銀魂:沖田
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沖田隊長の部屋の前を通った直後首根っこをグンとつかまれ、「ぎゅえ」としわがれた声を出しながら、わたしは畳の上に尻餅をついた。
「な、に…」
ゴホゴホとむせながら、目の前でふすまを閉める沖田隊長を睨みあげる。日頃からこの人は妙にわたしに対して暴力的だけど、今のはさすがに酷い。
けれど沖田隊長はわたしの恨みがましい目つきをサラ~リと流し(ちっくしょう!)腰に差してある刀に手をかけた。
「……? 沖」
瞬時に引き抜くと、わたしの真横にドスッと突き刺した。
それは畳についた手のひらから約5センチ離れた場所で、深く刺さっている。その現状を理解した瞬間、わたしは畳の上をすべるように素早く沖田隊長と刀から離れた。そしてふすまは隊長の背中側なので、逆側の障子から出て行こうと立ち上がる。
すると目の前を、さきほど畳を刺したあの刀が通過した。生唾を飲み込みながら、障子の木の部分にカッ!と鋭い音を立てて突き刺さる刀がきらめいたのを確認する。
わたし、ころされる。
「逃げんな」
いや、これで逃げんなと言われましても!!
わたしは自信をもっていえる、沖田隊長を恨みはしても恨まれることは何一つしちゃいない。
障子から飛び出すことができないまま立ちすくむわたしに沖田隊長は一歩一歩ゆっくり近付きながら、口を開いた。
「ななしにお尋ねしまーす。今どんな心境ですかィ」
「……最悪です。なんでこんな目にあってるんですかわたし」
「ドキドキしてねェ?」
「もう心臓バックバクです破裂しそうです」
「マジでか」
にやりと笑うと、沖田隊長は刀を障子から抜いた。もうわけがわからなくて、腰の力が抜けてしまったわたしは、その場にへたりこんでしまった。
そのまま刀を手にさげながら、沖田隊長はわたしを見下ろした。
「俺のことどう思いやす?」
「………た、隊長のことです…か…?」
「うん」
どくんどくんどくんどくん、そう心臓が波打つのが耳に木霊している。まるで屯所内を全速力で走った時みたいに鼓動が早い。でも、誰だって刀を手にした男を(しかもこの人はプロだ)目の前にすれば、生きる気がしない。
ここでもし沖田隊長の機嫌を損ねたら、わたしは120%死ぬ。斬られるか刺されるか。どちらにしろ刀のサビってやつだ。
「や…さしい人、だと」
「それで?」
「(それで?!)あ…あー……頼りがいが…ある…?」
「…それで?」
「えっと…あっ、すごく強いです」
「それで」
だんだん沖田隊長の声に冷たさが宿るのがわかった。
ええええなんなんだよこの人は!
刀を鞘におさめたのにはホッとしたけど、今度はその鞘を立てて、畳をドスッと突き出した。
「それで……って、えと」
ドスッ。ドスッ。ドスッ。
「……………」
ドスッ。ドスッ。ドスッ。
「ななし、黙ってちゃなんにもわかんねーぜ」
「(アンタの場合喋ってもわかんねーよ!!)」
畳のその一部分がどんどん凹むのを数十秒後の自分とだぶらせながら、わたしはごくりと喉を鳴らした。沖田隊長が喜ぶ台詞、喜ぶ台詞、喜ぶ台詞!
「す、すてきだとおもいます」
「なにが」
一蹴。
「かっこいいです」
「だからなにが」
さらに一蹴。
そしてドスッ、ドスッ、と耳に入る恐怖のSE。
とうとうわたしは、心にも思ってないことを口にすることにした。
「いい人だと思いますっ」
「…誰が?」
「た、隊長が…」
「その『いいひと』ってェのは、どういう意味なんでィ?」
「い、意味…? それはつまり、いい人だから……………………………す、き…なんじゃないですかね」
「『ですかね?』」
「(ひいいいい)いえいえ、すきです!」
言っておくがわたしの今の好きというのもいい人というのもLIKEだ。断じてLOVEではない。だってわたしが想いを寄せているのは山崎さんなのだ。ちなみに、今の状況でよくある「お前に殺されるなら構わない」とかよくラブシーンであるけど、わたしは沖田隊長に殺されるのはぜっっっったいに嫌だ!!! 絶対えぐい死に方すること必至だし。山崎さんはまずこんなことしない。
ところが沖田隊長は、それを聞いた途端ニヤッと笑った。「へーえ、そ~なんだァ」と妙にねばねばした口調で言う。
そしてスピーカーをどこからか取りだして、沖田隊長はわたしを放置したまま部屋を飛び出した。
「……な、んなの、ほんと…………!」
でも………とりあえず、助かった。あの武器もあのジャイアンもこの部屋にはいないのだ、今まで大あわてだった心臓をなんとか落ち着かせ、深呼吸する。
決めた、もう沖田隊長には関わらないでおこう。洗濯物も山崎さんに任せよう、何かあったら局長や副長に駆けつけよう。あっでもなあ、局長はいいけど副長は沖田隊長の次に怖いからなあ………。
そう考えていたわたしの思考回路を見事にさえぎったのは、
『よォ山崎! 本日午後2時34分51秒、ななしさんに告白されちまったぜィ』
あのS大魔王の、スピーカーにより大音量になったノイズだった。
逆転バイオレンス
(ちょっと~聞いたよななしちゃん、隊長に告白したなんて! 勇気あるねェ)
(ちっ違います!!!!! 山崎さん待ってェェ!)