本編2
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
そういえば前にもこんなことあったっけ。ああそうだ、いつきちゃんの時。あの時も政宗さんにお客さんをお連れして、
「Go away.」
「まさかのテイク2?!」
なんて人だ、お客さんの目の前でドメスティックバイオレンスなんて!
「家庭裁判所に泣きついてやる!」と泣き崩れるわたしを素敵に無視した政宗さん(まあわかってるけどねそうリアクションされるの)は前田さんに気づき、ヒュウと口笛をふいた。
「前田の風来坊じゃねぇか。…あん時ァ随分と世話になったな」
「は…はは、まあな! まあ昔の話は掘り返さないほうがいいよ、まだあんたわけーんだし!」
ん? ちょっと汗ダラダラじゃない? なんだかよくわかんないけど、前田さんって前にも奥州に来たことあったってことかな? わたしが座り込んだままポカンとしていると、目があった前田さんに腕をひっ掴まれ一気に起こされた。なんと力強い、男らしい! そして前田さんに背中をドンとおされ、ゲホゲホとむせた。…この人、男らしいとかじゃなくて単に手加減知らないんじゃないの?!
「まあ今日はそういうつもりで来たわけじゃねーんだ、ちょっと観光も兼ねててさ。あんたらの邪魔する気はないから、な!」
「Ha,どうだかねェ」
「???」
どうやら政宗さんは前田さんに何か恨み、というか、なんだか警戒心を抱いてるみたいだ。ああ、そういうことか。
「政宗さんってばそんなに心配しなくても、わたしは一生政宗さんのものですよ☆ なんなら今夜にでもよば」
「おい ついでにそいつも部屋から出してくれ」
「すいませんでしたァァァア!!! あのっ違うんです! この間のデレデレ政宗さんになってほしかったが為に調子に乗ってみたんです、決して軽い女じゃないんです!! わたしの心臓は朝から晩まで政宗さんの為に動いてるようなものなんです! あっいやそこまで重い女でもないんで! ほんと! だから捨てないでください!!」
「何一人で興奮してんだ、アンタは」
お客さんの前で女性に暴言を吐く政宗さんも政宗さんだけど、お客さんの前で土下座をするわたしもどうかと思う。そう他人事のように思ったけど、とりあえず黙っておいた。
そんな中、前田さんが眉をひそめて不満そうに政宗さんを見ていた。
「……おいおい独眼竜、いくら自分の女だからって乱暴にしちゃあまずいよ。まあそれ以前に、女に土下座させることが駄目だけどな」
「そうですよね! さすが前田さん、久々に出会った常識そうな人!」
「それにあんたもあんただぜ、ななし。本当に相手のことを思ってんなら、下に出っぱなしもよくねえ。たまにはガツンと言ってやんなきゃ!」
「!? は、はい…」
まさかこの外見で恋愛マスター?! でも嬉しいな、こうやってアドバイスくれるなんて。わたしの周りにいる方々は大体が邪魔したり一蹴したり鼻で笑う人ばっかりだから…! あれっろくなやついないな。
前田さんへの信頼感が募っていくわたし。…に、突如 筆を投げつけた政宗さん(いってー!)の「chatなら外でやってくれ」という言葉に、わたしと前田さんは素直に従うしかなかったのだった。だってめっさ怖い顔してたんだもん。疲れてるのかな。
「なんかすいませんね、なんのおもてなしもできなくて」
「ははっあんたが気にすることじゃないよ。すっかり奥州の妻だな」
「えへ、やっぱそう思います?」
「思う思う」
にこにこしながら断言する前田さんにわたし、涙が出そうです! もういっそのこと奥州に住んだらどうかな。政宗さんとわたしが倦怠期に突入しても前田さんの励ましがあったら絶対乗り越えられそうな気がする。ていうかまず倦怠期にいかないしね、フフン。毎日刺激的だし? 政宗さんはわたしにふぉーりんらぶだし?
「いやあわたしってば幸せすぎて困っちゃうなあ!」
「ははっ! あんた見てると楽しくてしょうがねーや!」
わたしのアホなテンションが前田さんにもうつったらしく、頭をつかまれるとガシガシかき回された。それでも不快に感じないのは、前田さんが本当に楽しく笑っていて、ていうかどう見てもカッコイイからですスイマセン。なんだこの時代、わたしのいる時代よりイケメン多すぎだぞ、自重せよ!!(いや嘘です、ほんとはもっと出てきてほしいです) それにしても政宗さんは結局前田さんについて何も問わなかった。せっかく今ちょうテンション高いし、多分たいした理由でもなさそうだから(敵討ちとかそんなシリアスな理由だったらわたし既に人質だもんね)聞いてみよう。
「ていうか今更なんですけど。なんで前田さんは奥州にきたんですか?」
「ん? なんでかって?」
もったいぶるように聞き返す前田さんに、わたしは思わずごくりとつばを飲み込んだ。まさかこの後なんかの怪談のオチみたいに「お前を殺す為さーーーーー!!!」…とか言って襲いかかってこないだろうか。……初対面の時から気になっていた、後ろに背負っている武器が妙にギラギラと太陽の光を反射しているのは気のせいだろうか。
「別に理由なんてないよ。なんとなーくここに来たくなって、ふらついただけだ」
「え? そうなんですか?」
ということは、流浪人ってことなんだろうか。流浪人にしてはど派手な服着てるけど(この服の趣味、猿飛さん系?) 明らかにどっかのお坊ちゃんと誤解をうけて山賊に身ぐるみはがされてもおかしくない、と思う。それでも今こうやってわたしの目の前で小猿ちゃんと戯れてるのはそれなりに強いからかな? ま、一番強いのはうちの政宗だけどね?!
「んじゃ、俺は行くとすっかね」
「え?! もういっちゃうんですか?!!」
「ああ。独眼竜に会うっていう目的は果たしたし、今は一カ所に留まってるとやべーんだ」
「?」
なんだ、そのセリフ。はっ、まさか前田さん、誰かに命狙われてるとか!? あり得る、現代ならまだしも今はこの乱世、さっきまで話してた人が「親の仇ィ!」だの「天誅ゥ!」だの、刀を振り回すなんていうのはよくある、………と思う。少なくとも確率は高いよね、よくあるもんそういう展開。
わたしの表情を読みとったのか、それとも単なる話し好きなのか、前田さんはハッハと豪快に笑うと「んな深刻な事じゃないって」と手をひらひら振った。
「とにかく、今の俺は放浪者だ。誰かに仕える気も、誰かの上に立とうって気もない奴ってね。こんなのに付き合ってたらななしも大変だぜ? だから早く城へ帰んな」
「か、帰れって……言われても」
わたしの足が、なかなかきびすを返さない。前田さんはこんな時でもカラカラと笑うけど、わたしはつられて笑えなかった。こんな中途半端なままでさよならしていいんだろうか。それに前田さんは各地を転々としてる、つまり居場所が定まってないから会おうとしても会えない確率のほうが高い。もしかしたら一生会えないかもしれない。
変だな、わたしって今まで人との出会いをこんなに大事にする奴だっけ? ……いや、そんな奴じゃないはず。それでもこんなに寂しい気分になるのは、多分この時代に来てから、人と人のつながりがどれだけ大切なのか、ちょっとした出会いがどれだけ大事なのかがわかるようになったから、かもしれない。でも、元々この厳しい世の中で生きている人……政宗さんや小十郎さん、そして前田さんはそんなこと当たり前なはずだ。だからこそ、わたしが渋ることに首をかしげている。
「…お、おいおい…どうしたんだななし、ものっすごい暗い顔してるぞ」
「だって…! 前田さんが帰れって言ったんじゃないですか…」
「え、あ、うん…。………それ関係ある?」
「ありますよっ。誰だって、友達との別れはさみしいでしょ」
そうやって半ば愚痴のようにこぼしたその一言は、前田さんからすればとんでもない台詞だったようで。きょとんとした後、「まいったね」と頭をかく。
「アンタみたいな面白いの、久々に見たけど、アンタほどのいい人も、久々に見たよ。…ありがとな、俺と友達になってくれて」
そうやってお礼を言われては、今度はわたしがまいってしまう。これでもわたしが引き下がらなかったら、かえって前田さんが迷惑だろう。足止めをすることをあきらめたわたしは、精一杯の笑顔を浮かべることにした。
「……えへへ…! 感謝するくらいならまた遊びに来てくださいよ。わたし待ってますから」
「んー、そうだな」
わたしをジッと見つめると、前田さんは何か考えごとをするように、あごに手を添えた。そしてややあって、「うん!」と頷いて、一言、
「出発するの、やーめた! てなわけで、もうちょっと厄介になるよ、ななし」
「……へ?」
先生、彼の変化についてけまっせん!
久々すぎて口調とか色々アレすぎる…!