銀魂:神威(同行者ヒロイン固定)
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「ななし、早くおいでよ」
「ちょっま…待ってください…!」
あのクソ野郎、人にこんだけ荷物持たせといて何ヘラヘラ笑ってんだ…!
わたしは神威さんと自分の分の荷物を握りしめながら、小さく舌打ちした。本当に小さくで、「あっ今の舌打ちっぽくなかったらもう一回しよう」と思えるほどのちょっとしたものだ。ところが奴は、
「あ、今舌打ちしただろ」
「!!!!!」
何あの人、仙人の生まれ変わり? 耳おかしいんじゃないの? 今度 山ほどの鈴持って耳元で鳴らしてやろうか。
「全く、ななしは見かけによらず性格悪いんだなー。そんなんじゃ、嫁のもらい手がなくなっちゃうぞ」
「アンタに言われたくありませんっ!!」
「はは、面白い面白い」
どうやら奴のツボはわたしたち人間とは別の箇所にあるらしい(今の会話のどこに面白い部分が?!)
だいたいわたしは、春雨の新人で、夜兎みたいな戦闘種族でも、剣や技を持っている強者でもなんでもない。ただ上から「神威と同行しろ」と言われただけで、ちくしょう本当はただの掃除係なのに!! なんでこんなヘラヘラした男と旅をしなくちゃいけないんだ。
内心ため息をつきながら荷物を抱え直すと、わたしは神威さんに尋ねた。
「あの、神威さん。今更なんですけど、どこに行ってるんですか?」
「どこって、宿だよ。もう日が暮れる、野宿は嫌だろう?」
「ああ、嫌です……って、そうじゃなくて! 目的地はどこなんですか、目的地は」
「知らなーい。だって上から何もきてないし」
きてない、というのは指令だろう。ちなみにこれは嘘だ。わたしが懐に入れている携帯電話には、上司から着信が数十件入っている。
そこで、これを見せたらようやく仕事する気になるかな、とふと思った。
「神威さん、これ」
「ん?」
携帯電話の着信履歴を見せようと、彼の視界にマイケータイを入らせた瞬間。
わたしの手から、それが吹っ飛んだ。
「何? ななし」
相変わらずのスマイルで小首をかしげる神威さんに、わたしはゾッとした。それでも、すぐにわたしは怒りに支えてもらうことができ、なんとか彼に呑まれぬよう耐える。
「な、何してんですか…! 上司の指令ですよ?! ていうか連絡とれなくなっちゃったじゃないですかあああ!!」
「えーそうなの? 電話番号くらいちゃんとメモしとかないからだよ、駄目だなあななしは」
「駄目なのはどっちですか?! いくら団長でも」
「いいんだよ」
わたしの怒声を遮った神威さんの声は、ひどく落ち着いたもので。
「あんなものいらない。アンタは俺といれば、それでいい」
「へ……?」
どういう、意味ですか。
そう問うわたしに近づいた神威さんはいつもより大人っぽくて、あのエセ笑顔が引っ込んで無表情。なんだか変だ。
と、思ったら。
「さ、宿に行こうか!」
「なっちょ、わ…ギャアアアアア!!!」
米俵扱いで神威さんに担がれたわたしは、突然地面から離れた。その時に粉々に砕けた携帯電話が目に入る(ああ、まだ一年もしてないのに…)
その間妙な浮遊感の直後ドスンと着地。その瞬間、腹に神威さんの肩が入る。
「ぐえ!!」
「あはははは、面白い顔ー」
「おぼじろぐないッ!!」
さっきまでのシリアスな顔はどこへやら、声をあげて笑う神威さんにわたしは頭を抱えた。
奇跡的に上司の携帯電話番号を書き取っていたメモ帳を発見したわたしは、神威さんがお風呂に入っている間に外へ出た。たとえ神威さんがよくてもわたしがよくない。もしこの旅の中で神威さんに何かあったり春雨に影響があったら、わたしにも責任の追及がくることは必至だからだ。
これまた運良く公衆電話があったので、あたりを確認してからお金を入れる。そして0と9と0と、番号を順々に押していく。そしてつながったところで声を出した。
「もしもし、ななしです」
『てめェ随分と着信シカトこきやがったな、エェおい?』
「すっすいません!!」
ほんとは電話しようと思ったんですけど神威さんに携帯電話壊されました、と白状すると、それまで不機嫌だった上司の声が変わった。
『………それならしょうがねェな』
「え? …は?! なっなん…どうしたんですかそんな、諦めて」
『馬鹿かお前は、団長に逆らえるわけねーだろ。それに団長がそうされたんなら、お前は団長につきあえ』
「えっ…そっそんなあ! わたしはいつまで危険な旅をしなくちゃいけないんですか?!」
『俺が知るか! 大体お前を旅の同行に指名したのは団長ご自身だからな』
「……今なんて言いました?」
『なんだお前、知ら』
ガチャン、と受話器を置く部分が揺れた。
同時に受話器から上司の声が途切れ、「ツー、ツー、ツー」と機械音が耳に入る。
「……………」
「俺に隠れて、密談?」
耳元で神威さんがそう呟く。密談てそんな、いやいや上司に電話してるだけですけど。その一言が言えない。
声が、出ない。
「宿にはなかったから油断してたけどさ、……こんな裏道にあるとはねえ~」
神威さんが電話機に手をかけると、ミシミシとそれがきしんだ。そしてわたしから受話器を取ると、瞬間的な速さでへし折る。
口をぱくぱくさせるわたしの腰を抱き寄せて、神威さんは公衆電話から離れた。
「あ、ああ、あの……かっ神威さん…」
「誰と電話してた?」
「えっ」
「誰と電話してた?」
「上司です…けど」
「本当かなあ。もし違ったら俺困るよ」
「? なんで困るんですか」
腰にある神威さんの手を、力を込めてどかそうと思うけど全くどかせない。ちくしょう、なにげなく置いてるくせに…力が足りない。
「もし違う奴だったら俺、ななしもそいつも殺さなくちゃいけないじゃないか。そんなの、やだからさ」
「……………」
季節外れの冷や汗が、背中を伝った
お前は俺のもの、
だからお前の命も俺のもの。
(なんでとか理不尽だとか言い返すよりも、「本当に上司ですから、上司」と必死で言うわたしは一体なんだ)
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