
わあ、これって超いいじゃん、鬼の居ぬ間にナントヤラってやつ!?
「ふふっ、そうと気づけば早速、お菓子の準備と~漫画本と~枕と~…」
ウンウンなかなか良い感じ、とこれまた一人頷きながら、浴場へ向かう。
その途中台所を通るんだけど、ガラスの張った戸棚にしまっている弟愛用の湯飲みに、
『ピシッ』
と音をわざわざ立ててひびが入った。
「……………」
さっきまでの浮遊感に似た気分が一気にそぎ落とされる。
これはそんじょそこらのホラーゲームより、大分精神力が奪われそうだ。
そのまた翌朝。
「………………」
結局、一睡もできなかった。
いや、寝る気はばっちりあったんだけど、目がさえてしょうがなくて、時計のチクタク音を聞いていたらどんどん時間が過ぎていき、目覚まし時計がジリリリと騒いでわたしの睡眠(をとるべき)時間は終了してしまった。
やっぱり、帰ってきてない。
落ち込むわたしだけど、学生の性分を忘れるわけにはいかない。何も連絡がないことを確かめて、ケータイを身から離す。
どこに行っちゃったんだろう。
知らないうちに はあ、とため息をついて、顔を洗うために洗面所へ向かった。
「……………」
でも。
顔を洗っても、髪の寝癖をととのえても、パンをかじっても、牛乳を飲んでも、歯をみがいても、着替えても、何をしても弟の安否しか考えてないわたし。
どうやら今まで弟のことをシスコンシスコンと言ってたけど、わたしもひょっとしたらある程度ブラコンなのかもしれない。うう、認めたくない…けど。
準備をすませ、家を出ると、車庫に目がいった。
バイクも戻ってきてない。
「……はあ…」
ああ、幸せが逃げていくよー。あれ、なんだか眠くなって…い、いかんいかん。
睡眠不足の脳をなんとかたたき起こし、フラフラした足取りで、なんとか高校へたどり着いた。
「おはよーななし」
「おはよう…」
「うわっ何その顔…」
「(その反応にちょっとショック…)」
「あんた…具合悪いの?」
「いや…弟が昨日から帰ってこなくてさ」
「マジ?! ちょっと-、大丈夫なの?!」
「うーん、どうだろ…ふわああ……」
「…すっごい大口」
幸いにも一時限目は自習。
この時間だけでも睡眠をとらせていただいて、夕方は中学校へ行ってみよう。風紀委員の人たちなら、何か知っているはず。
友達も同じようなことを思ったのか、机に突っ伏すわたしの頭をぐりぐりとなで回しながら、「自習のプリントは写させてやるよ」と笑った。
うう、わたしってばつくづく、友達に恵まれてるなあ…!
「ごめん…ありがと…ふああわ…」
「相当眠そうだね…」
「へへ…まあね…寝てないから」
チャイムが鳴る。
みんなが席に着こうとガタガタ動き出す騒音に紛れて、友達はポツリと呟いた。
「………大した相思相愛っぷり、ね」
いや、違うからね。
そのツッコミさえもやる気が起きなくて、「まあいいや」と流しておいた。
もしもし神様、仏様。
かなり勝手なお願いだけど、わたしが寝てる間でも、弟が無事でありますように。
「ふああ…!」
待ちに待った放課後。
大きなあくびを手で隠しつつ、わたしは校門を出た。やはりいつものバイクも弟も見あたらない。
でも、へこんでられない。
わたしだって、少しは雲雀恭弥の姉らしいところを……ッ!(いや、この行動がその姉らしさにつながるかどうかはわからないけど)
早速中学校に向かおうと、いつもならまっすぐの道を右に曲がる。
そしてしばらく歩いていると、前から柄の悪い…………え………ま、
「……まじですか?」
なんというタイミングの悪さ。
一人、二人と電信柱、または草陰から現れ、気づけば前方が不良軍団でふさがっている。
「よォ、雲雀。今日は珍しく弟がいねェな?」
いや、昨日もいませんでしたけど?なーんて軽口が言えるわたしじゃない(ヘタレですいませんね!)
一歩一歩と足を後退させるわたしに対し、向こう側はニヤニヤと距離を詰めてくる。
「まあいい。弟をおびきよせるエサになって……」
「誰をエサにするって?」
背後からかかった声の姿を認識する前に、その人は不良軍団へ一人立ち向かって。
あんなにいた人数を、10秒もかからずに全員倒してしまった。
「相変わらずだね。いい加減学習しなよ」
最後にリーダーらしき男にガツンとトンファーでたたきのめして、こちらを振り向く。
今までぽかんと見守っていたわたしの目は、ようやくその第三者の姿をまともにとらえた。
「きょ、……きょ、…!」
「…………」
あ、あら。
あれだけ見つからなかった弟が、あっさりと、しかも向こうから現れた。しかも傷一つない。
弟はわたしと視線を交わすと、ツカツカと近づいてきた。
な、なんか怖いんですけどーーーーー!!(えっわたし何もしてないよ!?)
「えっあの恭弥く…」
そのままスピードをゆるめず、弟はわたしに飛び込んできた。
首にかじりつくように両腕をからめて、頭をうずめる弟。
「な」
なん、なんんだああーーーっ!!?
「ちょ……ちょっと?! 何をやってんですか!」
あれだけつきまとっていた眠気が吹っ飛び、顔の温度は急上昇。
なんとかしようと、この光景を他人に見られてないかチェックをしながら、弟の両腕を持ち上げようとする。でも、持ち上がらない。がっちりとわたしの首に巻き付いてる。
……な、なんだ…弟よ、おかしいぞ。や、おかしいのはいつものことだけど、今日はもっともっとおかしい。
「恭弥くん…あの、よくわかんないんだけど…おちつこう、か?」
黙り込んだままの弟は、まるで子供のよう。ここは無理にひきはがすのは駄目だ。余計にぎゅうとしめられてしまう(首を)
そこで弟の頭を……ぽんぽんとたたいて、みた。
それも、かなりぎこちない手つき。
「恭弥くん」
「………」
へんじがない。ただのしかばねのようだ。
……なんて心の中でふざけてみる。それにしても、この歳になって弟の頭をぽんぽんするとは…。
ちょっと慣れたので、今度はなでてみた。後ろの髪に手をあてて、ゆっくりと触る。
すると ぴくり、と頭を動かす。お、反応があった。
「……恭弥くんも、大変だったんだね」
「…………うん」
へんじがあった! しかばねではないようだ!
とりあえず落ち着かせることに成功したのか、のそり、と弟は頭を起こした。そしてわたしの首から腕を離し、目の前に立つ。
「姉さん」
「ん?」
「ただいま」
一瞬なんのことかと思ってしまったけど、ああ、そういえば。
「…おかえり」
さっきの照れ隠しもあって、わたしは満面の笑みで迎える。
だから気づかなかった。
弟がその笑みに、少しだけ顔をゆがめたことに。
家に帰ってすぐベッドに寝そべる弟を見下ろしながら、わたしは腰に手をあてた。
「それで!」
「なに…? 僕、眠いんだけど」
「わたしだって眠いの! …ってそうじゃなくて。結局、昨日はどこに行ってたの?! 全然家に帰ってこないで、ケータイもつながらないし」
「ケータイ……ああ、ないね。屋上においたままだ」
「え? 屋上って…学校の屋上? なんでまた……」
「姉さん、今日は何日?」
「はあ?」
「だから、何日?」
早く答えて、と何故かせかされ、素直に日付を告げる。
すると弟は「フーン」とだけ答え(そっちが聞きたいって言ったんじゃないか…!)ゴロリと寝返りをうった。そのせいで、弟の顔がわたしから隠れてしまう。
「また、数日経ったら出ていくから」
「そっか、わかった」
「……なんでそんなにあっさり言うの」
「え、いや、だって風紀委員だし…忙しいんでしょ?」
「…うん」
「ならしょうがない!」
「…………」
弟は顔だけこちらに向けて、ジロッと睨んだ。
「喜んでない?」
「(ギクッ!!)そそっそんなわけないよ!」
今度はちゃんと連絡もらったから心配しなくていーや、と思っていた心を見透かされ、どもってしまった。
それがわかったに違いない弟は、はあ、とため息をついて顔を戻した。
「姉さんは本当に変わらないね」
「え? …まあ、変わらない…ねぇ…」
首をかしげつつ、わたしは部屋を出ようときびすを返した。
しかし弟に呼び止められる。
「僕がいない間は、女友達といて構わないから」
「えっ!! い、いいの?!」
「あと登下校は風紀副委員長がつくから、勝手に行ったりしないでね」
「え、ええ~……(ひっ殺気!)わ、わかった!」
「本当なら僕がいない間は家に閉じ込めて外に一歩も出さないのが一番いいんだけど」
「…………」
「姉さんに嫌われたくないし」
よ、よかった……。微妙な理由ではあるけど、軟禁はされないようだ。
「じゃあ、わたしリビングにいるから」
しかし。
わざわざ腕をのばしわたしの手首をつかまえると、弟は強制的にわたしをベッドの脇へよせた。
びっくりするわたしの目を、仰向けのまま、弟の目がしっかりととらえる。
「姉さん」
「ん?」
「僕は、一生姉さんを守るよ」
「うん、ありがとー」
ちょっと軽い気持ちでお礼を述べ、ついでに それなら言われなくてもわかる、と心の中で付け足す。
でも、目は弟から外すことができなかった。
「絶対に」
「…うん?」
どうしてだろうか。
弟の声が、いつになく本気に聞こえて、わたしは少しだけ怖くなった。
「それじゃ、僕、寝るから」
つかまれた手首が離される。
ジンジンとして、痛いとさえ感じた。
知らぬが仏、
(どうしてそんなに怖い目をしているの)
アニメじゃ数ヶ月=現代での3日という設定で、雲雀は数ヶ月の最終日(?)あたりにタイムトラベルしたわけで、つまり本当は1日も経ってないかと思うんですが、そこは流してくださいorz
10年前一時帰宅前の弟サイドもあったり。
姉さんの写真が、あった。
副委員長曰く「大人の僕」がつくった基地の、とある一室に。
写真の姉さんは、僕の知る姉さんよりも大人びた顔立ちをしている。
「………」
和室には不似合いな棺桶と、その上に乗せられた白い花。
写真の前に、棺桶は横に置かれている。
どうして、こんなところに写真をおいているんだろう。
ふと考えて、あり得ない結論を出した、だが無理矢理 頭から追いだそうとする。
すると後ろで、副委員長の声がした。
「恭…委員長」
「…………」
「…大変申し上げにくいのですが…ななしさんは…雲雀ななしさんは、この時代では、亡き人です」
僕の考えた結論が、副委員長の口から発せられた。
「……どういうこと? …『僕』は何をしていたの?」
本来なら殺気を向けるべき獲物は、副委員長じゃない。
この、僕だ。それができないから、他に人がいないから、自然と副委員長へ向いてしまう。
しかし副委員長は落ち着き払った口調で、答えた。
「ななしさんはこの戦いが始まってから行方不明でした。『あなた』の指示で長期間 聞き込みをした結果、とある神社付近で見かけたという情報にいきついたのです」
「………」
「しかし、我々が寺に着いた時には遅かった。『あなた』が着く数日前に、ななしさんは神社のほこらに隠れたまま、亡くなっておられた」
「それは、殺されたのかい?」
これで感情的になってはいけない。
冷静にたずねると、「いえ、」という否定の声が返ってきた。
「体に外傷はありませんでした。しかしななしさんがおられた地域は敵方がかなりうろついており、容易に動けることはできなかったでしょう。恐らく、衰弱死かと」
「恐らく?」
「『あなた』の指示で、ななしさんの遺体には触れるなということでしたので…詳しくは調べてません」
「そう」
棺桶をジッと見下ろす。
この中に、『姉さん』がいる。
二度と動かない、声も出さない、笑顔も浮かべない、ただ、いるだけ。
目をつぶって、今の姉さんを思い出した。
『恭弥くん』
笑顔が、声が、脳内にいっぱい広がる。
しかしまぶたを開けば、目の前に冷たい現実。
ぞわりと鳥肌が立った。
「(ねえさんが、このせかいに、いない)」
自分の知らないところで、知らない間に。
「(そんなこと、あっちゃいけない)」
部屋の温度が下がった気がした。
そんなこと、どうでもいい。
「草壁」
「なんでしょう」
「……敵を倒せば、姉さんも死なずにすむんだよね」
「………はい。その為にも、委員長たちは一時的に10年前に帰ります」
ですが、くれぐれも。
小言を口にしようとする副委員長を手で制した。
「わかってるよ」
群れるのは嫌いだ。
今も、これからも。
でも。
姉さんが僕の前からいなくなる未来なんて、もっと嫌いだ。
「姉さんの為なら、たまには群れてあげよう」
くそくらえな近未来
(中学校へ走ったら姉さんがいた)
(おかえり、と笑った顔が、)
(あの写真と重なって、)
(胸がしめつけられた)