本編
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8月も終わりに近付いてきた日、僕はいつも通り万事屋にやって来た。
朝だからまだ涼しい、けどこれからどんどん暑くなるのかと思うと気が重い。こんな暑い日に限って、外の調査とかあったりするんだよなー。まあ、仕事がなくて暑い事務所でゴロゴロするよりはお金も入るしマシだけど。
手に持った袋を見下ろす。今日はおみやげ付きだ。姉上から「阿音ちゃんにもらったんだけど怪しいから万事屋さんに」と押しつけられた、おまんじゅう。あの姉上が敵対視する相手だから、このまんじゅうにはカラシ入りだのワサビ入りだのが入ってるんだろう。
「おはようございまーす」
ガラガラと扉をどかして玄関に足を踏み入れる。ここで大体、ななしさんがわざわざ来て「おはよう、暑い中大変だねえ」とニコニコしながら迎えてくれる。
そして「新八くん」と玄関にやって来た人物は、……二人(ええ!?)
さっちゃんさんじゃないか!!
「新八くん、おはよう。今日もお疲れ様」
「ああ、おはようございます。えっとこれ、姉上から」
「まあお饅頭! ありがとう!」
もらった箱を開け、すごく嬉しそうに笑うななしさんを見て、罪悪感という苦しみが襲いかかる。ななしさんには、割った方がいいと指示しよう(後の奴らはどうなってもいい)
「お姉さんにお礼言っておかなくちゃ。新八くん、今度万事屋にお姉さんも誘っておいでね」
「はい、わかりました」
そういえば姉上も、ななしさんに興味あるみたいだったし。夜の仕事が休みの翌日なら疲れてないだろうから、言ってみよう。
そう思いながら「お邪魔します」と床に足をつけた、その時。
「お義母さま、私がお持ちします」
「あら、気がきくねえ。ありがとう」
……………え。
「あの……さっちゃんさん? お義母さまって……」
「当たり前でしょ、未来のお義母さまなんだから」
「だァからちげーーーーってんだろォォォォォォオオ!!!」
あ、銀さんきた。どうやら今日は、今までの朝とは違うみたいだ。
ていうか、部屋に入らせてほしいんだけど。僕まだ片方の草履脱いでないしね。
「俺はこいつを母親なんて認めちゃいねーよ! つかオメーも嫁じゃねーだろ、帰れ」
「フフ、銀さんったらいつまでそんな妄想抱いてるのかしら。そりゃあ夫婦よりも彼女彼氏だった方がドラマチックでドキドキしちゃうけど、でもね、現実を見て」
「現実見るのお前だから!! 妄想抱いてる奴に妄想疑われるのすっげー腹立つから!!! おいななし、お前母親ぶんのは俺以外の奴にしろ」
「銀ちゃん、昔も素っ気なかったけど今も素っ気ないのね。少しは親孝行してくれたっていいじゃない、お母さん傷ついたよ」
「銀さん、家族にまでサドなんて……! お願いだからお義母さまはいじめないで、いじめるなら私にしてちょうだい!!」
「あああああまじで面倒くせェこの展開!! 新八、お前なんかやれ!」
「僕にふらないでください。だいたいアンタがはっきり言えばいいんでしょーが、何もかも」
銀さんがななしさんを「オカン」ではなく「女性」として見てるのは百も承知だ。それを言えばいいのに、銀さんはなぜかそれを言わないし言葉が乱暴だから、ななしさんはそれを素直に受け取ってさっきみたいにショックを受ける。
僕だってやってらんないよ、こんな展開。やきもきさせるなあ、本当。
「さっちゃん、貴方本当にいい子だね。こんな乱暴な息子なのに、見放さないなんて」
「当たり前ですお義母さま、私そんな銀さんだからついて行こうって決めたんです」
「おーい、なんだこの雰囲気。明らかに家族じゃね? 俺ぜってーこんな家庭やだからな、ぶっ壊すから!!」
「銀さん、神楽ちゃんは?」
「近所のガキんとこ遊びに行った。カブト狩り飽きたから虫狩りすんだと」
「……神楽ちゃんがいなくて良かったスね」
「思った」
あれから、さっちゃんさんは仕事が入ったからと帰った。それに僕等(勿論僕と銀さんだ)はホッとし、ななしさんは残念そうだった。
そしていつも通りの時間が始まる。朝食をいただいて、ななしさんは洗濯物を持って外に出た。僕はその間にテレビを見てニュースをチェックし、銀さんは特等席に座ってジャンプを読んでいる。
「銀さん、どうして朝っぱらからさっちゃんさんが来たんですか?」
「俺に女ができたとかそんな話を聞きつけて文字通り飛んできたらまた屋根から落下したらしいよ」
「らしいよ、って、それ思いきり事実じゃないですか。銀さんの部屋でしょ?」
「いや、ななしの部屋」
「最初は驚いたよ、上から女の子が落ちてくるんだもの」
干し終わったのか、ななしさんがかごを持って会話に参加してきた。ちょうどいい、この人から話を聞いたほうがわかりやすそうだ。
「さっちゃんさん、やっぱ文句言いまくったでしょ」
「うん。私は起きたばかりであまり聞こえなかったんだけど、最後に『銀さんとどういう関係なの』って聞かれたから、お母さんですって言ったの」
「……それで、『お義母さま』ですか」
「普通、お母さんなんて言わないよね。ほんとお前の脳みそおかしくね?(彼女とか冗談でも言えばいいのに!!)」
「本当の事なんだからいいでしょ!」
そりゃ、媚び売ろうとするわけだ。
納得した僕は、銀さんがイライラした顔でななしさんを見ている事に気づいた。
「あの子、本当に面白い子だねー。それにお尻も大きいし、丈夫な子産めそうだよ」
「おい、お前はどこを見てんだ。オヤジか、おふくろついでにオヤジもつとめてんのか」
「やだ、全国のお母さんはみんな 嫁に安産してほしいと願うものなんだよ」
「俺はあいつの子は産まねーからな。つか何、いい加減俺の母役降りてくんねー? じゃねーと次のステップ進めないんだけど」
「(すてっぷ?)やだよ。昔も今も、銀ちゃんは私の大切な息子なんだから。ヅラちゃんも晋ちゃんもだけど」
きっぱりと宣言するななしさんに、銀さんはなんだか泣きたそうな怒鳴りたそうな、複雑な表情をした。
★新八視点は楽しい