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「ななし」
「はい、なんでしょう政宗さん!」
「しばらく俺の部屋に来るな」
「!!!!!!!!」
それは、突然のことだった。超ド級の雷を脳天から足まで貫通するほどの衝撃をうけたわたしが動けないことをいいことに、足早に去る政宗さん。あの顔、すごい真剣だった……本気だ…。どんどん遠くなる後ろ姿を見ていると、涙がボロボロとあふれてきた。
あわばばばなんでだ、わたし何かしたかな…やばい、思いきり心当たりがありすぎる。政宗さんの布団引っ張り出して匂いかいだのバレたのか、それとも座布団に顔うずめて絶叫したのがバレたのか。どちらにしろこれまでの変態行為が、ついに政宗さんの怒りの頂点をぶち抜いたことは確かだった。
それから一週間、政宗さんはほとんど部屋で過ごした。前のように鍛錬をしに出て行くこともなく、食事も広間じゃなくて自室。この異常なほどのヒッキーぶりに、さすがの兵士さんたちも動揺している。でもわたしから事実を言えるわけもなく、「何か知ってます?」と聞かれても曖昧に誤魔化しておいた。
そんな日々をさらに一週間続けていた、本日のわたし。
「アァ…ああぁぁぁぁ………」
「おはようご…うわァッ、姐さん?! いったいどうしたんスか、その顔…! 何か怪物に血肉吸われたような、とにかく おぞましいッスよ!! 俺心配なんスけど」
「それ…心配じゃなくて…失礼な発言でしかないです……」
足もとがおぼつかない。あれっていうかわたしまだ生きてたんだ~ウフフ、政宗さんの姿も見てないし声も聞いてないし匂いもかいでないから生きてる気しないわ~ウフフ。きっと端から見ればゾンビのような状態に違いない。こんなことになるなら、いっそのこと現代に帰ったままで良かった…ッ!
目の前で引きつった顔をする出っ歯さんをボンヤリ眺めていると、その顔が徐々にぼやけていった。あ…あれ? なんか見知った…すごく、ものすんごく懐かしい顔が………あ、…眼帯……あっ、あなたは!!
「政宗すああああああああああ!!!」
「えっちがごォッフェエエエ!!!」
両手を突きだして抱きつこうとしたつもりが、間違えてクロスチョップをきめてしまったようだ。奇声を発すると、政宗さん…に見えた出っ歯さんがばったり倒れる。や、やばい、幻覚を見た上に、罪もない一般人(じゃないか)にプロレス技をかけてしまうなんて!
「すっすみません!! 大丈夫ですか?!」
「何やってんだ、アンタ」
「いや、政宗さんと間違えてクロスチョップやっちゃいまして…!」
「…オイ、俺にかけるつもりだったのかい」
「滅相もない!! 抱きつ…」
……あれ、わたしは一体誰と話してるんだ。出っ歯さんの体を揺さぶりながら、ふと声の主を確かめようと振り返る。そこには、わたしの大好きな人が……政宗さんが立っていた。あきれた顔が懐かしい。「抱きつくつもりがなんでそうなる」と突っ込む声も、風でかおってくる匂いも、全部全部本物だ。直後、今度こそ逃がすまいと体が動きそうになったけど、無理矢理押さえ込んだ。ただ政宗さんをジッと見て、見守る。
「…なんだ、俺の顔に何かついてるのか」
「え、い、いや…。…どうして、わたしのこと…嫌がってたのに、…」
「Ah? 俺がいつななしを嫌がったって?」
弱々しく言った言葉に、眉をひそめてムッとする政宗さん。えええええ何を言ってるの。冒頭で言ってたでしょう、二週間前!! まさかそんな反応をされるとは思わず、わたしも負けじと声を出す。
「俺の部屋に来るなって言ったじゃないですか! しかも暇さえあればずっと部屋で何かしてるし! 完璧にわたしという虫避けです、そうとらえるのが…普通でしょ…!」
「......OK. ついてきな」
「は?」
「ついてこいっつってんだ」
出っ歯さんの横にいたわたしを無理矢理立たせると、そのまま移動を開始する政宗さん。いやいや待ってください色々と。まず出っ歯さんをどうにかしないと。あとなぜ今の会話で「OK.」が出てくるんですか。しかしそれらを口にして、今のこの距離が離れるんじゃないかと思うと、ついに声に出すことはできなかった。すいません出っ歯さん、ほんとにすいません。風邪ひいたら小十郎さんに看病してもらってください。わたしはしませんので。
そして連れてこられた政宗さんの部屋には、何もなかった。あり?と首をかしげるわたしをよそに、政宗さんが箪笥に近寄る。そこから現れたのは、藍色の布地。……というか、あれ、なんか見たことある…。
「あ…?! これ、」
「Yes. 前にアンタのPonchoっつーもんを破っちまったからな」
確かに、三週間前くらいか、現代から戻ってきた時に羽織っていたポンチョを着ていたら例の如く政宗さんにDVをくらい、その拍子にビリーンと裂けてしまったのだ。まあ元々何年もつかっていて傷んでいたからそんなに気にはならなかったんだけど…。あれ。…もしかして。わたしを部屋に入れなかった二週間の間に、
「…これを、作ってたんですか?」
「作ってはねェよ。ただ職人をここに呼んで、似たように織ってもらっただけだ」
「ええ!? それなら、なんで所有者であるわたしが入室禁止なんですか?!」
「邪魔以外の何者でもねェ」
「酷い! でも正論!!」
手渡しされたポンチョを手に取ると、元々のよりも薄めだった。まぁ時代が時代だからね。何より、気にしなかったわたしとは違って、新しくこしらえてくれる気遣いが嬉しくてしょうがない。まあなんだ、つまり、
「政宗さんはわたしのこと大好きだってことですね、わかりました!!」
「それこそ誰も言ってねェよ」
「うぐっ…!! い、今はです! きっと数年後、毎日わたしに囁いてくれるはずっ!」
「数年居座るのは決定なのか」
「え? 永住しますけど?」
「………」
「…そのあからさまにユウウツ~な表情するのやめてくれますかね。まあいいです。とりあえず充電させてくれれば」
藍色のポンチョを肩にかけ、政宗さんに思いきり抱きつく。もしかしたら技かけられるかな、という不安は杞憂で終わった。ただ、「暑苦しい」と呟くだけで、はがそうという気もないらしい。うっはああきたきたァァァ政宗デレモードォォォ!!! やばいです興奮します、嗅覚がいつもの二倍以上です!!!
「ハァ、ハァッ、政宗さんのにおい…!! 二週間分、きっちり味わわせていただきますぜ…!」
「俺の着物に液体少しでもつけたら、今度は一月だ」
「つっつけませんん!! ついても吸い取ります! 口で!」
いい加減にしやがれ、と怒鳴った政宗さんから、結局スクリュードライバーという名のプロレス技をくらいました。
愛TO鞭