復活:雲雀(姉さんヒロイン固定)
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「恭弥くんの……ば、ばば…っ」
弟の睨みにギクッとなったものの、いったん息を吸い込んで、
「ばかああああああっっっ!!!」
言った!! 言ってやったっ!!
わたしはついに言ってやったんだーーーー!!!
逃げるが勝ちっていうからね
「あの、これどうぞ」
「あ、ありがとうございます…」
年下の沢田くんにお茶をいただき、恐縮ですと頭を下げる。その隣で、弟お気に入りの赤ん坊、リボーンくんがエスプレッソを口に入れた。…すごいね、わたし、エスプレッソをそんな優雅に飲めないよ。
ちなみに只今わたし雲雀ななしは、沢田家にお邪魔してます。あれからすぐに家を飛び出し(一瞬でも長く家にいれば吊されていた)スーパーを通過したところで沢田くんとリボーンくんに遭遇。沢田くんからヒバリさんいないんですねと聞かれうっかり「姉弟喧嘩しちゃった」と答えるとリボーンくんがニヤリと笑えば「家で話を聞く」と引きずられ、今に至るわけ。
「それで一体、何があったんだ?」
「そんな特別な理由ではないんだけど…。弟が…」
「ヒバリさんが…?」
「………わたしの日記読んじゃったの」
ぽつり、とこぼした真相に、沢田くんはなんとも言い難い表情を浮かべた。それは他人からすれば なんだそんなことか、と思うかもしれない、でも本人からすれば大変な事態だと、考えてるのかもしれない。実際そうだし。わたしの本音がベラベラと吐かれてる、時には弟に対する愚痴も書いてる(ここ重要!)
リボーンくんだけが聞く前と変わらない顔で、大きな目をこちらに向けた。
「本当にヒバリは見たのか?」
「…本人は否定してるんだけど、でも、どう見てもあれが読んでないようには思えなかった」
わたしが部屋に入った時、弟が既にいて。その手には開いた日記があった。
そして見られたかもしれないという不安と羞恥心が一気に押し寄せ、それらの感情が入り交じりすっかり混乱してしまったわたしは、弟を一方的に非難し逃走したのだ。今では反省してます、はい。弟の言い分一切聞く耳もてませんでした。
はあ、とため息をつくわたしのななめ向かいに座る沢田くんは、頭をかきながら「あー」と視線を宙にさまよわせた。
「……俺は…ヒバリさんが、ななしさんの日記を勝手に読むことは、ないと思います」
「え…?」
「わかるんです、ヒバリさんがななしさんをどれだけ大切にしてるか」
「……大切に…されてるのかな…」
「ツナがそう言うなら本当だぞ。こいつ、普段はさえねーけど直感だけは鋭いんだ」
「さえないは余計だっ!!」
「ほ、ほんと?」
本当かな。いや、そりゃ姉ながらに大切にされてるのは感じてるけど。弟がわたしのプライベートな部分にまで入ってくることはない、ということが、本当なのだろうか。発言者の沢田くんを見やると、なんでだろう、いつもと違って力強くて、安心できる目。根拠はないのに、沢田くんにそう言われてこんな表情されると、信頼できる。
「沢田くんて…すごいねえ」
「え?! そっそうですか…?(いきなり感心された…!?)」
「ななし、ツナと俺を信じろ。そうすりゃ姉弟喧嘩なんてあっという間に終了だ」
「リボーンくん…」
ああ、出会って間もないのに、こんなに親身になって、弟もフォローしてくれて。なんて素敵なお友達なんだろう。
ありがとうリボーンくん、と微笑むわたしに、リボーンくんも笑いかけた。
どこかで見かけた、黒光りする武器を、標的であるわたしに向けて。
「人間、死ぬ気になりゃなんでもできるぞ」
あ、思い出した。ディーノさんの、時。
突然銃を向けられたわたしはなぜか真っ先にそのことを思い出していた。
沢田くんの制止の声が耳に響く。同時にわたしへ手をのばしてくれる。
けれどその手はわたしに届くことなく、空を切った。
わたしがそれよりも早く、上半身を倒したからだ。
………違う。
倒れた、んだ、わたしが。
頭に振動があったのは、撃たれたから。
『(あ…わたし死んじゃうんだ)』
弟と仲直りもせずに。
『(こんなことなら…あの場で冷静になるべきだった)』
すぐに仲直りすれば良かった。
いくら弟が怖くても、そうだ、リボーンくんの言うとおり死ぬ気でぶつかれば…。
死ぬ気、で………。
『(…死ぬ気で、仲直りすれば良かった)』
「何やってんだよリボーン!! ななしさんが後悔してるかどうかもわからないのに!!」
「後悔してるから撃ったんだ。京子の二の舞をするつもりはねェ」
「ッ……!」
まさかリボーンがななしさんに死ぬ気弾を撃つとは思わなかった。怪しく笑んだかと思えばコンマ何秒の速さで銃を取り出し、なんのためらいもなく引き金をひいてしまった。
ななしさんは…後悔してるんだろうか。
「これで何も起きなかったら、間違いなくヒバリさんに殺される…!! つーか殺人じゃんこれ!!」
「うるせーな黙ってろ」
「ブッ!!」
小さな足で背中に跳び蹴りをされただけなのに、ミシッと背骨が悲鳴をあげて勢いあまり床に倒れ込む。言い返してやろうとリボーンを振り返った、時だった。
ななしさんのお腹がモコモコと動いたかと思うと、
「!!!! ななしさん!」
死ぬ気の、ななしさんが誕生した。やはり服はバリーンと破けてしまっている。慌ててベッドに放置してあるバスケットタオルをかけたものの、ななしさんは黙ったままだ。
「…あの…ななし、さん?」
その瞬間、ななしさんの両目から涙が滝のように流れ出した。そして立ち上がると、
「ウワアアアアアン!!!」
「なっ…えええーーー?!!」
思いっきり泣き叫びながら、家を飛び出したのだ。なっなんだそれーーーーー!?
仰天する俺の隣で、エスプレッソを飲みながらリボーンは言い放った。
「どーやらななしは、死ぬ気になると泣くタイプみてーだな」
「そんなのあり?!」
「そんなことより、いいのか? ななしいっちまったぞ」
「! わああっ!!」
慌ててななしさんの後を追って外に出る。ななしさんはワンワン泣きながら角を曲がっていた。
……わ、わかりやすい。すごく後を追いやすい…って違う! あんな格好でヒバリさんに会わせたら、抹殺されちまう!!
「ま…待ってくださいななしさーーーーーん!」
いくら女性でも、泣きながらでも、死ぬ気になると力が全開になる。いや、元々ななしさんがそういうタイプなのか、足がとても速く追いつけない。こ、こんなことなら俺もリボーンに…いや、それはまずいだろ。
幸い人通りの少ない所を走っていたみたいであまり人に会うことはなかったけど、あの姿で会わせるのは本当にまずい。
結局 ななしさんの自宅までついてきてしまった俺は、なりゆきに任せてお邪魔することにした。
「おっお邪魔します…」
「なんの用」
「わっ! ヒバリさ…」
玄関でヒバリさんが見せる剣呑な表情に、思わずひるむ。ていうかこれでひるまない奴なんてそうそういないから!!
そんな彼を後ろから抱きしめたのは、他ならぬななしさんだった。
「ごめんなさああああいっ!!」
「………」
「ちょっななしさん…!」
「ごめんなさああああいっ!!」
「……これ、どういうこと? 知ってるよね?」
下着姿で、バスケットタオルしか身にまとってなくて、涙をぶわあっとあふれさせて。そしてこの場には俺。
氷点下並の冷たい視線が、このひ弱な心臓を貫きそうだ。
「君でしょ。姉さんにこんなことさせたの」
「ちっ違…いやリボーンが」
「ごめんね恭弥くんっごめんね!!」
ヒバリさんの殺気が最大限になった時だった。
今まで泣きっぱなしだったななしさんが泣き止み、鼻をすすりながらヒバリさんを見上げる。
「わたっ…わたしがちゃんと、きょ、やくんと話さなかったから…!」
「………」
「ば、ばかって言ってごめんなさい、だか…だから、嫌いにならないでえーーー!」
気まずい沈黙の中、ななしさんの嗚咽だけが家に響く。そしてヒバリさんは、さっきよりは温度のあがった(でも0度レベルに変わりはない)視線を俺に向ける。
「………沢田綱吉」
「ハッハイイイイ!!!!」
「二秒以内に出ていかないと かみ殺す」
「失礼しました!!」
一秒で出ることができた。
後は、ななしさんの安全を何よりも願おう。
玄関のドアがバタンと閉まった途端。
今までわき上がっていた感情が、突然スウッと沈静化した。
な、何……。
「なんじゃこりゃあああああっ!!!」
気づいたら下着姿で、男物のタオルにくるまれてる状態で、弟に抱きしめられているわたし。おおおおかしい、おかしいよこれ!! とっとととりあえず、おおおお落ち着こう!(あああ落ち着けてねええ!)
「きょきょきょきょーやくん? わ、たしは…なんでこんな格好に」
「知らないよ。それに、僕を抱きしめてきたのはそっちでしょ?」
なんでか知らないけど、今の弟はとても上機嫌だ。わたしを見下ろす目がいつになく温かい。
ていうか、熱い。めっちゃくちゃ熱っぽい。その視線に耐えきれず、ぐるりと目をそらすほどに。
「あの…すいません、服着ていいですか」
「駄目」
「駄目?!(ガーン) …いや、駄目じゃ駄目でしょ、寒いよ! 風邪ひいちゃうよ、前みたいに」
「寒いなら、僕が温めてあげる」
言うが早いか、弟の手がタオルを通過しわたしの地肌をすべる。ぞくっと背中をのばすと、くすり、と笑われた。
「姉さんって、馬鹿だね」
「え゛」
「僕が姉さんを嫌いになるわけないのに」
え、嫌いに…? わたし、何か言ったんだろうか。ううん、そういえば必死に何か言ったような…気がしないでもない、かも。
でもまあいいか。弟がいつになく微笑んでいて、それを見るとホッとする。
何はともあれ、一件落着、かな!
でもやっぱ服着たいんだけど!!
「言っておくけど、日記は落ちてたのを拾っただけだからね」
「うん、わかりました…わかりました、から、いい加減 放してください」
「やだ」
リボーンの原点に戻ったらこんな話ができあがってしまいました。