銀魂:神威(同行者ヒロイン固定)
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ちょっと手首を切っただけなのに、目の前の大きな男は野太い悲鳴をあげた。これが見かけ倒しというものか。完璧にちぎったわけでもないのに。
「か、かむいさん」
そんな絶叫は耳障りだけれど、背後の震える声には全くそう感じなかった。どもっているのは俺に対する畏怖なのか、男の醜い形相に悪寒が走っているのか。
「も、もういいと思うんですけど…これでもう武器握れないし」
「そう? もうちょっと遊ばない?」
「遊べるわけないでしょーがっ!!! 早く森抜けましょうよ!!」
ちょっとでもふざけたことを言うと、いつものななしに戻るのが面白い。しかしあまり遊びすぎると厄介なことになるのはわかる。
「わかったよ、じゃあ先に行ってて」
「…すっ、すぐに来てくださいよ!!」
「わかってる、わかってる」
ななしのご希望通り、虫の息となった男へ体を向けると、すぐに心臓へ武器を突き刺し、終わらせた。
「お待たせ、ななし。さ、行こうか」
「はいっ」
俺の姿を見ると、ほっとしたような表情を浮かべて微笑むななし。よくわからない、あまり深く詮索しないでおこう。
今日はこの森を抜けてとある村に出る。そこは幕府の息のかかった、要するに裏の舞台というやつだ。吉原桃源郷とは別で、こちらは誰も支配する輩がいない分色々なモノが蔓延っている。
ふとななめ後ろを歩く気配が止まり、振り向いた。ななしが新たに支給された携帯電話を眺め、にっこり笑っている。俺の視線に気付くと、慌ててそれを懐に入れようとする。
その瞬間、俺もにこっと笑ってその携帯電話を取り上げた。
むかついたから。
「あああああ!! 何するんですかァァァ!!」
「何? 指令でもきてた?」
「だっだめ…!」
真っ暗な液晶画面だが、ボタンを適当に押すとバックライトに照らし出され、画面が映し出された。
「……………」
「…………」
「………」
「……その、笑顔で沈黙っていうのやめてもらっていいですか」
特撮ヒーロー『ギンタマン』。ななしが町の食堂のテレビで食い入るように観ていた番組だから覚えている。そういえば毎週同じ曜日のその時間帯になると、決まって食堂のテレビを観たがっていた。
…ま、いいや、これなら。
「ほい、返すよ」
「!? えっ、え…」
「何?」
「いや、あの……てっきり前みたいに壊されるのかと」
「なあんだ、そうしてほしいなら」
「いいいいやいやいや!! いいですなんでもないですありがとうございました!!」
「ひいいっ」と慌てふためくななしを見ていると、なんだか違う自分が出てきそうな気がして、すぐに顔を前に向けた。
しかし結局、今日中に村へはたどり着かなかった。森が予想以上に広かったのもあるし、夕方の急襲…は問題ない、その後の俺の遊び心?が拙かったみたいだ。
晩ご飯もそこそこに、すぐに寝る支度をする。今は焚き火が周りを照らしているが、このサイズじゃもって10分だろう。
「うう~…神威さん、お腹空きました…」
「そうだね。あの男から金目の物とっておけば良かったね」
「わたし、そんなことに同意させてるんじゃありませんけど」
ぶつくさと文句を言うななしに毛布を放り投げて、木の幹にもたれた。周囲の様子を探ってみるが、殺気も人の気配もない。動物さえ、鳥さえ木々に止まっていない。それだけこの森は不気味で生気のない場所なんだろう。そんな森に囲まれている村に行くのだから、ああ、楽しみだ。強い奴、いるといいな。
「…あ、あの…神威さん」
「うん、何?」
「……あ…別になんでもないです」
言いにくそうにななしは毛布を抱きしめると、俺から離れた場所に座り込んだ。それも辺りをチラチラ見ながらと、落ち着かないそぶりだ。ああ、そうか。
「あそこなら茂みになってるからやりやすいよ」
「は?」
「あれ? 小便じゃないの?」
「ちっ!! …違います」
荒い口調で否定すると、ななしは俺を見て「はあ」とため息をついた。
「…もう寝ます。おやすみなさい」
「うん、おやすみ」
ななしの言動が読めない。理解することは俺には無理だろう。わざわざ解らないことを考えても腹がへるだけだし、いいか。
そして、まぶたを閉じて、ななしがきちんと近くにいることを察知しながら、眠りにおちていった。
地面に着いていた手が温かさを感じ、そこでようやく目が覚めた。どうやらその熱は木漏れ日からのようで、朝日が所々差し込んでいた。
そこまで考えた時、ふと肩に重みがあった。
「……まったく、いい度胸してるよ」
初めての夜は俺を怖がって「近付かないでください!」と数メートル離れていた頃が懐かしい。
肩には、そんなななしの頭が無遠慮に乗せられている。まあ、それだけ俺に慣れたってことかな。
ちなみにななしに押しつけた毛布も、今は二人で一緒にかかっている。
「………」
どんな寝顔なんだろうか、ふと思って頭を下げてななしの顔に近づける。
「………(起きないなあ)」
一定の距離で止まるはずだった。
「(………一定? なんだそれ。どこまでが一定なんだ)」
そこまで考えた時、我に返る事が出来た。
ななしの小さな鼻と自分の鼻が、触れているほどの距離。
ななしの小さく開いた口から、寝息が聞こえるほどの距離。
「…………馬鹿だねえ」
俺も、あんたも。
けれどそれを認めるのが悔しくて、急に目の前のななしが憎らしくて、外側の片手を頭上にあげるとななしへ振り下ろした。
「!!!! いっっっったああああああああああ!!!」
額に思いきりデコピンを喰らって、素早く起き上がるななし。わめく間に、俺は立ち上がると歩き出した。
「なっちょ、今何…何?!!! あっ神威さん! 神威さんでしょ今の、何するんで…」
「おはよーななし、ところで今日中に村へ着かないと上から雷が落ちるって知ってた?」
「!!!!!」
真っ赤になって怒る表情が引っ込み、一瞬で顔中真っ青になるななし。全くの嘘なのに、簡単に信じるもんだから面白い。
「早くしないと置いてくよ」
「ひっ酷…! ちょっとくらい待ってくれてもいいじゃないですかっ」
「嫌だよ、女は支度が遅いから」
ねえ、ななし。
あんたはいつも俺を酷いだの狡いだの言うけれど、
「神威さんっ待ってくださいよォォォ!!」
俺からすれば、あんたこそ酷くて狡いと思うよ。
「やっと追いついたね。そんなに息切らすなら、運動すればいいのに」
「……マジで、そうしようかな…」
「あんな早さじゃ逃げ足の類にもならないよ。というわけで、今から走って村に行こう」
「えええええ!!! 嫌ですっ! だって神威さん絶対早く走るでしょ!?」
「そんなこと…」
「嘘だァァ!! 神威さんはそういう人です!!」
「……………へえ、あんたも言うようになったね」
「!! ……す、すいませんでした」
きっと、俺は一生、あんたに本音をちらつかせないだろうね。
そんなあんたに、追い打ちをかけてやろう。
「俺より弱いくせに、いい度胸してるね」
君はずっと俺の側にいて
(こんな俺に微笑んでくれるのは君だけなんだ)</font>
神威さん視点。勿論本音はあっちです。