復活:雲雀(姉さんヒロイン固定)
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それはそれは暑い、夏休みも佳境の、昼下がりの午後。
一通のメールが、わたしのケータイに届きました。
「メールがきたよ、姉さん」
「うん、わかった。だから、」
わたしより先にメールをチェックしないでくれるかな!!
「返して!」
慌てて弟からケータイをひったくり、友達からのメールを開く。
『やっほ~夏休み楽しんでる?
実は今週末海行くんだけどななしもどうよ~?』
「おお…! 海……!」
「駄目だけどね」
「ええええ!!」
ちょっとワクワクしたのに、見事に壊されてしまった。
なんで、と非難のまなざしを弟に向けると、その数倍冷めた目で睨み返される。
直後、すぐに目をそらすわたし(秒殺ですよちくしょう…!)
「どうしてわざわざ海に行くの? 市民プールでいいじゃないか」
「え、え~…あ! いや、わたしは海に行きたいんじゃなくて、友達と遊びに行きたいんであって…」
「それじゃ市民プールにすればいいよ。貸し切りできるから」
「な…!!(まっまた この子は!)」
ものすごいことをサラッと言った弟は、座っていたソファから立ち上がり、自分の部屋へと向かうのかリビングを出た。
まいったなあ。
そもそも弟にあれこれ束縛されること自体がおかしいんだけど、とりあえず「弟を怒らせたらオワリ」という暗黙のルールがある為に逆らえない。
それにもしこれで海に行ったら、その当日 高確率で弟はわたしのいる海を割り出しトンファーをぶんぶん振り回しながらどこまでも追いかけるだろう。
……「だろう」の話じゃないよね、これ。ほぼ確実だからね。
「はあ~…どうしよ」
結局考えに考え、わたしの勝手で変更させるわけにも…という結論にいきつき、丁重にお断りの返事を送った。
すると相手も弟のことを察したのか、逆に励まされる始末。
ああ、なんていい子なんだ…!!
ところが。
翌朝、弟がぶすっとしたまま、わたしを揺すって起こした。
「な、なに…? 恭弥くん…」
「起きて、姉さん。市民プール行くよ」
「え…? な、なんで今から」
「あの赤ん坊に頼まれてね。草食のために貸し切りにするかわりに、楽しませてくれるんだって」
「…………そ、そうなんだ」
後半から、余程楽しみにしてるのかニヤリと笑う弟(ひい、楽しませるって絶対 血が出るほうだと思うんだけど!)
「でも、わたしも行くの?」
「うん。僕は反対したんだけど、赤ん坊がどうしてもっていうから」
それが不満だったのか、また不機嫌な表情を浮かべる。
まあまあと(何故かわたしが)弟をなだめながら、ベッドから起き上がり身支度をととのえ朝食をとる。
そして財布とハンドタオル、くし、リップクリームをバッグに突っ込んでリビングにおりると、弟に「行こうか」と促した。
ところが玄関へ一歩踏み出したわたしを、弟が手首をつかんで阻止した。
「待って」
「何?」
「姉さん……なんでそんなに持ち物ないの?」
「え? どういうこと?」
「言ったよね。市民プールだって」
「うん…(なんか嫌な予感する)」
「水着、持っていきなよ」
「え゛(きたーーーーーー!!!)」
それだけは嫌だ。
何せ今のわたしには水着はスクール水着しかない。というのも去年着ていた水着が、弟に「派手」と破り捨てられたのだ(全然派手じゃないからね! ビキニだけど、色は地味なやつ) その破り捨てた本人が「なんで水着持ってないんだよ」と遠回しに言ってくるもんだから、キレていいですか。
想像してください。夏休みに、スクール水着で市民プールをエンジョイする高校生を。これほど虚しくかつ悲しいイベントがあるだろうか、いや、ないだろう。ていうかそれなら昨日のうちに言ってくれればいいのに!(ちゃんとかわいいの買ったのにっ!!)
………以上、脳内での思いでした。
そして実際に口をついて出たのは、小さな否定の言葉だった(弱い)
「むっ無理…! 高校の水着しかないし」
「それでいいじゃない」
「よくなーいっ!! どうせなら、かわいいの着たいよ!!」
「駄目。学校指定のじゃないと」
「なんで?!」
この学校バカがーーー!!
絶叫したいのを懸命にこらえるわたしをよそに、弟は涼しい顔で言った。
「五秒以内に準備しないとかみ殺すよ」
「わー!!」
今までの葛藤や抵抗を取っ払い、リビングを飛び出すわたしだった。
あああ、スクール水着……!!(ないてもいいですか、ないても)
市民プールに着いたわたしと弟は(いつもなら満席の駐車場が見事に空っぽ…すご…!)更衣室に向かった。
はあああ……とため息を延々つきながら、スクール水着を着用し、その上から大きめの白いパーカーを着て、チャックをしっかりしめる。
こ、これでいいかな。腰の下まである丈だから、スクール水着っていうのはバレないだろう、多分。
「あ、恭弥くん」
更衣室を出ると、すでに着替えた弟が待っていた。ただこちらではなく、前方のプール遠くを眺めている。
その背中と横顔……うう、かっこいいのが妬ましい。
「遅いよ、」
「だ、だって……」
振り返った弟が、わたしの顔を見て、次に服を見る。
そこで弟が何を思ったなんて全然知らない、知ろうとも思わない。
「あ…あのね、そんなに見ないでくれる? 言っておくけどわたしは泳がないからね、ぜったいっ」
「…うん」
パーカーのすそを下へ下へ引っ張りながら、照れ隠しに怒るわたしに、弟はとても素直に頷いた、え、なんで?(いや、これはこれで別に構わないんだけど…)
なんだか口数の少なくなった弟に手をひかれながら、わたしは屋内プールへ出る。そこで待っていたのは、見知った顔の人…ってそりゃそうか、リボーンくん主催なんだし。
はじめにわたしたちに気づいたのは、こちら側を向いていた沢田くんだった。
「あれっななしさん、ヒバリさん! な、なんで…」
「当たり前だ、貸し切りにしたのはヒバリのおかげだからな」
「マ、マジでーーーーー!!!?(相変わらず すごすぎる!!)」
「おっす、ヒバリ! と…誰だ?」
振り返った男の子は、わたしも知らない。
そこで沢田くんがわたしに「俺の友達で、山本です」と紹介してくれた。野球部のエースらしく、笑顔がさわやかだ。それに確かになんか野球部って感じ。
対する山本くんはわたしのことが紹介されると、ニカッと笑った。
「マジっすか! ははっヒバリと全然似てないんスね」
「あ、あはは」
「や、山本…!」
まずいって、と沢田くんが真っ青になり、当然のごとくわたしも冷や汗をかく。
二人でチラリとジャイアン…もとい弟の様子を見てみると、
「うん、似てたら僕も嫌だから」
さくっと切られた気分です。
弟の真意をまったく知らないまま、わたしは一人勝手にショックを受けたものの、すぐに気を取り直し、沢田くんにたずねた。
「プール貸し切りして、今日は何するの?」
「俺、水泳が苦手で…。それでリボーンが、特訓するって言い出したんです」
海や川でいつ敵に襲われるかもしれねェからな、とリボーンくんが言うけど、よくわからない。
なんだろ、沢田くんって見かけによらず敵つくりやすいのかな?
「んじゃ、そろそろ始めるぞ。ツナ、覚悟はいいな」
「は? 覚悟ってそんな大層な…水泳の練習だろ?」
「俺は一言も『水泳の練習』なんて言ってねーぞ」
いつもの無表情なのに、なんでだろう、ニヤリと笑ってそうな…リボーンくん。
対する沢田くんの顔はわかりやすく、「まさか」とみるみる真っ青になっていく。
「ちょっま…」
「ヒバリ、頼んだぞ」
「借りは大きいよ」
「ああ」
「草食が死にそうになっても止めに入らないでね」
「心配するな、俺は約束を守るぞ」
なんともカッコイイ会話だ。
ただ赤ちゃんと不良少年がその実態だからなあ…。
そしてリボーンくんの最後の台詞に、沢田くんが全力でリボーンくんの名を叫んだ(わ、わかる…見捨てられたんだよねこれ…すごいかわいそう…!!)
「ななし、行くぞ。ここじゃあぶねえ」
「あ、はいっ(あ、あぶない?!)」
突然呼ばれ、敬語で返事をしてしまう。
トテトテと歩くリボーンくんの後ろに続いて、三人から少し離れたところに移る。
その間に、弟もプールに入り、中央にいる山本くん、沢田くんと向き合った。
「よし、始めろ」
リボーンくんの声で早速始まったのは、男子諸君三人での……バトル。
「グハー!!(いきなり俺ー!?)」
「弱すぎ」
おおっとーいきなり決まりました、弟の華麗なる攻撃!
……ってそうじゃない!
さっ沢田くーーーーん!!!!
「なっ何やってんの!? なんであんな…」
「ツナを鍛える為だ。泳げるだけじゃねえ、戦えるようにもならなくちゃならねーからな」
「な、なんで? 沢田くんが可哀相…」
「可哀相なのは、弱いボスに従わなくちゃいけねー部下だぞ」
「はあ?」
すいません、成り立っているようで実際まったく会話が成り立ってません。
意味不明とばかりに首をかしげるわたしにリボーンくんは気分を害した風もなく、「いつかわかる」とだけ呟いた。
「それにツナなら大丈夫だぞ」
「え?」
見れば、弟の攻撃を受けながらも、ひいひい言いながらも、倒れることなく耐えている。
山本くんだって、沢田くんをかばおうと バットを上手に使って弟のトンファーとぶつかり合っている。
……いや、なんでプールにバット? 突っ込んだら負けなのかな。
「で、でも…」
ジャブジャブと水をかきわける音や、金属音、悲鳴(主に沢田くん)が混ざり合う戦場。
……中学生の、ちゃんばら(?)ごっこにしては、少々…というか大分やりすぎでは。
実際あの三人がやってるのは「ごっこ」以上のもの。
「ちょ……も、もうやめない…?」
場に呑まれないように声を出したけど、かすれた声にしかならなかった。
生唾を飲み込んで、わたしは今度こそ隣のリボーンくんに振り向いた。
「リボーンくん、これ おかしいよ!」
「何がだ?」
「な、何がだって…! 水泳の練習で来たんでしょ? なのに水泳関係ないじゃん、あれ!」
「関係あるぞ」
「いや、ないって! とっとにかく、やめさせなきゃ!」
「好きにしろ。俺はぜってー止めねーけどな」
「!?」
静かに言うリボーンくん。
もしかして約束のことを言ってるんだろうか…。
でも、あのままじゃあ山本くんはともかく(すごい、弟の攻撃を上手にかわしてる)沢田くんが病院送りにされちゃう。
なんとかして…って叫ぶしかないか。
「ストーップ!」
思い切り叫んでも、あちらの戦闘音のほうが大きく、まったく聞こえてないらしい。
しびれをきらしたわたしは立ち上がり、三人がいるところにできるだけ近いふちに立ち、もう一度叫んだ。
でも、三人が気づくことはない。
どうしよう、どうしようとアワアワするわたしの背後で、どうしてだか、リボーンくんの声がした。
「どうせ止めるなら一興やってみろ」
「いっ」
一興ってどういう意味?
そう言う前にわたしは背中に衝撃を感じ、あれよあれよという間に水の張ったプールへ、ドボンと沈んでいった。
「(マジかよ)」
リボーンくんに突き落とされたんだ。なぜか冷静に、このハプニングを受け止めることができた。
「(びっびびった~!! リボーンくんってばマジで考えらんない…!)」
慌てて真っ先に沈んでいた頭を起こし、足をばたつかせ………
「!!!!」
こ、これは!!!!
い、いたい!!!!
「~~~!!」
つったーーーーー!!
よりによって両脚をつってしまった。
ピキーンと、なんともいえない痛みがわたしの脚をおそう。
きっと準備体操とかしてないから筋肉が…とかあれこれ考えながら、両手で水を必死にかきわける。
「っぷはっ…っはぁ…」
なんとか呼吸だけでも、と水面に顔だけ上げる。
そこで目を開けても、水の膜が邪魔をしてどんな光景が目の前に広がってるのかわからないし、その水が目に入り込み思わず目をつぶった。
ただ遠くの方からわたしの名前を沢田くんが呼んでくれた、気がする。
確認しようにも、動かない脚が邪魔をして、またすぐ水にもぐってしまう。
ううう、何か、つかめるもの、つかめるもの!!(それこそ藁にもすがる!)
ゴーグルがないと水中で目を開けられないわたしは、天に向かって両手をがむしゃらに振り回すしかない。
「(恭弥くんー!)」
直後。
なんの前触れもなく(何しろ目をつぶってたからね)わたしは何かに胴体を巻かれ、上へぐいっと押し上げられた。ザッパンと水が跳ね上がるのがわかる。
酸素が一気に鼻へ、それから開いた口へ押し寄せ、一瞬のどがつまりそうになった。
「姉さん!」
弟の、珍しく切羽詰まった声。
それはとっても身近で、悪くいえばうるさいと思うほどの音量。
「弟でも焦ったりするんだ」と他人事のようにちょっと感動しながら、わたしは目を開けた。
そこでようやく、わたしは弟に助けられて、腰を抱き寄せられていることに気づいた。
声を出そうとのどを震わせた途端、のどに残っていた水にむせてしまう。
「ゴホッゴホッ……」
「姉さん…」
大丈夫?と気遣う弟に、なんとか無事をしらせようとコクコク頷いた。
「脚、つったの?」
「ゲホッ……う、ん」
はあはあと息を切らしながら、弟に礼を言おうと俯かせていた顔を上げる。
その時 前髪が顔にベタリとはりついたけど、そんなの気にしない。
「……ありがとう、恭弥くん…」
「……!」
わたしと目が合った途端、弟が固まってしまった。
「………」
「…? きょうやくん…」
「…………」
まったくそらされることのない視線に、冷静になったわたしは思わずたじろぎそうになる。な、なに?! はっもしかして鼻水出てた?!と慌てて手を鼻の下にあてる(あれっ出てない)
そこへ弟の後ろから、沢田くんと山本くんがザブザブと水をかきわけながらやってきた。
「ななしさんっ!」
「大丈夫ッスか?!」
「うん、大丈夫。ごめんね、邪魔しちゃって」
というか、沢田くんたちこそ大丈夫なのだろうか。顔中ボコボコの沢田くんと傷だらけの山本くんに、わたしは逆に心配したくなる。
すると背後で、元凶ことリボーンくんが「良かったな」と帽子をかぶり直す。
どこがだ、どこが良かったんだコルァ(もう二度とリボーンくんの近くにいない!!)
「戦闘大好きの弟が、お前の為にほっぽって助けに行ってたぞ」
「え…」
「まさかあのヒバリが人助けなんてなー!」
「そりゃそうだよ、ヒバリさんがななしさんを見捨てるわけないって」
みんながみんな感心する中、弟は「うるさい黙れ咬み殺す」と相変わらずつれない返事をしている。
でも、わたしからしたらこれは大進歩で。
三度の飯より戦闘の、あの弟が、戦闘より家族の身を優先してくれた。
久しぶりに、お姉ちゃん、あなたを大切な弟だと思えるよ!!(え、それはそれで酷いって?)
「ありがとう! 恭弥くん! お姉ちゃん、嬉しい!!」
「!!!」
感動のあまり、自分から弟を抱きしめた。
普段なら絶対にやらないし、やりたくないことだけど。
この時のわたしは嬉しいのと安心したのとですっかりテンションがあがり、なんの躊躇もなく、弟の体に腕を回し、ぎゅうと抱きついた。
その際、弟の胸板に自分の耳を押し当てるかたちになったんだけど、
「……………(心臓、すごいバクバクしてる)」
そうか、そういえばたった今まで戦闘してたんだよね。
それなのに、中央からここまで距離があるのにも関わらず、かけつけてくれた。
「恭弥くんごめんね、わたし今まで恭弥くんのこと、血も涙もない人だと思ってた」
「(あ、俺も)」
「(だよなー)」
まさか他の二人も同意見だったとはつゆ知らず、一人懺悔するわたし。
弟はやっぱり冷静で、「別にいいよ」とだけ答えた。
「姉さん以外には、事実だし」
「そ、そうなんだ…」
「(ですよねー…!)」
「(だよなー)」
わたしの顔についた前髪を払いながら、弟がフッと微笑みを浮かべる。
そしてプールサイドに立つリボーンくんを見て、意味ありげに口端を上げた。
「君の言ってた楽しみってこれ? やるね。……今度やったら許さないけど」
「安心しろ、約束は破ってねー。『俺』自身は止めてねーからな」
「(めっちゃ屁理屈言ってるんだけど、この子…)」
これはななしの意志だから、今後は手荒なことはしない。
新たな約束をするリボーンくんだけど、果たして、どんな屁理屈を用意しての発言なんだか……。
とにもかくにも、わたしという乱入者が止めに入ったおかげで、バトルは中止になった(良かった、これが一番の救いだわ)
沢田くんに「本当に(止めに入ってくれて)ありがとうございました!」と何度も頭を下げられ、山本くんには「ななしサンってすごいッスね」と感心されたりしたけど。
弟があれきり黙り込んでしまって、わたしは二人に対して上手な対応ができなかった(すごく上の空だったかも…すいませんでした)
沢田くんたちと市民プールの入り口で別れて、わたしと弟は並んで歩き出した。
「………」
「………」
「………」
「………」
「…………な、なんか疲れたね」
「うん」
「……………」
「……………」
「あー…帰ったらアイス食べようか! この間買ったんだよ」
「うん」
「………」
「………」
「………」
「………」
「…恭弥くん」
「何? 姉さん」
「………怒ってる?」
「……うん」
「怒ってる」割に、弟は不機嫌オーラを全く出していない。
困惑するわたしを見た弟は、顔を別の方向に向けた。
な、なんか傷つくんだけど……。
「なんで、止めたの?」
「………ご、ごめん。でも、ケンカってやっぱ…見るの好きじゃないし…。それに、沢田くんたちがたくさん怪我してて…」
「ふーん」
弟の冷めた声に、わたしは地雷をふんでしまったことに気づいた(しまったー!)
「草食の為だったんだ。その為にわざわざ止めに入って死にそうになったんだね」
「ち、違うよ! 沢田くんたちがじゃなくて、もし恭弥くんがそうなってても、わたしは止めに入ってるよ! そういうことなの」
まあ「もし」の話だけどね、弟に勝てる奴なんて近所にはまずいない。
どうやら弟も同じことを思ったらしく、「僕はならないよ」とムッとした。
でも、さっきの冷たい声じゃない。
「そうだね、恭弥くんは強いもんね」
あやすように言って、にっこり笑いかける。
弟はわたしの反応が意外だったのかちょっと目を丸くしたけど、すぐに戻って、コクリと頷いた。
「姉さんがいるからね」
そして ぶらんと下がっていたわたしの手をすくいあげ、指をからめた。
あぁやっぱりこの答えはとけないよ
(どうして彼はこうもわたしに執着するのか…!)
夏らしさを感じない今年に、残暑見舞い申し上げます。