復活:雲雀(姉さんヒロイン固定)
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「そういえばさ、ななしの弟くんって雲雀恭弥だよね」
「うん、そうだよ」
「その弟くんって、不良さえも恐れる、並盛中の風紀委員長なんだよね」
「うん」
「でさ、すごくシスコンだよね」
「……まあ…うん、若干ね。…何か?」
「いや、気悪くしないでよ。あの、不良にも大人にも恐れられる雲雀恭弥が、姉にベタぼれってことでしょ? …ななしってすごいよね」
「いや、わたしも十分に恐れてますけど」
ひばりねえのまいにち
え、そうなの?と目を丸くする友達。いやいや、君。あの子が姉とその他に対する姿勢をいちいち変えると思いますか? むしろわたしが一番酷い扱いだ。
4時間目が終わった現在、お昼ご飯のお弁当を食べながら、わたしは前の席に座る友達に愚痴をこぼした。ちなみに友達の昼食メニューは食パン一斤といちごジャム。……どこの女の子キャラ?
「いろんな時間を拘束されるわ、ワガママ聞かされるわ、これ買っといてとかパシリにされるわ…てか買っといても何も登下校一緒じゃん!とか思うんだよね」
「わあ…。ちなみにワガママって?」
「色々あるけど……たとえば今朝だって、食パン用意したら普通みそ汁とご飯だろって怒られて。でも、わたしは食パンが食べたいからって弟の分だけみそ汁とご飯出したら今度は、なんで姉さんはみそ汁とご飯じゃないのとすねられ。結局朝はご飯でしたよ、ええ」
「朝から素敵なペアだね。ていうか思ったんだけどさ、いつからシスコンなの?」
いちご牛乳のパックにストローを突き刺し、そこから ちゅう~と吸い上げる友達。あ、美味しそう。
いつから、かあ…。わかんないなあ。首をかしげながら、一生懸命に記憶をたどるけど、よくわからない。
「うーん……。…元々小さい時から二人だったから、お互いに姉弟思いっていうのはあるけど。でも、ああ、この子ちょっとアレかなって思ったきっかけは覚えてる」
確か、わたしが中1の時だ。その日帰り道が同じだったクラスの男子(けして彼氏ではなく単なる友達だ)が「家に遊びに行きたい」と言い出し、わたしはすんなり承諾した。で、ドアを開けて男子を入れたのだ。
「帰れ」
わたしを玄関で出迎え、続いて男子を目にした弟の第一声はそれだった。年下でしょとか、初対面なのにとか、注意するべきことはたくさんあったはずだ。それでも何一つ口にすることができなかったのは、弟があまりにも恐い顔をしていたから。結局硬直したわたしを素通りした弟は、男子を無理矢理押し出して家から追い出したのだった。ちなみにその男子とはいまだに言葉をかわしていない。なんとなく気まずいし弟に「二度とあいつと関わらないで」と釘をさされたのもある。
そこまで聞くと、友達は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべた。で、ですよねー…。
「うわ…小学ん時からそんな嫉妬してたんだ」
「うん。それからだったかなあ、わたしと行動を合わせようとするの」
家でも同じ部屋で過ごし、昔は、休日とかにわたしが黙って散歩に出かけるとすぐに追いかけてきて。…今更だけど、すごい執念だ。
ちなみにそういった「自分が姉に合わせる」ことが次第に「自分に姉が合わせる」ようになったのは、彼が風紀委員長とやらに就任した頃だった。なんというジャイアニズム。
「ふーん。じゃあ、今は黙って散歩しに出たらどうなるの?」
「………」
「…?」
「……考えたことなかった」
「………」
「………」
「…ななしって」
「言わないで」
はい、完璧に支配されてます弟に。やばいよねほんとシスコン止まりじゃないよこれ、そもそもシスコンじゃないよこれ! だってシスコンって「そんなお姉さん(または妹)が好きー!」みたいな、自然体のお姉さん(または妹)にメロメロみたいな、つまり束縛しないんだよね。うちの弟違うもん、わたしが気にくわないことしたらすぐ「ふざけないでよ」って怒るんだよ。
「しかもこの間なんかさ、なんでこんなにカッコいいのに彼女できないのかなって言ったら、返ってきた台詞が『いらない』だって!」
「ちょっあんたやばくない? 狙われてない?!」
「あはは、いやいやそれはないよ」
お茶をぐびぐび飲むと、わたしは自信たっぷりに言い放った。うん、大丈夫それはない。だって弟は確かにジャイアンだしワガママだし自分勝手(あれ、全部同じ?)ではあるけど、並盛中を守る風紀委員長なのだ。その風紀を守る第一の人が自分の姉に手を出すなんて、絶対に有り得ない。時々ギャア!と思う時もあるけど、未遂だし。
「……じゃあ聞くけどさ」
「何?」
いちごジャムを食パンにまんべんなく塗りたくりながら、友達は聞いた。
「もし弟が風紀委員辞めたらどうなるの?」
「……………」
…………………………。
「……いや、でも…」
「…世の中にはいろんな人がいるからね」
「…え、ちょ。うちの弟がそれだとでも?!」
「別にそうは言ってないけど」
「違うよ、うちの弟は単なるシスコンだから、シスコンにジャイアニズムが折り重なってるだけだから、あれ絶対家族愛だから姉弟愛!」
「わかった、わたしが悪かった、ごめん」
「大変! 大変だよななしさん!」
突然 家に駆けつけてきたのは沢田くんで、紙を握りしめていた。
「どうしたの沢田くん」
「ヒバリさんとななしさんって血のつながった姉弟じゃなかったんだ!!」
な……な…なんだとおおおおおおお!!!!!
「なっ何言ってんの?! 思いきり姉弟だよわたしと恭弥くんは」
沢田くんはその紙をほら、と見せつけてきたけど、何も書いてない。何? 何が言いたいの沢田くんは。
「ここにあるじゃないですか、ヒバリさんは拾われてななしさんの家族になったって!」
「は?!!」
おっおおおお弟が、ひ、ひろわれた!? そんなこと一言も聞いてないんですけど!! あれっさっきまで何も書いてなかったのに今見たら書いてあるし!
その時、後ろから肩をつかまれわたしは強制的に振り返るかたちになった。そこにいたのはその本人で、微笑んでいて、
「良かったねななし、僕ら姉と弟じゃなかったんだ」
「(呼び捨て?!)え、ち、ちが…!」
いつの間にか家ではなく教会にいるわたしと弟は、お互い白い衣装を身にまとっていていた。これは一般的にウエディングなんたらと呼ばれているものだ。ポカンとしている間にわたしは弟にズルズルと引きずられるようにして、神父さんのところへ歩まされていく。
「もう障害はなくなったね」
「ちょ……!! まっま………
待ってーーーーーー!!!!!」
とにかく暴れなくちゃ、大声出さなくちゃ、というところで、無意識に宙に向かって突き出したはずの両手がガシッと掴まれた。その熱い感触に目がくわっと開く。…え。目が開く?
「………姉さん?」
ソファに寝転がっていたわたしは、足があちこちに投げ出され、両手はばんざいの状態で弟に掴まれていた。テレビは「どっきり結婚式」の番組をしている。………こ、
「(これかーーーーー!)」
なんという夢オチ。学校での友達との会話とこのテレビ番組がごっちゃになってあんな夢見ちゃったんだ。でも良かった。弟が自分を姉さんと呼んでくれていることがこんなにホッとするものだとは思わなかったよ。
「随分うなされてたけど、どうかした?」
「ううん、…ちょっと夢がおかしかったから」
「ふーん」
大した詮索をすることなく、弟は両手を離した。それに再び胸をなでおろし、ソファに座り直す。聞かれて答えたらそれこそ危ない。それにしてもバカだなわたし、テレビが聞こえてたとはいえあんなコラボした夢を見るなんて。第一、血がつながってようがなかようが、弟は弟に変わりはないんだ。
「恭弥くん恭弥くん」
「何?」
「わたしって恭弥くんのお姉さんだよね」
「……」
いきなり何言ってんの、と怪訝そうな表情を浮かべる弟に、苦笑いをしながらわたしは「だからね」と手をひらひら振った。
「たとえばの話だよ? もし、わたしと恭弥くんが血がつながってなくて…だからたとえば戸籍上姉弟じゃなくても、一緒に暮らしてたらわたしは恭弥くんのお姉さんだよね?」
「何言ってんの、そんなわけないでしょ」
お、おおお?!! 即答されたぞ!? しかも否定! すごいショックなんですけど!!! 脳内に雷が落ちた感じがした…!
「そ、そんな…!」
「血がつながってないなら姉さんは姉さんじゃないよ」
「ええー…ひどい」
「……じゃあ僕もたとえ話をしよう」
わたしの隣に腰をおろすと、弟はあくびをしつつ言った。
「もし姉さんが『姉さん』じゃなかったら、僕は姉さんをななしと呼んで、今すぐ押し倒してみせるよ」
た と え 話 で 良 か っ た ! !
本当に良かった!!!
ませてるとかいう問題じゃないうちの弟
「…あ、はは…ちょっと今になって寝汗酷いからお風呂入ってくるねウン」