銀魂:神威(同行者ヒロイン固定)
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別に、わたしの日頃の素行が悪いからではない。
どちらかと常に周りに気を配り(春雨なのにね!)余計なことに巻き込まれないようにしている、つもりだ。
なのに。
「よう ねーちゃん、ちょっといいかい?」
神威さんがいない時に限って町中で呼び止められ、わたしは決まって脅されるのだ。どうやらわたしはどっさりお金を持っているお嬢様と思われているらしい。
抵抗する間もないまま、路地裏に引きずられ、そして今現在、建物の壁に背をくっつけ、
「おら、金持ってんだろォ?! 出し惜しみしてねーでさっさと出せや!!」
怒鳴られて脅されてます。いや出し惜しみしてないから本気で財布空っぽだから。というか財布を差し出し貴方が外れをひいたとわかった時が怖い。そんなわけで無駄と理解していても、
「あの…わたしお金持っ」
「あ゛あ゛!? 持ってないってかァ!?」
「ひいっ!!」
余計逆上させてしまったらしい。
もうこうなったら誰でも良い、神威さんでも真選組でも、助けてェェェ!!!
そんな恐怖心から一切声が出せないわたしに、男は盛大な舌打ちをする。
「ッフン…見かけによらず強情だな……………」
「……」
「………」
「……(な、なに…?)」
いきなり黙り込まれ、ジロジロと、体中を舐めるように見てくる男。なんだか気持ち悪い。
その内一歩近づいてきて、無意識に一歩後ろに下がる。そんなわたしを見て、男は下品な笑みを浮かべた。こんな顔見るなら怒った顔のほうがまだ数倍マシだ。
「…てめェ、なかなかの上玉だなァ…そういや最近ご無沙汰だし…金がねぇでもその面なら…楽しめそうだなァ…」
ぶつぶつと、わたしに言っているのか独り言なのか。ただ子供じゃないわたしは、今の台詞で何がご無沙汰なのか、わかった気がした。
逃げなくちゃ。
「おっとォ!! 逃がさねーよ、ねーちゃん」
「やっ!」
壁沿いに逃げようとしたものの、すぐに捕まってしまう。両手を壁につかれ、目の前にはお世辞にも男前とはいえない顔。
「まァ、楽しもうや」
ハアハアと息を荒くしながら、徐々に迫る。
もう駄目……!!
わたしはまぶたをギュッと閉じた。
「はい、終わり」
聞き慣れた声が、降ってきた。…降って、きた?
その声と同時に、頬に生暖かいものが飛んできて、近くにあった気配が消えたのがわかった。
「目あけなよ、ななし」
飄々とした、それでいて涼しい声がして、わたしは素直に従った。やはり現れたのは神威さんで、その下には男が倒れている。ただすぐに神威さんが自分の得物である傘でその姿を隠したので、どんな状態かはわからなかった。
「あ、ありがとうございます…神威さん」
「こちらこそ。俺も楽しかったし」
「………………は?」
「ななしが不安な顔して恐がってるの、見てたんだよ」
にっこり笑って言い放つ神威さんを見て、わたしは思考が固まった。
「……見てたんですか…?」
「うん。声かけられるところから今の今まで、全部」
「……ずっと…見てて、………なあんで助けに来てくれなかったんですか?!」
相手が団長とか恐い奴とか一切忘れて、ただ怒りに任せてわたしは怒った。分かってる、神威さんは善人じゃないからそういうことをするはずがないことも、春雨の一員のくせに弱いわたしが一番悪いことも。でも、怖かったのだ。1対1で男と女で力の差なんて歴然としていて。
今更襲いかかる恐怖と安堵がいっぺんにのしかかってきて、わたしはヘナヘナと崩れ落ちた。
そんなへなちょこのわたしに理不尽に怒鳴られても、神威さんはやっぱりニコニコしたままで、腰の抜けたわたしの前にしゃがんだ。そのせいで男の姿はまた神威さんの背中に隠れる。
「ごめんごめん、俺、ほんとはななしが呼んでくれるの待ってたんだ」
「…?」
「だって自分からいったら、俺らしくないだろ?」
「…らしくない、って……」
妙な自尊心に思わず呆れる。
と、あごに神威さんの手が添えられた。くいっと上を向かされ、突然近づく神威さんの、顔。
「!! や」
さっきの光景と重なり突き飛ばそうとしたのに、気づけばわたしの両手は既に神威さんの手により地面に押し付けられていた。
「そんな恐がらないでよ。血、ついてるからさ、とってあげるよ」
血?
そしてわたしの顔からそれた神威さんは、わたしの頬に舌を押し当て、そのままペロリ、となめあげた。スースーする、…じゃない!! 神威さんの行動により一瞬 体中の動きが活動をやめた反動で、急激に温度も心拍数も上昇してしまった。
「!!!!! ななっななな!!」
「面白いリアクションだね、それ」
クスクスと笑いながら神威さんはまた頬に舌を這わせてくる。どうやらわたしがさっき生暖かいものが飛んできたと思ったのは、あの男の血しぶきらしい。
「ねえななし」
「ひ! みっ耳元で言わないでください!」
「いいじゃんかー。それよりさ、俺が旅にあんたを同行させた理由、教えてあげようか?」
「え」
何故神威さんが突然そう言い出したのか、まったくわからない。
でも、それはわたしが常日頃から念頭にある疑問だった。
足が遅いとか動きが鈍いとか弱いとかケチだとか、毎日毎日笑顔を浮かべながら言葉の暴力をふるう神威さんは、どうしてわたしを連れ回しているんだろう。
果たして、神威さんはささやいた。
「あんたはね、俺みたいな奴からしたら、格好の獲物なんだよ」
「…………と、いいますと…?」
俺みたいな奴、というのは悪人のことだろう、それか戦うことや争うことが大好きな野蛮人。けれど神威さんの台詞がうまく理解できない。
困惑するわたしの耳元を離れた神威さんは、立ち上がりながら「んー、つまり」と言葉を選びつつ、
「カモ?」
「………」
選びに選び抜いた単語がそれかい!!!!!
でも、それはわたしの納得がいくものだった。だって彼がわたしの前から消えるのはこれが初めてではないのだ。神威さんがいなくなると、きまってどっかの悪モンが絡んでくる。
ということはあれか、神威さんはその時も、どっかの木の上からでもわたしの慌てる様を見て微笑んでいたというわけか。
つまりわたしを旅の同行人に選んだのは、ただ単に、自分が楽しむためのものか!!
「……神威さんはどうしてそんなにサディストなんですか?」
「わかんないよ、ただななしが困ってる顔を見るとすごくワクワクするね」
「(もう完璧にSだ)」
「でも」
話を交わす間に落ち着いたわたしは、ゆっくりと立ち上がった。
そんなわたしに対し、腰をおろしたままの神威さんは、顔をうつむかせている。
「相手が楽しそうな顔をすると、すごく殺したくなる」
そんな彼の後ろには、頭が砕かれた、あの時の男。
「相手がななしに触ろうとすると、その手を切りたくなる」
男の両手は指がそれぞれあちこちに散らばっていて。
「ま、なるっていうか実際そうするんだけどね、これからも」
顔をようやく上げた神威さんは、やっぱり笑顔だった。
ああ、この人は歪んでいる
「だから俺もあんたに惹かれる、あんたが魅力的だから」
ギャグなのかヤンデレなのか