番外(幼児時代/3Z設定あり)
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「失礼します。銀ちゃ、」
弾んだ声でかけられたはずの名前は、慌てた様子でぐっと押さえ込まれた。
「先生!」
「……なに」
呼ばれた男は、相変わらずのだるっだるな表情をななしに向ける。
不服であるがゆえの沈黙を持ってきたが、それを一切気にしない彼女はにこにこと職員室に入ってきた。
その反応に、勝手に一人で傷つく銀髪教師。
しかしななしが持っていた箱を見ると、本能からか鼻をひくひくさせた。
「なんだそれ。爆弾でも入ってんの?」
「もう、なんでそうなるの。お弁当だよ。まともなごはん食べれてないんじゃないかなと思って」
「ハァ……お前な、せっかく青春真っ盛りの女子高生になってんだからさァ。いちいち俺のメシなんざ用意しなくていいっつーの」
「え? そうなの? ごめんねえ、最近銀ちゃんが元気ないから気になっちゃって」
「……まあ、これはもらっておくけどよ」
心配だから、と眉を八の字にするななしの姿に、内心は大喜びの銀八だったが、あくまでもクールに装うことに努める。
咳払いをして、気を取り直すとlななしの手から弁当箱を受け取――るつもりだった。
「「え」」
パッ、とマジックのように消えた。
もちろん、弁当箱が、である。
ななしは目を白黒させながら、床に落としてしまったのかと思ってあたりを見回したが、見つからない。
直後、高笑いがどこからか響いてきた。
「御安心くださいお義母様ァ! 弁当作りが許されるならば、先生のお昼はアタシの役目ですから!」
「あっ!?」
犯人は、天井から顔だけひょっこりと登場していた。
きれいな長髪にクモの巣が張り付いている。
銀八先生の公式ストーカーであるさっちゃんだ。
右手には愛用のムチ、そして逆のにはななしが用意した弁当箱が握られている。
銀八はすぐに状況を察した。
ズバビシイィッ!!と人差し指を、犯人がいる空に向かって突き出した。
「おいィッ学生なんだからそーゆー技すんな! つーか、返せや俺の弁当ォ!!」
「安心してください先生、お義母様のお弁当は私が責任を持って頂きますから!」
「どこが安心?! お前がただ満腹になるだけじゃん!」
「先生の分はこの、さっちゃん特製の特製納豆べんと……アッ」
ななしの作った弁当を片手に、もう片方の手には桃色のハート型の弁当箱を取り出したさっちゃんだったが、中に入れていた納豆のネバネバが箱の外部にもついていたようだった。それにともない、手を滑らせてしまう。
落下していくそれを救出すべく、焦って天井から飛び出す。
無事(自称)愛妻弁当をキャッチしたさっちゃんだったが、とある教師の机に着地しようとした際、机上にちらばっていた痔の薬たち(チューブ型)を勢いよく踏みつけたことで足をすべらせた。
きゅるん、ゴンッ!!
鈍い音を立てた彼女は、そのまま机の上に倒れ、動きを止めた。
「………」
「………あ、あやめちゃん……?」
おそるおそる声をかけるが、相手から返事が返ってくることはない。
どうしよう、とそわそわするななしをよそに、銀八はのんびりとした足取りで女子生徒に近寄る。
力の抜けたその手からは、ななしの弁当箱が解放されていた。それが今度こそ、本来渡されるべき人物に収まる。
「あやめちゃーん!! あやめちゃァァァん!」
「……う、うーん……」
ななしの呼びかけに、眉をひそめてうなるさっちゃん。耳元で叫ばれたら、誰でもそうなる。
うるせーなァ、とかわりに銀八がななしを制止した。
「ほら、死んでねーから大丈夫だって」
「う、うん、よかった……!」
胸をなでおろし、安堵感から力なく微笑む。
彼女の(うるさいくらいの)優しさに、つられて彼も口元をゆるめる。
「そんじゃ、ありがたくいただきますかね」
「うん、どうぞ」
ようやくありつくことのできる昼食に、心なしか教師の目が輝く。
弁当箱のふたを開け、
「あ」
「えっ」
見事にぐちゃぐちゃになっていたそれは、お米もおかずも入り乱れての状態になっていた。
二人そろって「なぜ」と疑問に持ち、さっちゃんの持ち方を思い出して「ああ」と納得した。
納得はしたが、それでも整理はつかないものだ。
「せっかく作ったんだけど……ごめんねえ先生、これは食べられないから」
持って帰るね、と弁当箱に手をのばすななし。
その手から、さっと逃げた銀八は、黙って箸を持ち、カカカカッと勢いよく中を口にほうばった。
まるで運動部に所属している男子学生のごとく、よほど腹がすいていたのか、たちまち弁当箱を空にしていく。
「えっ、ええ?! ちょっと、そんな急に食べたら……」
制止も聞かず、やがて男は完食した。
もっもっ、と口をいっぱいに動かし、弁当箱を無言で返す。
受け取ったななしは、銀八が口を開けるまで、おろおろと見守るしかない。
「………ップハァ、食った食った。ごっそーさん」
「あ、うん。おそまつさま、……って、大丈夫?」
「何が?」
「だ、だって、中身が……味とか……」
後が言いづらいのか、口ごもってしまった。
それを見た銀八は、耳の穴を小指でほじりながら述べた。
「あー、うまかったぜ。はりつけのときのゾロになった気分だわ」
「(ぞろ?)ほ、本当? おいしかったなら、よか……」
「それに、腹ん中入るときゃー一緒だろ」
「もっもう! 先生!」
作った側の苦労も知らないで、とななしが反論する。
しかし、彼女は心中知っている。
彼なりの褒め言葉で、照れ隠しであることを。
それが嬉しくて、つい笑ってしまうのだった。
幸福論
本当の幸せを探した結果
弾んだ声でかけられたはずの名前は、慌てた様子でぐっと押さえ込まれた。
「先生!」
「……なに」
呼ばれた男は、相変わらずのだるっだるな表情をななしに向ける。
不服であるがゆえの沈黙を持ってきたが、それを一切気にしない彼女はにこにこと職員室に入ってきた。
その反応に、勝手に一人で傷つく銀髪教師。
しかしななしが持っていた箱を見ると、本能からか鼻をひくひくさせた。
「なんだそれ。爆弾でも入ってんの?」
「もう、なんでそうなるの。お弁当だよ。まともなごはん食べれてないんじゃないかなと思って」
「ハァ……お前な、せっかく青春真っ盛りの女子高生になってんだからさァ。いちいち俺のメシなんざ用意しなくていいっつーの」
「え? そうなの? ごめんねえ、最近銀ちゃんが元気ないから気になっちゃって」
「……まあ、これはもらっておくけどよ」
心配だから、と眉を八の字にするななしの姿に、内心は大喜びの銀八だったが、あくまでもクールに装うことに努める。
咳払いをして、気を取り直すとlななしの手から弁当箱を受け取――るつもりだった。
「「え」」
パッ、とマジックのように消えた。
もちろん、弁当箱が、である。
ななしは目を白黒させながら、床に落としてしまったのかと思ってあたりを見回したが、見つからない。
直後、高笑いがどこからか響いてきた。
「御安心くださいお義母様ァ! 弁当作りが許されるならば、先生のお昼はアタシの役目ですから!」
「あっ!?」
犯人は、天井から顔だけひょっこりと登場していた。
きれいな長髪にクモの巣が張り付いている。
銀八先生の公式ストーカーであるさっちゃんだ。
右手には愛用のムチ、そして逆のにはななしが用意した弁当箱が握られている。
銀八はすぐに状況を察した。
ズバビシイィッ!!と人差し指を、犯人がいる空に向かって突き出した。
「おいィッ学生なんだからそーゆー技すんな! つーか、返せや俺の弁当ォ!!」
「安心してください先生、お義母様のお弁当は私が責任を持って頂きますから!」
「どこが安心?! お前がただ満腹になるだけじゃん!」
「先生の分はこの、さっちゃん特製の特製納豆べんと……アッ」
ななしの作った弁当を片手に、もう片方の手には桃色のハート型の弁当箱を取り出したさっちゃんだったが、中に入れていた納豆のネバネバが箱の外部にもついていたようだった。それにともない、手を滑らせてしまう。
落下していくそれを救出すべく、焦って天井から飛び出す。
無事(自称)愛妻弁当をキャッチしたさっちゃんだったが、とある教師の机に着地しようとした際、机上にちらばっていた痔の薬たち(チューブ型)を勢いよく踏みつけたことで足をすべらせた。
きゅるん、ゴンッ!!
鈍い音を立てた彼女は、そのまま机の上に倒れ、動きを止めた。
「………」
「………あ、あやめちゃん……?」
おそるおそる声をかけるが、相手から返事が返ってくることはない。
どうしよう、とそわそわするななしをよそに、銀八はのんびりとした足取りで女子生徒に近寄る。
力の抜けたその手からは、ななしの弁当箱が解放されていた。それが今度こそ、本来渡されるべき人物に収まる。
「あやめちゃーん!! あやめちゃァァァん!」
「……う、うーん……」
ななしの呼びかけに、眉をひそめてうなるさっちゃん。耳元で叫ばれたら、誰でもそうなる。
うるせーなァ、とかわりに銀八がななしを制止した。
「ほら、死んでねーから大丈夫だって」
「う、うん、よかった……!」
胸をなでおろし、安堵感から力なく微笑む。
彼女の(うるさいくらいの)優しさに、つられて彼も口元をゆるめる。
「そんじゃ、ありがたくいただきますかね」
「うん、どうぞ」
ようやくありつくことのできる昼食に、心なしか教師の目が輝く。
弁当箱のふたを開け、
「あ」
「えっ」
見事にぐちゃぐちゃになっていたそれは、お米もおかずも入り乱れての状態になっていた。
二人そろって「なぜ」と疑問に持ち、さっちゃんの持ち方を思い出して「ああ」と納得した。
納得はしたが、それでも整理はつかないものだ。
「せっかく作ったんだけど……ごめんねえ先生、これは食べられないから」
持って帰るね、と弁当箱に手をのばすななし。
その手から、さっと逃げた銀八は、黙って箸を持ち、カカカカッと勢いよく中を口にほうばった。
まるで運動部に所属している男子学生のごとく、よほど腹がすいていたのか、たちまち弁当箱を空にしていく。
「えっ、ええ?! ちょっと、そんな急に食べたら……」
制止も聞かず、やがて男は完食した。
もっもっ、と口をいっぱいに動かし、弁当箱を無言で返す。
受け取ったななしは、銀八が口を開けるまで、おろおろと見守るしかない。
「………ップハァ、食った食った。ごっそーさん」
「あ、うん。おそまつさま、……って、大丈夫?」
「何が?」
「だ、だって、中身が……味とか……」
後が言いづらいのか、口ごもってしまった。
それを見た銀八は、耳の穴を小指でほじりながら述べた。
「あー、うまかったぜ。はりつけのときのゾロになった気分だわ」
「(ぞろ?)ほ、本当? おいしかったなら、よか……」
「それに、腹ん中入るときゃー一緒だろ」
「もっもう! 先生!」
作った側の苦労も知らないで、とななしが反論する。
しかし、彼女は心中知っている。
彼なりの褒め言葉で、照れ隠しであることを。
それが嬉しくて、つい笑ってしまうのだった。
幸福論
本当の幸せを探した結果
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